あるいは 迷った 困った

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『金色のガッシュ!!(3)』平成最高の激熱バディもの漫画の感想(ネタバレ注意)

 

ガッシュに似た魔物が登場する3巻です。(前巻のレビューはこちら

もう何度も『金色のガッシュ!!』という作品を読んだことがあって、今回レビュー記事を書くにあたって読み直しているという立場の僕が、この3巻に対して抱いた印象は大きな伏線が張り巡らされているというものです。

清麿の父親がガッシュを見つけた森では、ガッシュが自分に似た魔物のことを思い出して、第四の呪文・バオウザケルガを新たに覚えます。

そして、タイミングを同じくしてガッシュに似た魔物も初登場するのですが、このガッシュに似た魔物とバオウザケルガという呪文には後々因縁めいたものがあるので、ここで同時に登場していたというのは興味深いものがありますね。

また、シェリーとブラゴの出会いのエピソードと、清麿の父親が見つけた1000年前の石板も、今後発生する『金色のガッシュ!!』における最初の大きなエピソードの伏線になっています。

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本作の概要

ロブノスによって言及され、ティオがイギリスで見かけたというガッシュに似た魔物。

イギリスは清麿の父親がガッシュを見つけた地でもあり、ガッシュの記憶の手掛かりやガッシュに似た魔物の情報を求めて、清麿・ガッシュペアはイギリスへと向かいます。

また、手を組んで清麿・ガッシュペアと戦う二組の人間・魔物のペアと、2巻で仲間となった大海恵・ティオペアと共闘して戦うシーンにも注目ですね。

そして、シェリーとブラゴの出会いのエピソードは『金色のガッシュ!!』における最初の大きなエピソードの伏線になっています。

本作の見所

成長する清麿

清麿はガッシュと出会う前、学校にもあまり行かずに植物園に通う半ヒキコモリのような生活であったことが想像されます。

だから清麿の父親はガッシュを清麿の元に送り付けたわけですからね。

なんでそれで「腑抜けになった清麿を鍛えなおす」ことができると思ったのかはずっと分かっていませんでしたが、恐らくまっすぐなガッシュの性格なら清麿の友人にはなれると思ったのではないかと推測されます。

つまり、ガッシュには「腑抜けになった清麿を鍛えなおす」なんて大げさなことを言っているものの、その真意は単に「清麿と友達になってくれ」だったのではないかと思うんですよね。

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(「金色のガッシュ!!」46話より)

それが、久しぶりに再会した清麿は本当に大きく成長している様子でした。

「なんで、あんな低レベルな奴らと遊ばなきゃいけねぇんだよ!! 一人で本でも読んでる方がよっぽど楽しーぜ! 他の奴らなんか知ったことじゃねーよ!!!」

以前の、ガッシュと出会う前の清麿は、周りの方から清麿を妬み他とは違う人間であると区別され始めた事情があるとはいえ、自分の殻に閉じこもったような孤独な考え方を持っていました。

それが、見ず知らずのセッコロの父親を助けるために必死になっている。

そんな清麿を見た清麿の父親の嬉しそうな表情が、ガッシュと出会ったことによる清麿の成長の結果を示していると思わされるエピソードだと思います。

考えてみれば、ヒキコモリ気味だった中学生が子連れで単身海外旅行とは、それだけで成長していると言えますしね。(笑)

そんな中学生いねぇ~よって。(笑)

第四の呪文・バオウザケルガ

もしかしたらガッシュの記憶を戻す手掛かりになるかもしれない。

そんな想いで清麿は、清麿の父親が最初にガッシュを見つけた森にやってきました。

「な、なぜかはわからぬが・・。ここがとてもこわいのだ・・」

そして、完全ではありませんがその目的は果たされます。

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(「金色のガッシュ!!」47話より)

大きなクレーターのようになっている場所で、突然ガタガタと震えだすガッシュの体が金色に輝き、それと同時にこの森での出来事を断片的に思い出します。

ガッシュの前にガッシュと似た魔物が現れて、寂しがっているガッシュは友達になろうと声を掛けるのですが・・

「おまえはオレのことを知らんだろうが、オレはおまえのことをずっと思っていた・・。憎く! 腹立たしく!! 恨まない日などないほどにだ!!!」

非常に強い恨み節とともに一方的に攻撃されてしまいます。

そして、どうやらそのガッシュと似た魔物にガッシュは記憶を奪われてしまったようですね。

このガッシュに似た魔物については、今後じわじわと情報が小出しにされていく感じになるのですが、大方の予想通り『金色のガッシュ!!』という作中全体においてもかなり重要なキャラクターとなります。

また、今回記憶を断片的に取り戻すのと同時に覚えた第四の呪文。

バオウザケルガは今後ガッシュが覚えていく呪文を含めても最強の呪文となります。

そして、最後まで『金色のガッシュ!!』を読んだことがある人ならここで「あっ!」と気付くはずです。

このガッシュと似た魔物との因縁には、実はこのバオウザケルガという呪文は大きく関連していて、そんな2つが同時に登場していたというのが興味深く思えるはずです。

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(「金色のガッシュ!!」48話より)

不敵に笑うその笑顔は、本当にガッシュに似ていますね。

ちなみに、このレビュー記事にはネタバレが含まれますが、次巻以降のネタバレは極力避けようとしています。

しかし、このガッシュに似た魔物のことを書こうとするとついつい今巻時点では明らかになっていないことに触れてしまいそうでドキドキします。

何回もこの魔物の名前を書いてしまいそうになってしまいましたしね。(笑)

シェリーとブラゴの出会い

金色のガッシュ!!』という作品における人間と魔物のペアの関係性って、それぞれ個性があって面白いですよね。

大海恵・ティオペアは仲の良い姉妹のようだし、清麿・ガッシュも兄弟・・とも思いましたが、やっぱり年の離れた親友という感じの方が強いような気がします。

そんな感じで、同じ人間・魔物ペアでも兄弟、親子、恋人、師弟、雇用関係といった様々な関係性があるのが興味深いと思います。

悪役となるペアの場合は、お互いに利用しあっているような関係も見受けられますね。

そして、そんな中でもシェリー・ブラゴペアの関係はかなり特殊な気がします。

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(「金色のガッシュ!!」54話より)

非常に意志の強そうな女性であるシェリーですが、相当強い魔物であるブラゴの戦いにはついて行くだけで必死です。

ブラゴの方はそんなシェリーを足手まといに感じている節がありますね。

そんなシェリーとブラゴの出会いは、シェリーの友人であるココを洗脳してパートナーになったゾフィスの攻撃から、ブラゴが助けたことがキッカケだったようです。

シェリーは、ココを助ける目的を持ってブラゴが王を目指すことに協力することになったわけですが、最初から力を要する目的があったからこそシェリーの意志は強くなっているのかもしれませんね。

そして、一見すると悪人っぽく見えるブラゴですが、実際の所は高潔で目的にまっすぐなだけで悪人ではありません。

自分以外の事はあまり信頼していなさそうな性質もあって、その辺はかなり誤解されがちですね。

「なぜこの戦いは、こんな弱い人間と組まねばならん・・」

しかし、シェリーのことを足手まといに感じているのは事実で、その辺は若干不満そうです。

ですがこのペアは恐らく『金色のガッシュ!!』の中で最も関係性の変化が面白いペアで、最終巻ラストでのブラゴのシェリーに対するセリフを読むまで、シェリーを足手まとい扱いする今回のブラゴのセリフを覚えておいて欲しいです。

このシェリー・ブラゴペアの関係は、兄弟でも親子でも恋人でも師弟でもなく、まさに戦友であると感じられるに違いありません。

ウマゴン登場

なんというか、清麿・ガッシュペアの仲間になっていく魔物って弱いかギャグっぽいかのどちらかなんですよね。

あるいはその両方でしょうか?(笑)

次巻にはメッチャ強い奴が登場しますけど。

まあ、そんな奴らが強敵に打ち勝っていくから面白いんですけどね。

今巻で登場するウマゴンに至っては、喋ることができないため未だ人間のパートナーを見つけることができずにいる状態です。

清麿は最初、ウマゴンが魔物だと知って警戒の方が先だちますが、人間のパートナーを見つけることができずに孤独な状態のウマゴンに理解を示すガッシュやティオの説得で、まずは清麿の元に置かれることになりました。

セリフが無いのに感情が分かりやすい面白いキャラクターですね。

オマケページ(ガッシュカフェ)

今巻のガッシュカフェはキャンチョメとブラゴですが、どちらかといえばブラゴが面白いエピソードとなります。

普段はシェリーとも会話が無く、笑いも無いブラゴ。

そんなブラゴがシェリーと、フォルゴレが書いた詞と振り付けでデュエットするという本編では決してみられない貴重なシーンです。

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(「金色のガッシュ!!」完全版3巻オマケページより)

こんなブラゴ。本編では一度だって見られなかったですよね。(笑)

だんだんわかってきましたが、このガッシュカフェは本編ではできない人間・魔物ペアの組み合わせで、本編ではできないキャラ崩壊寸前のやり取りを楽しむものになっているようですね。

こういうのって、イメージが崩れると嫌がる人も多そうな気がしますが、個人的には大好物です。

総括

いかがでしたでしょうか?

ここまで基本的には一つのエピソードに数話程度という感じで進行してきた『金色のガッシュ!!』ですが、今巻ではもっと大きなエピソードへ繋がる伏線が貼られ始めています。

かといって次巻からいきなり大きなエピソードに突入するかといえばそういうわけでもないのですが、このじわじわと伏線を広げていく感じも『金色のガッシュ!!』のストーリー構成が秀逸だと思わされる要因だと思います。

また、今巻は清麿・ガッシュが海外に行っていたこともあり、前巻でせっかく初登場したヒロインたち。大海恵・ティオペアが不在で寂しい感じもしましたが、次巻ではまた再登場するのでその辺も楽しみにしたいところですね。(次巻のレビューはまだ)

『妻、小学生になる。(1)』タイトル通りの純愛漫画の感想(ネタバレ注意)

 

妻、小学生になる。は、亡くなった妻が転生した後、小学生になってから前世の記憶を取り戻して夫と娘の元に現れるという物語です。

こういう知人が別人になって現れる系の作品もまた珍しくはあるものの時たま見かける一ジャンルになっていますよね。

最近読んだ漫画だと小学生がママでもいいですか?を思い出しました。

小学生がママでもいいですか?は亡くなった母親が現れる漫画で、妻、小学生になる。は亡くなった妻が現れるという違いがありますが、対比して読んでみても面白いと思います。

娘の新島麻衣視点だと小学生がママでもいいですか?と完全に同じ設定ですしね。

だけど突然現れた元妻(母親)に対する反応とか、接し方が全く異なるのが興味深いです。

転生という現実にはあり得ない状況に対して、転生前の元知人がどういう反応を取るのか?

それに対する考え方の違いというか、バリエーションが面白いです。

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本作の概要

ふとした拍子に前世の記憶を思い出した10歳の小学生。

白石万理華(今世)こと新島貴恵(前世)は元夫である新島圭介と娘の麻衣の元に突然現れます。

新島貴恵でなければ知らないことを知っていて、その言動も新島貴恵を思い出させるものであったことから、彼女が元妻(母親)であることは比較的あっさりと受け入れられます。

そして、そこからちょっと変わった夫婦と親子の物語が始まります。

本作の見所

元妻の小学生

1巻を通して読んだ後なら分かると思いますが、どちらかといえば新島圭介の側が一度亡くなって自分の元から消えてしまった元妻が現れたことを喜んでいて、相手が小学生であろうがお構いなしに愛をぶつけるような物語になっています。

一方で新島貴恵の側はその辺ドライで現実的というか、あくまでも今の自分は転生した後の白石万理華であると考えているような気がします。

「こんな形だけど、本当は見ることができなかったはずの、あなたと麻衣の成長を今後も見られることが・・。正直・・めちゃくちゃ嬉しいわ」

しかし、最初に新島圭介と麻衣の前に姿を現したのは新島貴恵の方です。

新島圭介に比べるとかなりサバサバとした性格の新島貴恵には、受け入れられるかどうかも分からないリスクを負ってわざわざ姿を現さないような選択肢もあったはず。

それでも新島貴恵として新島圭介と麻衣に会えることが嬉しいという気持ちが勝っているあたりに、1巻最後まで読んだ後にこのシーンを改めてみるとちょっと感動してしまいました。

ちなみに、この再会した後のスタンスが小学生がママでもいいですか?とは真逆なのが面白いですよね。

小学生がママでもいいですか?では転生した母親と息子の再開が描かれていますが、母親の方が積極的に母親として振舞おうとしている一方で息子の方はその辺が現実的な考え方です。

その構図がは妻、小学生になる。とは正反対なんですけど、どっちの反応もありそうな反応だというところが興味深いと思います。

お弁当と守屋好美

「あなたは真面目なようでどこか抜けてて心配だから、こうして魂込めた弁当を渡すことで私も安心してるのよ」

お弁当を作ってくれる奥さんって良いですよね~

専業主婦ならまだしも、新島貴恵は自らも仕事で忙しい身でありながら夫である新島圭介にお弁当を作ってあげていました。

「これからもずっと作ってあげる」と、そんな風に新島貴恵は言っていて、だからこそ新島夫妻にとってお弁当は夫婦関係における象徴の一つだったのかもしれません。

そして、毎日とまではいかないまでも小学生の新島貴恵も新島圭介にお弁当を作ってくれるようになりました。

そのお弁当を食べて一層再会の喜びが大きくなって感極まる新島圭介。

こういう分かりやすい夫婦の絆って温かい感じがしますね。

ちなみに、新島圭介の会社の部下である守屋好美は、かなり年上であるはずの新島圭介に気があるようで、彼女もまた新島圭介にお弁当を作ってきてしまいました。

せっかくの部下からの好意を無下にも出来ないので、新島貴恵は帰りの公園で食べることにしたようですが、その現場を新島貴恵に目撃されてしまいます。

新島圭介は親子ほど年の離れた守屋好美の好意には気付いていないようですが、新島貴恵の方は察してているようですね。

「そういう時は仕方ないから、無理にお弁当食べなくてもいいわよ。いい大人がこんな時間にひとりで公園で弁当って・・あなたには羞恥心がないの?」

人によっては浮気だとか何だとか誤解を与えそうなシーンですが、社会人なら断れない付き合いがあることも確かです。新島貴恵はそういうところに理解がある良妻って感じですね。

「もちろん恥ずかしいさ。だけど、せっかくお前が作ってくれた弁当を残してしまう方が嫌なんだ」

だけど、もしかしたら新島圭介がこういう風に素直に愛をぶつけてくる男だからこそ、そういう良妻になれたのかもしれないとも思います。

「私があなたくらいの時は男とっつかまえて遊びまくりたくて仕方なかったわよ。まあこの人がいるからしなかったけどさ」

そういえば新島貴恵の麻衣に対するこのセリフからも、新島圭介が新島貴恵の在り方に影響を与えていたのであろうことが窺えますね。

疑惑の新島圭介

「あと8年かー」

何が8年なのかって、8年後は新島貴恵が18歳になって法律的に結婚できるようになるわけなのです。

どうやら新島圭介は、改めて新島貴恵と結婚するつもりらしいですね。(笑)

さすがに新島貴恵も麻衣もこれには驚きます・・というか、もし結婚するとしたら法律的な問題が些細に感じられるほど大きな問題がありそうですよね。

下手をしたら孫でもおかしくないくらいの年齢差がありますし、そんな結婚が新島貴恵にとって・・そして白石万理華にとって本当に倖せなのかと考えたら疑問が残ります。

ここまで好かれたら嬉しくはあるのでしょうけど、それとこれとは話が別って感じもしますね。

そして、そんな新島貴恵に対する気持ちを周囲に対しても隠そうともしない新島圭介は、いつか何かしらの誤解を受けて酷い目に遭いそうですね。(笑)

今巻でも、守屋好美から新島貴恵の写真、そして2人で会っている所を目撃されていらぬ誤解を受けかけていましたからね。

なんというか、物騒な世の中だからそういうのは避けられないような気がします。

白石万理華としての新島貴恵

この手の子供の体に大人の精神が入っている物語は意外と多いです。

超有名どころだと名探偵コナンあたりがまさにそうですね。

名探偵コナンくらいなら高校生から小学生になっているので、子供が子供になったというか、あまり年齢差が大きくないのでギャップも小さいでしょうけど、もともと中学生の娘がいて、その娘も現在はアラサーという新島貴恵の精神が10歳の子供に入っているというのはギャップが大きそうですよね。

ジェネレーションギャップとも違う独特のギャップなのではないかと想像します。

実際、同級生におばさんっぽいと言われてしまったりする場面も見受けられますね。(笑)

ともあれ、新島貴恵には白石万理華としての生活もあるわけなのですが・・

どうやらちょっと問題がありそうな家庭に育っている様子が今巻最後に仄めかされています。

ただでさえ新島貴恵の記憶が戻ってややこしいのに、加えてややこしそうな家庭。

新島圭介の言動も悪気こそないもののややこしい感じですし、ややこしさ尽くしで今後どうなっていくのかが非常に気になるところですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

新島圭介の元に現れた元妻である新島貴恵ですが、恐らくはあくまでも白石万理華として生きていくつもりなのだと思われます。

一方の新島圭介は新島貴恵のことを新島貴恵として受け入れる姿勢が万全で、その辺の考え方の違いが今後にどう影響してくるのかが楽しみですね。

また、今巻ラストでどうやら白石万理華には家庭の問題があるらしそうなことを匂わせる描写がありましたが、アラフォーの新島貴恵としての精神を持っている白石万理華がどうしていくのか、そこに新島圭介や麻衣が絡んでいくことはあるのか。

その辺が気になるところだと思います。

『金色のガッシュ!!(2)』平成最高の激熱バディもの漫画の感想(ネタバレ注意)

 

ガッシュの仲間たちが続々と登場する2巻です。(前巻のレビューはこちら

序盤はガッシュが記憶喪失だったこともあり、『金色のガッシュ!!』がどういう作品なのかということ自体が謎に包まれていましたが、1巻の最後まででストーリーの根本が見え始めてきました。

魔物の王様を巡る戦いという舞台の上で、やさしい王様を目指して戦う清麿・ガッシュペアという構図が出来上がりました。

そして、2巻では今後清麿・ガッシュの仲間となるキャラクターが登場してくることで、ガッシュは必ずしも自分がやさしい王様になろうとしているわけでもないことが明らかになります。

また、フォルゴレ・キャンチョメペアというギャグ要員なのかと思わされるようなペアや、大海恵・ティオペアという非常に可愛らしいペアが登場しますが、激熱のバトル漫画という根本を崩さずにギャグ要素や可愛らしさも強化されてきているような気がします。

考えてみれば、そういうところが『金色のガッシュ!!』という作品の個性であり、凄さなのかもしれませんね。

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本作の概要

前巻でやさしい王様を目指すことを決めた清麿・ガッシュペア。

そんなやさしい王様にはなりそうもない魔物との戦いでは、今まで以上の厳しさを発揮しますが、一方でやさしい王様を目指す清麿・ガッシュペアの仲間となるペアも登場します。

しおり・コルルペアとは良い仲間になれそうな感じでしたが、コルルは自らドロップアウトする道を選んだので仲間にはなれませんでした。

そんなわけで魔物の王様を巡る戦いの中では孤独だった清麿・ガッシュですが、仲間になれるペアも存在するということが明らかになりました。

本作の見所

やさしい王様

前巻でも同じ表題の「本作の見所」を紹介しましたが、大事なことなので二回言いました。(笑)

いや、本当にこのやさしい王様というキーワードが『金色のガッシュ!!』という作品においては根幹というか、もの凄く大事なので。

さて、やさしい王様を目指すことを決めた清麿・ガッシュペアですが、実は自分自身が絶対にやさしい王様になろうとしているわけではないことが今巻で分かります。

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(「金色のガッシュ!!」20話より)

自分がやさしい王様になるというよりは、やさしい王様にはなり得ない思想を持った魔物には絶対に勝たせない。そして、他にやさしい王様になれる魔物がいないのであれば自分がやさしい王様になる。

清麿・ガッシュペアの想いは正確にはこのようなものなのだと思います。

だからなのか、どう考えてもやさしい王様の風格の無い酷い思想を持った人間・魔物ペアにはたとえ相手の方が格上に見えても逃げない姿勢を見せています。

目標が定まっていない状態なら、ひょっとしたら清麿・ガッシュはいったんは逃げ出したりしていたかもしれない状況ですが、それでも立ち向かったのは目標が明確になっていたからなのかもしれませんね。

「フ・・でもまあ、とりあえずあの魔物を王にすることだけは防げたってわけだ」

戦いの後の清麿のセリフも、まさに目標が明確になっているからこそ出てくるセリフなのではないかと思います。

キャンチョメ登場

今まで登場した魔物は大なり小なりみんな強かったですね。

コルルにしても弱い魔物のイメージがありますが、戦う意思が弱いだけで強制的に戦わされている時は強かったです。

そんな中、今回初登場したフォルゴレ・キャンチョメペアは本当に弱かった。

仮にもガッシュを狙ってきた魔物であるにも関わらず、弱すぎて返り討ちに・・なるほどでもなかったという感じです。(笑)

ガッシュ・・なんで、おまえはそんなに強くなったんだ・・? おまえ、僕と同じ落ちこぼれだったじゃないか・・」

どうやら、わざわざイタリアから自分と同じ落ちこぼれであるガッシュをターゲットにやってきたようなのですが、想像以上にガッシュが強くなっていて驚いているようです。

そして、今巻では唐突にやって来て敗北して去っていくに留まるのですが、このフォルゴレ・キャンチョメペアは今後終盤まで清麿・ガッシュペアの仲間となっていきます。

考えてみれば、この初登場の時点でもう少しキャンチョメが強ければ、その脅威から身を守るために清麿・ガッシュペアはフォルゴレ・キャンチョメペアの本を燃やしてしまっていた可能性もあるかもしれません。

弱かったからこそ仲間になったともいえるキャラクターでもあると、そんな風に考えると興味深いですよね。

大海恵とティオのペア

初登場はフォルゴレ・キャンチョメペアの方が先ですが、明確に仲間であると言及されたのは大海恵・ティオペアが最初になります。

ティオもまたガッシュのことを知っている魔物で、ガッシュのことをキャンチョメと同じく弱い魔物であると認識しているようですが・・

「違うよ、ティオ。戦うんじゃなくて、味方になってもらって・・」

大海恵のガッシュに味方になってもらえば良いのではないかという提案には難色を示します。

どうやら過去に魔界では仲良くしていた魔物に裏切られたことで、どんな魔物であっても他の魔物のことを信じられなくなってしまっているようです。

とはいえ、ペアの大海恵との仲は良好で、かなり立場や性格は違うものの清麿・ガッシュペアに次ぐくらいに主人公感のあるペアになっています。

そして、人気アイドルでもある大海恵のコンサート会場にまでやってきたティオを裏切った魔物・マルス

本を燃やそうとするのみならず、大海恵のコンサートまで台無しにしようとする酷い魔物ですね。

しかし、たまたまコンサート会場に来ていた清麿・ガッシュペアによって撃退されてしまいます。

「本当に・・。本当に、あの弱虫ガッシュなの・・!?」

弱虫だと思っていたガッシュの壮絶な戦いぶりに驚くティオ。

しかし、ガッシュがティオを助けた気持ちに嘘は無くても、これは一人だけが王様になれる戦い。だから良い人とかそういうのは関係なく次は自分たちがガッシュと戦う番だと身構える大石恵・ティオペアですが・・

「さ、早くコンサートに!! 急がねえと、ファンが待ってるぞ!!!」

「ウヌ! 私も観るから早くするのだ!!」

ティオたちと戦うそぶりも無く、全ては終わったかのような様子の清麿・ガッシュペア。

敵同士なのに何故戦わないのか?

今まで他の魔物のことは信じないで、敵であると認識して孤独になっていたティオにとってそれは衝撃だったに違いありません。

「お主はいい奴だからだ!! だから戦いたくない!!!」

このまっすぐなセリフ。

単純だけどグッときますね~

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(「金色のガッシュ!!」38話より)

敵同士なのに何故戦わないのかと疑問を呈するティオに、ガッシュは自身の目的がやさしい王様になることであることを宣言します。

そして、ティオであれば仮にガッシュが敗退した場合でも代わりにやさしい王様になってくれるかもしれないと、そういう想いを口にします。

ガッシュの望みが「やさしい王様になること」なのではなく、「やさしい王様が誕生すること」なのだということは、フェインとのやり取りで想像できたところですが、ここで明確に語られるわけですね。

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(「金色のガッシュ!!」38話より)

そして、そんなガッシュの想いを理解したティオは、初めてのガッシュの仲間となります。

たった一人しか勝者がいないはずの魔物の王様を巡る戦いにおいて、本来であれば他の魔物は仲間になり得ないはずで、ティオの考えにも間違えは無かったはずです。

もっとメタいことを言うと、主人公である清麿・ガッシュペアに勝利を目指させないわけにもいかないはずなので、普通に考えたら孤独な戦いが待っていたことだと思います。

それを「やさしい王様が誕生すること」という勝利とニアリーイコールな目標を持たせることによって自然に他の魔物でも仲間になれる状況が作り出されているのが興味深いところですよね。

今まで孤独だったティオにとって、ガッシュの存在が救いとなったことは間違いなさそうですが、実のところ清麿・ガッシュペアにとっても志を同じくする仲間ができたことは救いだったのかもしれません。

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(「金色のガッシュ!!」38話より)

そして、初登場時はどこか張り詰めた様子を隠し切れていなかったティオですが、このエピソードのラストでは安心したように眠っています。

セリフも無い眠っているだけの一コマでしかないのに、ティオの想いがひしひしと伝わってくる素晴らしい一コマですよね。

オマケページ(ガッシュカフェ)

今巻のガッシュカフェはティオとコルルの2人ですね。

金色のガッシュ!!』に登場する二大魔物のヒロインといっても過言ではない2人なのではないでしょうか?

コルルのリタイアは早いですが、やっぱり何度も思い起こさせるシーンがある魔物という意味では断トツですからね。

そんな2人の家族構成とともに両親兄弟のキャラデザが公開されているのが興味深いです。

というかティオの父親でかすぎ。(笑)

そして、よくガッシュを始めとする仲の良い魔物の首を絞めているシーンの描かれるティオですが、その握力は150kgあるようです。恐いですね~(笑)

「そういえばティオ。よく公園のスミの木に夢中になって砂をぶつけてなかった?」

また、ティオの黒歴史っぽい何だかよくわからない行動をコルルが無邪気な感じに呼び覚ますという感じが面白かったです。

総括

いかがでしたでしょうか?

ギャグ要員のフォルゴレ・キャンチョメペアは、今巻の時点ではそこまで仲間になったという感じではありませんが、ヒロイン枠である大海恵・ティオペアに対しては初めて明確に仲間なのだと言及されています。

それが38話目のことなので、考えてみればヒロイン枠であり最初の仲間の登場という重要なイベントにしては意外と遅いような気がしますが、『金色のガッシュ!!』の場合はベストタイミングだったのではないかと思います。

仲間という意味では、清麿とガッシュがペアとして成立してく過程。

そして自分たちの置かれている魔物の王様を巡る戦いという状況の把握。

最後にやさしい王様という目標の設定。

そこまでをじっくりと描いた上で、ようやく他の仲間の登場といった重要なエピソードが描かれ始めているのだと考えると、大海恵・ティオペアの登場の遅さも頷けますね。

ヒロイン枠であれ最初の仲間であれ、普通は1~2話目、遅くても数話目くらいには登場するものだと思いますが、このようやく出会えた感じが『金色のガッシュ!!』の良さでもあると思います。

そして、登場したのは仲間だけではありません。

現時点では清麿・ガッシュにとって伝聞でしかありませんが、ガッシュに似た魔物の存在が示唆され始めています。

このガッシュに似た魔物は、『金色のガッシュ!!』という作品の中においてもかなり重要な立ち位置のキャラクターなので、今後の動向にも注目したいところですね。(次巻のレビューはこちら

『金色のガッシュ!!(1)』平成最高の激熱バディもの漫画の感想(ネタバレ注意)

 

バトル漫画といえば、やっぱり少年週刊ジャンプのイメージが強いですが、その他の漫画雑誌にも名作バトル漫画は数多く存在します。

金色のガッシュ!!』もまさにそんなバトル漫画のひとつです。

とりわけバディもの作品の中では平成最高の漫画作品だったのではないかと思うんですよね。

高嶺清麿とガッシュ・ベルのコンビに勝るバディものバトル漫画の主人公なんて、将来的にもそうそう登場しないのではないかと思うくらいです。

では、『金色のガッシュ!!』という作品のどういうところが名作なのか?

そのひとつには、本記事の表題にもしているとおり熱さがあると思います。

最初は、天才的な頭脳を持ちながら周囲には馴染めずにいた高嶺清麿。それに弱い魔物と認定されていたガッシュ。そんな2人がそれでも一本筋の通った信念を持って成長していく様には胸が熱くなります。

それに熱くなるのは胸だけではありません。

本を燃やされたら魔界に送還されるという設定により、「死」という概念を排しながらも「死」に近い別れが数多く演出されていて、中には目頭が熱くなるような別れも描かれています。

コルルペアの別れなど、その最たるものですよね。

実は、本レビューを記載するにあたり『金色のガッシュ!!』を読み直した際、コルルペアのエピソードでは普通に泣いてしまいました。

そんな感じで色々な意味での熱さが『金色のガッシュ!!』という作品の最大の魅力になっているのだと思います。

また、この手のバトル漫画って格好良さが重点的に描かれている傾向があると思うのですが、『金色のガッシュ!!』の場合はそれだけではないんですよね。

子供や女性でも可愛いと親しみやすいキャラクターデザインも魅力的です。

主人公の一人であるガッシュもまさにそういう可愛さを持っているキャラクターの一人ですが、そんなキャラクターが数多く登場するのも他のバトル系漫画にはあまり見られない特徴なんですよね。

ちょっとロボットっぽい子供ウケの良さそうなキャラクターもいたり、普通に格好良いキャラクターも登場する。

なんというか裾野が広い感じがしますね。

一方でそんな可愛いと思えるキャラクターたちの内面は、まさに激熱のバトル漫画のキャラクターらしいものというギャップがたまらない魅力なんです。

また、他のバトル漫画に比べたらギャグの要素も濃厚で、ギャグシーンだけを見ると完全にギャグ漫画になっています。(笑)

それなのに作品のバランスが崩れているわけではない。

最初から最後まで抜群のバランス感覚を誇っているのも魅力的ですよね。

前書きが長くなりましたが、そんな『金色のガッシュ!!』の全巻レビューを始めていきたいと思います!

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本作の概要

高嶺清麿はMIT首席の卒業論文を暇つぶし程度に理解してしまうほどの天才中学生ですが、その優れた能力を原因に学校には馴染めずにいました。

そんな清麿の元に、父親から清麿を鍛えなおす名目で派遣されてきた記憶喪失の子供。

子供らしからぬ独特の喋り方をする子供の名前はガッシュ・ベル。

天才である清麿にも読めない謎の赤い本を持ち、口から電撃を出し、頭には小さな角も生えている正体不明のガッシュでしたが、徐々に魔物の王様を巡る戦いの全容が明らかになっていきます。

1巻では高嶺清麿とガッシュ・ベルという最高のバディが誕生し、「やさしい王様」という『金色のガッシュ!!』という作品の根幹となるキーワードが登場します。

本作の見所

天才少年と電撃を出す子供

金色のガッシュ!!』の主人公のひとり。高嶺清麿はその天才性から学校に馴染めず不登校気味になっていました。

考えてみれば、『金色のガッシュ!!』の時代にこういう頭脳系のバトル漫画の主人公って珍しかったような気がしますが、そういうところも『金色のガッシュ!!』がウケた要因だったのかもしれませんね。

そして、もうひとりの主人公のガッシュ・ベル。

非日常的な巻き込み系のキャラクターですが、記憶喪失だったこともあって、清麿と一緒に魔物の王様を巡る戦いに巻き込まれていく感じになっているのが興味深い所ですね。

普通、こういう非日常系の巻き込み系キャラクターは、巻き込まれる側に説明する役割を担っていることが多いと思うのですが、『金色のガッシュ!!』の場合は謎を提示するだけして答えは知らないというところに導入の面白さがあります。

そして、ガッシュというキャラクターは良くも悪くも素直で真摯なんです。

だからこそ清麿の父親に頼まれた「清麿を鍛えなおす」という目的のために、学校だけではなくガッシュも拒絶しようとする清麿にただただぶつかっていくことができた。

そして、その結果が・・

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(「金色のガッシュ!!」1話より)

個人的には平成の漫画作品の中でも最高峰だと思うバディの誕生に繋がったわけですね。

電撃を口から出す能力や赤い本などの謎を膨らませつつ、魔物の王様を巡る戦いのことすら知らない状態で清麿・ガッシュというコンビができあがった感じになっているのが熱いところですね。

魔物の王様を巡る戦いの中で名コンビぶりを発揮していくことになる2人ですが、魔物の王様を巡る戦いなど関係なくても良いコンビになっていたのではないかというところを想像させますね。

悪用される力

金色のガッシュ!!』に限らず、突然大きな力を手にするパターンのフィクション作品に触れた後、もしも自分がこんな力を手に入れたらと想像したことの一度や二度は誰にでもあるのではないでしょうか?

そして、そんな想像の中には悪い想像も大なり小なり含まれるのではないかと思います。

積極的に悪用する感じではなくても、ムカつく奴を酷い目に遭わせてやれとか、誤解を恐れずに言えばその程度のことなら僕も考えてしまったことはあるかもしれません。

金色のガッシュ!!』に登場するキャラクターは終盤になるほど敵ではあっても何か信念めいたものを持っているキャラクターが増えてきますが、序盤はそういう大きな力に溺れてしまっているようなキャラクターが多かったりします。

「こいつは、オレの夢を叶えてくれる道具なんだぜ!!」

思い通りにいかない世の中に復讐し、私利私欲を肥やす者。

「チッ・・ダメじゃねーか・・。みんな、しっかり逃げてくんねーと・・。オレたちのトレーニングになちゃしねえ」

面白がって周囲の人間を犠牲にトレーニングする者。

そんな魔物と人間のペアが、清麿・ガッシュのコンビが最初に相手をする敵となります。

面白いのはそんな敵の相手をしたからこそ、清麿とガッシュの正義の部分というか、一本芯の通った部分が浮き彫りになってきているというところでしょうか?

魔物の王様

金色のガッシュ!!』に登場する魔物と人間のペアは、前述したような悪人ばかりではありません。

清麿とガッシュとは敵対関係にあるので一見すると悪に見えることはあっても、実はそれぞれの信念を持っているだけで悪ではないようなキャラクターもいます。

シェリーとブラゴのペアなんてまさにそんな感じですよね。

初登場時のブラゴの悪役っぷりはなかなか半端ではありませんが、『金色のガッシュ!!』を最後まで読んだ人ならブラゴもまた魔物の王の風格を持つキャラクターなのだということが分かると思います。

そして、ガッシュが記憶喪失だったことで断片的に少しずつしか情報を得られなかった清麿に、魔物の王様を巡る戦いについて説明したのがシェリーとなります。

「そう・・この魔物の子供達は、この人間界で最後の一人になるまで戦い・・互いの本を燃やしあう・・」

いわゆるバトルロイヤルですね。

そして、シェリーはガッシュの赤い本を渡すように清麿を脅します。

現時点では圧倒的に力量差のある相手に、しかし赤い本を渡すことはガッシュが消えることを意味するので屈しない清麿。

現時点では語られていないもののシェリーにもまた譲れない戦う理由があるので、そんな清麿が諦めるまで攻撃の手をゆるめません。

「いいではないか!? 「人より優れている」で!!! 化け物だけではつらすぎるではないか!!? 私は・・私は化け物なりに前を向こうとしたのではないか!!!」

記憶喪失のガッシュは恐らく自分のことを人間だと思っていたはずです。

しかし、自分は口から電撃が出る化け物だと知って、人知れず苦しんでいました。

そんなガッシュの苦悩を知ったからこそ、清麿はシェリーに対して引くことができなかったのかもしれませんね。

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(「金色のガッシュ!!」10話より)

金色のガッシュ!!』は魔物と人間のペア同士の戦いが描かれた漫画ですが、このガッシュペアとブラゴペアの初対峙は、攻撃しているのはブラゴなんですけど清麿とシェリーの意地の張り合いというか、人間同士の戦いになっている所が面白いですね。

人間の身でありながらガッシュを想ってブラゴという強キャラの攻撃に耐え続ける清麿には胸が熱くなりますね。

やさしい王様

金色のガッシュ!!』の16話から18話。

この3話が清麿・ガッシュペアの目標が定まった、ある意味では『金色のガッシュ!!』の始まりとも言えるエピソードだと思います。

相手が魔物だろうが人間だろうが傷つけてしまうことを忌避する魔物であるコルルは、コルルを妹のように可愛がるしおりを姉のように慕っていました。

しおり・コルルのペアは、その性格的に積極的に魔物の王様を巡る戦いには参加していくことはなさそうな様子でしたが、どうやらコルルのように戦う意思の弱い子供には別の人格が植え付けられ、強制的に戦闘させられるようになってしまっているようです。

それでも本の力を使わなければ問題無いようですが、しおりはコルルのピンチに本の力を使ってしまいます。

その結果、清麿・ガッシュペアとの戦闘になってしまうのですが、涙を流しながら戦いたくないのに戦うしおり・コルルペアを見て、ガッシュは攻撃せずに耐え忍びます。

結果、コルルは元に戻るのですが・・

ガッシュ! 燃やして! この本を燃やすの!!」

自分の意志に反して戦い、その爪痕を目撃したコルル。しおりにまで怪我をさせてしまったコルルは、自ら魔物の王様を巡る戦いからのドロップアプトを宣言します。

しかし、それはコルルが消えてしまうこと。つまりは別れを意味するのですが、戦いたくない者にとって無理やり戦わされ、挙句の果てに大事な人を傷つける結果になるのは耐え難かったのかもしれませんね。

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(「金色のガッシュ!!」18話より)

ガッシュは何とか思いとどまらせようとしますが、清麿が哀しみと怒りの混じったような涙を浮かべながら泥をかぶることになります。

一見すると清麿は、ガッシュやしおりといったコルルが消えることを拒むキャラクターの言葉を無視して勝手に本を燃やしたような形になるのですが、ガッシュやしおりにコルルが消える決断をさせなかったところに清麿の優しさが見え隠れしていますね。

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(「金色のガッシュ!!」18話より)

そして、別れの間際にコルルの言った「やさしい王様がいてくれたら・・」というセリフこそが、清麿・ガッシュペアの魔物の王様を巡る戦いにおけるモチベーション、そして目的になっていきます。

やさしい王様という何ともシンプルなキーワードが、『金色のガッシュ!!』という作品を語る上で絶対に外せない重要な言葉だというのが興味深いですね。

今後、やさしい王様というキーワードは何度も登場することになるのですが、その度にコルルのことが思い出されるということもあって、個人的にこの18話こそが『金色のガッシュ!!』の中でもトップクラスに印象的に残っています。

何度読んでも涙なしにはいられない名シーンですね。 

オマケページ(ガッシュカフェ)

金色のガッシュ!!』の完全版は電子書籍Kindle)限定の商品です。

基本的には文庫版と同様の内容ですが、ガッシュカフェというオマケページが付いている所が魅力です。

実は、僕は文庫版を全巻持っているのですが、ガッシュカフェ目的で完全版も全巻購入してしまいました。(笑)

作中ではあまり絡みの無い魔物同士の掛け合いなんかが見られるだけで、正直大満足です。

そして、1巻のガッシュカフェはガッシュとゴフレがゲストとなります。

「ゴフレってどんな魔物だっけ?」と思いましたが、ブラゴが初登場した際にガッシュに擦り寄ってきていた犬ですね。

犬なのにいきなり喋りだしてビックリしますが、確かに本編中でも狂暴化した時に喋っているんですよね。(笑)

本編でゴフレが清麿に攻撃した時のことを引き合いに出して、攻撃を受けた清麿のリアクションの面白さに言及するというメタいネタが地味に面白かったです。

総括

いかがでしたでしょうか?

実はこうして過去作品の全巻レビューをする時、今まで他作品のレビューでは単行本の巻数ベースで書いてきましたが、今回は完全版をベースにしています。

なぜか?

理由は2つあって、1つは完全版に収録されているオマケページ(ガッシュカフェ)が面白かったので、そこについても触れていきたいと思ったこと。

そして、ガッシュが「やさしい王様」を目指すという『金色のガッシュ!!』という作品における原点となるコルルのエピソードまでが最初の1冊に収録されていてキリが良かったことがあります。

その甲斐もあって1巻目のレビュー記事はかなりノッて書くことができました。(笑)

王様を目指す戦いの中の敵でありながらも仲間となるキャンチョメペアやティオペアといったところが登場する次巻も楽しみですね。(次巻のレビューはこちら

『幸せカナコの殺し屋生活(1)』凄くライトな殺し屋漫画の感想(ネタバレ注意)

 

殺し屋が登場するフィクション作品は数多いですが、こんなにライトな殺し屋が主人公を張っている作品は幸せカナコの殺し屋生活くらいなのではないでしょうか?

ブラック企業から退職しての転職先のホワイト企業がまさかの殺し屋さんって展開は、なかなか風刺に富んでいるような気もしますね。

当然、殺し屋さんって犯罪なのですが、ブラック企業よりホワイトな印象に描かれているのが興味深いです。

幸せカナコの殺し屋生活の主人公はタイトルから分かる通り殺し屋のカナコなのですが、ポンポン軽い感じで人を殺していくわりには、人を痛めつけたり追い詰めたり、それこそ人が死ぬシーンなどが描かれているわけではないので、そういう作品が苦手な人でもライトに楽しみやすいギャグ漫画になっています。

フルカラーで描かれるちょっとドジな殺し屋・西野カナコの活躍が楽しい四コマ漫画です。

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本作の概要

主人公の西野カナコはブラックすぎる職場から退職したOLさんです。

そして再就職のために面接を受けた企業は、なんと殺し屋さんでした。

最初は逃げ出そうとしますが、意外にもホワイトな待遇にまさかの殺し屋としての才能に、なし崩し的に転職してしまいました。

本作の見所

ホワイトな殺し屋さん

平成の後半になり、ブラック企業という言葉を聞くことがとても増えました。

過労死などの社会問題に対して世間が敏感になってきたこともあり、最近では随分と改善傾向にあるものの未だにブラックな常識がまかり通っているような企業はあるようですね。

幸せカナコの殺し屋生活の主人公・西野カナコはそんなブラック企業に勤めるOL・・だったけど辞めて転職活動をしていました。

「おい、うち殺し屋だぞ? お前人殺せんのか?」

パワハラで病んでいたカナコは知らず知らずの内に殺し屋さんで面接を受けていました。

どうやら・・というか当たり前ですが普通に募集を出していたわけではないようで、そこにたどり着いているだけで殺し屋としての素質があると判断されているようですが、さすがにカナコは引き気味で逃げようと考えるのですが・・

「うちは初任給60万円から。勤務時間は10~19時、土日休み。昔は複利厚生も無かったが・・今は完備。時代だな」

しかし、これだけ聞いたらとてつもなく魅力的なホワイト企業

ホワイトすぎて怪しすぎるまである・・って殺し屋さんなんだから当然か。(笑)

殺し屋の才能

入社テストはカナコの前の会社の上司を撃つこと。

「ムリムリムリムリカタツムリ!! 私に人殺しなんて!! 確かに前の上司は私を奴隷みたいに扱っては何かあるたびに罵声を浴びせたり体に触ったりするクズ野郎だったけど。あー!! 指が勝手にー☆」

そして、その内心とは裏腹に引き金を引く指は軽い。

初めての殺しに気分が悪くなっているのかと思いきや、人を殺して飲むお酒が美味しいと宣い、なんの訓練もしていないのに銃を扱え、気配を殺す技術にも長けているカナコは殺しの天才というように認定されました。

やったことのないものに対して、実は才能があるなんてことは誰にでも可能性のあることであって、前向きな理由で転職なんてする人なんかはそういうものを探していたりするのだと思いますが、まさか殺しの才能とはって感じですね。

人には言えない

殺し屋さんとはいえ超ホワイト企業

最初は抵抗がありそうだったのに、むしろ積極的に殺しに勤しもうとするカナコは本当に殺しの才能があるのでしょうね。

かなり幸せそうに見えますが・・

その仕事を友人や親に話すことはできません。

現代社会において、どんな仕事をしているのかはその人を示す最も大きなバロメーターのひとつになります。

それを人に言えないっていうのは、今は色々誤魔化せて幸せでも後々に響いてきそうな気もしますよね。

目立つ殺し屋

裏社会では”K"という凄腕の殺し屋の存在が噂され始めているようですが、どうやらそれはカナコのことらしいです。

カナコはそれを喜んでいますが・・

「殺し屋が目立ってどうすんだ。社長はカンカンだぞ」

ですよね~

そんな展開は予感していました。(笑)

「西野、お前は伝説になれ」

しかし、この展開は予想できませんでしたね。

怒りを通り越して、リスクがあってもカナコの成長が楽しみというように不愛想な社長は思うようになったようです。

いや、殺し屋の中でも外れた存在って物語的には格好良いって思ってしまいますけど、幸せカナコの殺し屋生活はギャグだからなぁ~(笑)

警察の手

カナコが前の会社の上司を射殺した件は、射撃の後を誤魔化すように頭がつぶれた飛び降り自殺に見せかけられているようですが、それを疑っている刑事が今巻ラストに登場しました。

しかも、どうやらカナコには一目惚れしてしまった模様。

恋する刑事と焦るカナコと、どんな展開になっていくのか面白そうなところだと思います。

総括

いかがでしたでしょうか?

殺し屋というギャグにするにはなかなか不謹慎なテーマを取り扱っている漫画ですが、不謹慎ではあっても面白いと思ってしまったので、こうしてレビュー記事を書いています。(笑)

ブラック企業には耐え切れずに退社してしまったのにホワイトな殺し屋さんで幸せを掴むという、ブラック企業に対する「殺し屋以下なんじゃね?」って警鐘が含まれていそうな所が不謹慎だけど面白かったと思います。

『フルーツバスケット(23)』全編アニメ化記念に全巻レビューします

 

未来へと踏み出す最終巻の感想です。(前巻のレビューはこちら

十二支の呪いに縛られた草摩一族を描いた『フルーツバスケット』という作品もこれで最後です。

前巻までで十二支の呪いは完全に解けて、クライマックスの最終巻では新たな一歩というか、「これから」を匂わせるようなエピソードが描かれています。

また、本田今日子の最後の言葉。「許さないから」に込められた願いが明らかになり、モヤモヤも解消されることだと思います。

僕の場合は、この「許さないから」という言葉は夾の妄想だと勘違いしていたのでモヤモヤはありませんでしたが、このセリフは実際に本田今日子が発言したセリフだったっぽいんですよね。(笑)

だとすれば、それを解決せずには終われませんよね。

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本作の概要

ついに解けた十二支の呪い。

誰もが新しい一歩を踏み出そうとしていて、その一歩を踏み出そうとしているところが描かれています。

そして、十二支の呪いが解けたことが『フルーツバスケット』という作品におけるクライマックスなのだとしたら、その一歩を踏み出そうとしている所がエピローグなのだと思います。

そして、本田透と夾のその後にも注目ですね。

本作の見所

慊人と十二支

慊人が十二支メンバーを集めて、今までのことにけじめをつけようとします。

結論から言うと謝ろうとして誤れなかったのですが、こういう流れも嫌いではありません。

「君達が・・ようやくありのままの姿に戻れた・・ように。僕も・・ありのままの姿に・・戻る。君達は自由だ。・・遅くなったけど今まで・・」

慊人もまた誰よりも縛り付けられていたのだと思われますが、十二支メンバーを縛り付けていたことは事実なので、それに対する謝罪を口にしようとする慊人。

結局謝罪はできませんでしたが、この謝罪することの恐さに立ち向かおうとしていること自体が大きな成長というように思いますね。

保護者同伴デート

フルーツバスケット』という作品は少女漫画にしては恋愛要素薄めですが、終盤はだいぶ少女漫画らしいエピソードも増えてきました。

そして、最後の最後に主人公の本田透を中心とした恋愛的エピソードが描かれることになります。

夾と付き合い始めた本田透は、舞い上がっている感じがして今までと少し印象が違って見えますね。

最初のデートにはと同伴してくる保護者・・というか親友二人。

親友である本田透を取られて夾にちょくちょく意地悪したくなっている感じが青春って感じがします。

また、ちょっとしおらしくなっている珍しい花島咲も見られます。

「連れていってしまうのね・・。いつかは、そうよね。そんな時が来るって知っていたわ。でも・・勝手よ・・」

反射的に夾が誤ってしまいそうになるような様子の花島咲でしたが・・

「今ここで”ママ”って呼んだら許してあげる」

ちゃっかりと外堀を埋めようとしているあたりはさすがですね。(笑)

肉☆天使

由紀が遠い地の大学を受けるという、兄である綾女とも随分と仲良くなった由紀が綾女に部屋探しに行ってもらっているという微笑ましいエピソードですがお約束的なエピソードが面白い。

真鍋翔の彼女である中尾小牧は「肉☆天使」と呼ばれていますが、中尾小牧はそもそも今までに1回しか登場していないし、当然「肉☆天使」のエピソードも一度しか語られていません。

なのにお約束として定番化しているように見えるのが面白いです。

倉伎真知が土産に持ってきた肉に喜び、倉伎真知を怒らせた真鍋翔が肉をクッションに殴られたら・・

「お肉がー!!!」

彼氏である真鍋翔よりもお肉を心配する。(笑)

こういう一貫性のある特性ってたいてい面白いですよね?

ちなみに、この「肉☆天使」ネタは続編漫画であるフルーツバスケットanotherでもちょっとだけネタにされています。

夾と本田透の進路

遠くに行くのは由紀だけではありません。

夾もまたいずれは師匠の道場を継ぐために、遠くにある師匠の知り合いの道場に働きながら通おうというのです。

そして、そこに就職活動をしていた本田透に一緒に来て欲しいと声を掛けます。

「おまえを好いてる奴らとひき離すことになるって、勝手だって、わかってる。でも俺もう、自分を誤魔化す生き方は・・」

周囲のキャラクターはみんな本田透が夾とともに歩いていくことを悟っていましたが、それが文字通りの意味になってきました。

しかし、以前までの夾であれば本田透を連れて行こうとはしなかったでしょうし、そもそも積極的に自分の将来を見据えた行動を起こそうともしなかったであろうことを思うと感慨深いものがありますね。

許さないから

死の間際、夾に向かって「許さないから」と言った本田今日子ですが、十二支の呪いも解けた今この言葉の真意こそが最後の謎だったのだと思われます。

「ひとつだけ夾君に意見します。お母さんは夾君を恨んでなどいません。もし本当に許さないと言ったのだとしてもそれは、憎しみから生まれたことばなどではありません。絶対、絶対です」

意外と頑固で譲れないことは絶対に譲らない性格だと自覚している本田透は、一つだけと夾に意見します。

もちろん、さすがに夾と本田今日子に接点があったことすら知らなかった本田透には本田今日子の真意は分からないはずです。

しかし、真意は分からずとも信じてはいるようで、そしてその信頼は間違っていなかったようです。

本田今日子の「許さないから」の意味は、正確には本田透を守ってくれないと、今度こそ見つけ出してくれないと「許さない」という意味で、一人孤独になってしまう本田透を思っての言葉でした。

つまり、事故死を夾のせいだとは露ほども思っていなかったのですね。

エピローグでも手をつなぐ

これで本当に本当のエンディングですね。

こういう漫画のエンディングって、何年後かの日常が描かれていたりするのはよくあることだと思いますが、よくあるケースとしては小さな子供がいて新しい家族ができているくらいの未来が描かれていることが多いような気がします。

しかし、『フルーツバスケット』では本田透と夾がおばあさんとおじいさんになって、孫までいるところが描かれています。

ここまでの未来が描かれているのはちょっと稀ですよね?

恐らく、変化していくことをずっと描いていた『フルーツバスケット』ですが、変化しないものもあるってことを言いたかったのではないかと思います。

夾の告白時、本田透は「手をつないで一緒に」という表現を使っています。

夾の告白後にはしばしば手をつないでいる描写が見られるようになりました。

そして、このエピローグでは年を取った2人が変わらずに手をつないで歩いている後ろ姿が描かれています。

変化していくことを描いていた作品で、最後には変化しないものを描くっていうのが何だか面白いと思いました。

総括

いかがでしたでしょうか?

最終巻の表紙を本田今日子が飾っているのも何だか感慨深いですよね。

思えば『フルーツバスケット』は本田今日子が事故死したその後から始まる物語になっています。

であるにも関わらず、最初から最後まで物語の中心というか、根幹にいた本田今日子というキャラクターは本当に特殊だったと思います。

故人が物語を動かすなんて言うと大げさなのかもしれませんが、『フルーツバスケット』という作品には確かにそういう印象もありましたよね?

暗くて重いところも多い作品で、実のところ個人的には好きなタイプの作品なのかと問われたら微妙なところなのですが、それなのに『フルーツバスケット』の場合はほわッと気持ちが温かくなるところもあって最後まで楽しんで読むことができました。

さて、これで過去作品の全巻レビューシリーズが一つ終わってしまったので、次からはまた別の作品のレビューを書いていきたいと思っています。

フルーツバスケット』は温かい作品でしたが、次はThe少年漫画って感じの熱い作品にしようかなぁと思っています。

『透明の君(2)』2巻でちょっと化けた漫画の感想(ネタバレ注意)

 

透明の君の1巻を読んだ時、正直なところ微妙な感想を持っていました。

面白くはあるけど、後半の超展開を読んだ瞬間にちょっと萎えてしまったところがあったのですよ。

なのでレビュー記事だって書こうとしていませんでした。

あの展開の後、一体どう物語を進行させるのかには少しだけ興味があったので2巻も読むだけ読んでみようと読んでみたわけなのですが・・

「あっ、これ面白い」って思いなおすことになりました。

1巻のラストがかなり賛否ありそうな感じだったので、1巻で切ってしまったような人も少なくないのではないかと思いますが、2巻で結構化けた感じがするので、もう少し先まで読んでみても良いかもしれませんよ?

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本作の概要

主人公の日野正太を救った立花光里でしたが、夏休みが終わると日野正太以外の人物から立花光里が消え去っていました。

日野正太は必至で立花光里を探し、そして見つけますが・・

なんと立花光里はAIの人格と入れ替わっていました。

要は体だけ残した自殺のようなものですが、天真爛漫に見えた立花光里がなんでAIの人格と入れ替えることを選択してしまったのか?

それを探っていくような内容の漫画になっています。

本作の見所

AIの人格

立花光里の中にあるAIの人格がなかなか興味深いですね。

前巻の時点では日野正太に対して協力的ではあるものの冷たい機械的な印象を受けましたが、どうもそれだけではなさそうな感じです。

立花光里のようにこの世から消えたくてAIと人格が入れ替わっている人は結構存在しているらしく、ということは考えてみれば当たり前ですが意外と感情豊かで、自分の体の持ち主である立花光里のことを知りたいと思っていたりもするようですね。

「3ヵ月以内に立花様の人格を元に戻さないと、もう二度と立花様はこの世に帰って来ません」

恐らくですが、透明の君は立花光里の人格を取り戻す3ヵ月の物語って感じになるのだと推測されます。

主人公である日野正太の目的が立花光里との再会なわけですからね。

しかし、そんな中において立花光里の中にあるAIの人格がかなり人間的なものであることが明らかになっていく。

笑ったり泣いたり感情的なところもあり、立花光里ではないというだけで彼女もちゃんとした人格なんですよね。

「もし立花様の人格が戻った場合、私はどうなるのでしょうか・・?」

不安というよりは純粋な疑問という感じでのセリフですが、この辺が後に本物の不安や葛藤に繋がっていくんだろうなぁと想像されます。

立花光里を探る

探していた立花光里が見つかったと思ったら中身はAIの人格だった。

そんな状況に混乱しつつも、立花光里の元の人格を求めて動き出すあたり、日野正太はさすが主人公って感じですね。

しかし、誰もが立花光里のことを忘れてしまっている中、AIの人格という手掛かりがいるとはいえ、かなりの手探りの状況であることは間違いなさそうです。

そんな中で、どうやら立花光里のことを覚えているらしい立花光里の従姉妹・杉山陽優と、覚えているらしい様子なのに覚えていないと言い張る陽優の母親と出会います。

立花光里のことを探ることの延長線上に立花光里の人格を取り戻す手掛かりがあるのかは定かではありませんが、なんで立花光里がこんな自殺のようなことをしたのか、その理由をまずは探ろうってことなのかもしれませんね。

立花光里の母親

「日野さんは杉山家に近づけませんし・・彼女が何かを隠してるとしたら、私の前では新しい反応を見せるかもしれません」

明らかに陽優の母親が何かを知っている様子だが、日野正太は既に陽優の母親に警戒されているので近付きづらいですが、中身が別人格のAIとはいえ確かに立花光里が目の前に姿を現したら何か反応を見せるかもしれないという考えですね。

そして、その考えは正しくて陽優の母親はある反応を見せるのですが、それがまた予想外の方向の反応でした。

「奇跡だと思った・・! 光里を産んだことすごく後悔してたから・・!!」

陽優は立花光里の従姉妹ということですが、その母親が立花光里の実の母親?

なんとも複雑なところですが、この母親はどうも立花光里のことを疎ましく思っていたようです。

何故か誰もが忘れてしまっていることを好都合に捉えているとんでもない母親で、目の前に現れた立花光里にも赤の他人として二度と関わらないことを約束させようとし、それを拒むのであれば殺すと脅します。

何とも自分勝手な母親ですが、一応立花光里・・というよりその中にいるAIの人格はその約束を飲むことにします。

また、最後に父親である立花賢哉の存在も仄めかされていますが、母親が思わせぶりなことを言っていたので、ここにも何か立花光里の人格を取り戻す手掛かりがあるのかもしれませんね。

「・・今日あなたに会ったのが、立花光里じゃなくて良かった」

そして、立花光里の中にあるAIの人格の放った捨て台詞がこれです。

この人格は立花光里とは別人ではあると思うのですが、この人格そのものの性格なのか、体が立花光里だからなのか、実は立花光里の人格が元になっていたりするのか、などなど色々と想像できますが、立花光里の母親の言動に涙を流すくらいに感情が乱されています。

それもまた興味深いところですよね。

日野正太の両親

1巻の時点から主人公の日野正太は、両親から過度の期待・・を通り越した虐待を受けていました。

両親との間に問題がある主人公に対して、どうやらヒロインの立花光里はもっと複雑そうな家庭に育った可能性が出てきたのは何かしらの符号でしょうか?

SF的な作品ではありますが、こういう複雑な家庭内の問題について触れていこうとしている作品なのかもしれませんね。

そして、立花光里のために両親に嘘を付いていた日野正太は今まで以上に人格を否定されるような虐待を受けることになり、家出して立花光里の元にやってくることになります。

立花光里の人格を取り戻すためには、自らを縛り付けようとする両親が大きな障害となる日野正太ですが、この両親との間の問題がどうなっていくのかも興味深いところですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

なんとなく今後の展開も見え始めている感じもしますが、本作品では意外と多くの問題が語られています。

立花さんの意図が最大の謎であることは間違いありませんが、主人公の家庭内の問題や、立花さんの母親の抱えている問題。

それに立花さんの中に存在するAIの正体や、立花さんが戻ってきた場合にどうなってしまうのかなど、気になるところは山積みです。

これは続巻も読んでいきたいと思います。

 

『フルーツバスケット(22)』全編アニメ化記念に全巻レビューします

 

十二支の呪いが完全に解ける22巻の感想です。(前巻のレビューはこちら

いよいよクライマックスが近づいてきました。

フルーツバスケット』という作品の根幹である十二支の呪いが、ついに全て解けました。

夾が幽閉される予定だった離れが取り壊されることも決定され、本田透に触れた慊人も変化を受け入れ始めます。

そして、非常に気まずい状況になっていた本田透と夾も、本田透の退院時に再会します。

どんな作品でもクライマックスで一気に物語が加速するような印象を受けることが多いですが、まさにそんな加速を感じられる内容になっています。

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本作の概要

全てのキャラクターが前を向き始める。

花島咲の言葉を受けて夾は父親と向き合う決意をし、最後ということもあって花島咲や魚谷ありさの出番が久々に増え、崖から転落した本田透も退院し夾との関係に進展が見られます。

そして、なにより十二支の呪いが全て解けてしまいます。

本作の見所

父親と向き合う夾

フルーツバスケット』に登場するキャラクターは一癖も二癖もある曲者揃いですが、基本的には誰もが善人というか、優しい人間のように感じられます。

十二支と十二支の両親の間には結構色々と確執めいたものがありましたが、例えば子供のことを私物化しているような印象のある由紀の母親ですら、実のところそこまで悪い印象は持っていません。

しかし、夾の父親にだけは最後まで良い印象を持てませんでした。

むしろ、ここに来て悪印象が大きくなった感じがしますね。

多くのキャラクターが変化を受け入れ一歩を踏み出そうとしている中で、夾の父親だけは変わらないという、悪役めいた描かれ方をしています。

一方で花島咲の言葉を受けた夾は、正直なところそんなに気が進む気分ではなかったとは思いますが父親と向き合うことを決意しました。

夾の母親の死を自分のせいだと認めた夾。

実は最初、なんでまた後ろ向きな自分を責めるようなことを言いだしたんだろうと疑問に思いましたが・・

要は、夾は今までそういう都合の悪いことから由紀を悪者にすることで逃げてきていました。

だから、逃げることをやめた夾は一旦はそれと向き合おうとしたということなのだと思います。

しかし、ここで夾も気付いていなかった事実が浮かび上がります。

「おまえなんか産まれたせいで・・っ。おまえなんか産みやがったせいで!!」

夾の父親のセリフ。よく聞くと責めているのは夾だけではなく、夾の母親のことも攻めています。

どうやらそういうことを夾の母親に向けて言ったらしいですね。

だとすれば今まで感じていた違和感のひとつが解消します。

以前、回想の中に登場していた夾の母親は、夾が猫憑きの化け物であるというだけで自殺するようなキャラクターには見えませんでした。

むしろ十二支の親の中では自分の子供を可愛がっている方だと思います。

それなのに自殺してしまったということが何だかちぐはぐに感じられていましたが、夾の父親の方こそが自殺の原因だったのかもしれません。

しかも、恐らくそのことに夾の父親は自覚しているような気がします。

何というか、夾の父親も夾に比べて置いてけぼりなだけで、その性質は夾と似ている部分があるのかもしれませんね。

都合の悪いことを全て由紀のせいにして憎んでいた夾。

都合の悪いことを全て息子のせいにして憎んでいる夾の父親。

そして、夾と由紀はある程度相互理解できる関係になりつつあります。

そう考えると、いつかは夾と夾の父親も理解しあえるようになったりするのかもしれませんね。

花島咲と魚谷ありさ

フルーツバスケット』という作品における花島咲と魚谷ありさの役割は主人公の親友ポジですよね。

だからなのか、作中の序盤にはかなり登場頻度が多かったけど、由紀を始めとした他のメインキャラクターにスポットが当たっていた中盤にはあまり登場していませんでした。

なので終盤になって出番が増えて嬉しい限りですね。

特に、以前から言及している通り花島咲は僕が最も好きなキャラクターなので。

それにしても、まさかこの2人が少しとはいえ慊人と絡んでいく展開になるとは思いませんでしたね。(笑)

本田透の入院がキッカケだったわけですが、ともあれ魚谷ありさは紅野のことを慊人と話すことになり、また紅野との再会を果たすキッカケにもなって良かったですね。

「貴女・・女性ね・・? クレノさんが・・側に居てあげなくてはいけない存在が・・いると言っていたその存在は・・貴女ね・・?」

そして、花島咲の聡い部分はさすがですね。

漫画的な表現では分かりづらいですが、慊人の男装はかなり完璧に近いものだったはずです。

何と言っても、付き合いの長い十二支メンバーですら、その多くが現時点でも気付いていないことに初対面で気付いたわけですから。

「もう帰るの? あーちゃん・・」

「その呼び方はやめてくれと・・言った・・」

そして、何故か夾の師匠の家にいる花島咲と、夾が幽閉されるはずだった離れが取り壊されることを言いに来た慊人のやり取りが面白いですね。

慊人のキャラクター性って、基本的にはどんなキャラクターに対してもそこまで変わらないような性質のイメージがあるんですけど、あまりにも独特な花島咲との関係性でいえば自分勝手で癇癪持ちな性格を保てないようです。(笑)

そして、それこそが花島咲というキャラクターの面白さなのかもしれません。

あまりにも独特だから、絡みのあるキャラクターの意外な一面を引き出してくれそうというか、そんな感じ?

最後までそういう部分を見せてくれて良かったです。

退院と再会

本田透が退院する日に会いに行く夾。

一度は拒絶しようとした自分が本当に受け入れられるのか?

そもそも自分は本田透が好きなのか?

そんなことをモヤモヤと考えながら本田透を見た瞬間、夾は何をモヤモヤしていたのかが分からないくらいアッサリと本田透が好きなのだと自覚します。

「いや、もうマジにすっげぇ逃げっぷりだぁ・・」

しかし、かつてないほど機敏に、脱兎のごとく逃げ出す本田透。(笑)

「これ以上、幻滅されたくないのに」

その後、本田透の入院時の回想が始まりますが、どうやら夾にふられたと思っている本田透は、再会した時には笑って変わらない自分を見せて夾を困らせないようにしようと考えていたようですが、それができそうになくて逃げだしたようですね。

むしろ、そのことで夾が困ってしまっているのが傍目には微笑ましくも面白いですけど。

「・・おまえと一緒にいたい・・っ」

ともあれ、夾から改めて本田透に告白します。

そういえば最初は本田透の方から夾に告白しようとしていて、そのつもりが無かったとしてもその機先を制してふった形になっていた側からの再度の告白ということになります。

考えれば考えるほどに酷い状況ですが・・

本田透は嬉しそうですね。

由紀が、退院したら本田透は夾にものになるのだから退院するまではみんなの本田透にするみたいなことを言っていたので、傍目には明らかに成功する告白だったのかもしれませんけど。

「となりにいてもいいって・・ことですか・・? 手をつないで一緒にいてもいいって」

そして、この「手をつないで一緒に」ってセリフは次巻の最後まで覚えておいて欲しいです。

解ける十二支の呪い

十二支の呪いがついに全て解けていきますが、何故ここまで一気に解けたのか?

紫呉の言うように、もう十二支の絆の呪いは破綻しているからなのでしょうけど、紅野の呪いが解け、紅葉と燈路の呪いが解け・・

その呪いの解け方はまだ緩やかだったのに一気に解けた。

「・・僕は”僕”の・・人生、始めても。つらくて、こわくて。・・なんの取り柄も無いけど・・っ」

やはり、慊人が自ら十二支との絆に対して決別して、自分自身の道を歩き始めることを決意したことが、一気に十二支の呪いが解けたキッカケだったのでしょうね。

総括

いかがでしたでしょうか?

フルーツバスケット』も残すところあと一冊です。

後ろ向きな性格のキャラクターの多い作品ですが、メインキャラクターの全てが違和感なく前を向き始めているというのが凄いですよね。

しかし、まだ全てが終わったわけではありません。

実は、22巻まででほとんどが語りつくされている感じがするので、初めて『フルーツバスケット』を読んだ時は後日談というか、エピローグ的な話が描かれているものだと想像していました。

基本的には何人かのキャラクターがどのように歩み始めたのかということが描かれていエピローグ的なエピソードではあるのですが、本田今日子の最後のセリフ。夾に向かって放たれた「許さない」の言葉の本当の意味が補足されています。

僕はこのセリフ、最終巻を読むまでは夾の作り出した幻影なのかと思っていましたが実は実際に放たれたセリフだったのですね。

そんな気になる伏線を残した『フルーツバスケット』。

最後まで目を離せませんね。(次巻のレビューはこちら

『MoMo -the blood taker-(1)』作風はガラリと変わったけど魅力的な漫画の感想(ネタバレ注意)

 

杉戸アキラ先生といえばボクガールを描かれている漫画家さんですね。

僕は序盤しか読んだことが無いのですが、女性的な男子が体まで本当に女性になってしまうというSF要素のあるちょっと変わったラブコメという印象でした。

対して最新作のMoMo -the blood taker-は、吸血鬼による怪事件を描いたミステリーというか伝奇的な作品になっていて、前作とは作風・・というかジャンル自体がガラリと変わった印象の漫画になっています。

というか最初ボクガールの作者が描いている最新作だと気付きませんでした。(笑)

特定のジャンルを得意とされている漫画家さんも多いですが、こうして違った雰囲気の作品を描くことで新たなファンを獲得していく漫画家さんも最近は結構多いですよね?

実際、ボクガールがあまり肌に合わずに1巻くらいしか読んでいない僕が、MoMo -the blood taker-のファンにはなってしまいましたからね。

こういうケースでもっとも極端な例だと思われる猫神やおよろずダーウィンズゲームFLIPFLOPs先生の作風の変化が思い出されます。

猟奇的な怪事件と吸血鬼モモの可愛らしさはアンマッチに感じられるのに、それでいて違和感を感じさせないバランス感覚が良いですね。

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本作の概要

バラバラに切断され、全身の血液が抜かれた猟奇的な死体が見つかる猟奇的な怪事件。

その犯行手口になぞらえて犯人は「V」と呼ばれています。

吸血鬼(Vampire)というわけですね。

そして、本作品の主人公である御子神京吾はそんな事件を担当する刑事となります。

いるはずのない吸血鬼ですが、実際に奥さんを二つの顔を持つ吸血鬼に殺害された御子神京吾はその存在を知っていて、長い期間を掛けて対策してきていました。

しかし、そうやって御子神京吾が対策しようとすることすら二つの顔を持つ吸血鬼の掌の上で、御子神京吾はピンチに陥ってしまいます。

そんな御子神京吾を助けたのは見た目幼い少女でした。

本作の見所

怪事件の捜査

同作者の前作ボクガールの雰囲気をイメージして読むとかなりビックリしそうな導入からMoMo -the blood taker-は始まります。

バラバラに切断され、全身の血液が抜き取られ、絡み合うように食卓に並べられた猟奇的な死体。

新人刑事の中宮が吐いてしまうのも頷けますね。

そして、ワイングラスのワインからはルミノール反応があって・・

まるで吸血鬼を彷彿とさせるような犯行手口。

そういうわけで犯人は吸血鬼(Vampire)のイニシャルを取って「V」と呼ばれています。

前作ボクガールとは違う猟奇的で伝奇的なミステリーサスペンスですね。

一応MoMo -the blood taker-という作品の世界観的には吸血鬼なんて伝奇的な怪物は存在しないという現実と同じ世界観なわけですが・・

「バカげた話かと思われるでしょうけど、今のままの捜査方針では、俺は・・犯人にたどり着かないと思ってます」

しかし、新人刑事の中宮は、吸血鬼を彷彿とさせる数々の根拠だけではなく、あまりにも猟奇的な現場を見て人間が犯人であるわけが無いという想いもあり、吸血鬼の存在を示唆します。

「つらいよ。いるはずのないモノを探すのは」

それに対するのは上司の御子神京吾。

元捜査一課の刑事でありながら、駄目なオッサン扱いされてしまうところもある警部補ですが、中宮を諭す言葉には妙に実感がこもっていますね。

「君は、僕のようにはなっちゃいけないんだよ」

明らかに何かを知っている御子神京吾が気になるところですね。

一見すると駄目なオッサンだけど、どこか陰のある部分もある。

こういうの結構格好良いって思ってしまいます。

御子神京吾の過去

御子神京吾の奥さんは10年前に首を切断されて殺害されました。

血が全部吸われてしまっているのは、怪事件の被害者と同じですね。

そして、その現場にいたのは二つの顔がある吸血鬼で、御子神京吾もその吸血鬼と対面しています。

あいつだけは、俺の手で」

つまり、御子神京吾だけは吸血鬼の存在を信じるも何も最初から「知っていた」わけですね。

「あんなものを追いかけるのは俺ひとりで十分なんだよ」

吸血鬼を追いかけている時の御子神京吾は、駄目なオッサンっぽい雰囲気ではなく一人で重荷を背負い込んだ男って感じで格好良いですね。

吸血鬼を察知する道具のようなものも手に入れていたりして、一人で吸血鬼を退治しようと動いています。

そして、人間でありながら吸血鬼を実際に退治したりできていたのですが・・

その現場で因縁の二つの顔を持つ吸血鬼と再会します。

二つの顔を持つ吸血鬼

「ちょうど彼女が死んで10年目になる。待ったかいがあったよ。君を見てると今日は素晴らしい日になりそうだ」

御子神京吾からしてみれば念願の再会という感じですが、二つの顔を持つ吸血鬼の様子を見ると、どうやら御子神京吾の行動のすべてが掌の上だったという感じっぽいですね。

御子神京吾が退治していた吸血鬼はモロイという吸血鬼のなりそこないで、そんな雑魚を退治させることで御子神京吾に自分でも吸血鬼を退治できると勘違いさせる。

その行動の目的は不明ですが、二つの顔を持つ吸血鬼は今まで泳がせていた御子神京吾をここで殺そうとしてしまいます。

しかし、そこで死にかけの御子神京吾は突然現れた少女に助けられました。

モモ・ペルセフォーネ・ドラクリヤと使い魔ダンテ

モモ・ペルセフォーネ・ドラクリヤと名乗る少女は御子神京吾を眷属化することで助けました。

二つの顔を持つ吸血鬼とは見かけ上のイメージがずっと人間に近いですが、モモもまた本物の吸血鬼みたいですね。

そして、二つの顔を持つ吸血鬼の目的と同じくモモの目的も現時点では不明です。

長い時間を生きている吸血鬼でそれっぽく振舞おうとしているのに時折見かけ上の年齢相応っぽい反応を見せる所が可愛らしいキャラクターだと思います。

あと使い魔ダンテは、ビッグフェイスだけどビビりというなかなか愛嬌のある感じで良いですね。

「あれだけもてあそばれて殺されて・・与えられた命をまた無駄にするつもりですか?」

しかし、たとえ吸血鬼の眷属になっても御子神京吾の目的は変わりません。

モモの元から逃げ出して今まで通り刑事を続けますが・・

どうやら体は吸血鬼になっているので血へ渇望からは逃れられないようです。

なかなか強い精神力で耐えようとするものの、なかなか大変そうな状況です。

犯人と今後の展開

御子神京吾がモモの元にいる頃、あらたな怪事件が発生していました。

しかし、これは「V」とは別の犯人がいると想定されていました。

「君なんだろ。やったのは」

そして、その模倣犯については御子神京吾が簡単に突き止めてしまいます。

御子神京吾の同僚の冬樹。

彼もまた吸血鬼になりかけている人間だったようです。

しかし、このエピソードで重要なのは御子神京吾の同僚が吸血鬼だったということではないのだと思います。

恐らく、この冬樹のエピソードでは御子神京吾が将来陥るかもしれな未来を描いていたのだと思われます。

吸血鬼を追いかけつつも、自らが吸血鬼になる恐怖とも戦っていく。

MoMo -the blood taker-はそんな漫画になっていくのではないかと推測します。

総括

いかがでしたでしょうか?

名作になるのか、どこかで見たことのあるような作品に落ち着くのか、それは今後次第というような気がしますが、キャラクターも絵も魅力的なので今後も読んでいきたい作品だと思いました。

吸血鬼がテーマになっているというだけで既にありきたり感があるので、「吸血鬼はもういいや」って遠ざけている人もいるかもしれませんが、そういう人もなかなか面白そうなミステリーになっているので一度読んでみてはいかがでしょうか?

『フルーツバスケット(21)』全編アニメ化記念に全巻レビューします

 

慊人の変化が気になる21巻です。(前巻のレビューはこちら

夾による罪の意識の告白。そして本田透への拒絶から始まる21巻ですが、『フルールバスケット』という作品においても重要そうな様々な変化が一気に起き始めるイメージの内容になっています。

この物語が加速していく感じ。

まさにクライマックスが近付いてきているのが分かりますね。

個人的には大抵の作品において、序盤、クライマックスと並んでこの「物語が動き始める瞬間」が好きなのですが、じわじわとターニングポイントが訪れる『フルーツバスケット』においても、この21巻こそが最大のターニングポイントなのではないかと思います。

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本作の概要

夾による本田透の拒絶。

慊人への本田透の歩み寄り。

そして崖からの転落事故。

今まで噛み合わなかった由紀と夾も互いの想いをぶつけ合い・・

由紀と倉伎真知の関係にも進展が見られます。

本作の見所

幻滅

フルーツバスケット』に登場するキャラクターは、前向きなようでいて実は自分のことを責めるというか、そこまで背負わなくて良いだろうってことを自ら背負いにいくスタイルの人物が多いような気がします。

夾の罪の意識の告白も、あくまでも罪の「意識」であって罪ではないんですよね。

そして、そんな罪の意識から逃げるために由紀を自分にとっての絶対的な悪者として精神安定を図っていたようです。

それすらも罪の意識となって、誰からも許されたくないって想いに苛まれている不器用な夾は、もちろん本田透からも許されたくありません。

しかし・・

「許しません。そう言わないといけないんですか・・?」

全巻通してほとんど・・というか全く怒りの感情を見せることの無かった本田透ですが、ここで初めて少し怒ったような表情を見せます。

からしたら本田今日子の死に対する罪の意識から逃げるような精神状態の時に本田透と出会い、まるで「忘れさせない」「許さない」と言われているような気持ちになっているところでしょうが、それは実際問題巡り合わせが悪かっただけでしかありません。

そして、本田透からしたら本田今日子はそんなことで夾を責めるような人間ではなく、本田透の夾への想いだって否定をするような人間ではありません。

「もしも本当にそう言ったのだとしたら・・っ、私・・私はお母さんに反抗せざるをえません・・!!」

本田透のセリフは実際の母親に対するものではなく、夾の中にある本田今日子像に対しては反抗せざるをえないということですよね。

「そんなん・・幻滅だ・・」

夾のこのセリフ。

今まで母親を一番に考えてきた本田透の一貫性の崩れたような発言に対する幻滅なのだと思いますが、よくよく考えるとこの会話は噛み合っていないんですよね。

なぜなら、そもそも本田透のイメージしている本田今日子は実際の母親そのもので、夾のイメージしている本田今日子は自らの罪の意識が作り出した幻影でしかなく、つまりは話題にしている本田今日子という人物自体が全くの別人なのですから。

ともあれ、今まで何だかんだ優しい感じの関係性だった2人にしてはなかなか強烈な喧嘩、決裂となってしまいました。

慊人と本田透

紅野を刺して紫呉宅まで逃げてきた慊人と、夾と喧嘩した直後の本田透が出会います。

この2人の組み合わせ、実はかなり久しぶりですが、何かドキドキしますよね。

「一体何が起きるんだ?」って。

「慊人さんの願う”不変”を否定しておいて、本当は私だって願ってたんです。変わらない想いを、絆を、”不変”を」

慊人と本田透

性格はかなり違いますが、非常に孤独を感じて生きている点。不変を願っている点など、実は共通点が多いんですよね。

「・・人も、想いも、縛れません。それをもう慊人さんも気付いていらっしゃるのでしょう?」

そして、”不変”など無いということに気付き始めた時期も共通している。

夾への想いに対して止まらない勇気を持ち始めた本田透に、十二支の呪いが解け始めて焦燥する慊人。

状況こそ全く違いますが、不変を願っていたのに変わり始めている。

だからこそ本田透は慊人の上からでも遠くからでもなく、隣から語り掛けることができたのだと思われます。

「今さら気づいたって・・! 恐い・・恐いよ。愛される保証も無いのに、そんな他人に囲まれて生きてなんかいけない」

慊人の反応はかなり極端ですが、本田透も似たような恐さを持っていたのは間違いないと思います。

止まらない「勇気」を持つなんて表現が出てくるのは、恐いと思っていることがあるからですもんね。

崖からの転落事故

踏んだり蹴ったりとはこのことですね。

本田透は崖が崩れて落っこちて言うまでもなく悲惨ですし、慊人にしても自分の隣から語り掛けてくる本田透に心を開きかけたところで、そんな人物が目の前から転落してしまうというショッキングな状況。

というか、本田透は何をそんな危ないところに立ってるんだって話です。

あまり言動の良い印象のない慊人ですが、さすがに大声で助けを求めます。

そして、個人的にはこのシーンを見て初めて慊人の根本的な性質を理解したような気がします。

非常に大人げない人物だとはずっと思っていたことですが、要するに慊人は何も知らない子供なんですよね。

今回大声で助けを呼ぶ様がまさに子供っぽかったので、そう思うようになりました。

思い返せば感情的すぎるところも子供のそれに似ていますよね?

由紀の憤り

孤独なところもある本田透ですが、『フルーツバスケット』のキャラクターは基本的に本田透には甘いというか優しいです。

そんな本田透に「幻滅」とまで言った夾は魚谷ありさに花島咲、それに由紀からも怒られる体になっています。

本田透がタイミング悪く崖から転落してしまったので、それすら夾のせいっぽい空気になってしまっていますね。

そして、魚谷ありさや花島咲の怒りは友人としての素直な怒りですが、由紀の持っている怒りはちょっと毛色の違う興味深いものです。

「・・守ってただろ!!? ちゃんとおまえ、守ってただろ!! ”嬉しい”とか! ”倖せ”だとか!! ちっぽけな事かもしれないけど、ヒーローみたいに超人的な力じゃないかもしれないけど、だけど側にいて本田さん、笑ってただろ・・!?」

夾は鼠の十二支で何でもできる由紀に憧れを持っていて、一方で自分の事は誰からも受け入れられない猫の十二支しとして、十二支だとか何だとかが関係のない場面でも自分のことを卑下する傾向がありました。

しかし、そんな夾の側にいる時こそ本田透は一番倖せそうに笑っている。

それは由紀にはできないことで、自分にできないことをできているのに、そのことに無自覚な夾に苛立っているわけですね。

お互いに憧れあって嫌いあっているという関係が興味深いと思います。

総括

いかがでしたでしょうか?

前巻で本田透が止まらない勇気も持つことになり、十二支の呪いが解け、変化が始まった予感はありましたが、今巻で一気にクライマックスに向かい始めたって感じがしますね。

いよいよ『フルーツバスケット』の終着点が見え始めてきました。(次巻のレビューはこちら

『響け!ユーフォニアム 決意の最終楽章(上)』劇場版公開に合わせて待望の新刊発売!(感想とネタバレ)

 

前巻から約2年。

待ちに待った響け!ユーフォニアムの最新巻が劇場版誓いのフィナーレの公開に合わせて発売しました!

実は、響け!ユーフォニアムのファーストシリーズを読んだ時は、面白いとは思うもののそこまで熱狂するほどではないという感想を持っていました。

しかし、劇場版誓いのフィナーレの原作となる前作波乱の第二楽章があまりにも名作だったため、いつの間にか続編を心待ちにするような気持になっていました。

それだけに今回の新巻発売は、今までの響け!ユーフォニアムシリーズの発売時よりも嬉しく思いました。

ところで、響け!ユーフォニアムという作品はエンターテイメントであってエンターテイメントではない部分がある作品なのだと思います。

吹奏楽に打ち込む青春ものではありますが・・

  1. 新入生の獲得
  2. サンライズフェスティバル(マーチングイベント)
  3. オーディション
  4. 京都府大会
  5. 関西大会
  6. 全国大会

・・というように、どの大会まで勝ち進むのかという違いがあるもののファーストシリーズ も波乱の第二楽章もストーリーの根幹は全く同じですし、読まなくても決意の最終楽章も同じであることは容易に想像がつきます。

しかも、基本的には練習して大会で演奏することの繰り返しでしかない。

そんな風に考えてみると、あまりエンターテイメント性の高い作品だとは思えませんよね?

未読の人にこんな説明をすると響け!ユーフォニアムという作品には興味を持ってもらえないかもしれません。

しかし、既読の人は分かるはず。

響け!ユーフォニアムは明らかに面白い作品であると。

それは何故なのか?

考えてみれば、小笠原晴香が部長だったファーストシリーズと吉川優子が部長だった波乱の第二楽章では、1年間の流れ自体はほとんど同じであるものの描かれている人間関係や問題は全く違うものでした。

その証拠に僕の場合、ファーストシリーズでは「まあ面白い作品」という感想どまりだったのに波乱の第二楽章では「凄い名作!」という感想になっていたりと、ストーリーの根本がほとんど同じであるにも関わらず、それぞれの作品に対する感想は全く別物になっています。

そして、作中の登場人物にとっては重要な大会ですが、実は響け!ユーフォニアムという作品においては実のところそこまで重要ではありません。

もっというと題材が吹奏楽である必要性すらないのかもしれません。

その証拠に京都府大会まで描かれる決意の最終楽章の上巻でしたが、肝心の演奏シーンはカットされています。

北宇治高校吹奏楽部の部員たちは「結果」を重視しています。

しかし、響け!ユーフォニアムという作品は、そんな「結果」を求める登場人物たちの人間関係や青春といった「過程」を描いている作品なのだと思います。

だから演奏シーンは重要ではないし、描かれているのは「結果」を求める人間なのでその題材が吹奏楽である必要も無いし、ストーリーの根本が同じでも違った作品になり、面白く感じられるのだと思います。

そういうわけだから決意の最終楽章も読む前から大体のストーリーは予想できているのに、一体何が起きるんだろうというワクワク感がある。

波乱の第二楽章では頼れる黄前相談所だった黄前久美子が部長を務める新体制の吹奏楽部がどう動いていくのか?

予想通りのストーリーを飽きずに読み進めることができる名作でした。 

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本作の概要

ファーストシーズン時には初々しい新入生だった主人公の黄前久美子も3年生となりました。

黄前久美子が部長を務め、幼馴染の塚本秀一が副部長。そして親友の高坂麗奈がドラムメジャーという新体制で北宇治高校吹奏楽部が始動します。

久石奏は相変わらずで、癖のある新入生も登場し、そして何より気になるのは強豪・清良女子からの転入生でユーフォニアムを担当する黒江真由。

まっさらな新入生ならまだしも3年生でありながら他の部員とは違った価値観を持っていそうな黒江真由の存在が、どのような問題を巻き起こすのかが気になるところですね。

上巻時点では何となく不穏な空気ができ始めていたのみにとどまりますが、下巻で何が起きるのかが楽しみです。

本作の見所

新体制の北宇治高校吹奏楽

黄前久美子を始めとする主人公周りのキャラクターたちが最上級生となり、部長に副部長、ドラムメジャーと責任ある役職を務めるようになりました。

新入生時と2年生時でももちろん大なり小なりの違いはあるのですが、やっぱり責任ある立場から見える景色というものは今までとは違うものです。

だからなのか、主人公・黄前久美子を通して見える北宇治高校吹奏楽部も今までと違って見えます。

そしてそれは視点の違いだけではなく、実際に新体制の北宇治高校吹奏楽部は今までとは違うものになっています。

こういうフィクション作品においては徐々に成績を上げていくサクセスストーリーが常道ですが、波乱の第二楽章ではファーストシーズン時には勝ち進めた全国大会に勝ち進めていませんでした。

それだけに、その悔しさを経験した部員たちはより全国大会金賞に向けて決意を新たにしています。

練習は以前以上に厳しくなり、オーディションも大会ごとにその時点でのベストメンバーを選ぶようになって、上巻では京都府大会のオーディションまででしたが競争も激化しそうな予感です。

まさにサブタイトルの決意の最終楽章の通りですね。

しかし、その熱量やスタンスには立場によって違いがあります。

1年生の頃から顧問の滝の指導を受けていて、滝を神聖視している3年生。

3年生ほど滝を信じられているわけではないが、全国大会に進めなかった同じ悔しさを共有する2年生。

なかなか同じ熱量をぶつけるには神経を使う1年生。

加えて、強豪校から転校してきた3年生。

そんな立場も考えも違う部員たちを取りまとめるのに四苦八苦している黄前久美子が本書の最大の見どころであることは間違いないと思います。

進路の話

黄前久美子も3年生。

部長とはいえ吹奏楽部のことばかりを考えてはいられません。

高坂麗奈のように1年生の頃から自分の進路に明確な親友を側に見て焦りが大きくなってきています。

「人生なんてものは、設計図どおりにはいかないものだ。未来を空想するのもいいが、机上で考えるよりも実際に足を踏み出したほうが得るものが多いこともある。黄前はやや考えすぎるきらいがあるな。それが悪いとは言わないが」

黄前久美子から見た時に、厳格で真面目な印象の副顧問。松本美知恵のセリフです。

黄前久美子は松本美知恵のことをかなり立派な大人だと思っているようで職業もしっかり考えているのだろうと考えていたのでしょうが、松本美知恵が教師になった理由は「安定しているから」という何とも微妙なもの。

高坂麗奈のような明確なビジョンを持って教師になったわけではありません。

意外とそんなもので、どんなに立派に見える人でもそのほとんどの最初の一歩に明確な理由があることは稀なのだと僕も思います。

だけど真面目な人ほど深く考えすぎてしまう。

黄前久美子が陥っている悩みも、まさにそういう考えすぎなんですよね。

ちなみに、僕は小学生の頃には明確なビジョンがありましたよ。

とりあえず大学には進学して先延ばしにするという明確なビジョンがね。(笑)

いずれにしても、黄前久美子が進路に悩んでいるのは事実で、吹奏楽部の部長としての活動とどう両立していくのか。

その辺が下巻でどうなっていくのかが気になるところです。

厳しい練習と新入生

波乱の第二楽章時に新入生だった久石奏ほどの曲者は今回の新入生にはいなさそうな雰囲気です。

今年ことは全国大会金賞を取る。

そんな目標に対する熱量は、どうしても立場によって違ってきます。

特に高坂麗奈による厳しい指導は、1年生たちの精神を蝕んでいきます。

そんなことを言えば高坂麗奈が悪者っぽいですが、高坂麗奈高坂麗奈で必死なのでそこは仕方がないでしょう。

何より全国大会金賞の目標は部員全員で決めたことですからね。

とはいえ、熱量のある部員が耐えられる練習でも、初心者の1年生にはなかなか辛いものです。

今までの黄前久美子はそういう問題に直面したとしても、気にはしつつもそこに責任はありませんでした。

しかし、決意の最終楽章での黄前久美子は部長として責任ある立場です。

今まで以上に内心が穏やかじゃない黄前久美子にも注目ですね。

緊張のオーディション

今回のオーディションは、ファーストシーズンのトランペットソロを巡った波乱や、波乱の第二楽章の久石奏が部内の空気を壊さないように手を抜いた演奏をしてしまったりしたのに比べたら、緊張感はあったものの特に大きな事件が起きたわけではありません。

しかし、先への不安を匂わせるようなオーディションではあったと思います。

チューバのAメンバー。鈴木さつきではなく初心者の釜屋すずめが選ばれたことに吹奏楽部員たちはざわつきます。

実力的に誰もがAメンバーは鈴木さつきなのではないかと思っていたからですね。

ずっと実力主義を謳ってきた北宇治高校吹奏楽部の中でのことなので、黄前久美子の中にも顧問の滝に対する僅かな疑念が生じています。

失礼を承知で直接滝に問いかけたりしているのが疑念を抱いている証拠ですね。

滝の言い分は、確かに技術的には鈴木さつきの方が格上だが、全体のバランスを見た時に大きな音を出せる釜屋すずめの方が良いという判断だったようです。

そういえば高坂麗奈が部員による匿名演奏のオーディションを蹴る理由として全体のバランスを考慮したらやっぱり滝一人に見てもらった方が良いと言っていましたが、まさに高坂麗奈の意図が反映された形でのオーディション結果だったわけですね。

とはいえ、完全実力主義には納得している部員たちですが、合理的な理由があるとはいえ実力通りではないオーディション結果。しかもその理由が説明されているわけではないとあっては、何かしら問題が起きそうな予感がありますね。

川島緑輝の動物に例えるシリーズ

黄前久美子がタヌキに例えられたり、川島緑輝波乱の第二楽章で周囲にいる部員を動物に例えていました。

当たらずとも遠からずなイメージでなかなか面白いのですが、転校生の黒江真由をクラゲに例えたところが示唆に富んでます。

「遠目で見てる分には綺麗でただ流されているようにも見えるけど、うっかり刺されたらピリッと痛い。ほら、真由ちゃんにぴったり!」

この例えは合っていないと黄前久美子は感じているようですが、人の裏側というか、本質を見抜くのに聡い久石奏は「人を良く見ている」と川島緑輝を称賛しています。

確かに、初登場時から普通に良い子に見えるものの独特のマイペースさを持っている黒江真由からは、何かしらの波乱を巻き起こす要因になりそうな気配がプンプンと匂ってきていますね。

黄前久美子も合っていないと言いつつ、節目節目では何かしら黒江真由から感じ取っている様子もあります。

オーディションでソリを勝ち取った黄前久美子でしたが、最初はオーディションの辞退まで考えている風だったのに、次のオーディションに備えてソリパートの練習をしていたり、黄前久美子にとっては心穏やかにいられなさそうな状況になってきているような気がします。

総括

いかがでしたでしょうか?

前書きで散々本書の発売を楽しみにしていたことを語りましたが、実は一方で一つだけ心待ち度を下げる要因が僕にはありました。

というのも、響け!ユーフォニアムという作品において僕が最も好きなキャラクターを3人だけ上げるとしたら、吉川優子、鎧塚みぞれ、中川夏紀となり、つまりは波乱の第二楽章時に3年生だった部員たちになるからです。

「もう卒業しちゃっていないじゃん!」というのが心待ち度を下げていた理由なのですね。

しかし、決意の最終楽章の上巻の読後、やっぱり響け!ユーフォニアムって面白いと素直に思いました。

残念ながら決意の最終楽章の上巻には卒業生たちは登場しませんでしたが、主人公でありながら今までどちらかといえば語り部の主人公よりだった黄前久美子が、まさに主人公らしい立ち位置にいる作品になっていて、「ああこれで最後なんだな」って感じがひしひしと伝わってくるのが興味深かったです。

ファーストシーズンでは高坂麗奈田中あすか

波乱の第二楽章では鎧塚みぞれや久石奏。

そんな物語の中心にいるキャラクターを読者に伝える語り部だった黄前久美子

しかし、決意の最終楽章では完全に物語の中心にいます。

今まで強豪校に育ちつつも上位まで勝ち進むことはなかなかできていない北宇治高校吹奏楽部ですが、決意の最終楽章ではタイトル通り全国大会金賞を目指して今まで以上に自分たちに厳しくなっていて決意めいたものを確かに感じます。

上巻では自信と不安の両方を抱えつつ京都府大会まで勝ち進みました。

まあ、恐らく最後に全国大会で金賞を取ってハッピーエンドという結末は予想されますが、それなのに何が起きるのかというワクワク感があるのが凄いですよね。

そして、できれば僕の好きな卒業生たちに登場してほしいなぁ~という想いもあったりします。(笑)

『フルーツバスケット(20)』全編アニメ化記念に全巻レビューします

 

十二支の呪いが解け始める20巻です。(前巻のレビューはこちら

フルーツバスケット』は全23巻の漫画です。

そう考えると20巻代に突入したことで、いよいよ終盤という感じになってきましたね。

そして、内容的にも佳境に差し掛かっています。

ついに気付いた想いを夾に伝えようと考えた本田透と、それに気づいた夾は人知れず抱いていた後ろめたさを本田透に語り始めます。

また、十二支の呪いも解け始めて、それを拠り所にしていた慊人が今巻ではかなり荒れていますね。

終わりへと向かう始まりと思わせるような内容になっています。

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本作の概要

母親よりも先に夾のことを考えるようになってしまったことにずっと動揺していた本田透でしたが、楽羅に諭されて夾に想いを告げる勇気を持とうとし始めました。

大きく物語が動く瞬間ですが、十二支の呪いの方にも進展があります。

既に紫呉によって「いつか」は解けることが示唆されていましたが、思った以上に早く解け始めるみたいで、今巻では紅葉と燈路。年少組の2人の呪いが解けてしまいました。

十二支の呪いを拠り所にしていた慊人の焦燥が非常に激しくなっていきます。

一方、本田透の想いに気付いた夾は、逆に自分の罪の意識を告白し始めます。

本作の見所

楽羅との喧嘩と本田透の決意

前々巻の依鈴とのやり取り。

十二支の呪いを解きたい想いのスタンスの違いについては、喧嘩と言われていましたが喧嘩というようなものではなかったと思います。

「夾のことをつっつかれるのが嫌で来なかったとか?」

依鈴の指摘はたぶん本田透にとって図星ですよね?

十二支の皆を守りたいという想いは詭弁で、夾には試すようなことを言って、そういう自分が卑怯なのだと本田透は思っているようです。

しかし、その裏側にあった本当の想いを依鈴に伝えるのですが・・

「そういうコトはちゃんと本人に言いなさい!!」

久々に登場する楽羅が横から入ってきますが、まあ確かにもっともなことを言っていますね。

本田透からしたら、まずは気まずくなってしまっていた依鈴と前々巻のやり取りの続きをしたかったってところだと思うのですが、その内容が依鈴からしたら自分に言われてもって感じのものですからね。(笑)

本田透はまだ若干混乱しています。

そして、横入りした楽羅の見た目はちょっと大人っぽくなっていますが、行動は変わっていません。

本田透を引っ叩いたところまではよくある修羅場シーンって感じですが、まさか昏倒させてしまうとは。(笑)

笑い事ではないですけど、ちょっと面白かったです。

そして、喧嘩は両成敗とお互いに謝らなかった本田透と楽羅でしたが、ともあれ楽羅の叱責をキッカケに本田透は止まらない勇気を出すことになったようですね。

解け始める十二支の呪い

今まで酉の十二支である紅野のみが呪いが解けた状態でした。

そして、紫呉の言っていたいずれは勝手に解けると思われた十二支の呪いは意外と早く解け始めます。

前巻で目に見えて大きく成長した紅葉と、紅葉ほどではないにしても身体的な成長の大きい燈路。

十二支の呪いとは無関係なところですが、見かけ上の変化の大きい2人から呪いが解け始めたのが符号っぽく感じてしまいますが、穿ちすぎでしょうかね?

「ボクはもうこんなに自由で、こんなにさびしくなった・・」

そして、呪いが解けた紅葉と慊人のやり取りが非常に興味深いです。

十二支の呪いと言いつつ滅多に動物には変身しなくなっている『フルーツバスケット』ですが、要するに十二支の呪いというのはそもそも動物に変身することそのものではなかったのではないかという風に感じますね。

異性に抱き着かれたり衰弱していたりすると動物に変身する性質はキッカケでしかなく、明らかに普通の人間より生きづらい体質からくる傷の舐めあい。

言い方は悪いですが、十二支の関係というのはそういうことなのだと思っています。

そう考えると十二支の神というのはただの寂しがり屋で、そんな傷の舐めあいの中心にいたいだけの存在なのかもしれませんね。

そう考えると、十二支の呪いが解けるごとに焦燥し、混乱していく慊人の様子にも説明が付くのではないかと思います。

「悪いかよ。それが僕の”常識”だったんだ・・! 今以外の生き方を誰も与えてくれなかったじゃないか!」

しかし、一方で十二支の神。草摩家当主として生まれ育った慊人の方こそ最も呪いに縛られているのかもしれませんね。

夾の告白

楽羅に諭されて夾に思いを告げる決意をした本田透でしたが、機先を制されて夾に告白されてしまいます。

しかし、これは愛の告白ではなく罪の意識の告白でした。

「おまえ俺が好きなのか・・?」

かなり豪胆な切り出し方ですが、夾のキャラクター的には意外な切り出し方でもありますね。

まあ、周囲からはかなり分かりやすいところまできていた2人なので、夾にもかなり確信があったのだと思います。

そして、明らかに本田透に好意を持っていて、しかも本田透からの好意にも気付いていた夾が、それを受け入れようとしない理由は自分が猫の十二支で幽閉される未来が決まっているからなのだと思っていました。

しかし、どうやらそうではなかったようです。

「おまえの・・母親、ホントなら死なずにすんでた・・」

夾と本田今日子に面識があることは以前から語られていた事実ですが、これはどういうことでしょうか?

夾は、自身の罪の意識を告白します。

それは、実は夾は本田今日子が事故に遭う現場にいて、助けようと思ったものの本田今日子を抱きとめたら衆目の前で猫に変身してしまう。

それを恐れて助けるのを躊躇してしまった自分が、本田透の好意を素直に受け入れることができないと思っていたのかもしれませんね。

さて、かなり衝撃の告白ではありますが、それを受けた本田透の感想が気になるところだと思いますが、それは次巻に持ち越しとなります。

総括

いかがでしたでしょうか?

フルーツバスケット』は名作ですが、あまり1巻1巻の終わりで次が気になって仕方のなくなるような類の漫画ではなかったと思います。

しかし、20巻の引きはかなり続きが気になるものですよね?

夾の罪の意識の告白に対して本田透がどう答えるのか。

それに対して夾がどう応じるのか。

とても気になるところです。(次巻のレビューはこちら

『フルーツバスケット(19)』全編アニメ化記念に全巻レビューします

 

本田透と夾が急接近する19巻です。(前巻のレビューはこちら

かなり前から夾に気があることは明らかだったのに、お母さん一筋(?)という感じで今まで恋愛的な意味での感情を表に見せることが少なかった本田透でしたが、今巻くらいからその辺を大きく表に見せることになります。

必然的に夾の出番も増えていますね。

また、真鍋翔の彼女である中尾小牧が登場しますが、小牧と本田透の意外な関係性が明らかになったりと、注目度の高いエピソードが満載です。

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本作の概要

母親のことを忘れないために、母親のことを一番に考えようとしていた本田透ですが、一番大切な人を思い浮かべた時に出てくるのは母親ではなくなってしまっていました。

考えてみれば当然のことで、どうしたって生きている人間を優先するのは普通のことではあるのですが、本田透はそのことでとても葛藤してしまいます。

一方の夾は、本田透の祖父との会話を通して現在の本田透がどのように形成されているのかを少し垣間見ることになります。

本作の見所

本田透の気持ち

十二支の呪いを解きたい本田透ですが、その根本には夾の幽閉の回避、つまり夾と一緒にいたいという想いがあることが徐々にあふれ出してきていますね。

「これからはいつだって、どんな時だって一番に、胸に想うのはお母さんであり続けようと、そうして想い続けていれば、いつまでも色褪せる事はないと信じた」

言い方は悪いですがかなりマザコンの気がある本田透でしたが、そんな風に考えていたのですね。

しかし、今思い浮かぶのは母親ではなく夾になっていた。

今日子に夾と名前も似ていたり、幼少期の境遇も似ているのも何かしらの伏線なのかと思っていましたが、本田透にとって大事な人物になってくるという点でも共通してきましたね。

そして、本田透はそのことを母親に対する裏切りのように感じているのかもしれません。夾への想いを自覚していくほどに自己嫌悪が強まっているような気がします。

当然のように側にいた存在が亡くなってしまったからこそ、そこに確かに存在したことを忘れないように誓ったからこそ、夾への想いで上書きされつつあることに自己嫌悪しているのだと思われます。

しかし、個人的には「考えてみれば当たり前のことなのでは?」って思ってしまいます。

恐らくですが、本田透の誓いの本当の理由は母親が大事だったからなのではなく、自己防衛本能的なものだったのではないかと思うのです。

もちろん母親のことは大事だったのでしょうけど、母親が亡くなった時の本田透が置かれていた状況はかなり孤独なものだったので、その推測はそこまで的を外していないのではないでしょうか?

つまり、母親のためではなく自分のための誓いなので、自己嫌悪する必要性は全くないような気がするんですよね。

むしろ母親以外への想いで母親が薄れることは、それだけ孤独ではなくなったということなので、亡くなった母親にとってもむしろ喜ばしいことだったはずです。

夾と本田透の祖父

夾と本田透の祖父という珍しい組み合わせの会話が興味深いです。

本田透の祖父は、本田透のことを以前から「今日子さん」と呼んでいました。

ぶっちゃくボケているのではないかと思っていましたが、夾と話す時には「今日子さん」と呼びそうになるものの「透さん」と言い直しています。

つまり、別にボケているのではなく「今日子さん」呼びはわざとってことになりますね。

夾に悪趣味ではないかと指摘されていますが、その理由が本田透の誓いと同じなのが興味深いですね。

本田透のためなのか、それとも自分自身のためなのか、いずれにしても本田今日子が確かに存在したことの証としての「今日子さん」呼びなんだとか。

また、更に興味深いのは本田透の独特の口調の理由についても本田透の祖父から語られている点です。

どうやら父親の真似をしているらしいことは、かなり序盤に魚谷ありさの回想で本田今日子によって語られていましたが、口調が移ったとかそういうわけではなくもっと切実な理由があって意図的に真似されたものだったようです。

「お父さんに”にてない”からガッカリしてるの? どうしたらソックリになれる? ソックリになればお母さんげんきになる?」

父親が存在したことの証を母親に示すため。

子供の頃の本田透はそこまで小難しいことは考えていなかったと思いますが、要は失ったものの存在証明が本田透にとっては大事なことだったのだと思います。

「似てないから、口真似をしているだけです・・」

夾にどんな父親だったかと問われて、顔はあまり似ていないけど話し方が似ていると答え、すぐに否定する。

本田透の祖父が話していた通り、かなり父親と似ていないことを気にしているのは間違いなさそうな反応が興味深いですね。

居た堪れない由紀

「そうだ俺・・今日は用事があったんだぁ・・っ。今いきなり思い出したよ。いけないいけない。早急に出掛けないとなぁ・・っ」

由紀には本田透と夾に何があったのかまでは分からないはずですが、妙に異性的な意味で意識しあっている姿を見て居た堪れないような気持になってきているようです。(笑)

クール系のキャラクターの由紀ですが、確かに一つ屋根の下で自分もいるのにこうもどかしい感じのイチャイチャを見せつけられるのはキツイですよね。

「母親と新しい恋人に挟まれた息子の心境というのか」

そういえば以前も本田透に母親を求めていたのかもしれないと自覚していた由紀ですが、なるほど由紀は別に異性的な意味で本田透を慕っているわけではないので、こういう心境になるわけなのですね。

寂しさよりもキツさが上回るとも言っていますが、その表現がこれほどしっくりくる状況も珍しいと思います。

大きくなった紅葉

フルーツバスケット』は名作ですが、序盤と終盤では結構絵柄が変わっている漫画でもあります。

ですが年少のキャラクターが久しぶりに登場すると少しずつ成長している所はうまく描かれていますよね。

しかし、今巻での紅葉の成長はけっこうビックリしますよね。(笑)

相当背が伸びて長身イケメンになっているのにウサギリュックではしゃぐ所は変わっていないギャップが面白いです。

しかし、外見上の変化よりももっと大きな変化が次巻の紅葉には訪れます。

そう考えると、今巻での紅葉の成長は伏線めいても見えてきますね。

由紀のプレゼント

正直なところ今巻においてそんなに重要なエピソードでも無いんですけど、倉伎真知ファンとしては触れておきたい由紀から倉伎真知へのお詫びのプレゼントを渡すエピソード。

何のお詫びかといえば倉伎真知を綾女の家に呼び出して着せ替え人形にしたお詫びなのですが、綾女の家にあったモゲ太の置物に興味を示していた倉伎真知に気付いた由紀がそのモゲ太のペーパーウエイトをプレゼントしているのが憎い所ですね。

「大丈夫! あれは気に入った態度だ!」

そして、かなり分かりづらい倉伎真知の反応から手ごたえを感じている所も、昔の由紀では無さそうな感じで良かったです。

その後、お礼を言いそびれてソワソワしていた倉伎真知が可愛いですね。

それでいて気に入ったと素直に言えないところも。

「仕方ないです。アレは限定品で数自体が少ないんです」

そして、気に入っているかと思いきや実は綾女の店にあったモゲ太のグッズがレアものだと知っているくらい詳しい倉伎真知が意外でしたね。

中尾小牧

生徒会メンバーの真鍋翔は由紀の友人という感じで、他のメインキャラクターと絡むことは稀ですが、実は本田透と間接的に関係がありました。

真鍋翔の彼女の中尾小牧には、本田透と少々因縁があるようですね。

「肉好きなんですってね。さっき翔が肉☆天使・・って」

非常に可愛らしい女子ですが、朝からステーキを食べる肉好きだそうです。

いきなりおかしな紹介をされて怒っているのがちょっと可愛いと思ってしまいました。

そんな状況で、まあ用意していたものは仕方ないですが、夕飯のメニューを聞かれて「焼肉」とは答えづらかったに違いありませんね。(笑)

ちなみに、真鍋翔は由紀のことも家庭の事情で男装している女子なのだと嘘情報を中尾小牧に教えていました。

由紀と実際に会話するまでそれを信じちゃっていたところも良いです。

そんななかなかに魅力的な中尾小牧ですが、実は中尾小牧の父親が起こした事故こそが本田透の母親である本田今日子が亡くなった事故だったのです。

被害者と加害者という違いこそあれ同じ事故で親を亡くした2人。

例え本田透が被害者側の遺族なのだとしても、自分だけが不幸ぶっているような感じがして真鍋翔は気に入らなかったようですね。

この辺、ほんの少し立ち位置が変わっただけで見え方が変わりそうなところですが、僕には真鍋翔側の理屈がちょっと理解できませんでした。

確かに不幸に大小は無いのでしょうけど、第三者でしかない真鍋翔が本田透を責めるようなことを言うのはいかがなものかと感じました。

総括

いかがでしたでしょうか?

中尾小牧が地味に可愛かったですね~

全23巻の『フルーツバスケット』ですが、次巻でいよいよ大台20巻代に突入します。

まだまだ見所満載ですが次巻くらいから物語が大きな佳境に差し掛かっていくので目が離せませんね。(次巻のレビューはこちら

『汝、隣人を×せよ。(2)』意外と殺益申請のバリエーションが豊かな漫画の感想(ネタバレ注意)

 

汝、隣人を×せよ。は一生一殺法というちょっと変わった法律のある世界を描いた作品です。

1巻の発売時にはレビュー記事というよりも、この一生一殺法に対する考察を書いてみましたが、今回は普通にレビュー記事を書いてみようと思っています。

とはいえ、1巻の時点で非常に面白い漫画だと思ったものの、どうしたって1巻を読んだ時の驚きを超えることはない類の漫画だとも思っていたのも事実です。

人が人を殺す申請ができる世の中は興味深くはあるものの、そこにあるパターンって限られているような気がしていたのがその理由ですね。

しかし、2巻でもなかなか考えさせられるシチュエーションが描かれていたのが興味深いところです。

なるほど、こういうケースで人は人を殺そうとするのかってね。

後ろめたいことはできないなぁ~と考えさせられる漫画です。

ちなみに、一生一殺法の詳細は1巻のレビュー記事に纏めていますので、おさらいしたい人は是非こちらをご確認ください。

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本作の概要

一生に一人だけ殺人が許可される権利が与えられる一生一殺法。

申請者の今後の安らかな人生において重大な障害になる人物の殺害を申請することができるのですが、今巻でもなるほどこういうケースで申請したりされたりしてしまうのかと考えさせられるエピソードが4編収録されています。

家庭内暴力エスカレートする息子に、罪悪感を覚えつつも不倫をやめられない男女。過去に娘を殺された父親に児童虐待されている子供を助けたい女性。

いずれも全く異なる状況ですが、殺益申請する理由のすべてが憎悪ではない点が興味深いところですね。

本作の見所

家庭内暴力の息子

もともと優秀だったが、低賃金の単純労働に勤しむ若者を「負け犬」と見下すような性格だった長男。

しかし、自身が受験の失敗をキッカケに自分こそが「負け犬」になってしまい、その鬱憤を家庭内暴力で晴らしていたようです。

それも飼い犬を殺してしまうくらいに酷く、それが両親や妹に及ぶのも時間の問題という感じでした。

「まさか息子を刑事告訴するわけにもいかないし・・」

ですが両親は、そんな風に息子がなってしまったのは自分たちの責任であると思っていて、なかなか断罪できずにいる。

そんな様子を妹の視点から第三者的な視点で捉えられるように描いているのがちょっと興味深いですが、結局のところ父親は未遂に終わったとはいえ自分の手で自分の息子を殺害することで責任を取ろうとしてしまいますし、それを止めた母親は母親で殺益申請を出してしまっていたりしていたようです。

実は、この家庭内暴力の長男は名門校に通う妹を妬んで殺益申請を出していました。

当然受理はされなかったもののそれを知った母親は、なんの罪のない妹にまで殺意を向けてしまうのならと殺益申請を決意したようですね。

前巻の時も思いましたが、執行対象者って大抵自分の罪を認めて本心かどうかはともかくとして反省しているんですよね。

「いやだ死にたくない!! 助けて父さん!! 頼むよ・・今度こそいい子になるからー」

通常の法律であれば死刑になるほどの罪ではないケースでも、形が違うだけとはいえ結局死刑になるのと同じ結果となる一生一殺法。

申請者の今後の安らかな人生において重大な障害になる人物であるか否かがポイントであるわけだから、その対象者は必ずしも法的にはそこまで大きな罪を犯しているわけではないのが興味深いところですね。

不倫は良くない

僕の価値観的には、不倫や浮気は実のところそんなに腹の立たない行為というか、「不倫や浮気に走らせてしまう側に原因があるんじゃないの?」って思ってしまうんですけど、とはいえ一般的には文字通り倫理的に良くない行為ですよね。

特に婚姻関係のある男女の場合は、言い方はアレですが要は婚姻という契約関係にあるわけですから、それを破るようなことがあっては絶対にいけませんよね?

何故か婚姻という契約は、人生において大事なものだと把握しつつも他の重要契約に比べて軽く見ている人も多いような気がします。

このエピソードに登場する不倫関係にある男女は、まさにその類ですよね。

お互い既婚者でありながら、遊びたい盛りの若さでデキ婚してしまい刺激を求めてしまう。

まあ分からなくもない感情ですが、いい大人なら理性も必要なところですよね。

そして、誰が誰に対して殺益申請するのかは大方の予想通りでした。

ですが今回のエピソードで興味深いのは一体どちらが被害者だったのかがモヤっとしている点。

不倫していた男性の奥さんは、女性の旦那さん。

この2人は普通に考えたら被害者で、互いのパートナーに対して殺益申請を出す気持ちも分からなくはありません。

しかし、親族に対する殺益申請をした場合は遺産の相続や保険金の受け取りはできないというルールを、互いのパートナーに対して殺益申請を出し合うことで通常通り受け取ることができるようにしたり、しかも執行後は残された者同士で新しい家族を作ろうとしている。

不倫していた男性の奥さんの子供が、本当にこの男性の子供なのかということも語られたりしていましたが・・

もしかしたらこれは最初から一生一殺法の穴を付いた計画的なことだったのではないかとまで邪推してしまいます。

そう考えると、実は不倫していることに対して罪悪感を覚え始めていた男性が不倫旅行を断っていれば、どのような結果になっていたのかも興味深いですね。

もしかしたらこの両夫婦は、互いに殺益申請を出せば互いに受理される可能性があるくらいに元々すれ違っていた可能性がありそうですから。

過去の罪

このエピソードは、かつて残虐な強姦殺人を犯したにも関わらず少年法によって守られた2人の少年が、大人になってから被害者である少女の両親によって断罪されるというものです。

興味深いのは一生一殺法の権利の行使によって、少年法の問題が示唆されている点でしょうか?

被害者少女の顔写真や住所まで流され、被害者少女の両親は嫌がらせも受けて家も仕事も失った上に精神まで病んでしまったのに、加害者の少年2人は少年法で守られてのうのうと生きている。

なるほど、これは復讐したくなる気持ちも分かりますね・・なんて、このエピソードに関してはあまり分かったようなことを言うと、実際に似たようなケースの被害にあったことがある人を傷つけかねないので感想はこれくらいにしておきます。

児童虐待

これはお隣さんの母子家庭で行われているらしい児童虐待を知った女性が、なんとか子供を助けようと母親に対して殺益申請してしまうエピソードです。

ちなみに、「してしまう」という表現を使ったのは、この女性が殺益申請をしてしまったことを後悔している様子だったからです。

子供ができない体質だった女性は、だからこそ児童虐待に対して敏感になっていたのだと思いますが、結論から言えば少し早まった申請をしてしまったと言わざるを得ません。

実は、この母親は不器用なりにちゃんと子供を育てようとしている母親だったのです。

しかし、申請者の女性がうつと診断されていることから、この母親は確かに申請者の女性にとって「申請者の今後の安らかな人生において重大な障害になる人物」だと判断されたのだと思われます。

つまり、この母親が児童虐待していたから殺益申請が受理されたというより、この母親の行動が申請者の女性に悪影響を与えていたのが受理された理由だったのだと思われます。

殺益申請は受理、そして執行されてしまいました。

しかし、これは申請者の女性の意図していた結末とは違っていました。

後から実はこの母親がそれなりに母親だったことが分かって後悔することになってしまいました。

総括

いかがでしたでしょうか?

作中でも語られている「親族への殺益申請が多い」という事実には、なるほど身近で離れることができない人に対しては誰しも多かれ少なかれ不満を持っていたりするものですが、他人であれば無視できることが身近過ぎて無視できなくなってくるというのは分かるような気がしますね。

子供時代に罪を犯した者に対する殺益申請も、通常の法律には守られていた少年に対する実刑じみていて、法律に守られていたらOKではないということの警鐘になっているような気もします。

また、児童虐待のエピソードでは殺益申請したことの後悔が描かれています。

思っていた以上に一生一殺法という架空の法律から生み出されるエピソードの幅が広くて、今後もまだまだ楽しませてくれそうな気がします。

いや、楽しむというには若干不謹慎なエピソードも多いんですけどね。(笑)

『昭和オトメ御伽話(2)』仁太郎の変化の理由が明らかになる2巻の感想(ネタバレ注意)

 

前作大正処女御伽話に比べてどこかダークな雰囲気の昭和オトメ御伽話ですが、主人公である志磨仁太郎の3年間の変化がその雰囲気を作り出す一因になっていることは間違いなさそうです。

”からたち姫”と呼び、あれだけ慕っていた黒咲常世に対する態度の変化。

それが前巻で示された大きな謎で、「いったい何があったんだ?」って気になっていたところですが、その理由は今巻で仁太郎によって語られます。

また、前巻では前作大正処女御伽話からの登場人物である曲直部珠子が登場して大いにテンションが上がったところですが、今巻でもその珠子がストーリーの主軸に近いところにずっといる感じです。

もしかしたら、作者の桐丘さな先生は珠子のことを前作と今作の関連性を繋ぐ立ち位置のキャラクターとして考えているのかもしれませんね。

前作でも2巻で表紙を飾っていた珠子が、今作でも2巻で表紙を飾っているということをその根拠として考えてしまうのは穿ち過ぎでしょうか?

そして、2巻では前作のキャラクターが珠子以外にも登場し始めます。

前作は前作。今作は今作だとも思うのですが、やっぱり前作のファンとしては嬉しいものがありますね。

ちなみに、誤解しないで欲しいのは「そんなに前作のキャラクターが出てくるってことは、前作を読んでいない人には敷居が高い漫画なのでは?」と思う人がいたら、それは間違いだということです。

確かに昭和オトメ御伽話は前作大正処女御伽話を読んでいる人にとっては特別感のある作品ですが、読んでいない人にとっても新鮮に楽しめる良い漫画だと思います。

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本作の概要

3年間で大きく変化した仁太郎の常世に対する態度は突き放すようなものでしたが、珠子にはそんな常世のことを「好きに決まっている」と断言します。

前巻から冷たい態度を取りつつもどこか突き放しきれないでいる様子は伝わってきていましたが、それではなぜ冷たい態度を取り続けるのか?

その理由は、家出して志磨キネマで一緒に暮らすことになった常世に、仁太郎自身の口から語られるようになります。

本作の見所

曲直部珠子って格好良い女性だと思います

前巻登場してテンションが上がってしまった曲直部珠子ですが、非常に格好良い女性だと思います。

芯の強そうなところが良いですね。

大正処女御伽話での初登場時には義姉である夕月に初対面であるにも関わらず悪態を吐く悪女という役どころでしたが、実際の所は子供だっただけでツンデレっぽさが垣間見えてくるようなキャラクターでした。

そして昭和オトメ御伽話で描かれる曲直部珠子は、確かに大正処女御伽話で描かれていた志磨珠子の延長線上にいるキャラクターとして納得感があって、そうかもともとあんな悪女っぽかったのにこんなに格好良くなるものなのかと驚いたものです。

珠子が昭和オトメ御伽話大正処女御伽話の両作品の2巻で表紙を飾っていることは前述しましたが、比べてみるとちょっと雰囲気が変わっていることが分かりますね。

大正処女御伽話の時に比べて、昭和オトメ御伽話の珠子は物腰が柔らかそうな雰囲気が出てきているような気がします。

「そう云われて得心がいくと思う? 病気を治したいとうちに来た人を私がみすみす死なせるとでも?」

それでいて医者の卵として頑張る姿は芯が強そうで、ただ大人になって雰囲気が丸くなっただけでもないことが分かりますね。

「ドレスを買うくらいなら病院の備品を買うわね」

「この先医者になってたくさんの命が救えるのならどうでもいいの」

大正処女御伽話の初登場時は悪女っぽさが全開だった珠子ですが、実際にはメチャクチャ良い奴で、本当に格好良いと思います。

昭和オトメ御伽話では基本的に割烹着姿ですが、着飾った女性よりずっと魅力的ですよね。

今巻終盤に出てくる着飾った珠子も可愛いですけどね。

可愛いといえば、カミナリを怖がる珠子も、強い女性のイメージとのギャップが可愛らしかったと思います。

常世ってちょっとエロ可愛い?

「うちに何云うてもエエけどなぁ。仁太ちゃんを叩いたり侮辱するのは許さへんで」

継母からのイジメには決して反抗せずにからたちの木の側で泣いてばかりいた常世ですが、恐らく常世は「自分さえ我慢すれば」と思ってしまうタイプの女の子なのだと思われます。

その証拠に、常世ではなく仁太郎が継母に侮辱された時にはぶちギレしていました。

基本的には可愛らしい薄幸少女というイメージの常世ですが、自分以外のためには怒れるところはヒロインというよりも、主人公気質っぽい感じがしますね。

「ほんなら不良娘は出ていきますよって。行こ仁太ちゃん。ふしだらなことしてまおかなー」

ふしだらな不良娘と継母に言われて、売り言葉に買い言葉で家を飛び出し、仁太郎の暮らす志磨キネマに転がり込んでいきました。

「ふしだらなことしてまおかなー」というセリフ自体は継母への当てつけで本気では無さそうですが・・

「仁太ちゃん大きくなったねぇ」

もちろん背丈のことですよ?

分かっているのか分かっていないのか、超絶誤解を招くシチュエーションでしたけどね。(笑)

それに寝ている仁太郎に接吻しようとしたり・・

意図的なものも無意識なものも含めて、言動の節々が前巻に比べてエロ可愛い印象を受けました。

もしかしたら今巻に収録されていた特別編『幼キ道行』での常世がかなりエロい感じなので、それが本編の常世のイメージにまで影響してしまったのもあるかもしれませんけどね。

いや、だって特別編『幼キ道行』の常世が本編の常世に比べると相当大胆なものだったから・・

いずれにしても常世は、一言でいえばかなりのムッツリスケベだと思います。(笑)

仁太郎にいったい何があったのか?

思っていたよりもあっさりと仁太郎は自ら3年間の間に何があったのかを語り始めます。

「東京で何があったん? もし何かあったんならうちに話してくれへん?」

ですが、態度こそ変わっているものの恐らく仁太郎の常世に対する感情までは変わっていないであろうことは容易に想像ができたところです。

そう考えると、どんなに冷たくあしらっても自分から離れていこうとはしない常世を見て「それならば」と事情を話そうとする気持ちも分からないでもありません。

そして、そんな仁太郎の回想で仁太郎の義母が志磨珠代であることが明らかになります。

志磨珠代も前作大正処女御伽話から登場していたキャラクターで、珠子の実姉でもありますね。

かなり狂気的なキャラクターなので前作を読んだ人なら仁太郎に何があったのかまでは察せなくても、明らかに珠代の存在が仁太郎に影響を及ぼしているであろうことがうかがい知れると思います。

明確に原因は語られていないものの、常世に宛てた手紙を託した弟分の誠二は謎の死を遂げ、次に同じことをしたら手紙の受取人にいなくなってもらうと脅されたようですね。

「気に入らない者には容赦なく刃を向けられる。アナタも私と同じだからよ♡」

常世に危害を加えられると危惧した仁太郎はナイフを片手に珠代に抗議しますが、その際に弾みで珠代の腹を刺してしまいます。

しかし、刺された側の珠代からは何故か称賛の声。

仁太郎は確かに自分と同じ羅刹であると感じた珠代は喜んでいますが、その姿はなかなかに狂気的なものですね。

そして、仁太郎自身も自分に珠代と同じ羅刹であることを自覚してしまっていました。

自覚して、自殺することを考えていました。

最後に幸せになっている”からたち姫"を一目見て何も云わずに立ち去ろうとしていた仁太郎でしたが、実際に見たのは昔と同じでからたちの木の側で泣いている常世だったわけですね。

「ちゃんと突き放さんと。今度こそもっとうまくやらんと。そう俺は死なないとアカン。こいつが悲しむこともないくらい突き放さんと」

自殺するつもりの仁太郎にとって、泣きながら仁太郎を求める常世は不安だったに違いありませんね。

だから、常世が仁太郎を必要としないように突き放そうとしていたわけです。

しかし、それは仁太郎なりの優しさだったのかもしれませんが、たとえ仁太郎が羅刹だったのだとしても常世がそれを望むとは限りません。

「そんなん今度こそ耐えられへん。ほんなら・・いっそのこと心を鬼にしてうちを殺してから逝って」

仁太郎が自殺しようとしていることを知って、常世はかなり怒っている様子で、自分ひとりだけ逃げるように死ぬような選択肢は無いと仁太郎を諭します。

そこまで聡い考えがあったわけではないような気もしますが、仁太郎が死ぬことはイコール常世も死ぬことなのだと印象付けることで仁太郎を踏みとどめさせようとしていたのではないかと思います。

そして、仁太郎のために自分も変わるのだと髪をバッサリと切ってしまった常世の晴れやかな表情がまた良いですね。

物語の今後の方向性の考察

昭和オトメ御伽話は黒のイメージで描かれているらしいことに前巻のレビュー記事でも触れましたが、仁太郎の3年間はまさに黒のイメージでしたね。

そして、恐らく今後は仁太郎が自身の中にある羅刹と戦っていくような展開になっていくのではないかと予想されます。

仁太郎のサイコパスな義母である珠代。

常世のことを商品としか見ていない継母。

2人の置かれている状況は、いつ仁太郎の中の羅刹が顔を見せてもおかしくなさそうなものですよね?

そんな状況にどう立ち向かっていくのかが今後の見所なのかもしれませんね。

表紙裏のおまけ漫画はずっと野球路線で行くのか?

時速180キロで走る暴走車を捕球するキャッチャー・リゼ。

何を言っているんだという感じですが、表紙裏のおまけ漫画です。

どうやら昭和オトメ御伽話の裏表紙は野球少女路線で行くみたいですね。(笑)

本編とは全く関係ないんですけど、こういうの結構好きです。

総括

いかがでしたでしょうか?

最後に前作の主人公である珠彦とヒロインの夕月の息子・立花月彦が登場し、後ろ姿だけですが夕月まで登場しています。

とてつもなく「先が読みたい!」って気持ちでいっぱいになる引きですね。(笑)

僕は昭和オトメ御伽話を連載で読むものではなく単行本で一気に読む方が良い作品だと思っているので、そこは3巻の発売をおとなしく待つ所存ですが、これはなかなか待ち遠しいものです。

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ちなみに、今巻の発売日は元号が令和に変わった直後。

単行本の帯にも「令和に語り継ぐ昭和の恋浪漫」と銘打たれています。

元号をタイトルに据えた漫画の最新巻が、元号が変わった直後の発売するというのも面白いですが、このまま平成・令和とシリーズを続けていったりされたら面白そうですよね。