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『弱キャラ友崎くん Lv.6.5』7巻への布石ともなるシリーズ初の短編集の感想

 

弱キャラ友崎くんは主人公である友崎君の一人称視点の小説で、読者は友崎君以外の登場人物の内面を基本的には友崎君の目を通してしか知ることができません。

それは、だからこそ人生というゲームに挑む友崎君に感情移入しやすいという良い部分でもあるのですが、例えば友崎君が何を考えているのか理解できていない登場人物の心情は書かれませんし、場合によっては間違っていることもあります。

もちろん、それはそれでエンタメ小説として一つの形なんですけどね。

しかし、弱キャラ友崎くんはどのキャラクターも個性があり魅力的なので、友崎君以外の登場人物の心情をもっと読んでみたいという思いは以前からありました。

それだけに、この友崎君以外の登場人物の内面が書かれている短編集の発売は嬉しかったです。

一方で、6巻の終わりがアレだったので「何で今のタイミングで短編集?」という思いもありました。

本短編集のあとがきでも、そのことに触れられていますね。

「「なるほど、これが書きたかったから短編集なのか」と納得していただければ何より光栄です」

僕はあとがきから読む派の人間なので、本作品を読む前にこの作者の言葉を目にしていました。

だから、読みながら作者が何が書きたかったのかを考えていたのですが、確かに最後には納得することができました。

本編じゃなきゃ読まないとか思っている人がいたら、ちゃんと本編への布石にもなっている内容が含まれているので、7巻に向けて読んでおくことをオススメしますよ!

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本作の概要

七海みみみの友崎君への告白。そして水沢孝弘の友崎君へのお説教。

そんな続きが気になる引きで終わった前巻ですが、今巻は閑話休題の短編集。

まだ未完成なパーフェクトヒロイン日南葵や、悩めるいけてる系女子の泉優鈴。友崎君視点だと心情がわかりづらい菊池風香や七海みみみ。

友崎君視点の短編もありますが1つだけで、いつもの弱キャラ友崎くんとは違った読み味が楽しめる内容になっています。

また、ただの短編集かと思いきや、最後には6巻の引きへと繋がる内容になっているのが面白いですね。

いや、やたらと七海みみみの短編が多かったのはこういうことだったんですね。

本作の見所

1.プレパーフェクトヒロインの憂鬱

中学生で、まだまだパーフェクトヒロインとしては未完成の日南葵が主人公の短編です。

未完成とはいえ中学生とは思えないほどに完成されている日南さんが、何をどんな風に考えて人と言葉を交わしているのかが見える所が面白いですね。

また、日南さんのパーフェクトヒロインたる所以も見えたような気がします。

「彼女は特定の場面にだけ即効性のある具体的なスキルを身につけていくのではなく、その土台。基礎能力となる部分をひたすらに研鑽してきた。」

この一文こそが、日南葵というキャラクターの本質を全て表していると思いました。

人が成長するためには当たり前のことだけど、それだけに難しいこと。それをただただひたむきに実践・努力し、しかも楽しんでいるのが日南葵というキャラクターなのでしょうね。

普通は、わかっていても即効性のある具体的なスキルがあれば、そちらに飛びついてしまいそうなものですもんね。

しかし、鉄壁要塞の日南さんが「どんな人なら付き合いたいと思うか?」と下級生に質問された時の答えが、少なからず友崎君の特徴と一致しているのが、今後の展開にどう影響するのかちょっと楽しみですね。

2.とある買い物にて

主人公の友崎君の唯一の短編。しかし短い・・

まあ、友崎君は本編で出ずっぱりですから短編は他のキャラクターに譲った形でしょうか?

本短編と同時発売のコミカライズ版2巻では日南さんと洋服を買いに行くエピソードがありますが、本短編も洋服を買いに行くエピソードです。

シチュエーションとしては同じですが、だからこそ友崎君の成長が垣間見える内容となっています。

何となく良い服がわかるセンスが身に付いてきたと誉めらて嬉しそうな友崎君ですが、誉められる以上に色々とダメ出しされてしまっていますね。(笑)

友崎君の最大の長所。愚直で素直な部分が功を奏しています。

3.その”恋バナ”の向かう先

日南葵、七海みみみ、泉優鈴の女子トークの短編です。

誰が誰を好きなのか?

何てことの無い恋バナをしているだけの短編なのですが・・

6巻を読んだ後にこの短編を読んだ時に違和感を感じた人って多いのではないでしょうか?

そうですね。七海みみみの反応です。

6巻の最後で友崎君に告白した七海みみみの反応が、どこか意味深ではあるものの友崎君と付き合うことについては「ありえない」と否定しているのですね。

最初は「ひょっとして昔に書かれた短編なのかな?」とか思っていましたが、本短編集を最後まで読んだら理解しました。

この短編こそが6巻ラストの告白への最初の伏線になっているということなのでしょう。

4.言葉でしか知らない色

中学生時代の菊池風香の1人称視点の短編です。

友崎君視点だと一番その心情がわかりづらいキャラクターなだけに、1人称視点の短編の主人公になっているのが興味深いですね。

実際、The文学少女といった感じの菊池さん視点ということもあり、この短編が一番普段の弱キャラ友崎くんとは違った雰囲気を出していると思います。

そしてこの短編を読む限り、菊池さんは友崎君や夏林花火以上に人との距離感を掴むのが苦手であり、しかし実際にはもっと友達と仲良くしたいと思っているキャラクターであるということがわかりました。

仲の良い図書館の司書である郷田さんに、好きな本について語る時はとても楽しそうな菊池さん。

しかし、菊池さんの好きなアンディ作品『猛禽の島とポポル』。色々な種族と仲良くなるポポルに憧れて、菊池さんもクラスメイトに歩み寄ろうとしますが失敗してしまいます。

自分はポポルとは分かり合えなかった炎人だと自嘲している菊池さんがちょっと切ないですが、励ます郷田さんがめっちゃ良い大人です。

郷田さんの存在は間違いなく菊池さんに良い影響を与えていたのだと思います。

「けどいまなら━━ポポルになれるのかもしれない。」

高校二年生になった菊池さんは、またポポルに憧れて勇気を出して友崎君に話しかけることになりました。

というわけで、1巻の友崎君と菊池さんの出会いに繋がる短編でした。

ちなみに、菊池さんは花火と並んで本作品で一番好きなキャラクターの1人なので、菊池さんの短編は本当に楽しみにしていました。

5.日記帳 二年目/五月~

またまた菊池さんの短編・・

というより完全に菊池さんの日記です。

友崎君との出会いのエピソードを菊池さんはこんな風に日記に残していたのですね。

特に注目したいのは初めて友崎君に話しかけた6月17日の日記。

エクスクラメーションマークを多用していて、それ以前の日記よりテンションが上がっているのがわかります。

というか、友崎君は菊池さんに他の種族とは仲良くできない炎人だと思われていたんですね。(笑)

6.寒い朝、駅前にて

いけてる系女子だけど結構いつも苦労している泉優鈴の短編です。

浮気を疑う彼女。だけどそれは誤解で、実は彼氏は女友達にプレゼントを選ぶのを手伝ってもらっていただけというラブコメではありきたりなエピソード。

ありがちではありますが、キャラクターの意外な一面を見られることが多いので僕はこういうエピソードも嫌いではありません。

いけてる系女子だけど余裕を無くしていて自分の誕生日すら忘れてしまっている泉さん。

かなりの長期間、誕生日プレゼントを選ぶためだけに時間を使って浮気を疑われてしまった。だけど結構マメな奴だということが明らかになった中村修二

花火のエピソードで好感度がガタ落ちしたけど、意外と友達思いで泉さんに対して親身になっている紺野エリカ。

泉さんは割といつも通りといえばいつも通りですが、中村と紺野の意外な一面が垣間見えた短編でしたね。

この短編を読んだ後、地味に中村や紺野視点のエピソードとかも読んでみたいなぁと思いました。

7.振り切るためのスピードで

恐らく作者が書きたかったのだと思われる七海みみみの短編ですね。

七海みみみは、いわゆるムードメーカ的な立ち位置のキャラクターで、底抜けに明るく物事をあまり深くまでは考えていないようなイメージのキャラクターなのだと僕は思っています。

しかし、意外とその内面はナイーブで、周囲の人間の成長や人間関係の変化に対して複雑な思いを抱いているのだということがわかるような短編でした。

そして、6巻ラストへ向かっての伏線だらけの内容にもなっています。

6巻ラストの七海みみみの告白は、全くその気配が無かったというわけでもありませんが、そこは鈍感な友崎君視点。かなり唐突感のある告白だったのは否めません。

恐らく七海みみみの告白を自然なものとし、6巻と7巻の潤滑油的な役割を持たせている短編なのだろうと感じました。

8.彼女と餃子

またまた七海みみみ。6巻中盤に出てきた『ぎょうざの満州』でのエピソードの七海みみみ視点の短編・・というより掌編ですね。

友崎君が日南さんの課題をこなそうと必死な裏側で七海みみみが何をどう思っていたのかがわかる内容になっています。

こういう、視点違いの話って本当に面白いですよね?

9.ドランク・オン・ノンアルコール

主人公の友崎君以外では、唯一短編の主人公になった男子。水沢孝弘の短編です。

今のところ男子キャラの中では友崎君との絡みが一番多いので妥当なところだと思いますが、個人的には男子キャラの中だと中村のエピソードとかの方が読んでみたかったかもしれません。

やっぱり、その内面がわかりづらいキャラクター視点の話の方が面白そうだと感じてしまうのは僕だけでしょうか?

しかし、後半になるにつれ七海みみみの話で畳み掛けているような構成の短編集において、この位置に水沢君のエピソードが収録されているのには何か意味があるのでしょうか?

内容的にも、あまり次巻の伏線になっているような感じはしませんが・・

一応、水沢君は6巻ラストで友崎君にお説教をしていて、7巻でもキーパーソンになりそうなキャラクターではあるのですが、この短編が関連してくるのかは今のところわかりませんね。

10.そして、そのあとの話。

そして最後も七海みみみ。

6巻ラストで友崎君に告白した後の七海みみみの心情が書かれている掌編です。

心情が書かれているというか、ただただ七海みみみが悶絶して悩みまくっているのが可愛いだけの内容なのですが、この短編集はここに繋げたかったんだということは明白ですね。

「ねえ。人生ってちょっと、難しすぎじゃない!?」

そして最後のこのモノローグ。

人生というゲームの攻略がテーマの弱キャラ友崎くんという作品においては、かなり意味深に感じてしまうモノローグだと思います。

例えば5巻の花火のエピソードとか、今までにも友崎君以外が人生攻略している話はありました。

そういう意味では、7巻は七海みみみの人生攻略の話になるのではないかと推察しますが・・しかし、花火の時と違って語り部である友崎君も当事者になってしまっているので、これが一体どのような話になるのか、今から楽しみですね!

総括

いかがでしたでしょうか?

作者の屋久ユウキ先生が何を書きたかったのか?

七海みみみ

恐らく7巻への布石として、はじめて友崎君に異性としての好意を示したキャラクターである七海みみみの変化を書いておきたかったというのが、その答えなのだと思います。

本短編集の3つ目の短編。

その”恋バナ”の向かう先

この短編のタイトルもそう考えると意味深ですよね。

七海みみみにとっての向かう先が何だったのかは言わずもがなですね。

それに七海みみみより一歩出遅れてしまった感は否めませんが、菊池さんも6巻時点での変化が大きく、友崎君に急接近しているキャラクターだと思います。

そんな菊池さんの友崎君との出会いに繋がるエピソードが収録されていたのも何らかの意味があったのではないかと勘繰っています。勘繰りすぎ?どうなんだろ?

いずれにしても、これは7巻が楽しみになりました!

しかし、ちょっとだけこの短編集に残念なことがあるとしたら、夏林花火のエピソードが無かったことでしょうか?

次に短編集が出るとしたら是非に入れて欲しいです!

それに友崎君の妹視点とかも面白いかもしれませんね。

ちなみに、同時発売のコミカライズ版2巻の感想も書いているので良かったら見てみてください!

www.aruiha.com