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漫画、ラノベ、映画、アニメ、囲碁など、好きなものを紹介する雑記ブログです。

『ガンバ!Fly high(2)』さすらいの転校少女の逆上がりのエピソードが素敵すぎます(ネタバレ含む感想)

 

懐かしのガンバ!Fly high。文庫版2巻の感想となります。

原作はプロの漫画家ではなく元オリンピックの体操選手である森末慎二氏ということですが、はっきり言って下手なスポーツ漫画よりもはるかに素晴らしい人間ドラマが描かれている名作だと改めて思い知らされます。

おばあちゃんの鉄棒の設定なんて素敵すぎますよね。

また、1巻では主人公の藤巻駿が超絶初心者だったのでかなり基礎的なことばかりしている印象でしたが(それが良いんですけど)、おばあちゃんのコーチで上達した藤巻駿たちは既に体操の素人である僕から見たら人外にしか見えない技をこなすようになってきています。

そういうわけで体操の演技的な意味でも1巻より読みごたえが出てきた印象があります。

また、2巻ではメインヒロインである相楽まり子も初登場します。

遅れてやってきて、そして早々に去っていく。フィクション作品のメインヒロインの扱いとしては非常に珍しい気もしますが、個人的には相楽まり子というヒロインが・・というよりも藤巻駿と相楽まり子の関係性がかなり好きだったりします。

たぶん初めて読んだ人は折笠麗子がメインヒロインだと感じるくらい、登場タイミングが遅かったり、ちょっと地味目だったり、意外なメインヒロインという感じのキャラクターですが、ものすごく一途な良ヒロインだと思います。

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本作の概要

岬コーチによって平成学園体操部の練習場から鉄棒を撤去されてしまった藤巻駿たちは、鉄棒の練習場所を求めておばあちゃんの鉄棒にたどり着きました。

しかし、おばあちゃんの鉄棒で遊ぶ子供の一人である光太郎がおばあちゃんの言いつけを破って他の鉄棒で技をして怪我をしたことで、おばあちゃんの鉄棒は取り壊しの危機に晒されます。

そんな鉄棒で技を磨く平成学園体操部の男子部員たちは取り壊しを阻止するために、おばあちゃんの鉄棒の素晴らしさを主張する演技会を開催します。

そこでは何とかおばあちゃんの鉄棒を守れた藤巻駿たちですが、次は夏の大会で6位以内にならなければ廃部という危機に陥ってしまいます。

キャプテンの新堂の怪我などのハプニングに見舞われながらもおばあちゃんのコーチで技を磨いていく平成学園男子体操部は、それぞれの必殺技を身に付けて大会に臨みます。

また、そんな地区大会に向けて奮闘する中、さすらいの転校少女である相楽まり子が女子ではなく男子体操部に入部してきます。 

遅れて登場してきたわりにすぐに、しかも大会の当日に転校していってしまう相楽まり子ですが、実は最後の最後まで主人公の藤巻駿を支えるメインヒロインになっていきます。

本作の見所

おばあちゃんの鉄棒

平成学園の男子体操部。藤巻駿たちはおばあちゃんの家にある鉄棒に育てられます。

メインキャラクターにとって始まりの場所というか、いつまでも思い出の場所になるような場所があるという設定は少なくないと思いますが、ガンバ!Fly highにおけるその場所がこのおばあちゃんの鉄棒であることは間違いないと思います。

こういうのって本当に素敵ですよね。

しかし、そんな場所はいきない取り壊しの危機に晒されます。

おばあちゃんにムーンサルトを教わった近所の子供の光太郎。その母親がおばあちゃんの鉄棒を危険視したのがキッカケです。

「これから・・ボク達は演技会をします。鉄棒を撤去するかどうか・・それを見てから決めてください!」

危険だからと言われたら、それをなかなか反論というか、覆すことは通常難しいのではないかと思われます。

それを一体どのように鉄棒を守るのか?

ただただおばあちゃんを素晴らしいコーチなのだと主張したり、自分たちにとっての必要性を主張したり、それだけでは足りないような気もします。

そして、その主張の仕方がまた体操のことを知らない読者にとっては「へぇ~そうなんだ」と思わされるような、ちょっとした豆知識になっています。

「この鉄棒をなくせば、もっと大変な事になります。今からそれを証明します!!」

この鉄棒があるから子供が怪我をする。

それに対して、この鉄棒を無くすことの危険性を藤巻駿たちは主張しようとします。

この時点で、体操のことを全く知らない人なら「?」ってなりますよね?

たしかに、危険だから鉄棒を撤去しようとする人に対して、それがもっと大きな危険に繋がるのだと主張できれば効果はあるでしょうけど、一体どのようにそう主張するのかが興味深いところ。

もっとも体格の大きな東が二回宙返り降りを演じて見せて、光太郎のムーンサルトはそこに更に捻りを加えたものなのだと説明する藤巻駿。

それを聞いた光太郎の母親は、大人顔負けの体格の東以上の技を子供ができるわけがないのだと怒りを強めますが・・

高さと回転力が重要な技を決めるのに必要なのは力ではなく、おばあちゃんの鉄棒なのだと冷静に説明します。

重要なのは「しなり」。

確かにテレビで見る体操競技の鉄棒は、驚くほど柔らかくしなっています。

そして、光太郎が怪我をしたのはおばあちゃんの言いつけを破って技を決めた固い鉄棒。

藤巻駿は、おばあちゃんの鉄棒が無くなったら光太郎はより危険な固い鉄棒で技を決めようとするかもしれない。そのように主張したかったのだと思います。

なんというか、鉄棒に対する理解が一気に深まったような気がするエピソードでした。

メインヒロインの相楽まり子

繰り返しますが、ガンバ!Fly highのメインヒロインである相楽まり子の登場の仕方が結構珍しいです。

初登場時期が遅い上に、すぐに転校して一時退場してしまう。

漫画作品のメインヒロインの扱いとしてこれは非常に珍しい・・ですが、結果的にこのような展開になったことが相楽まり子をとても存在感のあるメインヒロインにしているところが興味深いところ。

初登場の出会いと別れが立て続けにやってきて、続巻のネタバレにもなってしまいますがその後大きく二度にわたり再会のエピソードがあります。

ともすればスポーツ漫画のヒロインって空気になりがちなところがあると思うんですけど、あえて・・なのかは分かりませんが主人公から引き離すことで逆に定期的に存在感を引き立てている。

また、こう言ってはなんですがメインヒロインとしては可愛すぎないのも特徴で、そういうところが逆に魅力的だったりします。

僕の場合、原作より先にアニメ版のガンバリスト!駿を見ていましたが、完全に折笠麗子がメインヒロインだと思っていたくらいですし、相楽まり子のことは正直あまり好きなキャラクターではありませんでした。

子供視点ではかなり地味な女の子のキャラクターに見えたからです。

その良さに気付いたのはもっと大人になった後からとなります。

地味でドジで、転校する先々の学校では女の子に付けるにはちょっとと思ってしまうようなあだ名を付けられてしまったり、苦手な人には苦手そうなテンションで話す相楽まり子。

それに、転校の繰り返しで猫かぶりな処世術を身に付けているのでそんな事態にはならないものの下手をすればいじめられっ子になっていそうな女の子には正直惹かれませんでしたが、とても健気で一途で、そもそも出会いと別れと再会のシチュエーションがドラマティックで感動的。

いつの間にか、そんな相楽まり子のことをとても素敵なヒロインだと思うようになっていました。

さて、そんな相楽まり子が転校してきたのは藤巻駿たちに2か月後の大会で6位以内に入らなければ廃部という事態になってしまった後で、次に転校していくのはなんと大会の当日。(実際に去っていくエピソードは大会が終わる次巻となります)

つまり、平成学園の体操部にいたのはたったの2か月以内なんですよね。

「もしよかったら・・私に「逆上がり」教えてくれません?」

運動音痴の相楽まり子が藤巻駿に逆上がりを教えてもらいはじめて、それができるようになるまでの期間でしかないのです。

「どうしてそんなに急ぐの? もしかしてまたどっかへ転校するの?」

「もーっ、藤巻クンにはかなわないな! そう! あたしはさすらいの転校少女!! 同じ場所に長くはいられない運命ってね♡」

大会前日の合宿中に、逆上がりの完成を急ぐ相楽まり子を見て、藤巻駿が転校を察してしまうシーンも素敵です。ずっと別れを悲しんで泣いていたのに、そんな様子を大会直前の選手には見せようともしない相楽まり子が健気です。

それでも大会当日に転校するとは言えなかったのには胸がキュッとしてしまいます。

「出来なかった事が出来るようになるって、うれしいね! ガンバるって素敵だね!」

そして完成した相楽まり子の逆上がり。

ガンバ!Fly highは体操漫画なので、やっぱり高難度の人外のような技を藤巻駿たちが完成させていくところが感動的だったりしますが、この逆上がりのシーンもまたそれらに負けないくらい感動的だったのではないかと思います。

必殺技

6位以内が義務付けられた夏の大会。

明らかに主人公の藤巻駿を活躍させるために怪我をしてしまった新堂キャプテンが若干可哀そうですが、出場者がそれぞれ審判にアピールするために得意種目で必殺技を身に付けていく展開が激熱ですね。

確かに、テレビで見る体操競技もオールラウンダーが戦う個人総合も面白いですけど、それとは素人目にも迫力の違う種目別がまた面白かったりしますし、どこかにパンチがあればアピール力は高いのかもしれません。

跳馬の内田。本来は床が得意だけど今回は鉄棒で必殺技を身に付けた真田。そんな床では東が大人顔負けの力技を披露します。

特に、床の演技には昔から軽やかなイメージを持っていたこともあって、力技で魅せる東の演技には興味を惹かれました。

作中全体でもトップクラスに印象に残っている演技かもしれません。

はじめての大会では散々だった藤巻駿も片手技を武器に大活躍していますし、これでもかというほど平成学園の男子体操部は絶好調です。

しかし・・

「おばあちゃん少し・・勢いがつきすぎているんじゃ・・」

そんな選手たちを見て不安を口にしたのは折笠麗子。

本番で練習以上に力が出すぎるという現象は、体操に限らず、それこそスポーツに限らず起きる現象だと思いますが、調子が良すぎて失敗するという経験は多かれ少なかれ誰にでもあるもの。

まあ、今巻のラストシーンがすべてを物語っていますが、さて平成学園の男子体操部はこのピンチを乗り切ることができるのか。それが次巻の見所になるのではないかと思います。

総括

いかがでしたでしょうか?

6位以内の成績を取らなければ廃部という条件下で臨んだ夏の地区大会のエピソードが始まりましたが、これは個人的にガンバ!Fly highという作品を面白いと思い始めるキッカケでもありました。

当時小学生だった僕はアニメ版のガンバリスト!駿から本作品に触れたのですが、最初は何気なく見ていたのに、夏の地区大会で平成学園の部員たちが必殺技を披露していくのを見て強く興味を惹かれたのを覚えています。

具体的には東伝次の床の演技のエピソードあたりだったのですが・・

巻末のおまけ対談でも、連載時に人気が出始めたのが丁度この回らしいことが語られていて、「あっ、僕がガンバリスト!駿を面白いと思い始めたエピソードとドンピシャだ」と思いました。

おばあちゃんは審判員へのアピールとして平成学園の部員たちに一種目の必殺技を身に着けさせたわけですが、それが読者や視聴者へのアピールにもなっていたのかもしれませんね。

いや、だってあの床のエピソードってかなり強烈でしたから。

そんな地区大会の結末は次巻となりますが、果たして6位以内に入賞することができるのか否かが見所ですね。

『りゅうおうのおしごと(6)』将棋とAIの付き合い方がテーマの一冊です。(ネタバレ含む感想)

 

本記事は将棋ラノベの名作であるりゅうおうのおしごと!の魅力を、ネタバレ含む感想を交えて全力でオススメするレビュー記事となります。

AIが将棋に与える影響が特徴的で、AIが育てた将棋という新しい世界を見せてくれる6巻目となります。

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本作の概要

あらすじ(ストーリー)

八一がなんとか竜王を防衛したことでりゅうおうのおしごと!がタイトル詐欺にならずに済みました。(笑)

しかし、壮絶なタイトル防衛戦を制した八一は思考のオンオフが効かないようになってしまい眠れぬ夜を過ごします。

そんな八一の弟子二人。あいと天衣もついに・・というにはあまりにも早く女流棋士になりました。

大盤解説の聞き手をしてみたり、女流棋士らしいお仕事もこなします。

荒ぶって連れ帰られたあいに対して、普段はかなりつっけんどんな・・だけど割と真面目な性格な天衣が意外とうまく聞き手をこなしているのが意外だったりします。

そんな感じでメインキャラクターの立場は大きく変化したりしなかったりする6巻ですが、大きく二つのテーマがあって、それぞれのテーマの象徴として空銀子と椚創多がいるという印象があります。

それがどのようなテーマなのかといえば、一つ目は『女流棋士の挑戦』だと思います。将棋や囲碁の世界においては男性の方が優位とされていますが、そんな中で女性初の奨励会三段に挑戦する空銀子の姿が意外な内面とともに描かれています。

二つ目は将棋とAI(ソフト)との関係性。将棋にしろ囲碁にしろここ数年でAIが人間を上回っていくという事件が発生していますが、それに伴い多くの棋士の勉強の仕方にも変化が生じています。

そして、AIはただ強いだけではなく人間とは異なる感覚・・とは違うかもしれませんが、そう見える何かを持っているものです。

そんな感覚を自分のものにしていくような棋士がいたりするのも面白いですが、そもそもAIが師匠といっても過言ではない子供が登場してくるのも、未来の将棋界や囲碁界を予見させる感じがして面白いですね。

そして、6巻で最年少のプロ棋士が期待される奨励会員として登場するのが椚創多こそが、そんなAI的な発想に育てられた将棋指しとなります。

いつもの激熱な展開とは一味違うけれども非常に興味深い空銀子と椚創多の対局が最大の見所になっています。

ピックアップキャラクター

5巻が大きな区切りだったと思われるりゅうおうのおしごと!ですが、意外とメインで描かれる機会の少ない空銀子をはじめ、既刊で活躍していたキャラクター以外が目立ってきている印象がありました。

空銀子

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(「りゅうおうのおしごと!(5巻)」より)

最強の女流棋士としてメインヒロインの雛鶴あいや夜叉神天衣の目指すべきところとして描かれているキャラクターだと思いますが、そんな空銀子の挑戦者としての一面が6巻には描かれています。

その内面が読みづらいキャラクターではありますが、女性初の奨励会三段を目前に気弱に構えてしまっている意外な一面をのぞかせます。

椚創多

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(「りゅうおうのおしごと!(5巻)」より)

若干十一歳で奨励会二段の天才で、史上初の小学生プロ棋士の期待すら掛けられている逸材です。

人間とは異なるAIの将棋に育てられた世代で、まるでコンピューターのような独特な感覚を持っています。

ちなみに、6巻で初登場かと思いきや実は既刊にも八一の対局の記録係として登場していたりします。

本因坊秀埋(天辻埋)

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(「りゅうおうのおしごと!(5巻)」より)

将棋のおとなり囲碁の世界で三大タイトルのひとつであり最も歴史のある本因坊を保持する女性となります。

酔うと下ネタを連発する痴女ですが、あまり人には懐かない性格の空銀子からも尊敬されています。

ちなみに、おそらくモデルは藤沢秀行名誉棋聖でしょうか?

ネタバレ含む感想

女性の活躍

6巻には将棋のおとなり囲碁の世界のトップの一角に君臨する女性棋士本因坊秀埋が初登場します。

本因坊秀埋というのは、本因坊のタイトルを持つ棋士が名乗る雅号で本名は天辻埋といいます。

しかし、将棋ラノベであるりゅうおうのおしごと!にどうして囲碁棋士が、どうしてこのタイミングで登場したのか?

囲碁ファンである僕としては嬉しいところですが、その理由は気になるところ。

恐らくですが、ただ近い世界のキャラクターを登場させてみただけとか、そんな浅い理由ではないのだと推察しています。

6巻では八一の弟子二人が女流棋士になったり、空銀子は女性初の奨励会三段が目前に迫っていたりと、誤解を恐れずに言えば男性優位とされる世界で奮闘する女性が描かれていたと言えます。

そんな中で目標というか、指標になりそうな存在として近しい世界で女性でトップに立つキャラクターを登場させたということなのかと、僕はそう思っています。

例えば、空銀子にとっても将棋の世界に目標とする人物の一人や二人いるでしょうけど、その中に女性はいないのではないかと思います。

最強の女流棋士として描かれているキャラクターなので、当然といえば当然ですね。

だからそんな空銀子にとっても尊敬の対象となるような女性を登場させるなら、それは将棋以外の世界で活躍する女性である必要があったからこそ、囲碁の世界で活躍するキャラクターを登場させたということなのだと思います。

本記事でもそんな本因坊秀埋のセリフを紹介したりしてみたいのですが、その大半はGoogle先生に怒られそうなの内容なので自重しておこうと思います。下ネタが過ぎる・・っ!(笑)

酔うとそんな自重をせざるを得ないほどの下ネタを連発する本因坊秀埋ですが、囲碁ファンでなければラノベ的に誇張したキャラクター性なのだと思われるかもしれません。

しかし、そんな言動のモデルが明らかに実在のとある囲碁棋士だというところがまさに事実は小説より奇なりという感じで、こんなことでそんなことを思わせる人物が実在したというのがちょっと面白いと思います。尊敬すべき大先生なんですけどね。

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秀埋

いいか銀子。女というのは男よりも弱い。体力的に明らかに劣るし、長時間の対局ではそれが思考を鈍らせることにもなる。女は男より弱いんだ。その弱さを克服するには努力しかない・・強烈な努力

とはいえ、前後の文脈で若干台無しにしてしまっているとはいえ、将棋界の女性のトップとして男性に混じってプロ棋士になろうと努力している銀子に向かって放つセリフからは、女性ながらにトップに立った本因坊秀埋の努力が垣間見えます。

だからこそあまり人には懐かない銀子ですら尊敬しているのでしょうね。

ちなみに、「強烈な努力」というのはまさに本因坊秀埋のモデルになっているであろう藤沢秀行名誉棋聖の言葉そのもの。

藤沢秀行名誉棋聖も非常に破天荒な性格ながら多くの人に親しまれた人格者で、実は現在中国や韓国が囲碁の世界トップに立つほど成長したキッカケを作った自分つでもあるほど凄い人。

そんなキャラクターがモデルになっていると知っているからか、一見ただの痴女に見えるのに尊敬されているキャラクターというものが自然に受け入れられました。

本記事の筆者である僕が囲碁ファンということもあって本因坊秀埋のことを語りすぎてしまった感じがありますが、まありゅうおうのおしごと!をここまで本因坊秀埋に着目して読んでいる人は珍しいと思うので、こんなところに着目する人もいるんだぁ~くらいに思っていただけたら幸いです。

女流棋士になった二人のあい

6巻ではりゅうおうのおしごと!のメインヒロインである八一の弟子二人は、将棋の対局的な意味での活躍はありません。

あいはいろんな意味で荒ぶっていましたけど。(笑)

しかし、女流棋士になった二人が棋士室デビューしたり、大盤解説の聞き手をしたり、八一に連れられて道具屋筋の碁盤・将棋盤の店で太刀盛りを見学したり、新たな世界に触れる姿が見られます。

特に4巻5巻と目立った活躍の無かった夜叉神天衣の新たな一面が見られるのは見所のひとつだと思います。

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天衣

あの於鬼頭って人、今じゃ人間相手の研究会も全部辞めてソフト研究に没頭してるんでしょ? それで勝率も急上昇してるから若手も注目してるし。負けてよかったんじゃない?

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八一

お、おいっ! 何もそこまで・・

初めての聞き手をやりやすいようにと八一が気を使っているのに荒ぶるあいと比較して、意外にも天衣が聞き手の才能を発揮するのですが、最後はなかなか大きな爆弾を投下するあたりが忌憚なき子供という感じです。

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天衣

へぇ・・食品サンプルを自作できるのね。ちょっと楽しそうじゃない・・

あいに比べるとかなり大人びているというか、大人ぶっているところのある天衣は、それでも今まではあまり隙を見せない感じでしたが、6巻では結構子供っぽい一面をのぞかせているのも見どころだと思います。

空銀子vs椚創多

りゅうおうのおしごと!が刊行されている現在はまさに囲碁や将棋の世界におけるシンギュラリティの真っただ中であると言えます。

今まではAI(ソフト)が人間に勝つのはまだまだ先のことだと言われていましたが、この数年でAIは人間に追い付く・・どころか一足飛びに追い越していきました。

それは囲碁や将棋の世界の在り方そのものに大きな影響を与えています。

将棋でいえばAI(ソフト)を使ったカンニングの問題が広く話題になったりしていましたね。

僕は囲碁ファンなので囲碁の世界の動向の方が詳しいですが、AI(ソフト)の影響が随所に現れていることは間違いありません。

対局内容そのものに影響を与えているのはもちろん、AI(ソフト)を使って検討するプロ棋士の先生方が例えばニコ生の放送などに映し出される姿にも既に慣れ始めています。

形成判断に今までとは違う『勝率』という概念が持ち込まれ始めているのもAI(ソフト)の影響ですね。

・・とまあ、これは囲碁の世界の話ですが将棋の世界でも似たようなことが起きているのだと認識しています。

とはいえ、こういう変化が数年の短期間の間に起きることはそこまで意外なことではありません。

ターニングポイントというか、どんな世界でも急激な変化が起こるタイミングというのはあるものだと思うからです。

しかし、ジワジワとした変化もあるはず。そして、この場合のジワジワとした部分といえば大きく変わった世界で育った子供の存在です。

人間よりも強くなったAI(ソフト)の感覚を幼い子供の頃に身に着けることができた世代の台頭が、将棋や囲碁の世界における未来への大きな関心どころのひとつであることは間違いありません。

前置きが長くなりましたが、6巻でそんな世代の最初の子供として描かれていたのが椚創多だったのだと思います。

既存の感覚とは全く異なる天才。

例えば、脳内に映し出せる将棋盤の数が才能のバロメーターになるみたいなことを八一が過去に言っていて、それに当てはめれば十一面もの将棋盤が脳内にあるあいは天才もいいところなのだと思いますが、意外にも最年少でプロ棋士になることすら期待される天才の椚創多には脳内に将棋盤は見えないようです。

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椚創多

ぼくは頭の中に将棋盤なんてありません。全て符号で思考しますから

その代わりにあるのは盤面ではなく符号。

AI(ソフト)の影響を受けているどころか、AI(ソフト)そのものといっても過言ではないほどの特殊な感覚を持っているのが椚創多となります。

恐らくですが、こういう感覚が特殊ではなく普通になるような時代も、現実にやってくるのかもしれませんね。

椚創多はそういう未来を予見させるようなキャラクターなのだと思います。

そして、今回は空銀子が勝利して史上初の女性の奨励会三段になったものの、どう考えても実力は椚創多の方が上で、勝利した空銀子自身が最もそれを自覚してしまっているのが印象的でした。

空銀子と椚創多の対局は、今までりゅうおうのおしごと!で描かれたことのある対局の中でもかなり独特な決着の仕方を迎えます。

追いつめられている空銀子が時間に追われて適当に指してしまった手。

銀子自身それで終わったと思った手なのですが、それがたまたま逆転に繋がる好手になっていたようです。

それだけなら指運というか、ままあることなのかもしれません。

しかし、ここで面白いのが銀子が自らの好手に気付いた理由なのです。

その理由とは、銀子に指された手を見て椚創多の方が動揺してしまったから。

椚創多の方が強く、手が読めるがゆえに銀子自身も気付かなかった好手に気付いてしまい、気付いてしまったが故にそれが銀子に伝わってしまった。

もしかしたら椚創多の方も銀子の好手に気付いていなかったら、銀子の心は折れて何を指されても投了していたかもしれません。

しかし、椚創多が自らの詰みに気付いてしまったが故に、つまり椚創多が強かったが故に銀子は格上である椚創多に勝利できたのです。

そういう結末は確かに現実にもありそうなものですが、銀子からしてみれば試合に勝って勝負に負けたようなもの。

勝利はしたものの来たる三段リーグに向けては不安を残す結果となりました。

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『ラブひな(12)』現代お約束ラブコメの原点とも言える作品の感想(ネタバレ注意)

 

格好良くなって浦島景太郎がモテ期に突入したらしい12巻です。(前巻のレビューはこちら 

11巻では海外留学で長期不在だった浦島景太郎がついに帰ってきました。

破天荒なヤンデレとして猛威を振るった浦島可奈子が、浦島景太郎と再会した最初はしおらしい様子だったのにやっぱり暴走系妹だったのが面白いです。

また、浦島景太郎が再登場したわけですが12巻の主人公はむしろ成瀬川なると浦島可奈子なのではないかとも思います。

浦島景太郎がは既に成瀬川なるに対する好意を隠そうともせず、照れはあるものの以前のようにしどろもどろになることは無くなっています。

対する成瀬川なるの言動がかなり優柔不断なものになっていて、それは通常こういうラブコメ作品においては男主人公の専売特許の役割という感じのはず。

そういう立場が若干逆転している感じがするのが興味深い一冊だと思います。

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本作の概要

ついに帰ってきた浦島景太郎。

妹である浦島可奈子の顔を一瞬忘れてしまっている再会シーンが浦島景太郎らしいところです。

11巻では不在だったわりに、浦島景太郎をめぐってひなた荘の住人と浦島可奈子の騒動があったのであまり久しぶりという気はしませんが、そんなところに本人が放り込まれて一体どうなるのかというところが見所だと思います。

明らかにお互いに好意を持っているものの主人公以上に優柔不断な成瀬川なるというヒロインの言動が面白いです。

本作の見所

格好良くなった浦島景太郎の再登場

「あ、新しい住人の方ですか。浦島です。よろしくお願いします」

久しぶりに再会した妹の顔が一瞬分からなくなっている浦島景太郎。

久々の再登場ですね。

まあ、意外とそこにいると思わなかったら気付かなかったりするものなのかもしれませんが、ブラコンの浦島可奈子にしてみれば気にしていないようでいてそこそこショックだったのではないでしょうか?

ともあれ、前巻の浦島可奈子の登場で一気に雰囲気の変わったひなた荘でしたが、浦島景太郎の再登場でまたちょっと空気が変わりましたね。

そもそも、浦島景太郎自身がちょっと格好良くなってきていることで住人の見る目も変わってきています。

いや、本当に作者の赤松健先生は『ラブひな』に限らず、こういう微妙な人間関係の変化を大きな変化として描くのが本当に上手な漫画家さんですよね。

「やはり・・この動き・・ふふっ私の目はごまかせんぞ! 貴様向こうで何をやってきた?」

留学中、瀬田記康に武術の基礎を学んだらしく素子とも互角に稽古する浦島景太郎。

東大に合格してからというより、自分のやりたいことを見つけてからの成長が著しいと思います。

自分と互角に稽古する浦島景太郎を相手に嬉しそうな素子ですが、やんわり今後の朝稽古は断られて寂しそうにしているところが可愛らしいと思います。

それ以上に、今巻ではこんな感じで物事をやんわり躱しているというか、浦島景太郎も今までのようにしどろもどろになってしまったりすることが少なくなったような気がします。

個人的に『ラブひな』で最も好きなキャラクターはカオラ・スゥなのですが、浦島景太郎と本格的にラブコメしてる風のキャラクターの中では素子が一番好きなのですが、今巻更に可愛らしくなったような気がします。

浦島景太郎と浦島可奈子

前巻では破天荒なブラコンヤンデレ少女という印象が強かった浦島可奈子ですが、浦島景太郎と再会した瞬間にしおらしい様子になりました。

血がつながっていない兄妹。

とはいえ叶わない恋であることは理解している浦島可奈子。

そもそも相手の浦島景太郎の浦島可奈子に接する態度は、浦島可奈子が養女であることも忘れてしまっているほど完全に妹に対するソレで、ひなた荘の住人女子たちに対する言動とは明らかに差異がありますからね。

成瀬川なるとの関係性がうまくいっていないと知って人肌脱ごうとする浦島景太郎はかなりいい奴だと思いますが、ちょっと浦島可奈子が可哀そうでもあります。

とはいえ、さすがにラブコメ作品の鈍感主人公とはいえ妹からの恋愛的な意味の好意に気付けというのは難しいものがあるでしょう。

「ハァ・・あいつ、子供の頃俺のこと好きだったみたいだけど・・でもいまだにそうだったとは・・。それに子供の頃の約束まで覚えてて・・」

そして浦島可奈子の好意を知った後も、これが他の女子からの好意ならもっと照れのある取り乱し方をしていたような気がしますが、ただただ困惑している反応をしている浦島景太郎を見ていると、完全に妹としてしか見ていないのは明らかですね。

しかし、子供の頃の約束は人のことを言えないと思いますけど。(笑)

その辺、血は繋がってなくても兄妹っぽいと思いました。

優柔不断な成瀬川なる

ブコメの主人公の特徴といえば何でしょうか?

鈍感で異性からの好意に気付かない。

優柔不断で要領が悪い。

そんなところがパッと浮かびますが、今巻ではメインヒロインであるところの成瀬川なるの方がそんなラブコメ主人公らしさを発揮していました。

浦島景太郎からの好意はずっと前から知っているものの、それに対する反応がとても優柔不断なのですね。

これは、ヒロイン側の反応としてはラブコメ作品としても結構珍しいのではないかと思います。

「どうしてあの時また・・好きと言わなかったんですか」

そんな成瀬川なると行動を共にしながら徐々に成瀬川なるの背中を押す方向にシフトしていく浦島可奈子の心境の変化も興味深いです。

「・・今回はなるさんにゆずってあげますけど、私まだお兄ちゃんのことあきらめたわけじゃないですからね!」

そして、自分を追ってきた浦島景太郎に成瀬川なるを追いかけるように後押ししたのも浦島可奈子となります。

実は今回レビュー記事を書くにあたって読み返していて初めて気付いたのですが、考えてみればなかなかくっつかない二人への最後の後押しをしたのが、最もそれを望まなかった浦島可奈子になっているというのが面白いですね。

二人にとっては最も大きな障害ともいえた浦島可奈子が、ずっと障害となるような行動をしていたのに、それでも最後の後押しだけはしているという展開が全く違和感なく自然に描かれているのがすごいですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

いよいよ浦島景太郎と成瀬川なるのモヤモヤした関係性にひとまずの決着が付きました。

浦島可奈子とひなた荘の住民の関係性も、まあまあ丸く収まりそうな感じなのではないかと思われます。

さて、ぶっちゃけ浦島景太郎と成瀬川なるの関係性だけを見たらクライマックス感のある『ラブひな』ですが、実際『ラブひな』も残すところあと2冊です。

今巻でひなた荘の年少組が全員東大を目指し始めていることが明らかになっていますが、その辺の結末も気になるところですね。(次巻のレビューはまだ)

『味噌汁でカンパイ!(8)』地味にWデートを意識している八重が可愛い。(ネタバレ含む感想)

 

今読んでいる漫画に登場する女の子で、ひょっとしたら一番可愛いかもしれないと思っているのは味噌汁でカンパイ!の八重かもしれません。

僕はあまりにも乱読派の漫画読みなのでその辺の意見は割とコロコロと変わるかもしれませんけど、少なくとも味噌汁でカンパイ!を読んだ後は大抵そう思ってしまいます。

なんというか、お母さん的に振舞おうとしているけど実際問題普通の・・いや、どちらかといえば奥手な方の女子中学生でしかないというギャップがなんとも魅力的だと思うのです。

ごっこ遊び的な距離感から変わりそうで変わらない善一郎と八重の距離感も素敵で、7巻くらいから特にその距離感が絶妙になってきている印象です。

作品に登場するお味噌汁は流石にトリッキーなものが増えてきましたが、味噌汁の奥深さも相変わらず楽しめます。

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本作の概要

前巻のバレンタインデーのエピソードから引き続き今巻ではホワイトデー。善一郎にその気はなかったようですが結果的にWデートという微笑ましいエピソードに発展しました。

商社に勤める善一郎の父親の勤務先で味噌汁の試飲をしたり、今までとは違った味噌汁へのアプローチが面白い内容になっています。

花粉症に効く素材で作った味噌汁なんてかなり独特ですが、それだけに味噌汁の可能性の高さがうかがえます。

本作の見所

Wデート

デートする中学生は普通にいると思いますが、Wデートは中学生に限らず現実には見たことが無いような気がします。

僕が知らないだけかもしれませんけど。(笑)

とはいえ、フィクション作品においては定番ですよね。

中学生のWデートとなると珍しい気もしますが、とても微笑ましいというか、可愛らしいエピソードだと思います。

「だからその・・形式上・・Wデートってことになるけど」

善一郎の友人の万里に頼まれたとはいえ、Wデートという形になってしまうことをしどろもどろになりながら断って八重を誘う善一郎が中学生らしい感じで良いですね。

それに対する八重の反応がまた地味に可愛らしい。

仮にもデートに誘われた夜、就寝前に色々と髪形を変えてみる行動には何も意味は無いのかもしれませんけど、ただただ照れたり、楽しみにしたり、困惑したりするのとは違った良さがあると思います。

もともとが恋人じゃないのに恋人だと誤解されるくらいの善一郎と八重ですが、デートという名目で遊びに行くのは実は初めてではないでしょうか?

「ひざまくらする?」

絶叫マシンで体調を崩した善一郎に、友人たちの前だというのにいつものお母さんモード(ひざまくらは八重にとってお母さんモードらしい)になってしまったり、言われた善一郎からしてみればかなりドキリとする瞬間があって、ちょっとハラハラする感じが面白かったです。

ちなみに、中学生くらいだとこういう恋愛ごとには女の子の方が大人びているイメージがありますが、この二人の場合は意外と無邪気な八重に対して善一郎の方がそういうことを意識してしまっています。

お母さんぶっているわりに、実は年齢の割に子供っぽいところもあるギャップが八重の魅力なのかもしれません。

味噌に詳しすぎる中学生

味噌汁でカンパイ!は、母親を亡くした善一郎の母親役を友人の八重が演じてみたりする、ある意味ではおままごとの延長線上にあるような微笑ましい作品ですが、こと味噌汁に関して言えばこの二人、既に大人顔負けの知識を有しています。

それも一応はそれを商品として扱う商社に勤める社員が驚くくらいに。

「2人で父さんの仕事を、手伝ってみない?」

善一郎が実の母親のことに興味を示すとともに、両親の仕事のこともちょっと気にした様子を見せたこともあるのか、それともどうやら味噌汁に詳しいらしい善一郎と八重が普通に役立つと思ったのか、ともあれ善一郎の父親は自らが務める商社の仕事を・・といってもモニターのようなことを善一郎と八重に依頼します。

「えーと・・2人は赤味噌白味噌の違いはわかるのかな?」

「熟成期間の差ですよね。長いほど赤へと色が濃くなる・・。長期熟成するためには塩分が必要だから、必然的に赤味噌が辛口になる」

恐らくわからないことを期待してなされた善一郎の父親の部下の質問に対してスラスラと答える善一郎に・・

「そういえば・・「味噌汁は塩分多い」ってイメージ、あるかな?」

「ないです。前に調べたんですけど・・、他の日常的な食べ物と比べても多いという訳ではなかったし・・」

恐らくは「塩分が多いイメージがある」という回答を期待していた質問に「ない」と答える八重。

まあ、漫画8冊分たっぷり味噌汁のことを学んできた二人ですからある意味当たり前なのかもしれませんが、商社に勤める大人からしたらこんな中学生、驚き以外の何物でもありませんよね。(笑)

コアな知識を持っている大人は数多いですが、中学生くらいだとその辺誰でもあまり変わらないものですし、それも味噌汁というある意味では地味な分野ですからそれは驚くと思います。

花粉症を認めたくない善一郎

「そんな目で見るな! オレは花粉症じゃないっ!」

今巻ラストではどうやら花粉症が発現したらしい善一郎が描かれています。

認めたくないし、病院にも行きたくない。

そんなちょっと我儘な善一郎が・・

個人的にはものすごく共感できるポイントです。

「善って病院嫌い・・」

「いや、オレだっていざという時は行くさ! ただ、今は・・その時じゃないだけだ・・!」

いやはや、漫画のキャラクターにここまで共感できることって意外と珍しい。

なんといか、たぶんこのシーンの善一郎って「いや病院行けよ」って感じで共感できない人が多数派だと思うんですが、だからこそ少数派な感じのする善一郎に共感ができてしまう。

うんうん、病院って行きたくないですよね。認めたくないですよね~

今はその時じゃないとか、まさに全く同じ言い訳を30過ぎてもやってますよ僕は。(笑)

・・あまり共感してくれる人の多くない考え方なので、漫画のキャラクターとはいえ同じことを言っているキャラクターがいてちょっと嬉しくなってテンションが上がってしまいました。

そして、そんな善一郎のために八重が作ったのは、『えのき茸と豆腐とブロッコリースプラウトのお味噌汁~ヨーグルト入り~』。

えのき氷は説明を聞く限り味噌汁に合いそうですが、隠し味のヨーグルトが意外すぎますね。

ちょっと想像できないですし、試してみようとも思いづらいところがありますが、味噌汁の可能性の高さがうかがえますね。

ちなみに、この独特の組み合わせは八重がこっそり善一郎のために花粉症対策として選んだもの。

色々なものと合わせられるからこそ、お味噌は健康のための工夫もしやすい食材なのかもしれませんね。

総括

いかがでしたでしょうか?

ごっこ遊び的な絶妙な距離感が素敵な善一郎と八重ですが、その関係性に何かしら進展がありそうな微妙な空気が7巻くらいからありますが、そんな雰囲気がジワジワと増してきているような気もします。

次巻予告を見ると、そんな距離感にまた一段と変化が訪れそうでなんだか楽しみです。

 

『りゅうおうのおしごと(11)』将棋星人の棲む星に地球人の女の子がたどり着くまでの物語(ネタバレ含む感想)

 

本記事は将棋ラノベの名作であるりゅうおうのおしごと!の魅力を、ネタバレ含む感想を交えて全力でオススメするレビュー記事となります。

奨励会三段リーグに打ちのめされた空銀子の過去と現在。既刊を含めても最も物語が進展を見せた11巻目となります。

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本作の概要

あらすじ(ストーリー)

自ら死を望んでしまうほど奨励会三段リーグに追いつめられてしまった空銀子。

どうすればそんな銀子を助けることができるのか?

必死に考えた八一は、絶対に死ねる場所へと銀子を連れていこうとします。

銀子を思いとどまらせるために、そして・・

自らが好意を寄せる女の子が本当に死んでしまう前に思いを伝えるために。

しかも、どうやらもし銀子を思いとどまらせることができなかったら後追いする覚悟まであったようですね。

とはいえ、絶対に死ねる場所。福井県東尋坊への小旅行の間に銀子の頭も冷えており、さすがに自死は思いとどまりました。

そして福井県といえば八一の出身県。まさかの八一の実家へ銀子と二人で訪問する展開になります。

銀子からすればかなりの不意打ちですが、さすがに八一の両親を前にかなり緊張している様子で、いつものあたりの強さも若干なりを潜めています。(笑)

そして、今まで散々ロリコンと言われれ続けていた八一ですが、その度合いは割と軽度だったことが明らかになります。

なぜなら、どうやら八一の思い人 が銀子であったことが、八一が銀子に告白しようとしたことで判明したからです。

銀子は八一より二歳年下。十代後半の二歳差なら、まあ全然普通の年齢差ですからね。

そういうわけで、前巻ラストの大きく追いつめられていた精神状態からは脱した銀子は、大阪に戻って再び奨励会三段リーグに挑みます。

そして、銀子にとってはかつて勝利したものの才能の差を見せつけられた因縁の相手である椚創多と再び相まみえます。

ピックアップキャラクター

今までにも特定のキャラクター一色だと感じるような一冊はありましたが、11巻ほど顕著なのは初めてなのではないかと思います。

まさに空銀子のための一冊という感じで、人気キャラクターの割には今までその内面が描かれることの少なかった空銀子の、過去と内面が次々と詳らかにされていきます。

ちなみに、11巻を読んで空銀子に対するイメージがグルっと変わった人は多いのではないかと思いますが、実のところ空銀子のキャラクター性は何も損なわれておらず、むしろ最初からずっと一貫しているといえるのではないかと思っています。

その辺、かなり興味深いのではないかと思います。

空銀子

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(「りゅうおうのおしごと!(5巻)」より)

女流棋界では最強の女王である空銀子ですが、一方で女性初のプロ棋士を目標に、将棋星人たちの世界に追い付くために、奨励会三段リーグを戦う挑戦者でもあります。

しかし、さすがの空銀子も厳しい三段リーグの戦いに疲弊して、心が折られてしまいました。

そんな空銀子がどのように復活を遂げていくのかが11巻の見所になっています。

ネタバレ含む感想

追いつめられた空銀子

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空銀子

・・次は、絶対に勝てない・・もう決まってるの・・このまま四連敗して、ずっと負け続ける・・そんな苦しい思いをするくらいなら・・死んだほうがマシじゃない・・

これが11巻序盤の銀子の精神状態です。

今までにも精神的な脆さをのぞかせたことのある銀子ですが、これはただのメンヘラ女子ではない、マジで危うい様子がうかがえます。

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八一

そんなんだから詰みを逃して負けるんだ。そもそも初めての三段リーグで連敗して、それで右手斬り落とすだとか殺して欲しいだとか、どんだけメンタル豆腐なんですか? 中学生棋士になった俺だって三段リーグ一期抜けは無理だったんですよ? 俺より才能ないくせに自惚れるのもいい加減にしてください

対する八一は、そんな銀子を思いとどまらせるために必死で考えを巡らせます。

考えて、一言でいえば「銀子には才能が無いのだから簡単に三段リーグで勝ち抜けるわけがない」という趣旨のことを八一は銀子にぶつけています。

これは一見、銀子への追い打ちのようにも捉えられますが、「誰もが抱いている銀子への期待を背負う必要は無い」と言っているようにも聞こえますね。

女性初のプロ棋士が望まれる銀子には、想像を絶するプレッシャーが掛かっているに違いありません。

何も知らなければ微笑ましく見えるであろう銀子の部屋にある応援の寄せ書きも、この時の銀子の状態を見た後だと残酷な脅迫文に見えるから不思議です。

ともあれ、ここでの八一のセリフの意図は強制的に銀子から脅迫的なプレッシャーを取っ払おうとしたものなのではないかと思っています。

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八一

だったら俺が連れて行ってあげますよ。絶対に死ねる場所へ

とはいえ、この時の銀子にはどんな言葉よりも頭を冷やす時間が必要だったに違いありません。

そういう意味では八一の取った行動はかなりの好手だったのではないでしょうか?

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八一

いろんな人がいろんな苦しみを味わって、日本中を転々とさまよって、最後の最後に辿り着いたのがこの崖なんです。追い詰められて行き場のなくなった人たちが・・ここから落ちた。同じようにすれば楽になれますよ? どうです? 身を投げれますか?

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空銀子

・・死ねないよ。私は『かわいそう』じゃなかったんだから

遠方にある絶対に死ねる場所。

福井県にある東尋坊

そこに行くまでの間に銀子には頭を冷やす時間ができましたし、冷えた頭で覗いた東尋坊の崖下に飛び込むことは常人にはできるものではありませんよね?

さすがに、まさか本当に飛び降りたりしないかと八一からすればかなりハラハラドキドキした瞬間でしょうけど、銀子に自ら死なない選択をさせることに成功した八一。

こういう場合、無理やり縛り付けるように自死を止めたとしても危うい状態であることに変わりはありませんが、自ら死なない選択をさせることができたらひとまず安心ですから、その辺八一の手法はかなり賢かったと思います。

それにしても、この東尋坊に至るまでのストーリー構成がとても面白かった・・というよりも贅沢だったという印象の方が近いかもしれません。

りゅうおうのおしごと!において今までで最大の過去の回想となりますが、福井県への小旅行の中で、八一や銀子の過去がかなり詳細に語られています。

どのように八一・銀子は清滝鋼介の弟子になったのか?

姉弟弟子たちはどのように成長していったのか?

いつから八一は銀子のことを姉弟子と呼び、敬語で話すようになったのか?

そんなことを中心に、現在に至るまでのあれこれがかなり詳らかにされていて、既刊の様々なシーンに繋がるような過去すらサラッと惜しげもなく語られていて、情報の出し方がとても贅沢に感じられました。

まあ、考えてみればメインヒロインである八一の弟子・雛鶴あいや夜叉神天衣を主軸にしたエピソードではここまでの回想を入れることは難しいでしょうし、銀子がメインのエピソードで一気に吐き出してしまおうという考え方なのかもしれませんね。

初めての封じ手

将棋をテーマにしたライトノベル。それがりゅうおうのおしごと!という作品です。

主人公の八一にしても可愛らしいヒロインたちにしても、個性的なキャラクターたちの誰もにライトノベルのキャラクターらしさがあります。

とはいえ、基本的には将棋の『熱さ』が描かれているのがりゅうおうのおしごと!という作品で、例えばラブコメやギャグのような要素は他のライトノベルに比べると、良い意味でオマケ的な付加要素と感じられるとも思っています。

しかし、11巻の序盤から中盤にかけては将棋の要素は薄めで、特に封じ手のエピソードでは初めて将棋以外の『熱さ』が描かれていたのではないかと思います。

それは八一と銀子のラブコメ

今まで散々ロリコンだと言われてきた八一ですが、どうやら恋愛的な意味で本当に好きなのは銀子であることが11巻で明らかになりました。

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八一

俺が《浪速の白雪姫》に負けないくらい大きくなったら、その時に堂々と名前で呼ぼうと決めたんです

どちらかといえば八一に置いていかれることに不安になっている銀子が今までも描かれてきた印象がありますが、八一もまた銀子が女王になった時に似たようなことを感じていたようで、銀子に相応しいくらいの大物(すでにかなりの大物だと思いますが)になるまでは『姉弟子』と呼び続けようとしていたようです。

しかし、今回そんな銀子が自死を匂わせたことで早く思いを告げたいと八一も思ったのかもしれませんね。

いずれはこういうヒロインキャラとのラブコメが描かれる時が来るとは思っていましたが、銀子とのそれがこんな素敵な感じで描かれるとは予想していませんでした。

それに、告白後の二人のやり取りがものすごく可愛らしいのですけど、ちゃんと将棋を絡めているあたりがりゅうおうのおしごと!らしいところ。

まさか封じ手というキーワードであんなシーンが描かれるとは驚きですね。(笑)

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空銀子

胸の中から気持ちが溢れちゃわないように言葉が出るところを、封じて

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八一

い、今ここで!? 俺からするの!?

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空銀子

封じ手は積極的に自分から封じていくタイプなんでしょ?

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八一

こんな封じ手は初めてなんですよっ!!

将棋における封じ手のスタンスの話をした後にこの流れ。面白さがあるのと同時に凄くロマンティックで素敵なシーンだったと思います。

まあ、作中では言葉が濁されていたところをハッキリ言ってしまえば要はキスしていたわけなのですが、この後もう一度とねだる八一の言い訳がまた面白い。

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八一

そういえば、封じ手は二通作成するんでした・・すみません説明不足で

封じ手が万能すぎるっ。(笑)

封じ手と絡めてこんな素敵なシーンが書けるとは、作者の白鳥士郎先生の発想力がさすがすぎます。

しかし、封じ手とは必ず開封されるはずのものですが、これがいつどのような形で開封されるのか。銀子自身が前途多難と感じているように、開封を阻止しそうな二人のあいは一体どうするのか。

その辺、今後の展開が気になるところですね。

それにしてもこの封じ手のエピソード。

さしずめ、三段リーグの毒リンゴを食べた『浪速の白雪姫』の目を覚ます将棋の星の王子様のキスといったところでしょうか?

こういうピッタリな感じ、僕は嫌いではありません。

また、このエピソードの直後にも敬語が抜けきらなかったり、やっぱり弟子のことは気になる八一のことを内心で減点している銀子ですが、こういうやり取りに以前ほどのトゲトゲしさが無いのも印象的でした。

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空銀子

ほほぅ? 私より小学生が大事だと? すいませんね高校生で

こんなセリフからも若干の余裕が感じられますね。(笑)

なんとも微笑ましいことです。

将棋星人の棲む星への一歩を踏み出した『浪速の白雪姫』

実は、銀子を勇気づけたのは八一だけではありません。

5巻では八一に竜王を防衛されたことで国民栄誉賞の受賞も見送られた神とまで呼ばれた名人でしたが、何かしらの偉業を達成するのは時間の問題でしたし、国も将棋連盟も名人に国民栄誉賞を与えたくて仕方のない状況でした。

そして、タイトル通算100期と歴代最多勝利を理由についに国民栄誉賞が与えられるに至ったわけです。

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八一

直接対決で何回か勝つことなら、俺みたいなのでもできます。簡単じゃないけど・・互角の戦いはできると思う。 でも名人の記録を抜くなんて絶対に無理です。複数冠を一年持つことだって想像すらできないんですから

5巻の竜王戦では名人の上を行った八一ですが、『勝つ』ことよりも『勝ち続ける』ことの難しさをここでは指摘しているわけですね。

まさに神のごとき偉業で、世間的には『浪速の白雪姫』ともてはやされ、名人と並ぶ有名人である銀子も、本当に本気で将棋をしている例えば奨励会員やプロ棋士からは軽んじられることも多いようです。

だから銀子は、そんな世界の頂点にいる神(名人)にとって、自分は並ぶどころか歯牙にもかけられない存在だと思っていた様子ですが・・

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名人

私が今、一番戦ってみたいのは・・女性です。女性がプロ棋士になる時代がもうすぐ、確実に訪れます。棋士として、男性と女性の能力に差なんてありませんから

国民栄誉賞を受賞した会見でAIとの対局への興味を問われた名人が述べたのは、明らかに銀子を意識した回答でした。

曰く、名人自身が到達した偉業はあくまでも今までにもあったレールの延長線上にあるものでしかなかったが、周囲の環境的にも女性が将棋界で出世するのはかなりの困難で、それを乗り越えてきた人間が弱いわけがないという考えのようです。

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名人

ずっと見てきましたから。棋譜はもちろん、タイトル保持者としての振る舞いも、奨励会員としての努力も

神と呼ばれる名人に自分の将棋が届いていた。ここでかつて銀子の師匠の清滝鋼介の言っていた「将棋の神様は八一や銀子のことをちゃんと見ている」というセリフに繋がるのが素敵な展開ですね。

逆説的に言えば、こういうところで見る目があるからこそ名人は神とまで呼ばれているのかもしれません。

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名人

誰も歩いたことのない道には、正解も間違いもありません。ただ経験上、一つだけ言えることがあるとすれば・・運命は勇者に微笑む。私は、そう思います

長くなりましたが、八一と同じくらい銀子を勇気づける結果になったのがこの名人の会見でした。

ちなみに、この会見を見た後の八一と銀子のちょっとしたやり取りがものすごく微笑ましくて、この辺にもちょっと余裕を取り戻した銀子が表れているのにホッとした感じになります。

ともあれ、八一と名人によって復活した銀子は再び三段リーグの舞台に戻ってくるのですが、そこではいきなり強敵・椚創多との対局が描かれています。

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空銀子

よかった・・斬り落とさなくて

これは対局前の銀子のモノローグですが、最初は勝手に悪手を指す自分の手を斬り落とすとか言っていたところから完全に立ち直っていることが窺えますね。

その後の対局は、6巻では勝利したものの完全に格上だと認めてしまっていた椚創多との激戦が繰り広げられるのですが、名人の『運命は勇者に微笑む』の言葉を胸に勇気を持って戦った銀子はついに・・

そこで銀子はついに・・

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空銀子

着いたよ。八一

まだ八一の背中は遠いものの、銀子はついに将棋星人の星に一歩目を踏み出しました。

手を読むのではなく見える領域。椚創多との対局の中で銀子は大きく成長しました。

いやはや、11巻は本当にこの『銀子の将棋星人の星への一歩目に至るまで』を一冊かけて丁寧に描いたという印象の一冊だったと思います。

だからこそ銀子のステップアップにとても説得力がありましたね。

逆に言えば、女性が奨励会三段リーグに臨むということには、それだけの説得力が必要だったということなのかもしれません。そんな道だからこそ、そこを歩く女性を名人は勇者と称しているのだと思います。

それにしても、大きく変わった八一と銀子の関係性や銀子の棋力が今後の展開にどう影響してくるのかが、かなぁり気になるところですね。

11巻はメインヒロインである八一の弟子たちはほとんど登場していませんが、その辺の動向も気になります。

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『ドラゴンボール超(10)』本気で戦えない悟空たちが新鮮な漫画の感想(ネタバレ注意)

 

ドラゴンボール超もとうとう10巻の大台に乗りました。

テレビアニメ版で放送されていた力の大会編も終わって、前巻から完全にオリジナルなストーリーが始まっていますが、前評判では敵が微妙だとかなんだとか色々言われていたものの個人的には結構面白いって思います。

敵のモロもただ強いだけではないトリッキーな奴で、ただただ力押しのバトル一辺倒ではない戦いになっていきそうな感じにとても好感が持てます。

原作レイプみたいなことを言う人もいるみたいですが、僕も一応ドラゴンボール世代で原作も大好きですが、むしろドラゴンボール超になってからのストーリーの方が面白いとまで思い始めているまであります。

なんというか、例えば孫悟空の強さは昔と同じでインフレーションしていっているんですけど、ただ強いだけでは解決できなさそうな事件に巻き込まれていっているあたりが新鮮に感じられて良いですね。

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本作の概要

銀河刑務所に1000万年も収容されていた凶悪犯のモロが脱獄した。

モロは気を探っていた孫悟空逆探知的に見つけるほど生命エネルギーに敏感で、それに見合っただけの実力も持っています。

孫悟空ベジータは、若さを求めてナメック星にやってきたモロと交戦しますが、モロの印象は前評判ほどの実力者という感じではありませんでした。

しかし、相手の体力を奪い取りながら戦闘するという独特のスタイルで戦っていたモロを相手に、孫悟空ベジータは気付かない内に超サイヤ人にもなれない、瞬間移動も使えないというところまで体力を奪われてしまっていました。

力押しだけでは勝てなさそうな強敵を相手に、孫悟空ベジータがどうやって戦っていくのかが気になるところですね。

本作の見所

本気で戦えない悟空とベジータ

「ククク・・残念だったな。この技は星が死滅するまで放出可能だ。限界など無いに等しい」

星のエネルギーを吸収して攻撃に転化するモロを相手に、ベジータはその技に限界があるのではないかと指摘します。

しかし、それに対するモロの回答はある意味では予想通りのもので特に意外性はありません。そのことに聡いベジータが気付いていなかったとは思えないのですが・・

「そうか・・噂どおりのクソ野郎で嬉しいぜ。ぶっ殺しがいがある」

実はモロからナメック星に来た目的を含め色々と聞き出すために、わざと何も気付いていないフリをしていたようですね。

この辺はピッコロを彷彿とさせる戦い方ですが、なるほどただ力押しではない敵を相手にする場合ならベジータもこういうことをしそうという納得感があると思います。

そこから本気になったベジータは、ナメック星のエネルギーを使って戦うモロを圧倒し始めるのですが、その戦いを見ていた孫悟空はその時点で少しばかり違和感を覚え始めます。

ナメック星のエネルギーで徐々にパワーアップしていくモロに対して、ベジータは当然少しずつ体力を使っていくのですが、そのスピードがどうやら通常より早そうで・・

「なれない・・。超サイヤ人に・・なれないぞ」

「や・・やっぱりそうなんだ! オラたちの気も吸い取られちまってんだ!!」

ナメック星のエネルギーの中には、ナメック星に住む生物のエネルギーも含まれる。

つまり、例えば孫悟空元気玉でやっているようなことを強制的に行っているようなものですね。

ともあれ、ベジータもそれほど大きなダメージを受けていないにもかかわらず超サイヤ人になれなくなってしまい、戦っていない孫悟空ですら瞬間移動で逃げることができないほどにエネルギーを吸い取られてしまっていました。

トリッキーな戦い方をするモロを相手に、孫悟空ベジータはまずはひとつ手痛い敗北を喫することになってしまいました。

ナメック星での戦いが懐かしい

本編の内容と直接関係あるわけではありませんが、ナメック星が舞台になっているというのが地味に懐かしいですね。

強敵との戦闘とナメック星の組み合わせは、どうしたってフリーザ編を思い出させます。

そして、フリーザ編の時はまだ敵だったベジータには、かつてナメック星人を殺して回った過去があります。

「・・じいさん、1つ確認させてくれ。オレが昔ナメック星人を殺したこと・・どう思っているんだ?」

それに対して大なり小なり思うところのある様子のベジータがちょっと印象的でした。

モロのドラゴンボールの集め方が、まさにフリーザの時と同じなので過去のことを思い出したりしていたのかもしれません。

「もしお前が生き残ったら真っ先にこの星を元通りにしてやってくれ」

ベジータの恨んでいないのかという問い掛けには、ナメック星人は恨みを連鎖させるような愚かな種族ではないと否定されますが、この二人の過去に対する静かなやり取りが個人的にはものすごく好きです。

近年のドラゴンボールにおける、こういうベジータの原作ではあまり見られない一面はよく賛否が議論されがちなところですが、個人的には人は変化するものだと思っているし、作中のキャラクターの中でも人生における立ち位置が最も大きく変化しているともいえるベジータが変化していくのはある意味で自然なことだと思っているので、どちらかといえばこういうベジータって好きな方かもしれません。

強くなった魔人ブウと大界王神

本家のドラゴンボールでは最後の強敵だった魔人ブウですが、仲間になったドラゴンボール超以降では活躍の場が少なくなった印象がありました。

孫悟空ベジータが強くなりすぎてしまっていますし、破壊神ビルスをはじめ魔人ブウがかなり見劣りしてしまうほどの強敵が続々と登場しているので仕方がないのかもしれませんが、本家で最後の強敵だった魔人ブウにはもっと活躍してほしいと思ったのも事実です。

亀仙人にすら見せ場のあった力の大会編でも空気でしたからね。(笑)

ですが今回は、魔人ブウが吸収して現在の人格の元になっている大界王神がキーパーソンになっていることもあってか、魔人ブウの活躍が目覚ましいですね。

「でもよ・・あいつ久しぶりに闘ってるとこ見たけど、モロの魔力が通じないとしてもそもそも前より強くなってねぇか?」

魔人ブウもまたトリッキーな強さの実力者ですが、孫悟空ベジータの苦戦したモロのエネルギーを吸収する力が魔人ブウには通用しないようです。

そして、何故か以前よりも強くなっているようなのですが・・

「みんなはじめましてだね。モロと闘っている間だけブウと交代させてもらうことにしたよ」

それ以上に驚きの異変!

まさか魔人ブウが大界王神に代わってしまうとは・・

かなりの衝撃展開ですが今巻はここまで。この超展開の説明が早くほしいところです。

総括

いかがでしたでしょうか?

ただ強いだけではないトリッキーな強敵であるモロ。そんな相手に孫悟空ベジータがどんな風に挑んでいくのか、何かしら新しい戦い方を身に付けたりする展開になってくるのか、大界王神はどんな戦いを見せるのか、気になるところが盛りだくさんの面白い展開で続きが楽しみです。

テレビアニメ版で放送していたエピソードまでは終えているわけですが、いつまでも漫画版は読み続けたい。そんな風に思う作品だと思います。

『ラブひな(11)』現代お約束ラブコメの原点とも言える作品の感想(ネタバレ注意)

 

浦島景太郎不在の11巻です。(前巻のレビューはこちら 

あっさりと留学試験に合格した浦島景太郎の旅立ち、そして帰ってくる直前まで時間が飛んで、浦島景太郎が不在のひなた荘が描かれているのですが・・

そこに浦島可奈子という浦島景太郎の妹が登場する波乱の展開になっています。

極度のブラコンであり、独占欲が強く兄に近づく女性に非常に厳しいヤンデレな一面もあります。

考えてみれば、『ラブひな』の連載当時にはヤンデレという属性はまだ一般的ではなく、ようやくツンデレが認識され始めたくらいだったような気がしますが、どんな属性であれ昔から存在はしたということですね。

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本作の概要

浦島景太郎は当初頭が良くないキャラクターとして描かれていましたが、東京大学に合格した今、そんな風な目で読める読者はほとんどいないでしょう。(笑)

というわけでどうやら頭が良かったらしい浦島景太郎は自身で見つけたやりたいことをやるために留学試験にあっさり合格し、半年間の留学が始まります。

そういうわけで管理人である浦島景太郎がいなくなったひなた荘。

そして、もうすぐ浦島景太郎が帰ってくるという時期になって現れたのが浦島景太郎の妹を名乗る浦島可奈子でした。

ブラコンでヤンデレの浦島可奈子が平和だったひなた荘の日常に一石を投じます。

本作の見所

浦島景太郎の旅立ち

浦島景太郎は最初に比べて本当に格好良くなってきたと思います。

考えてみれば、もともと幼い頃の約束を守るためとはいえ明確な目標を持って東大受験に臨んだりしていたくらいなので、そもそも目標を持ったらそこに向かって真っ直ぐなところがある性格なのだと思います。

そして、そんな浦島景太郎に徐々に惹かれていった成瀬川なるは、意外と既に骨抜きと言っても過言ではないくらい浦島景太郎のことを好きになってきているのではないかと思われ、この浦島景太郎の旅立ちのシーンではそういう部分がかなり強調されていた印象があります。

「・・だって、だって半年よ・・。半年もたったら私の気持ちだってどうなってるかわかんないじゃない。せっかく私あんたのこと・・」

自分もアメリカに付いていくのだと我儘を言ってしまったり、明らかに浦島景太郎のことを好きになっていることを認めるセリフを言っているところも、ここまで自分に素直な言動をしている成瀬川なるは珍しいですね。

「その・・俺、むこうでがんばって勉強してくるから。半年後・・4月になったら・・今度こそ一緒に東大行こう。幸せになれるかなんてわかんないけどね。でも・・俺、前にも言ったけどお前のことが・・好きなんだ・・だから・・ね。ムチャ言わないで・・」

誰だこのイケメン・・っ!

・・って思ったら浦島景太郎でした。

以前の浦島景太郎であれば成瀬川なるの言動に舞い上がってしまって、またドタバタコメディが始まるところですが、今回は格好良く締めていますね。

主人公なだけあって、もっとも大きく成長しているキャラクターであることは間違いありません。

浦島景太郎のいないひなた荘

浦島景太郎がいなくなって半年。

成績が悪かったしのぶは成瀬川なるの家庭教師のおかげで県内トップの高校に進学し、ちょっと大人っぽくなってきています。

高校一年生といえば初登場時の素子と同じですし、いつまでも子供っぽい感じじゃ可哀そうですしね。(笑)

そして、そんな素子はといえば・・

「すいません。なる先輩、キツネさん。勉強に集中できませんので静かにしてください」

そんな予感はしていましたが、まさかの浪人生に。

浪人生だった浦島景太郎を馬鹿にしていたことがあるだけにこれは恥ずかしいですね。

しかし、どちらかといえば凛としたところのあるキャラクターだった素子のこういうギャップが見られるようになって、それはそれでキャラクターとしての魅力を増してきているような気がします。

スゥ、サラ、キツネはあまり変わりませんが、そういう変わらない部分があるのもそれはそれで良いと思います。

浦島可奈子が初登場

ラブひな』には数多くのお約束的なキャラクターが登場しますが、その中でも浦島可奈子は当時としてはかなり珍しいレベルでオタク受けしそうなキャラクターだったのではないかと思います。

ちょっと普通ではないレベルのブラコンで、兄である浦島景太郎に自分以外の女性が好意を持つことすら許さないヤンデレで、変装と腹話術が得意得意だったり、そのファッションセンスさえも現代日本を舞台とした一応は日常系作品である『ラブひな』のキャラクターとしては異質でした。

今では、そういう類の作品に一人くらいはそういう少し世界観ブレイカーなキャラクターが登場するのは定番といえば定番な気もしますが、当時としては珍しかったと思います。

一癖も二癖もあるはずのひなた荘の住人たちを翻弄するほど周囲を自分のペースに巻き込むのが得意な浦島可奈子ですが、そんな彼女に寄り添おうとする成瀬川なるには少しずつ心を開いていこうとするのが可愛らしかったと思います。

しかし・・

「その・・私が・・私がその約束の女の子なの・・(多分)」

浦島可奈子が真の敵とまで公言する約束の女の子は、ほぼ確実に成瀬川なるであることはこの時点で明らかになっています。

「・・あなたのことだけは信じてたのに・・ひどいです・・」

そのことを知ってショックを受ける浦島可奈子。成瀬川なるに少し心を許しかけていた証拠ですが、ここでショックを受けるあたりがもともとの言動とはギャップがあって可愛らしかったです。

ひなた荘の恋愛偏差値

ドラゴンボール』の戦闘力しかり、バトル漫画では強さが数値化されることはままあることですよね。

それと同じではないかもしれませんが、浦島可奈子によってひなた荘の住人の浦島景太郎への好意を偏差値化しているのが面白いです。

一応受験漫画の一面もあるからか、ただの得点ではなく偏差値としているのも良いですね。

ダントツ一位であることに照れつつも、全く反論はしない成瀬川なるがひとつ印象的で、もっと前なら「なんで私が!」と文句のひとつでも言っていたのではないかと思われます。

そう、かなりの高偏差値に訂正を要求する素子のように。(笑)

もちろん、この偏差値は浦島可奈子の主観でしかないものなんですけど、カオラ・スゥが二位なのも意外性があって面白いですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

ラブひな』は今までにも何度か通して読み返している作品ですが、浦島可奈子が登場するといよいよ終盤が近づいてきたという風に感じます。

次巻は、帰ってきた浦島景太郎に注目ですね。

(次巻のレビューはこちら

『服を着るならこんなふうに(9)』アパレルとテクノロジーの組み合わせが面白い漫画の感想(ネタバレ注意)

 

毎巻思うのですが、服を着るならこんなふうにを読んだ後は無性に洋服屋さんに行きたくなりますね。

それなりにオシャレに興味はあるけど、ファッション誌なんかまで読むほどではない。だけど漫画は好きですよぉ~って層にとっては、ある意味どんな広告よりも効果がある作品なのではないかと思っています。

少なくとも、僕の場合は服を着るならこんなふうにを読んだ後に結構アパレル業界にお金を落としているので、若干面白い広告くらいな気持ちで読んでいたりもします。(笑)

今巻は、ファッションには詳しいけど電子機器に弱い環がついにスマホを手に入れた影響もあるのか、アパレル業界とテクノロジーを絡めたようなエピソードが多かったような印象があります。

どんな業界でもどんどんITの活用で便利になっていく世の中ですが、そういう面ではいつまでもアナログな印象のあったアパレル業界ですが、それでも徐々に変化していっていることが分かる興味深い内容だったと思います。

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本作の概要

今の時代、何をするにもスマホアプリって感じの世の中、電子機器が苦手だった環もついに重い腰を上げてスマホを購入します。

そういうわけで今巻はアパレル業界におけるテクノロジーの活用事例についてのエピソードが主軸になっています。

また、今まではファッション弱者の祐介に対してファッションを教えるのがエピソードの主軸でしたが、大人である祐介とは違うもうすぐ大学生の子供。祐介の友人の井上の弟の大翔にファッションを教えるエピソードによって、今までより若い世代に対しても参考にしやすい内容になっているのではないかと思います。

本作の見所

スマホを使う環

「教えてほしいんだ・・スマホの買い方を!」

今巻はそんな環のセリフから始まります。

1巻で洋服を買うのに尻込みしていた祐介も、その買い方に苦手意識を持っていたような気がしますが、何であれ一番最初のところで躓いて苦手意識を持ってしまうケースが多いのかもしれませんね。

僕はどちらかといえば祐介のタイプで、こういうガジェット系のものを買ったりするのには特に苦手意識はありませんが、未だにガラケーを使っているようなタイプの人は購入の段階でスマホに苦手意識を持っていたりするのでしょうか?

とはいえ、さすがにスマホの社会への影響度は無視できるようなものではなく、本当に何をするにも必要になってくるので、それを自覚している環もついに重い腰を上げたわけですね。

その後、環がLineを使っているシーンがあるのですが・・

「全然続き来ないんだけど何これ!? どうしたの環!?」

高橋奈那に「こんにちは」と一言Lineした後、その後のメッセージが続かなった環。

これは受け取った方からすれば確かにナニコレってなりますよね。(笑)

だけど、確かにLineって一度に言いたいことを言い切るんじゃなくて短い文章を区切って出したりしがちで、それに慣れないと変なことになってしまったりするかもしれませんね。

僕も、さすがに環のような理由で会話が途切れたことはありませんけど、誰かにLineしている途中で何かしら割込みが入って中途半端に会話が途切れてしまったことならあります。

ともあれ、スマホというガジェットを新たに手に入れた環。

「そうとわければ頑張らないとね・・」

アパレルというまだまだIT技術の活用が後進的な分野とはいえ、今まで全く使っていなかった環にとってはかなり世界が広がったに違いありません。

今巻では時々バイトを増やそうとしている環が印象的でした。(笑)

アパレルとテクノロジー

洋服自体がかなりアナログな存在であることも相まって、アパレルとテクノロジーってあまり相性の良い存在ではないと思っていました。

例えば、僕は割と何でもAmazoneとかで買い物をする方ですが、洋服だけは通販で購入したことはありません。

なんであれ実物を見た上で買いたいものってあると思いますが、洋服ってその筆頭ですからね。

デザインや質感、自分の持っている服とのコーディネートなんか、ネット上の写真を見た印象と実物を見た印象では全然違いますから、同じように思っている人は多いと思います。

とはいえ、有名ブランドだった通販をするようになってきている時代。

アパレル業界もテクノロジーをちゃんと活用しているんだよということを今巻では強調して教えてくれます。

ZOZOSUITなんて本書を読んで初めて知りましたが、洋服を通販する上で最大のネックとなるサイズの問題をこういうアプローチで解決していこうとする試みがあったりするんですね。

考えてみれば、アパレルの通販における最大の問題はサイズの問題であるはずですが、何とか試着しやすいようにしたり、ぴったりのサイズを選びやすいようにするアプローチの工夫は面白いと思います。

それにアパレルとテクノロジーの関係は通販に限りません。

3Dワンピースや電子ペーパー、それに自動で靴紐調整してくれるスニーカー。収納に特化したコートや気温の変化に対応してくれる洋服。

3Dワンピースはともかく、洋服というよりは今のところ色物の面白ガジェット感のある代物ですが、洋服よりはガジェット的なものに興味を持ってしまうような僕のようなタイプの人間でも面白いと思いやすいものがアパレルの世界にもあるんだと教えてくれました。

オシャレの先生

「俺別にオシャレになりたいわけじゃないんで・・」

主人公の佐藤祐介の年齢も相まって、どちらかといえば大人の男性のファッションが主題になりがちな服を着るならこんなふうにですが、祐介の友人の井上の弟の大翔の大学デビューのための洋服を選ぶエピソードでもっと若い世代のファッションについても教えてくれています。

オシャレをしようとすること自体が格好悪いという大翔の考え方は、僕も昔は多少なりとも思っていたところですが、今思えばただただ視野狭窄な考え方だったなぁと思っています。

ただし、メッチャ気持ちは分かるかもしれません。

若い頃ファッションといえば機能性重視で、今でも多少はその傾向はあるくらいなので。(笑)

ともあれ、環をはじめとするファッション強者の3人で大翔にファッションを教えるエピソードが2編ありますが、どちらも誰のプレゼンが受け入れられるのかという競争になっていて面白かったと思います。

また、少ない予算内でどれだけオシャレができるのかという視点も面白かったですね。

祐介の場合、何だかんだで結構高額な買い物もしていますから、参考にしきれない部分も多いですから。

他人目線のファッション

今巻では祐介の後輩の金子がファッションを教えるエピソードも多かったような気がします。

環が祐介にファッションを教えるのが主軸の漫画ですが、ファッションのような答えの無いものに対しては様々な視点でものを言うキャラクターがいた方が面白いし説得力があるということなのだと思っていますが、この金子のファッションに対するスタンスにはかなりなるほどと思わされました。

「俺を見るのは俺じゃないんで」

金子もまたオシャレ男子ですが、そのスタンスの中心は「他人からどう見えるか」であるようです。

当たり前といえば当たり前の発想なのだと思いますが、ちょっと「なるほど」と思ってしまいました。

洋服を買う時、もちろん誰かから見てどう感じるものになっているのかを考慮するわけですが、その誰かとは大抵自分自身だったりすると思います。

しかし、人の好みはそれぞれで、自分が良いと思っているものが必ずしも人から受け入れられるとは限りません。

他人目線でどう見えるファッションなのか?

そういう割り切った考え方で洋服を選んでみるのも面白いのかもしれませんね。

総括

いかがでしたでしょうか?

相変わらず、人並み程度にしかファッションに興味がない僕にもファッションの面白さを教えてくれる良い漫画だと思います。

漫画9冊分も飽きずに読まさせるファッションの奥深さにも驚きますが、考えてみればファッションを専門に仕事にしている人も山ほどいるわけで、そりゃあ奥深くて当たり前といえば当たり前なのかもしれませんね。

ちなみに、基本的にはメンズファッションを主題にした服を着るならこんなふうにですが、これの女性版も出るみたいです。

僕は男性なのでどうしてもメンズファッションの方が興味を持ちやすいですが、ファッションの最先端がレディースであることもまた間違いないのだと思います。

普通に勉強にもなるし面白そうなので、これもまた単行本が出たら読んでみたいと思っています。

『りゅうおうのおしごと(5)』最強の挑戦者を迎えた竜王戦が激熱な一冊です。(ネタバレ含む感想)

 

本記事は将棋ラノベの名作であるりゅうおうのおしごと!の魅力を、ネタバレ含む感想を交えて全力でオススメするレビュー記事となります。

将棋観を否定され、それでも最後には新境地へと至った八一が格好良い。最強の挑戦者を迎えた竜王戦が激熱な5巻目となります。

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本作の概要

あらすじ(ストーリー)

将棋界の2大タイトルのひとつである竜王に史上最年少の16歳でなった若き天才。それが主人公の九頭竜八一となります。

・・というのは1巻のレビュー記事で書いた『あらすじ』と同じ書き出しですが、5巻は最初から最後までそんな竜王の防衛戦が描かれています。

将棋界の伝説。神とまで呼ばれる最強の挑戦者を相手に、第一局目で八一は今まで積み上げてきた将棋観を否定されるほどの大敗を喫します。

手が読めなくて負けたわけではない。手が読めているのに、読んでいたにも関わらず八一の手を否定した名人。

そんな絶望的な状況に八一は、あれだけ可愛がっていた弟子・雛鶴あいに八つ当たりしてしまうほど追いつめられてしまいます。

そのまま第二局目、第三局目と立て続けに敗北し、カド番へと追い込まれる八一。

そんな時、自分自身にとっても重要な対局を八一に見せるために、奇跡のような勝利を八一に見せるために指したのは清滝桂香。

釈迦堂里奈という女流将棋界の伝説を相手に壮絶な勝利を収め、八一に報われない努力はないことを証明して見せます。

それで精神的に復活を果たした八一は、心機一転した状態で第四局目に臨みます。

そこでは一つ壁を越えた・・いや、これから壁を越えようとしている八一と伝説的な名人との激闘が繰り広げられます。

ピックアップキャラクター

本作品のタイトルはりゅうおうのおしごと!であり、主人公である九頭竜八一が竜王のタイトルを持っているからこそのりゅうおうのおしごと!であることは明白です。

そして、5巻ではそんな八一の竜王を賭けた七番勝負が描かれており、言うまでもなく八一が5巻の主役であったことは間違いありません。

九頭竜八一

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(「りゅうおうのおしごと!(9巻)」より)

史上最年少で竜王になった天才・九頭竜八一ですが、将棋界において神とまで呼ばれた最強の名人を挑戦者に迎え、失冠の危機に立たされています。

最初に八一の将棋観すら否定されるほどの大敗を喫したことで開幕三連敗。そんな状況で迎えた四局目こそが最大の見所になっていて、今までにない激熱な対局シーンが八一を中心に描かれています。

名人

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(「りゅうおうのおしごと!(5巻)」より)

かなり重要なキャラクターであるにもかかわらず作中で唯一明確な名前が記されておらず、キャラクターというよりもまるで主人公が乗り越えるべき壁という概念として描かれているような印象すらある『名人』ですが、5巻では竜王戦に最強の挑戦者として登場し、九頭竜八一の前に立ちはだかります。

ちなみに、かなり将棋に疎い人であっても元ネタになったプロ棋士に思い当たりやすいキャラクターでもあると思います。

ネタバレ含む感想

荒れる八一

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あい

だいじょうぶです! まだ一つ負けただけじゃないですか! これから巻き返していけば、きっと・・

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八一

一つ負けただけ・・だと? あの将棋がそれだけだと本気で思ってるのか!?

竜王戦の一局目の後の、八一と何だかんだで八一も溺愛している弟子・雛鶴あいとの会話ですが、敗北した師匠を励まそうとするあいに八一は苛立ちを見せます。

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八一

あんな将棋を見せられてよく笑っていられるな!? 一敗で済む話か! シリーズ中盤であれをやられてたら終わりだったぞ!? 俺の将棋観が根底から否定されたんだッ!!

ただ負けただけではない。

読み負けたりミスをしたのではなく、挑戦者である名人と同じ読み筋を真っ先に思いついていたにも関わらず、それは自分にとってあまりにも都合の良い展開だからと切り捨てていた八一。

しかし、その自分にとって都合の良かった展開こそが名人の勝ちに繋がっていた。

こういう盤上遊戯のゲームでは、実力者であればあるほど経験に裏付けられた優れた大局観を持っているもので、無限に存在する読み筋をすべて検証しているのではなく、ほとんど無意識のレベルで必要のない読みは切り捨てることができるものです。

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月夜見坂

オメーの読みは『浅い』んだよ。手当たり次第に読んでくからムダ読みが多い。読みの量は多いが、そのほとんどがゴミだ

5巻ではあいも月夜見坂燎に敗北した際にこのような指摘をされていますが、これはつまり大局観がまだまだだということを指摘されているわけですね。

そして、まだ将棋を初めて1年に満たないあいがこれを指摘されるのはある意味当然と言えば当然のことでしょうけど、竜王にまでなった八一の場合は積み上げてきたものの総量が桁違いのはずです。

そんな八一の大局観を、つまりは積み上げてきたはずのものを、名人は一局目を通して否定したわけです。

だからこそ八一は今までにないほど荒れていたわけですね。

気遣う内弟子の雛鶴あい。心配してやって来た空銀子。清滝桂香の手紙。そのどれもが八一には響きません。

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八一

どこだ・・努力なら、いくらでもするから・・教えてくれよ・・誰か・・強くなるしかない。一人でやるしかないんだ

誰かに助けを求めながらも一人でやるしかないと結論付ける独白からも、八一の追いつめられっぷりが分かりますね。

一局目で名人に将棋観を否定された八一は、そのまま竜王戦で三連敗してしまっています。

七番勝負なので、既にカド番に追い込まれてしまっていて、竜王を防衛するためにはここから強敵である名人に四連勝する必要がある。

負けるにしても、こんな精神状態で負けてしまうのは明らかに良くない傾向で、5巻の前半はそういう意味でハラハラの展開になっています。

報われない努力はないことの証明

八一を荒んだところから連れ戻したのは、愛弟子の雛鶴あいでも姉弟子の空銀子でもなく、清滝桂香でした。

3巻以降、清滝桂香の活躍が目覚ましいですね。

1巻時点では保護者的な立ち位置のキャラクターでしかないと思っていましたが、何というか、これほど生きたキャラクターになってくるとは驚きです。

3巻のあとがきから作者の白鳥士郎先生にとってもかなり思い入れのあるキャラクターであることが伝わってきますが、それも頷ける働きぶりですね。

女流棋士を目指して、一度は諦めかけ、それでもまた掴んだチャンス。

勝てば女流棋士になれる。

そんな重要な対局を、清滝桂香は女流棋士になるためというそれ以上に、八一に報われない努力はないことを証明するために見せつけます。

清滝桂香の相手は永遠の女王(エターナルクイーン)とまで呼ばれる女流タイトルホルダーの釈迦堂里奈。

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清滝桂香

報われない努力はない。それを証明するために戦いました

地の分

実力も実績もずっと格上の相手に勝利して見せることで、清滝桂香は報われない努力はないことを証明しようとしました。

たとえ将棋観を否定されようと、積み上げてきた努力は無駄ではないのだと、そう言いたかったということでしょうね。

綺麗ごとというか、純然たる事実を言えば報われない努力だってあるはずなのですが、たぶん清滝桂香もそれは分かっていたからこそ、それをただ口にするのではなく何が何でも有言実行してみせようとしたのだと思います。

だから桂香さんに勝利をもたらしたのは将棋の技術じゃない。
それは・・決して砕けない勝利への意思だった。
勝利を信じて真っ直ぐ突き進む勇気だった。

だからこそ、そんな清滝桂香の証明が荒んだ八一の心にも響いたのだと思います。

決して砕けない勝利への意思。

決して諦めないこと。

それはりゅうおうのおしごと!の作中でこれまでも繰り返し語られてきた将棋の才能のひとつであり、そもそも八一はそこに雛鶴あいの才能を見出していたはずですが、清滝桂香の証明によって改めてそれを思い出さされたということでしょうか。

神のごとき名人

本記事はりゅうおうのおしごと!を10巻まで読んでいる時点で書いていますが、少なくともその時点で最も対局の描写が面白いのは、八一と名人の竜王戦の第四局だと思います。

他にも面白い対局はたくさんありますし、ライトノベルらしく二人のあいをはじめとする可愛らしい女の子の対局の方が面白いって思う人もいるかもしれませんが、個人的にはやっぱり最高峰のカードって興味深いですし、その最高峰な対局が本当に上手く表現されていて、読んでいて手に汗を握る緊張感がこれでもかというほど伝わってきました。

また、挑戦者である名人の表現がまた良いですね。

ピックアップキャラクターの紹介でも前述しましたが、名人はりゅうおうのおしごと!の作中でも唯一名前が語られておらず、顔が見えないキャラクターです。

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八一

この人・・こんな顔してたのか・・?

この対局で八一は、両者ともに反則の手を指さざるを得ないという奇跡を発見して引き分けの指しなおしまでに持ち込みますが、そんな奇跡以上に印象的だったのが八一が初めて名人の顔に気付くシーン。

自分が名人よりも強いとは思えない。
この人よりも才能があるとも思えないし、この人のようになれるとも思えない。
けど、それでいいんだ。
名人が名人であるように、俺は俺だ。

神とまで呼ばれる名人は、確かに神のごとく強いが当たり前のように普通のおじさんでした。

憧れは憧れで良いという気付きが素敵だったと思います。

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八一

この鬼畜眼鏡がッ! どういう体力してんだ・・!!

憧れに対するセリフがコレってのがまた面白いですが、自分は自分であると再認識したからといって、当然勝利を諦めたわけではありません。

そして、指しなおしの対局の最後の最後まで続く緊張感が本当に最高で、名人の方が多く持ち時間を残している状況で、もう持ち時間のない八一が投了を決めかけた時に名人が最後の確認のために持ち時間を使ったことで、つまりは八一にも時間が手に入ったという展開が激熱すぎます。

名人が時間を使わずに指していたら八一は投了するつもりだったようです。

しかし、名人は時間を使った。

その時間を使って考えた八一の手で、名人は投了したのです。

こんな素晴らしい展開ってなかなかないですよね?

相手の時間を使って考えるというのはある意味では基本という気もしますが、相手が持ち時間を使ってくれるかは運次第です。

それでも諦めなければこういうこともあるということですね。

特装版の小冊子

本編とは関係の無い未来のIFストーリーという感じですが、5巻特装版の小冊子はなかなか面白い内容になっています。

30年後の未来、空銀子と雛鶴あいが女流名跡戦で戦う話になっています。

何でメインヒロインの雛鶴あいよりも空銀子の名前を先に書いたのかといえば、これが空銀子視点の話・・というか空銀子の夢オチになっているからです。(笑)

そこに登場する雛鶴あいは女流五冠の超強豪であり、女流名跡のタイトルを持っているものの全盛期よりはかなり衰えた空銀子に挑戦する『最強の挑戦者』と目されていました。

何というかそんな夢を見るあたり空銀子は、雛鶴あいのことを今はまだ実力差はあるもののかなりの脅威に感じていることが窺えますね。

また、5巻本編で最強の挑戦者を相手に迎えた八一と、夢の中で雛鶴あいの挑戦を受けている空銀子が少しばかり重なるのが興味深いと思います。

特装版ということで今ではなかなか手に入りづらいかもしれませんが、なかなか面白いので興味があったら探してみてください。

シリーズ関連記事リンク

『ラブひな(10)』現代お約束ラブコメの原点とも言える作品の感想(ネタバレ注意)

 

新たな目標に向かい始める10巻です。(前巻のレビューはこちら

浦島景太郎に関してはパララケルス島のエピソードで既に自分の目標を見つけかけていましたが、そんな浦島景太郎に触発されてやりたいことを模索する成瀬川なるの姿が印象的でした。

また、乙姫むつみの記憶喪失によって未だすべてが明らかにされていない浦島景太郎と成瀬川なると乙姫むつみの3人の幼少期が少し垣間見えてきます。

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本作の概要

前巻で浦島景太郎は成瀬川なるに告白し、成瀬川なるも自分の気持ちに整理が付ききっていないものの一定の答えを出します・・が、友達以上恋人未満な微妙な関係を続けてしまっているウブな二人。

乙姫むつみの記憶喪失がキッカケで少し進展したのかしなかったのかは微妙なところですが、少なくとも成瀬川なるは今まで以上に浦島景太郎のことを意識するようになってきました。

一方で東大に合格した二人はそれぞれやりたいことを模索していますが、考古学に興味を持った浦島景太郎は海外留学、つまりはひなた荘からいなくなることを計画していました。

本作の見所

二人だけのひなた荘

みんな何かしらの事情でいなくなって、浦島景太郎と成瀬川なるの二人きりになったひなた荘では、友達以上恋人未満な様子が描かれています。

いや、停電中とはいえドタバタせずに混浴している様子はもはや恋人以上である気もしますが。(笑)

前巻で一応は告白の返事らしきものを、かなぁり曖昧ではあったもののしている成瀬川なる。つまりは浦島景太郎が多少恋人らしいことをしようとしても成瀬川なるは今までのようには文句を言えません。

しかし、文句を言ったり良い雰囲気になっても微妙に間が悪かったり。

なかなか恋人らしい雰囲気になりきらないのがこの二人らしいといえばらしいと思います。

「で、でもあのアレだよね。夏だし例えば沖縄の海とかさ、そーゆー開放的な所に行っちゃったりすれば私もちょっとはOKかなーとか思っちゃうかもよ」

成瀬川なるのフォローのセリフも、今までなら見られなかった感じのセリフだと思います。

そして、こんな今までよりも大人っぽいセリフを言っている成瀬川なるが、逆に今まで以上に子供っぽく見えるのが興味深いシーンだと思います。

 

乙姫むつみの記憶喪失

二人きりだと思われたひなた荘には乙姫むつみが残っていました。(笑)

温泉の水面下から登場するのには笑いました。

こういう登場の仕方が違和感のないキャラクターですよね。

そして、沖縄というワードを出した成瀬川なるに反応して、三人で沖縄に行くことになります。

この組み合わせとシチュエーションはどことなく3巻の傷心旅行編を思い出させられますね。

「とにかく私はお2人を応援しますよ」

相変わらず浦島景太郎と相性の良さそうな所を見せつつも、かなりグイグイと成瀬川なるを浦島景太郎にくっつけようとする乙姫むつみが印象的でした。

おっとり天然系で、あまり恋愛系の話をしなさそうなタイプにも見えるのですが、こと浦島景太郎と成瀬川なるのことになるとテンションが上がるのは、2人とは幼馴染だったからというのもあるのかもしれません。

そして、そんな乙姫むつみが・・

まさかの記憶喪失に!?

現実には見たことないけどフィクション作品では山ほど発生する記憶喪失ですが、『ラブひな』の中では乙姫むつみほど記憶喪失が似合う(?)キャラクターも他にいませんよね。(笑)

また、乙姫むつみの記憶喪失は記憶が昔に遡る形のものとなります。

そこでおしゃぶりを加えつつ乙姫むつみが遡っている年齢児のコスプレをしてみせる成瀬川なるがまた笑わせてくれます。今巻、意外と成瀬川なるが今まで以上にギャグキャラ化している印象がありますよね。(笑)

ともあれ、このエピソードがちょっと忘れかけていた『やくそくの女の子』。浦島景太郎と成瀬川なるの過去にかなり迫ったものになっているところが見所です。

しおらしいカオラ・スゥ

カオラ・スゥといえば、ちょっと何を考えているのかよくわかないところがありつつも基本的には元気っ娘という感じです。

今巻、そのカオラ・スゥがちょっとしおらしい雰囲気になっています。

しおらしいというよりは、儚げといった方が的を得ているかもしれません。

一体何があったのか?

ひょっとして恋をしているのか?

ひなた荘の住人たちはいろいろと推測していますが・・

「スススス、スゥちゃんが恋~っ!? そ、そんなまさか・・ありえない・・」

浦島景太郎の反応が若干失礼すぎるのが面白い。(笑)

しかし、カオラ・スゥってそういう反応をしてしまうのも分かる感じのキャラクターなんですよね。

そして、カオラ・スゥの様子がおかしかった原因は、乳歯(前歯)が抜けてしまったからという可愛らしいものでした。

中学生まで乳歯が生え変わりきっていないというのは珍しい気もしますが、だからこそ気にしているのかもしれません。

前歯が無いことくらいで気にするようなキャラクターでもないと思っていましたが、それこそ浦島景太郎と同じで失礼な発想なのかもしれませんね。(笑)

成瀬川なるの目標探し

ラブひな』のショートエピソードのなかで地味に好きなのが、成瀬川なるが塾の講師をしていて、そこに浦島景太郎が生徒のフリをして潜入するエピソード。

仮にも全国模試でトップを取ったこともある東大生である成瀬川なるですが、緊張しているのか簡単な問題に苦戦してしまったりしている姿が新鮮です。

「景太郎って考古学の話とかしてるとき結構かがやいてるじゃん。私も何か探さなきゃって・・。私もあんたみたくかがやきたくってさ。今、一生懸命探してるトコなんだヨ」

そうなんですよね。

成績だけを見たら成瀬川なるの方が上なのかもしれませんが、浦島景太郎は意外と素直なところがあるからか、パララケルス島であっさりと自分のしたいことのキッカケを見つけてしまっています。

そういう風にやりたいことが見つけられるのって、意外と輝いて見えるものだと思います。

そして、だからこそ成瀬川なるは浦島景太郎に惹かれてきているのかもしれませんね。

浦島景太郎がひなた荘からいなくなる?

一時的な帰省で浦島景太郎が不在になったひなた荘が描かれていますが、浦島景太郎がどれだけひなた荘に馴染んでいたのかがかなり分かりやすく見えてきます。

個人的にはスウェットでバナナを食べながら漫画を読んでいる、ちょっとダラけてしまっている素子がツボでした。(笑)

ともあれ、これは本当に浦島景太郎が長期間ひなた荘からいなくなる次巻以降の前振りになっています。

主人公が長期間不在になる展開は意外と珍しくもありませんが、ラブコメ作品に限ればかなり珍しいような気もします。

1巻時点、現在、そして不在時と戻ってきた時。

浦島景太郎の立場の変化がなかなかに興味深いところです。

総括

いかがでしたでしょうか?

主人公である浦島景太郎がひなた荘からいなくなる。

そんなことを感じさせる衝撃の展開でしたね。

一時的な浦島景太郎の帰省も、浦島景太郎がいないひなた荘への伏線になっているのだと思います。

最初は痴漢扱いされていた浦島景太郎が既にひなた荘の一部になっていたことを今まで以上に感じさせられるエピソードでした。(次巻のレビューはこちら

『赫のグリモア(2)』機構の登場で一気に世界観が広がる2巻の感想です。(ネタバレ注意)

 

赫のグリモアは、巻き込まれがた主人公と相棒の人外の組み合わせのバディものの現代ファンタジーとなります。

どことなく金色のガッシュ!!を思い出させるところがあって、実は最近金色のガッシュ!!のレビュー記事を全巻書いていっていたのですが、それを書こうと思うキッカケが本作品の一巻を読んだことだったりします。

とはいえ、ある意味では似た作品があることは誉め言葉にはなりませんし、こんな風に紹介すると「なんだ二番煎じか~」なんて思ってしまう人もいるかもしれません。

しかし、赫のグリモアに関してはそんなことはありません。

現代ファンタジーの人間と人外のバディものという点、それに魔導書という『本』がキーになっている点が共通点ですが、その設定が意外と珍しいだけでその内容と雰囲気はかなり異なっています。

大きくは金色のガッシュ!!が超王道的な少年漫画で、とても可愛らしい魔物が登場したりする子供向けな一面もあるのに対して、赫のグリモアのターゲットの年齢層はもっと高くて、ちょっとしたスパイスというか、えぐみのようなものがある印象です。

ともあれ、最近は現代ファンタジーだろうが中世ファンタジーだろうが、ちょっとどころではないチートな主人公が登場したりする作品が多くて、それはそれで面白いんですが、赫のグリモアの場合はもっと昔懐かしい現代ファンタジーの様相を呈していて、最近では新鮮に感じられる作品なのではないかと思います。

www.aruiha.com

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本作の概要

若葉とあかずきんを拘束しようとする『機構(ゲゼルシャフト』の魔導士が現れ、あかずきんは若葉の制止も聞かずに暴走してしまいます。

あかずきんを制御するには管理能力不足だと、若葉とあかずきんは引き離されそうになります。

このまま引けば若葉は罪に問われることは無い。しかし、若葉は既に友達であると認定しているあかずきんとともに書の魔導士であることを選択します。

その後、紆余曲折あって若葉は『機構(ゲゼルシャフト』の仲間になることになるのですが、徐々に若葉が魔導士の世界の深みに嵌っていくような展開になっています。

本作の見所

若葉の選択

巻き込まれ系の主人公のいる作品ではある意味定番のお約束のひとつですが、自らを巻き込もうとする世界にこのまま嵌っていくのか、それとも引き返すのか、そんな選択を若葉も迫られることになります。

「残念だけど我々はあなたを、あかずきんを管理するには能力不足だと判断しました」

暴走するあかずきんを制止できない若葉は、『機構(ゲゼルシャフト』の魔導士である星河美冬から、あかずきんを拘束する・・というにはかなり過激な攻撃を加えられている状況を尻目に引くように進言されます。

別に、若葉は選択を迫られているわけではありません。

しかし、少しは友好的になり始めていたあかずきんを見捨てて自分だけ安全圏にいることは若葉にはできませんでした。

「私の友達に!! 手を出すなッ!!」

あかずきんを追いつめる竜胆雫の前に立ちはだかる若葉がちょっと格好良かったです。

最近では、こういう時にただただ格好良い主人公が流行りって気もしますが、個人的にはこういう『強い』のではなく『強くなれる』タイプの主人公の方が格好良いって思います。

若葉の怒り

ちょっとほっこりするのが若葉と曾祖母の茜のやり取り。

茜の自宅に訪れた怪しい老人。彼は『機構(ゲゼルシャフト』の総帥であるミヒャエル・石破といい、茜の後輩の魔導士にあたるようです。

そして、魔導士の落伍者が組織化して魔導士狩りを行う『兄弟団』という組織という脅威から世界の歴史を守るためにと若葉をスカウトします。

『兄弟団』は非常に残虐な組織で、その目的を探るために内偵を試みた女の子は・・

「ある真夏の午後、彼女は帰ってきた。秘密のはずの『機構』各支部に一つずつ・・36箱の宅配便でね・・。生きたまま解体された彼女からは、血が一滴残らず抜かれていた」

例えばこんな目にあってしまったようです。

しかし、確かにそれは『機構』にとっては脅威なのでしょうけど、あかずきんがその後指摘しているのですが若葉には関係の無い話です。それに、総帥が茜の後輩ということは『機構』は若葉の味方ではあるのでしょうけど、若葉を管理能力不足と判断してあかずきんと引き離そうとしたり、今のところあまり印象は良くなさそうなのもありますね。

ですが・・

「関係は・・ある・・。なぜなら大麦茜は、奴らに殺害されたからだ」

なるほど。それなら若葉にも『機構』の仲間になる理由があるのかもしれません。

そして、それを聞いた若葉は茜に対して怒りを見せます。

「どうして・・どうして一言・・殺されたって・・教えてくれなかったの・・私ね・・魔導士になって・・昨日一日はしゃいじゃったんだ。大変だけど楽しかった。でも・・こんな話聞かされてたら・・少しでも笑ってた自分が許せないよ・・」

しかし、この怒りの理由にはちょっとほっこりしてしまいますね。

確かに、どうやら若葉が書の魔導士になったのは茜が死んだからで、しかもどうやら茜が天寿をまっとうしていたなら若葉が書の魔導士になることは無かったらしく、つまり・・

茜が殺されたことが、若葉が書の魔導士になったことのそもそもの理由になっているわけです。

それを知らずに書の魔導士になって少しはしゃいでしまったところのある若葉からしてみれば、自分が許せなくなってしまっても仕方がありませんよね?

とはいえ、遠因ではあっても原因そのものではないはずなので多少はしゃいでしまっても良いのではないかとも僕は思うのですが、そうならないところに若葉のキャラクター性が表れているのではないかと思います。

機構(ゲゼルシャフト

1巻ではまだまだ舞台が狭い印象がありましたが、『機構』の登場で一気に世界観が広がったような気がしますね。

羽生乃恵瑠などは、傍目には茜の七光りに見える若葉に対して少なからず敵愾心を抱いている様子で、ものを知らなさそうな若葉に対して意地悪を仕掛けたりしていますが、なんとなくこういうキャラクターこそ後々若葉と親友的なポジションになってくるのではないかと思ったりもしています。

総括

いかがでしたでしょうか?

基本的に若葉はまだまだ書の魔導士としては新米もいいところですが、徐々に才能を開花させ始めている様子もあって、どちらかと言えばお人好しなところがある若葉がどのように成長していくのかに注目したいと思います。

そして、今巻ラストの実力不明だった星河美冬の攻撃シーンがなかなか衝撃的で、これからはもう少し若葉やあかずきん以外のキャラクターについても深堀されていく展開になるかもしれませんね。

『いとなみいとなめず(1)』純情だけどスピード感のある二人が微笑ましい漫画の感想(ネタバレ注意)

 

いとなみいとなめずは、一目惚れから始まる年の差恋愛と結婚が描かれた漫画となります。

最初、一目惚れからいきなりのプロポーズから始まる展開で、そこから結婚に至るまでの物語なのかなぁと思って読み進めようとしたら、結婚までは一足飛びの急展開でそこが物語のスタートラインになっているようでいきなり予想を外されてしまいました。(笑)

しかし、主人公の純岡清もヒロインの飛鳥馬澄も、名前の通り純粋で清くて、そして澄んでいる。そんな二人の純情な新婚生活がマジで微笑ましくて、なるほど作者の水瀬マユ先生の描きたかったのはコレなんだろうと納得しました。

純情な男女の恋愛を描いた作品は少なくありませんが、普通は結婚する頃には多少なりとも初々しさのようなものは薄れているものです。

それがいとなみいとなめずの場合は違っていて、出会ってから二年後に結婚してからも本当に初々しい。

それは、ヒロインの飛鳥馬澄がもともと高校生だったので、主人公の純岡清があまり積極的に振舞ってしまうのは倫理的にも、下手をすれば法律的にも問題があるという状況だったことに理由があるのだと思います。

例え二人が純情でなくても、純情でなければならない状況だったということですね。

逆に言えば、だからこそ自然に新婚後も変わらずに初々しさのある二人が不自然にならなかったのだと思います。

つまり、初登場時にヒロインの飛鳥馬澄が高校二年生だったのは、別に少しばかり背徳的な恋愛を描くためとかそういう理由ではなく、あくまでも初々しいままで新婚生活をスタートさせるための理由付けだったのではないかと、僕はそう思うわけです。

もっとメタい視点に立てば、純岡清が飛鳥馬澄にプロポーズしてから結婚するまでの二年間がほとんど一瞬で描かれているのは、結婚後も出会った時と何も変わっていない二人を表現するために出会いのシーンは必要だったものの、本当に描きたかったのはあくまでも結婚後だったからなのだと推察できますね。

まあ、これは一読者でしかない僕の勝手な推察でしかなく、これが当たっていようが外れていようがいとなみいとなめずが面白い漫画であることには変わりないのでどうでも良いんですけど、要はこんな風にいろいろと考えてしまうくらいには個性のある漫画なのだということを言いたかったのです。

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本作の概要

名前の通り純情で清い性格の青年。それが主人公の純岡清で、自分から恋愛ごとは遠ざけてしまうような性分でした。

そんな純岡清でしたが、ある日行き付けの弁当屋に新しく入ったアルバイトの飛鳥馬澄に一目惚れをしてしまい、二度目に会った時にほとんど初対面であるにも関わらずテンパってプロポーズしてしまいます。

しかも、知らなかったとはいえ飛鳥馬澄はまだ高校二年生の子供で、場合によっては犯罪者扱いされてもおかしくない状況でした。

しかし、澄の反応はまさかの好意的なもので、トントン拍子に話が進んで澄の卒業後に二人は結婚することになります。

誓いのキスすらできない純情な清と、同年代の女子と比べても奥手な様子の澄の結婚生活がとても微笑ましい展開になっていきます。

本作の見所

一目惚れからのプロポーズ

草食系男子という言葉が生まれて久しいですが、主人公の純岡清ほど当てはまる人も珍しいでしょう。

異性に免疫のない人は少なくない世の中だと思いますが、それでも二十代も半ばになって清ほど純情な男性はなかなかいないと思います。

そんな清でしたが、ある日行き付けの弁当屋に新しく入ったアルバイトの飛鳥馬澄に一目惚れしてしまいます。

会社の先輩に指摘されるまでそれが一目惚れであることにすら気付かない清ですが、それを自覚させられかなり混乱した状態になってしまい・・

「僕と結婚して下さい」

会ったのはたったの二度目。一度目だって弁当屋でレジを打ってもらったのみ。

たったそれだけの相手に清はプロポーズしてしまいます。

「どっ・・どうしましょう・・私・・高校生なんですが」

しかも、恥ずかしさと気まずさの入り混じった様子で答える澄は、まさかの高校二年生でした。

女子高生って制服着ている限りはかなり子供っぽく見えますけど、確かに弁当屋でエプロン付けて働いてたらもっと年上に見えるかもしれませんし、清が勘違いしてしまったのも仕方ないのかもしれません。

いや、これは一目惚れなので相手が高校生だとか大人だとかは無関係なのかもしれませんけど。

「私が高校を卒業するまで待っててもらえますか・・?」

そして、まさかの澄がプロポーズを受ける展開にっ・・!?

実は、単にご都合主義でプロポーズを受けたのではなく、澄には澄で早く結婚したい理由があったりするのですが、それに相手が清で良いと思った理由もちゃんとあるのですが、ともあれお互いに純情な雰囲気の割にはちょっと波乱のありそうな組み合わせのカップルが誕生します。

誓いのキスのできない結婚式

波乱のありそうな組み合わせのカップルが誕生したかと思ったら、一足飛びに澄が高校を卒業、そして早々に結婚という展開が待っています。

前書きに前述したとおり、最初は社会人と女子高生のちょっと背徳的で波乱のありそうな恋愛から結婚に至る過程を描く漫画なのかと思っていましたが、そうではなくあくまでも結婚してからが物語のスタートになっているようですね。

もちろん、ここで結婚に至るまでに何も無かったわけではなく、澄の保護者と清の対面などは回想で描かれていますが、ともすれば作品のゴールでもおかしくないような場面に一気に突入する展開が地味に興味深くて面白かったです。

そして結婚式の当日。

プロポーズから1年以上経っているはずですが、やっぱり女性に免疫が無いところは治っていない清。

結婚式といえば誓いのキスで、大勢の、それも自分たちのことをよく知っている人間ばかりの目の前でするキスはかなり特殊な状況ではあると思います。

とはいえ、普通のことと言えば普通のことなのでそこまで過剰に捉えるほどのものではないと思うのですが、清の過剰反応が滅茶苦茶面白いです。(笑)

先輩からのご祝い

結婚すると夫婦のいとなみ的な方面で盛り上げようとする人が周囲に出てくるのはある意味では定番の展開だと思いますが、あまりにも純情なキャラクターなのでその辺がどうなっていくのか興味深いところではありました。

そして、清の会社の先輩からもらったお祝い。清はそれを現金だと勘違いして澄に託してしまうのですが・・

その中身は、とってもうす~い壁を隔てるための伸縮自在なアレでした。

まあ、ぶっちゃけ予想はできていました。(笑)

「あのォ・・会社の先輩から頂いたこれって一体なんですか?」

しかも、澄はその正体を知らないという・・

確か、この手の避妊具とか避妊方法って中学生くらいの頃に普通に学校で習った記憶がありますが、今どきの子供は習わないのか、それとも澄が無知なのか、知ってはいるけど実物は見たことが無いのか、いずれにしても知らないことでちょっと面白いギャグに発展する展開が結構良かったです。

お祝いとしてもらったものだからか大事に使おうとして、氷のうにしてみたり、物干しざおに干して再利用しようとしたり、澄の行動が面白すぎます。

澄の友人が家にやってきて、干されたアレが見つけられたことでようやく澄もアレの正体に気付くのですが、煮込みハンバーグを煮詰めながらアレを眺める澄の表情もまたなんとも言えませんし、何度も捨てようとしたり躊躇ったりする動作が可愛らしいです。

まあ、気持ちはわからなくもありません。

どちらかといえば清の内面が強く描かれている作品なので、こういう澄の内面が強く描かれているシーンが少し珍しく感じられて、結構好きなシーンです。

総括

いかがでしたでしょうか?

夫婦のいとなみを「あると思う」と答えた澄に清がどう答えるのか。

非常に続きが気になる終わり方でしたね。

こういう終わりで続きが気になるというのも我ながら「えっちだなぁ~」って思わなくもありませんが、これはどうしたって気になりますよね?

まあ、どうしても続きが気になってAmazoneで一話ずつ配信されているKindle版を読んでしまったので続きの展開は知っているんですけどね。(笑)

それにしても、全くノーチェックだったところから久々に掘り出し物の漫画を見つけたと思わされた作品でした。

昔は無かったけど、近年増えつつある書店の試し読み冊子。それを読んで興味を持った作品だったのですが、実のところそれが無ければ多分買うことはなかった作品でした。

あの冊子、あまり気にしたこと無かったけどちゃんと広告効果あったんですね~

『死なないで!明日川さん(1)』新しいお約束って感じの漫画の感想(ネタバレ注意)

 

死なないで!明日川さんは、クラスメイトからはその堂々とした姿で一目置かれている明日川さんが、実はとっても自意識過剰で誰に話しかけることもできずにそれを誤魔化しているだけの、いわゆる勘違い系コメディとなります。

この手のコメディ作品の場合、通常はワンパターンになりがちになるのを避けようと色々工夫しているような印象がありますが、死なないで!明日川さんの場合はあえてワンパターンなお約束を使っているところがむしろ面白い作品だと思います。

コメンテーターの石瓦さんが良い味だしてます。(笑)

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本作の概要

一見すごく格好良いキャラクターが、実はコミュ障なだけだったり、あまり格好良くない理由で格好良く見えているだけという展開は意外と使い古されていますが、そこにお約束的なテンプレ展開を繰り返すことでじわじわとした面白さが感じられる作品だと思います。

明日川さんの自意識過剰から、自殺を決意し、思いとどまるまでの同じなのに微妙に違う流れが楽しい作品です。

本作の見所

すぐに自殺を考える明日川さんのお約束

誰とも群れずにいつも堂々としている明日川さんは、実は超が付くほどの自意識過剰でいつも人目を気にしてばかりいます。

一緒にご飯を食べる友達がいないと思われたくなくて、日経電子版を確認しながら忙しくてさっさとご飯を食べるフリをしようとする。

「おい・・1人だけニューヨーカーみたいだな」

結果的に周囲からは格好良く見えて、それを噂されたりしているわけなのだけど、そこで陰口を叩かれていると感じてしまうところが明日川さんの明日川さんらしいところ。

死なないで!明日川さんは基本的に、こんな明日川さんの自意識過剰な勘違いから始まります。

そして、誤魔化しきれずに追いつめられるとすぐに自ら命を絶とうとしだすのですが・・

そこで自分が死んだ後のことをワイドショー的に回想(?)するのが面白いところ。

褒められてるのに陰口だと勘違いしてしまう程度の自意識過剰さは、まあたまに見かけるレベルではありますが、死んだ後ですら陰口ばかり言われることを想像してしまうほど明日川さんは徹底しています。

自殺した人間の影響が、その人間の予想を超えて周囲へ影響していくことは想像に難くありませんが、だからといってよっぽどの犯罪者でもない限り死んだ人間に対して悪く言う人なんてあまりいないと思います。

しかし、全く明日川さんとは関係が無いと思われる事象まで明日川さんのせいにされる。そんな想像をしてしまうところが明日川さんクオリティといった感じです。

そして、そんな想像の中でも最も極端なことをオチ的に言い出すのが明日川さんの脳内コメンテーターの石瓦さん。

明らかに明日川さんに何の落ち度もないことを明日川さんのせいにしています。

・・とまあ、すぐに死ぬほど追いつめられるわりに、死んだ後の悪い想像をしてしまうあまり死ぬこともできない。そんな女の子が明日川さんとなります。

コメンテーターの石瓦さん

前述した明日川さんの脳内コメンテーターの石瓦さん。

これがまた地味に面白いんです。

「実は私もこの事件のせいで娘が洗濯物を私のものと一緒に洗わないでと言い出しまして・・。非常に悲しい気持ちになりました」

「私のせい!? 娘さんが思春期だからじゃなくて!?」

明日川さんのことを落とすだけ落とす死後の想像の最後に、さすがの明日川さんにもツッコミを入れさせる石瓦さんのコメント。

基本的にこんなコメントで終わらせるのがお約束になっているのですが、その流れが地味に面白いんですよね。

それに、たった一言のコメントの繰り返しで石瓦さんの私生活が徐々に明らかになっていくところはもっと面白い。

明日川さんが自意識過剰で死のうとして死後の報道の妄想が始まる度に、次は石瓦さんが何をコメントするんだろうとワクワクしてしまいます。

こういう繰り返しが過ぎる展開はともすればつまらなくもなりがちですが、死なないで!明日川さんの場合はうまいこと面白いお約束を作ることに成功していて、その一因に石瓦さんがいることは間違いないと思います。

人生最高の日

3度目の正直という言葉がありますが、死なないで!明日川さんの場合はそれが9度目に訪れます。

石瓦さんのコメントにもツッコミを入れない明日川さんは、自分を信用してくれた人への裏切りを苦に、遺書を書いて本当に窓から飛び降りてしまいます。

ラストでお約束を外してきてそこから次巻へと続く展開ですが、かたくなに守ってきたお約束を崩してどんな展開になるのか、はたまたお約束を外すと見せかけてやっぱりお約束通りの展開になるのか、その辺が楽しみなところですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

明日川さんのような感覚って、本当に堂々としている人であっても大なり小なり誰でも持っているものだと思いますが、だからこそこういう類のキャラクターって地味に共感できて面白いと思います。

個性的なお約束の繰り返しの作品でしたが、ラストではちょっと展開を外してきています。

それがどのような展開につながっていくのか、それはそれで楽しみですね。

『りゅうおうのおしごと(4)』才能vs才能の初大会(ネタバレ含む感想)

 

本記事は将棋ラノベの名作であるりゅうおうのおしごと!の魅力を、ネタバレ含む感想を交えて全力でオススメするレビュー記事となります。

初めての大会で無双する幼い天才、そして女流棋士の枠を超えた才能を持つ女流タイトルホルダーと雛鶴あいの一戦が見所の4巻目となります。

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本作の概要

あらすじ(ストーリー)

最大の女流棋戦である『マイナビ女子オープン将棋トーナメント』の舞台は東京。

りゅうおうのおしごと!の舞台は基本的に関西ですが、4巻では初めて舞台を関西の外側に移します。

 タイトルホルダーである空銀子女王へと続く棋戦に、九頭竜八一の弟子二人(雛鶴あい、夜叉神天衣)と、そして清滝桂香が出場します。

最年少で出場した初めての大会で、女流棋士の強豪相手に勝ち上がっていく幼い天才たちがとても爽快です。

女流タイトルの帝位を持ち、同じくタイトルホルダーの釈迦堂里奈からは『魔物』と呼ばれ、才能だけなら空銀子よりも上だと自他ともに認める祭神雷が今回の雛鶴あいの相手で、最大の見所となります。

幼い天才二人に次々と撃破されていく女流棋士たちですが、夜叉神天衣と鹿路庭珠代の対局前と対局後のやり取りも、アイドル的な扱いの女流棋士だと思われた鹿路庭珠代の意外な熱さが見られてなかなか興味深いです。

そして、二人のあいほど目立っていなかったものの影の主役は清滝桂香でした。

1回戦で敗北してしまって敗者復活を戦っていたのですが、開き直って思い切りが良くなり、相手のミスにも助けられつつ、連勝が続いて大きなチャンスを得ることになります。

しかし、最後の相手の香酔千は清滝桂香のかつての修行仲間。

お互い同世代で、あと一勝で大きなチャンスを掴むことができると同時に、負けてしまえば再びチャンスが舞い込む可能性は限りなく小さい。

涙ながらの、勝利の痛みを堪えながらの対局にも注目ですね。

そして、今回は完全に弟子二人や清滝桂香のサポートに回っていた八一ですが、それはもう少しで竜王の防衛戦が始まるので、弟子たちに掛かりっきりというわけにはいかなくなってくるからという理由もありました。

4巻ラストでは竜王挑戦者をめぐる神鍋歩夢と名人の、神の領域の一戦が繰り広げられています。

次巻で誰が竜王・九頭竜八一に挑戦することになるのか。それも大きな見所のひとつとなります。

ピックアップキャラクター

大きな大会の全容が描かれている4巻は、特定のキャラクターにスポットが当たっているというよりも数多くのキャラクターが満遍なく活躍している印象が強いです。

しかし、あえて言うならば将棋を覚えて僅か7か月目にしてトップ女流棋士である祭神雷と対局することになった雛鶴あいと、今巻初登場にして強烈な存在感を放っていた祭神雷が印象的でした。

雛鶴あい

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(「りゅうおうのおしごと!(1巻)」より)

メインヒロインの雛鶴あいですが、ライバルである夜叉神天衣の登場で勉強に身が入ったり、生石充のもとで振り飛車を学んで将棋の幅も広くなり、清滝桂香との対局で勝利の痛みも克服しました。

僅かな期間で女流棋士を相手に互角以上に戦えるまでに成長し、ついには女流タイトルホルダーを相手に大金星をあげてしまいます。

祭神雷

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(「りゅうおうのおしごと!(4巻)」より)

メイン級の女流棋士の中では出番少な目の祭神雷ですが、その強烈な個性と存在感には圧倒的なものがあります。

ムラがあるものの才能なら女流最強の名をほしいままにしている空銀子よりも上と言われる強豪で、あいとの対局では挑発的に才能がものをいう戦型へと誘導していきます。

ネタバレ含む感想

初めての大会で活躍する2人のあい

大きな大会を舞台にメインキャラクターが順調に勝ち進んでいく。

改めて言葉にすると4巻のストーリー構成はライトノベルとしては意外と地味なものである気がします。

しかし、実際に読んでいて地味なストーリーだと感じることはありません。

将棋を指すというシーン。

その言葉尻だけを捉えたら非常に地味なものに感じられるのですが・・

雛鶴あいと祭神雷。

夜叉神天衣と鹿路庭珠代。

清滝桂香と香酔千。

たった一局の将棋の中に様々なドラマがあって、エゴがあって、そして熱さがあったからこそ、一見地味に見えて面白いのだと思います。

なんでこんなに面白いのか?

作者の白鳥士郎先生が4巻あとがきでこう言及されています。

棋力ゼロの私でも将棋に関する小説を書くことができているのは、『観戦記』の存在があるからです。

将棋の対局をエンターテイメントとして伝える『観戦記』の存在があるからこそ、たった一局の将棋を通してライトノベルらしくもリアリティのあるドラマを描くことができているということなのだと思います。

4巻で特徴的だったのは、初めての大会で師匠である九頭竜八一の想像すら超えて大躍進していく雛鶴あいと夜叉神天衣・・の裏側にいる敗れ去っていく女流棋士たちの姿でした。

女流棋士にしてもプロ棋士にしても、そこに至っている時点で相当な天才の部類であることは間違いありません。

地元では負けなしの天才扱いだったとか、そういう人たちの集合体なわけですから若干9歳の二人のあいに、本物の天才に敗れ去っていくのは悔しくて仕方のないことでしょう。

例えば、あいと最初に対局した杓子巴は投了した後の感想戦で、自分とは全く読みの深さの違うあいに驚かされ、二度負かされることになりました。

あえてなのだと思いますが、そんな感じで敗者をしっかりと描こうとしている意図を感じる内容になっています。

敗れ去っていく女流棋士の名前が、一度限りしか登場しないサブキャラであるにも関わらずライトノベルらしい凝ったものになっているのもその証拠だと思います。

要するにヒロインである二人のあいの対局相手である女流棋士が、ただのモブではないのだということを強調したかったのかもしれませんね。

だからこそ、4巻で見所となる対局以外の将棋も面白く感じられたのだと思います。

女流タイトルホルダーとの対局

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あい

なんですかその人!? いきなり師匠のお部屋に、は、裸で押しかけるなんてっ・・変態さんじゃないですかー!!

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空銀子

おかしいわね? 私、最近どこかで似たような話を聞いたんだけど・・?

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あい

あいはちゃんと師匠にお手紙を出しましたし服も着てましたっ!!

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空銀子

はいはい

雛鶴あいと空銀子は、口を開けば喧嘩になるという印象が強い組み合わせですが、何だかんだで銀子も弟弟子である八一の弟子としてあいのことを見ている節があるのは興味深いところです。

こういう皮肉も、1巻時点だったらかなり険悪な印象を受けたような気がしますが、冗談ぽっくて微笑ましく感じますね。

それに、意外とまともに解説の聞き手の仕事をしていたり、銀子の新しい一面が垣間見えていたような気がします。

ともあれ、話がいきなり逸れましたが師匠(八一)のお部屋に裸で押し掛けたというのが、あいの対局相手である祭神雷となります。

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あい

もう二度と師匠に迷惑をかけないよう・・あいが盤上でお断りしてきます!!

女流帝位のタイトルホルダーで、才能は空銀子以上とまで言われる祭神雷を相手に敵愾心むき出しのあい。

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祭神雷

空銀子も釈迦堂里奈も月夜見坂燎も供御飯万智も、みぃんなニセモノさぁ。あいつらは何も見えちゃいないんだからぁ

それに対して祭神雷は自分こそが唯一の本物の女流棋士であると言わんばかり。

いわゆる『手を読む』のではなく『手が見える』という本物の才能の持ち主で、これは口だけでは決してないのですが、ある意味では八一しか見えていないというのが面白いところですね。(笑)

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あい

わたしが竜王の一番弟子なんです!! あなたなんかに譲りませんっ!!

最も才能があると言われる女流棋士である祭神雷に、経験も、感覚も、大局観も、それにお得意の読みの力でさえもあいは劣っていました。

しかし、『折れない心』というたった一つの才能だけが祭神雷を上回っていて、あいは大金星を掴むことができました。

ちなみに、将棋のような盤上遊戯を嗜まない人には『折れない心』がその他の強さの要素を上回るという事実はあまりピンとこないかもしれませんが、これは純然たる事実として存在することだと思います。

僕の場合は囲碁を嗜みますが、強い人ほどどんなに不利になってもなかなか折れない所があります。悪く言えば「投げっぷりが悪い」ということになりますが、人によっては投了してもおかしくないような局面から虎視眈々と逆転の手を狙っているわけですね。

国民栄誉賞を受賞された囲碁棋士井山裕太先生などはその最たるもので、必敗の状況からの逆転が稀によくあることだったります。

逆に、そこまでレートが高くないのに打っていてかなりの強さを感じる相手もいたりしますが、そういう人は投了が早い傾向があったりします。良く言えば「諦めが良い」ということになりますが、心が折れるのが早くて、あいのような『折れない心』の才能が無いということなのではないかと思います。

これが将棋にも、それに他の勝負ごと全般にも当てはまることなのだと思います。

敗者復活からの快進撃

若干9歳の二人のあいにとっては、この『マイナビ女子オープン将棋トーナメント』は大きなチャンス・・というよりも、経験を積むための修行という意味合いの方が大きかったはずです。

しかし、そうではない人もいます。

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八一

・・『ヒカルの碁』にこんなキャラいたなぁ

指でトントンと壁面をつついてブツブツ言っている『ヒカルの碁』のキャラクターと言えば越智のことでしょうけど、おっとり系お姉さんの清滝桂香がこれをやっているところに面白さがありますね。(笑)

二人のあいにとっての初めての大会は、清滝桂香にとっては最後になるかもしれないチャンスでもあり、そこに臨む意気込みも桁違いだったに違いありません。

様々な立場の女性が出場している大会ですが、同門内で両極端なことになっているのが印象的です。

しかし・・

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清滝桂香

ごめんねー。私だけ負けちゃってごめんねー。空気悪くしてごめんだよー・・

絶対に勝ちたいという気持ちが強すぎるとなかなか勝てなくなるということは痛いほど理解できる現象ですが、二人のあいが順調に勝利を収める中、一人だけ負けてちょっといじけている清滝桂香が地味に可愛らしいですね。

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清滝桂香

老兵は死なず・・ただ消え去るのみぃ・・

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八一

まだ消えないから! 敗者復活戦があるから!

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あい

そ、そうです桂香さん! 諦めたらそこで対局終了です!!

自虐的になってしまう年長者。

なんとなくいたたまれない時って年下相手に自虐的になってしまう気持ちは少し分かるかもしれません。

たぶん、自分を慕ってくれている年下なら労わってくれるような気がしてしまうからだと思います。

そして、この1回戦早々の敗退が清滝桂香の快進撃の引き金になっているのが面白いところ。

運を味方に付けたのもあるでしょうけど、一度負けて開き直ったのが大きかった印象ですね。良い意味で緊張がほぐれたとか、そういう状態になったのだと思われます。

二人のあいの大活躍の裏側で、敗者復活を戦う清滝桂香が地味目に描かれていた印象ですが、じわじわとチャンスに近づいてきて「もしかして?」って感じになってくる展開がかなり良かったと思います。

そして、そんな清滝桂香のハイライトはかつての修行仲間である香酔千との対局。

清滝桂香以上に崖っぷちの香酔千が相手ですが、チャンスを掴むことができるのは勝者のみという状況。

清滝桂香の得意戦法を避けるために不利な手を指した香酔千に対してふっきれた清滝桂香では、心理的にどちらが優位なのかは言うまでもありません。

しかし、これは勝利がかつての仲間を崖っぷちから突き落とすことを意味する対局となります。

涙ながらに、嗚咽を漏らしながら勝利を掴む清滝桂香の姿が印象的なエピソードでした。

あいと祭神雷との対局とは違った『熱さ』が確かにあったような気がします。

竜王の挑戦者

4巻の主人公は八一の弟子二人をはじめとする女性たちですが、次巻は八一が主人公らしい活躍を見せてくれます。

りゅうおうのおしごと!のタイトルの由来でもある将棋界最高峰のタイトル・竜王。その防衛戦が始まるので当然と言えば当然ですね。

そして、4巻ラストでは竜王・九頭竜八一への挑戦権を賭けての対局が描かれています。

八一のライバル的なキャラクターである神鍋歩夢と、タイトル通算100期と永世7冠の賭かった神とまで呼ばれる『名人』の三番勝負。

両対局者ともにメインキャラクターではありませんが、そうであるにもかかわらず激熱の盛り上がりを見せる対局になっています。

衰えがないわけではない名人を相手に善戦する神鍋歩夢ですが、それでもマジックとまで呼ばれる常識や定跡を覆した手を繰り出してくる名人には敵いませんでした。

それでも、時間の竜王戦に向けた前哨戦としては十分な盛り上がりだったと思います。

ちなみに、将棋の世界には詳しくない僕にでもさすがにこの名人のモデルが羽生善治永世七冠であることは分かりました。

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『よなかのれいじにハーレムを‼(3)』幽霊さんの秘密に迫る最新刊の感想(ネタバレ注意)

 

ハーレムを意図的に作り上げる系漫画であるよなかのれいじにハーレムを‼も3巻まできました。

本記事は、そんなよなかのれいじにハーレムを‼のレビュー記事(ネタバレ含む感想)となります。

普段の僕ならあまり惹かれない感じの漫画だったけど、原作が小島あきら先生だからという理由だけで読み始めた漫画でしたが、今では発売を楽しみにしている漫画のひとつになりました。

1巻から2巻にかけては、幽霊の女の子の画策する夜中野零時ハーレム化計画に必要な女の子たちが次々と登場するような展開でした。(タイトルのよなかのれいじにハーレムを‼は、まさに幽霊の女の子の計画の名前そのものと言えますね)

それに対して3巻では、今まで謎の多かった幽霊の女の子に迫る内容が多かった印象があります。

3巻ラストページの内容から推察するに、夜中野零時の周囲がいよいよハーレム的になってきたこともあって、次巻以降は今までとかなり違った展開になってくるのではないかと思われます。

ちなみに、幽霊の女の子の掌の上で転がされる夜中野零時や周囲の女の子たちですが、まさにそれを表現している3巻の表紙がちょっと面白いですね。(笑)

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本作の概要

異国の褐色美少女ヒメルダという新たな女の子も登場しますが、今巻最大の見所は今まで謎が多かった幽霊の女の子に迫っているところです。

彼女はいったい何者なのか?

彼女はいったいいつからいるのか?

そして彼女の名前は?

今まで保留にされていたところに触れられはじめ、そして夜中野零時のハーレムも完成に近づきつつあります。

しかし、とはいえ幽霊の女の子の当初の目的が達成されそうな気配まではありませんが、どうやら彼女は何かを思いついたようです。

本作の見所

幽霊の女の子の過去と名前

最初はかなり鬱陶しがっていたけど、ちょっといないだけで静かすぎる日常に寂しそうな表情の夜中野零時が印象的です。

この手の突然の出会いから行動を共にするようになるタイプの物語では定番ですが、人間は適応する生き物なので急ないつとは違う日常には寂しさを感じるものなのかもしれませんね。

例えば、仕事や家事で忙しい毎日から解放されたいなんて思っている人も、いざ解放されたらそれはそれで寂しさを感じるんだろうなぁって、そういうのと同じだと思います。

ともあれ、幽霊の女の子が少しの間いなくなって、成仏でもしてしまったのかと心配していた夜中野零時でしたが、そのことを告げると・・

「さっきから「成仏」って何ですか「成仏」って~? 零時さん、もしかして私のことオバケか何かだと思ってます~?」

これは読者も含めて誰もがオバケの類だと思っていたのではないかと思います。

僕も本作品の既刊のレビュー記事内で、名前のない彼女のことを『幽霊の女の子』と呼称していましたしね。

しかし、それはどうやら違っているようで・・

「オバケじゃないなら・・何なんだよ?」

だとしたら夜中野零時の疑問は当然のものですね。

そして、今まで謎に包まれていた幽霊の女の子の過去に迫っていくのですが、2巻のレビュー記事に書いた僕の予想(夜中野零時の関係者である可能性)は完全に外れていました。(笑)

「私にもわかりません!」

自信満々な幽霊の女の子の答えにならない答えから始まる回想は、まるで地球の成り立ちから始まるような壮大なもの。

マグマの海から始まり、鬱蒼とした森の中で恐竜と出会っていたり・・

幽霊だとしたら人間的な存在の延長上だと思いますが、人間がいた自体よりはるか昔からいたらしい幽霊の女の子は、少なくとも幽霊ではないようですね。

というか、話のスケールが大きすぎて夜中野零時も若干混乱気味で、過去が分かって謎が深まったという印象が強かったです。

「ものすごく今さらだが・・お前の名前は何ていうんだ?」

夜中野零時くんがマジで今更過ぎるの置いておいて・・

「私、自分の名前もわからなくて・・」

どうやら幽霊の女の子が名前を名乗るシーンが無かったのは、そもそも自分の名前も分からないからだったようです。

「仕方ない・・とりあえず今日のところはお前は「霊」ってことでいいか?」

それに対して、別に幽霊の女の子に名前を付ける意図で言ったわけではない夜中野零時のセリフでしたが、それに想像以上に喜ぶ幽霊の女の子という展開が素敵でした。

「今日から私は「レイ」! 私の名前は「レイ」ですね!?」

『霊』だから『レイ』というわけですね。

名前が無い状況というものが僕にはあまり想像できませんし、考えてみれば自分の名前が自分自身を意味する言葉になっていることもそれはそれで不思議な感覚な気もしますが、少なくともレイには夜中野零時と出会うまではコミュニケーションを取れる相手すらいなかったわけで、自分に仮名を付ける発想すら無かったのかもしれません。

だからこそ、夜中野零時にその意図が無かったとしても、名前らしきもの付けられたと捉えられるセリフに喜んだのだと思います。 

異国の少女・ヒメルダ

1巻2巻では立て続けに女の子の新キャラが登場してくる流れで、ハーレム漫画的にキャラクターはそろそろ出揃った感じだと思っていましたが、今巻でも一人だけ初登場しています。

異国の少女・ヒメルダは、ほわほわした雰囲気の可愛らしいタイプの女の子です。

レイを通して何を話しているのかは分かるものの、夜中野零時自身はヒメルダの言葉は分かりません。

そして、言葉の分からない相手にジェスチャーでコミュニケーションを取ろうとするのは必然と言えば必然なのですが、「俺に任せとけ」という夜中野零時のジェスチャーがまさか「俺と結婚してください」という意味になっているとは、面白すぎる展開です。(笑)

ジェスチャーには言葉や文化の違う者同士でも9割くらいは伝わるものですが、1割くらいは微妙な違いがあったりするもの。

その違いをうまく使って誤解を生みだす展開が、ありそうで無かった展開な気がして新鮮でした。

図書室の秘密の茶会

この手の作品って主人公の周りにいる女の子たちが何だかんだで仲良くなってくるのも特徴だと思います。

図書室の秘密の茶会はそういうところの象徴なのだと思います。

そして、そんな茶会の中心にいる夜中野零時は・・

「あなた、すでにハーレムの主人のようですよ? ・・とはいえ、いつまでも「のよう」では困ります」

レイの言う通り、既に・・というか割と最初からのような気もしますがハーレムの主人公そのものですね。

そして・・

「・・そおだ。いいコト思いついちゃいましたよお♡」

何かを思いついたらしいレイ。

レイが何を思いついたのか?

次巻以降の展開もかなり気になる感じですね。

 

総括

いかがでしたでしょうか?

個人的には今まで謎の多かった幽霊の女の子に迫った内容が新鮮に思えました。

そして、最後にレイが何を思いついたのかが非常に気になるところですね。

次巻以降、今までとは違った展開になっていくことが予想されますが、夜中野零時のハーレムがどのようにレイの掌の上で転がされていくのかが楽しみです。

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