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漫画、ラノベ、映画、アニメ、囲碁など、好きなものを紹介する雑記ブログです。

囲碁界に期待の新星登場! 最年少でプロ棋士になった仲邑菫(小学四年生)とは?

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囲碁界に期待の新星・仲邑菫(なかむら すみれ)新初段が誕生しました!

今まで最年少のプロ棋士といえば藤沢里菜女流本因坊の11歳6か月でしたが、それを大幅に更新した2019年4月付で10歳0か月での入段となります。

現時点では9歳ということで完全に子供ですね。

記者会見の様子を見ても、ただただ可愛らしい子供にしか見えません。

お隣将棋の世界の作品ですが、マジもんのりゅうおうのおしごとじゃんとか思った人は僕だけじゃないはず。(笑)

しかし、囲碁の世界において若い天才は後に大成する可能性を大いに秘めているもので、今後が楽しみであることには違いありません。

プロ入り記者会見の翌日である本日(2019年1月6日)には井山五冠との記念対局も行われているそうで注目度の高さが伺えます。

 

本記事では仲邑菫さんがどのような棋士なのか、彼女を採用した英才推薦制度とは何なのかについて、公式の記者会見映像から読み取った内容を纏めたいと思います。

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仲邑菫さんとは?

父親がプロの囲碁棋士(仲邑信也九段)、そして母親も高段者というサラブレッドです。

記者会見の中で、逆コミのハンデ付きで仲邑菫さんと対局した張栩名人が、仲邑菫さんの棋風や棋力について語ってくれています。

棋風については、小さい子供とは思えないくらい落ちついていて、盤上にしっかりと構想を立てていて、難しい場面での対応力も高いとのこと。

特に中盤以降には張栩名人ですら自分と対等くらいのレベルであると感じるほどの強さを見せていたらしいです。実際、序盤でほぼ逆コミ分は追いついていたのに結果は引き分けだったようです。

張栩名人は良い笑顔で「恐ろしかったです」と言っていました。

張栩名人っぽいコメントですね。(笑)

なにより興味深いのは、小学生時代の井山五冠とも逆コミで対局している張栩名人が、仲邑菫さんを当時の井山五冠よりも上をいっていると評価していること。

多少のリップサービスは含まれているかもしれませんが、これが本当なら日本の囲碁界の今後はマジで楽しみになってきますね。

今後については張栩名人も本人の努力次第と仰っていますが、数年後には女流タイトルは狙えるレベルになるのではないかということ。

ちなみに、この仲邑菫さんと張栩名人の対局の記録係をしたのが何と小林覚九段だったとのこと。

45年ぶりの記録係だったようです。(笑)

そして、小林覚九段の目から見ても仲邑菫さんは張栩名人に引けを取らない打ち回しで、「静かに、堂々と、柔らかく、そして短い時間でも慌てることも無く冷静に対応していた」とのことで、大物だとも感じたようです。

記者の「世界を狙えるというのは男女問わず言われていることなのか?」という質問に対して張栩名人と小林覚九段が回答を譲り合っている一幕があり、ちょっと面白かったのですが、張栩名人によると「本人もそのつもりがあり、女流に限らず目指せる才能はある。努力次第だけど」と感じているようです。

日本棋院囲碁チャンネルで約50分の記者会見の様子が全編公開されていますが、本当に興味深い話ばかりでした。

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仲邑菫さんへの一問一答のインタビュー概要

プロになった感想は?

緊張した様子で「頑張ります」と一言。ちらちらとお母さんの方を窺っているのが可愛らしいですね。

いつからプロの囲碁棋士になろうと思ったのか?

「ハッキリとは覚えていません」とのこと。それだけ小さい頃から目指していたということでしょうか?

最初に囲碁に興味を持ったのは?(両親への質問)

父親が囲碁棋士でいつも勉強していて、母親も囲碁ができるので打ち始めたのがキッカケで、3歳から始めてスグに9路盤で終局までできるようになったようです。

友達とはどんな遊びをするのか?

休み時間にボール遊びをしているようです。

どんな性格なのか?(両親への質問)

とても気が強く負けず嫌いだとのこと。ただし、気が強すぎて性格が悪いな~と思うこともあると母親が笑いながら言っていました。おいおい・・(笑)

マチュア高段者の母親を抜いたのはいつ?(母親への質問)

1年半ほど前にペア碁でチームを組んでいた時には母親の手に対して指摘するようになっていたようで、その頃なのではないかということでした。

囲碁のどんなところが魅力?

首を傾げながら「勝った時が嬉しい」とのこと。やっぱり母親の方をちらちら見ていて可愛らしいですね~

AIは使っているか?

回答に困っている仲邑菫さんに代わり、父親の仲邑信也九段が回答しましたが、検討にはやはりAIを使っているようです。

アルファ碁の登場から早3年、幼い頃から囲碁AIを使って勉強していく世代には今までと違った感覚が身に付くのではないかと当時から思われていましたが、早くも幼い頃から囲碁AIを使って勉強してきた世代がプロの舞台に上がってきたという感じですね。

好きなテレビ番組は?

両親があまり見ないようで、テレビが無いようです。

囲碁の勉強時間は?

学校に行っている時で6時間くらい。休みは9時間くらい勉強しているようです。

わかっていましたが天才ほど努力しているというのが分かる時間ですね。

ちなみに、こういうインタビューって早く回答しようとして早口になったり噛み噛みになったりする人もいますが、仲邑菫さんはどの質問もスグには答えずに考え込んでいるように見えるのが印象的でした。

この質問も父親に促されて首を横に振っていて、また代わりに仲邑信也九段が回答しましたが、これは緊張というよりは自分の発言に慎重になっているからなのではないかと感じられました。

普通の子供なら何も考えずにポンポンと何でも答えそうなところでこれは、相当賢いことが伺えますね。

何歳までにタイトルを取りたいか?

「中学生の内にタイトルが取りたい」とのこと。

これは是非とも達成して欲しいと期待してしまいますね!

将来どんな棋士になりたいか?

「井山先生みたいになりたい」とのこと。

他の女性のプロ棋士で、同じようなことを言う棋士はあまりいないような気がします。

現在の女性のプロ棋士と言えば例えばリーグ入りを目指すとか、そういった所がトップレベルの水準であり、「井山先生レベルを目指すなんて恐れ多い」とか言う人が多そうな気がします。

それだけに、かなり発言に慎重そうな仲邑菫さんがそう言った背景には、かなりの自信の裏付けもあるのかもしれませんね。

英才推薦制度とは?

記者会見によると、院生の制度に当てはまらない将来有望な棋士を発掘するために、今年度から新たに作られた制度だとのこと。(院生に適用されないわけではない)

世界に通用する棋士の発掘囲碁の普及の2つを目的にしているようですね。

男女関わりなく、ナショナルチーム関係のプロ棋士が力を見て採用するという仕組みになっているようです。

ちなみに仲邑菫さんの場合、井山裕太五冠、張栩名人、許家元碁聖、高尾九段、山城九段、小林覚九段というそうそうたる審査員が、満場一致で採用すべきと判断されたようですね。ちなみに、平田智也先生も審査員として声が掛かったようですが荷が重いと断られたようです。

また、小林覚九段の話しぶりからすると、そもそも仲邑菫さんを早くプロのステージに上げさせるために英才枠の創設を急いだ経緯があるようで、そこまでさせる仲邑菫さんの才能には本当に期待してしまいます。

ただし、特別採用ということで正式な棋士として認められているわけではないようで、正式な棋士と認められるためにはハードルがあります。

  1. 五段になること。
  2. 女流タイトルを取ること。
  3. リーグ戦に入ること。
  4. 若手棋戦で優勝すること。

・・と、なかなか高そうなハードルが設けられています。

とはいえ、他の棋士と同じ土俵で戦っていくことにはなるようで、正式な棋士との差がイマイチよくわからない所がありますね。対局料や必要に応じて支払われる謝礼も変わらないようですし。

創設されたばかりの制度ということで、何だかモヤっとしているような所もありそうな印象ですが、小学生の子供をプロ棋士として迎えたからには責任を持ってちゃんと育てて欲しいですね。

少なくとも、日本棋院仲邑菫さんが小学生であるということも鑑みて取材依頼は必ず広報を通すようにと周知していて、大事にしようとしていることが伺えます。

そんな感じで、新年早々1月5日(囲碁の日)に鳴り物入りの入段が発表された仲邑菫さんは、まさに囲碁界のニューヒロイン。シンデレラガールと呼ぶに相応しいのではないでしょうか?

藤沢里奈先生との比較

現在の女流棋士のトップと言えば藤沢里菜先生、上野愛咲美先生、謝依旻先生のお三方といった所でしょうが、何かと共通点の多そうな藤沢里菜先生とは今後も比較されることが多くなっていくような気がしますね。

  1. 最年少記録を更新しての入段。
  2. 父親がプロ棋士
  3. 女流棋士である。

ざっとこんな感じで藤沢里菜先生と共通項のある仲邑菫さんですが、今後の実績次第とはいえ例えば趙治勲九段と井山五冠のように、記録の面で比較されていきそうな気がします。

仲邑菫さんは中学生の内にタイトルを取りたいと答えているので、それが達成されれば藤沢里菜先生の持つタイトル獲得の最年少記録(15歳9か月)が更新されることになりますね。

まあ、あくまでも未来に起こるかもしれない可能性の一つでしかないのですが、そんな可能性が一つ誕生しただけでも囲碁ファンとしては嬉しいですね。

総括

近年では囲碁AIの台頭や井山先生の七冠達成と国民栄誉賞など、囲碁界ではこれまでに無かったくらい大きな話題が続きました。

そして、今後これらに並ぶくらい大きな話題が発生し得るとしたら、将棋の藤井聡太先生に並ぶくらいのエースの登場か、例えば女性初の七大タイトル挑戦といった女流棋士の活躍くらいなのかなぁと思っていたらこのニュースです。

女流の天才棋士の誕生。

囲碁ファン的には実力が全くの未知数の仲邑菫さんですが、男性のトップと混じって戦えるような棋士に育って欲しいと期待しています!

今後の動向にも随時注目したいですね。

あと、願わくば仲邑菫さんが将棋の藤井聡太先生のように、囲碁界を一般的にも注目されるのに一役買ってくれたら嬉しいと思います。

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】17巻

 

第一部完結の17巻の感想です!(前巻の書評はこちら

佐為がいなくなったり何やらで、プロになってから少ししかプロとしての仕事をしていないヒカルでしたが、今巻から本格的にプロ棋士として歩き始めます。

これまでのレビューでも度々同じようなことを言及してきましたが、第一部の完結巻にしていよいよ『ヒカルの碁』が始まりだしたという印象する受けます。

いや、何というかこの作品における節目の出来事って、大体「あぁこれが『ヒカルの碁』の始まりなんだな」と思えるような出来事である気がするんですよね。

ヒカルが囲碁を打ち始めた時。

院生になってプロを目指し始めた時。

そして、佐為と別れてプロ棋士として歩き始めた時。

そして、ライバルキャラである塔矢アキラとの本当の初対局が、第一部最後のエピソードになっているという所も・・

始まりというか、これからを予感させるようなエピソードが多いように感じられるのです。

囲碁というゲームの特性上、主人公に全てを極めさせることはできないわけだから、常にこれからを予感させるような物語になっているのかもしれませんね。

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本作の概要

再スタート。伊角さんとの対局を通して自分の打つ碁の中に佐為を見つけたヒカルは再び碁打ちとして歩きだすことを決意します。

アキラに続く若手有望株の登場や、自由に動き回る塔矢行洋と、大きく変動しようとしている囲碁界の中で、ついにヒカルとアキラのライバル対決が始まります。

始まりを感じさせる終わりに注目ですね!

本作の見所

二人要る

伊角さんとの対局後、ヒカルはすぐさま日本棋院に向かいます。

伊角さんと対局する直前にアキラの現状を聞いていたので、日本棋院でアキラが対局中であることを知っていたヒカルは、アキラに自分が碁を辞めないことを宣言しに行きます。

それは良いんですけど、それよりこの時の桑原本因坊の名言が忘れられませんね。

「1人の天才だけでは名曲は生まれんのじゃ。等しく才たけた者が2人要るんじゃよ」

あまりにも当たり前のことではあるのですが、改めて言われるとハッとしてしまうセリフですね。

この内の1人の才能は勘でしか認めていないとはいえ良いことを言います。

確かに、どんなに強い人が1人だけ存在しても、常に相手を一方的にいたぶるだけでは面白くありません。囲碁における名局の棋譜は、勝負であると同時に一種の芸術のように見えたりもします。それを作るのには2人必要だというのはまさしく真理ですね。

まあ、2016年末のアルファ碁マスター無双然り、一方的な唯一の強さというものも見てみたいと言えば見てみたいのですけど。

そういう需要もあることは、2016年末のアルファ碁マスター無双の盛り上がりが証明していますしね。

低段者との対局

サボっていたのに復活後に強くなっている印象があるヒカルですが、実際問題これは『sai vs toya koyo』の対局を通して得た経験値が影響しているのだと思われます。

若獅子戦で敗北した村上プロに危なげなく復帰戦を制し、続く辻岡プロにも連勝します。

辻岡プロは、アキラがヒカルをライバル視しているといううわさを聞いていて、村上プロとヒカルの対局を観察していますが、一方のアキラは見向きもしません。

「まさか低段者との対局など見るに及ばないとでも?」

それを見た辻岡プロは、どこまで確認しているのかわかりませんがそのようなことを考えています。

確かに、アマチュアでも力量差がある対局では上手が力半分に勝ってしまったりするので正確な力量は計れませんが、そんな風に思われるとはヒカルの評価も高くなってきていますね。

「進藤の力はもうボク自身でしか計れない」

そして、辻岡プロの予想は当たっていて、アキラも自分が実際に対局しなければヒカルの力は計れないと思っているようです。

まあ、例えばヒカルとsaiの関係性や、最初に出会った時の対局など、間違いなく佐為の影も見ていたのことだとは思われます。

そういう意味では、既に用意されている直接対決がヒカルにとってまさに正念場であることが伺えますね。

あかりとの対局

ついにアキラとの対局という前日。

ヒカルはあかりに声を掛けて対局を持ち掛けます。

塔矢行洋との対局の前には、大一番の前だからと怒っていたヒカルでしたが、その時はあかりと打つことでピリピリとした気持ちを落ちつかせようとした佐為が打つことになりました。

そして、今はヒカルがその佐為の真似をしています。

些細なエピソードですが、ヒカルの碁の中だけではなく、こういう所にも佐為が残っているように感じられる良いエピソードですよね。

ヒカルとアキラ

ヒカルとアキラの本当の初対局。

アキラがヒカルを生涯のライバルだと認めるに至った対局になりますが、ヒカルにとってはそれ以上の意味がある対局になりました。

「もう1人いるんだキミが。出会った頃の進藤ヒカル。彼がsaiだ。」

ヒカルとの対局に、やはりsaiの影がチラついて見えたアキラはそう結論付けます。自分がおかしなことを言っていると自覚しつつも、アキラはヒカルの碁の中に佐為を見つけました。

「おまえが打ちたかった佐為はもういないけれど、オレの碁の中に佐為はいるから、おまえが気付くかどうかはわからないけれど」

対局前にヒカルが感じていた想いに、アキラが最も正解に近い形で本当に気付いてしまったワケですね。

これは、既に自分の碁の中に佐為がいると気付いているヒカルにとっても嬉しい事この上なかったに違いありません。

「おまえには、そうだな━━。いつか話すかもしれない」

またそういうことを言ってアキラをもやっとさせる~

しかし、第一部最後の失言ですが、ヒカルの嬉しさが溢れているセリフに思えて感慨深くもありますね。

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

都合五度目のヒカルvsアキラですが、佐為が一切打っていない対局としては初対局となります。

本田邦久九段(黒)と中野寛也九段(白)の20年ほど前のNHK杯での対局が元ネタとなります。

作中では勝敗については語られずに第1部完結という、それはそれでアリだと思えるような結末を迎えていましたが、元ネタを知っている人には勝敗がネタバレになってしまっています。(笑)

まあ調べたらわかることなのですが、知識量の差で感じ方が変わるのは『ヒカルの碁』の面白い所ですよね。

(図1)

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「カカリに受けずにカカリ返してきた」とヒカルが言及している盤面ですが、今だとカカリに対して普通に受けない打ち方も珍しくないような気がします。

この盤面も特に珍しさは感じませんね。

連載当時の僕はほとんど囲碁を知りませんでしたが、こういう打ち方は珍しかったのでしょうか?

ちなみに、LeelaZero先生の候補手もカカリ返しですが、位置が違って右上のケイマカカリが候補手になっていました。

カカリ返すなら実戦の位置がぼんやりとハサミも兼ねているような感じがしてバランスが良いように思いますが、右上のカカリは右下の形とのバランスが良くないようにも感じてしまいます。

しかし、こういう打ち方も最近ではちょくちょく見かけるようになり、実は僕もよく打っています。

10年20年も違えば随分と棋譜から受ける印象にも変化がありますね。

ちなみに、ヒカルがこの碁に対して「とても持ち時間5時間打ち方じゃねェ!早碁だ」と言及していますが、実際に元ネタがNHK杯の早碁だというのが面白いですね。ひょっとして気付く人にだけ気付かせるメタいネタだったのでしょうか?

(図2)

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ヒカルが瞬間的に攻め合いを読んでスベリを打ち、アキラがヒカルの実力を認めた場面での盤面です。

ここは打つ手の選択肢として、右下の方向にハネるのもあったと思いますが、これは石塔シボリの形になって黒の一手負けになります。

作中にヒカルの読み筋が断片的に描かれていますが、有名な手筋の形になっているので有段者くらいなら手順が想像できることと思われますが、これをノーヒントで瞬間的に読めるというのは、ヒカルの実力が相当ヤバいところまで来ているのがわかりますね。

ちなみに、LeelaZero先生の候補手は石塔シボリで一手負けするルート。長手数の読みは囲碁AIの苦手にする所で、石塔シボリといえば李世ドル先生との対局でアルファ碁も読めていなかったことで有名ですが、石塔シボリはLeelaZero先生も読めていないようです。

(図3)

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作中に描かれている最後の盤面ですね。

双方安全策をとらない緊張感のあるねじり合いのような攻防が続いています。

白の左辺黒へのカタツキを打った場面ですが、明らかに中央黒に対してプレッシャーをかける目的の手でしょうね。白も結構薄そうに見える状況でかなり厳しい迫力のある手ですが、この盤面の至るまでも、そしてこれからもこんな感じの手の応酬が続いていくという印象を受ける棋譜です。

見る分にも、自分で打つ分にも、一番見応え打ち応えのある碁だと思います。

まさに最終決戦と呼ぶにふさわしいですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

いよいよ第一部が完結してしまいました。最後には哀しい物語もありましたが、読者的には大満足の名作であることに違いありませんね。

そして、第二部として北斗杯編も始まるのですが、その前に次巻はサブキャラクターに焦点を当てた短編集となります。

いつもとはちょっと違った角度から読める『ヒカルの碁』もまた面白いですよ!(次巻の書評はこちら

初心者が独学で囲碁を覚える上で一番助けになるのは格言だと思う件

 

囲碁は自由なゲームです。

ある程度の基礎的な考えはもちろんありますが、10人いれば10通りの、100人いれば100通りの打ち方が存在します。

そして、その自由度の高さが囲碁の最大の魅力であり、末永く愛されるゲームである所以であることは間違いないでしょう。

しかし、囲碁を覚えたての初心者にとって高すぎる囲碁の自由度は、それを魅力的に感じるどころの話ではないようです。

まるで「初めてのおつかいに街中に放り出された子供」のように、盤上で迷子になってしまうわけですね。

ある程度の経験値を積んだ碁打ちであれば、どこにどんな店があるのか、買い物の仕方など、進むべき方向を知っているので、おつかいで迷子になることはそうそうありません。それどころか慣れてくると、知らない街でウィンドウショッピングを楽しむような自由度を楽しめるようになります。

しかし、囲碁で初心者がそこまでの経験値を積むのはなかなか大変なのですよ。

だけど知らない街でも地図があれば歩けますよね?

囲碁の場合、その地図になってくれるのが「格言」なのだと僕は思います。

この記事では、「格言」が囲碁を独学で勉強する初心者にとって、いかに親切な道標であるのかについて説明していきたいと思います。

 

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囲碁の格言とは?

囲碁の格言を一言で表すと囲碁においての戒めや教訓を短くまとめたもの」となります。(Wikipediaより)

つまり、碁打ちの先人たちの経験から得られた良い形・悪い形を一言でわかりやすく表現したものが囲碁における格言なのですね。

  • こういう時はこんな風に打ったら良いんだよ。
  • こういう形は不利になるから打ったらダメだよ。

こんな感じで、盤上の上で迷子になる初心者にも、打つ手のヒントを示してくれます。

自由度の高さの中にある程度の選択肢を示してくれるわけですね。

おつかいや買い物の例えに戻すと、まさに行く場所を示す地図、あるいはこっそり行く先を誘導する大人のようなものだと思います。

なぜ囲碁の格言を勧めるのか?

実は、初心者にこうして格言を勧めようとしている僕ですが、自分が初心者の頃に囲碁の格言を意識したことはありませんでした。

というより、ずっと独学だったので知る機会がなかったのですね。

囲碁の格言の存在自体を知ったのは中級者程度の頃で、その重要性に気付いたのは2~3級くらいの上級者になってからでした。

それくらいの棋力であれば、囲碁の格言そのものを知らなくても、囲碁の格言にあるような打ち方をある程度無意識に打てるようになっているものです。

な~んとなく「こういう時はこういうもの」と、経験から「おまじない」のような打ち方を実践したりしていて、よく考えるとそれが格言通りの打ち方だったりしたものです。

そんな普通なら膨大な経験を必要とする「な~んとなく」を、格言はたった一言で教えてくれます。

中には理解が難しい格言もあったりしますが、その多くが「ああしたら、こうする」といった簡明なものなので、初心者にも理解しやすいものとなります。

だから格言こそが、初心者が上達する上で一番お手軽なものなのではないかと考えるのです。

特に、教えてくれる人が不在の独学者にとっては一番の道標になるに違いありません。

また、ある程度の棋力がある人にとっても、「な~んとなく」理解しているようなことを改めて言語化してくれる格言は、かなりの勉強になります。

ちなみに、僕の棋力も一応有段者程度ですが、実は最も繰り返し勉強・・というより思い出すことをしているのは囲碁の格言だったりします。

正直、僕も何でもっと早く、初心者の頃にこんな良いものを知らなかったのだと後悔しているくらいですね。

だから今現在初心者の人には、早めに囲碁の格言に触れることをお勧めしたいと思ってしまうのです。

囲碁の格言の一例を紹介

実際に僕の実戦に現れた格言の形

以前ニコニコ動画に自戦のゆっくり実況動画を投稿したことがあるのですが、その棋譜の中に現れる形から格言に当てはまるものを紹介したいと思います。

ちなみに、以下がその自戦実況の動画となります。ちょっと宣伝。(笑)

【あるいは】囲碁、今度は19路の自戦を実況してみました。 - ニコニコ動画

ツケにはハネよ

恐らくは最も利用頻度の高い囲碁の格言である「ツケにはハネよ」

「ツケられたらハネて下さいね」と言っていることは超絶シンプルですが、ほとんどのツケる手に対して有効な格言となります。

僕の愛読書である本手、本筋はここ!格言が教えてくれるでも、最重要の格言として言及されていますが、それはこの格言が適用される場面の登場頻度の高さにあると思います。

「ツケにはハネよ」以外のよく見かけると感じる格言でも、一局の中だけなら適用されるシーンが全く登場しないこともしばしばですが、恐らく「ツケにはハネよ」の状況が一切登場しない対局は、それこそ9路盤での短い対局でも必ず登場すると思われます。

それも何度も。

上手に「ツケにはハネよ」縛りしてもらったら、9子置きより遥かに大きなハンデになるのではないかと思うくらい。(笑)

まず最初に覚えるべき囲碁の格言であることは間違いありませんね。

(図1)

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僕の自戦からですが、よくある星の定石形ですね。

特に囲碁AIの普及以降見かけることが増えてきた形ですが、これもまさに「ツケにはハネよ」の格言通りの打ち方です。

もしハネずに一路右にノビたりしたら・・

黒のツケは「次に左下隅に侵入していきますよ」という手なのに、それを防げていないことになりますね?

(図2)

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左上にも「ツケにはハネよ」が登場しています。

このように「ツケにはハネよ」は、一局の中に何度も登場します。

もちろん、最初に「ほとんどのツケる手に対して有効」と言及した通りで、必ずしも有効であるとは限りません。

恐らく、初心者の中には「ツケにはハネよ」を格言通りに打つことを怖がる人が少なからずいると思います。

それは、ハネることで断点ができてキリが発生する可能性を怖がっているからだと思いますが、それはそれで実は正しいと思います。

マジでそのキリが良い手になってしまうことも少なくないですからね。

だから「ツケにはハネよ」の格言に限らず、格言通りの打ち方が必ずしも良い手になるとは断言できません。

しかし、格言を知っていれば、まずは格言通りの打ち方を検証した上で、どうしてもマズそうだという読みがあってから別の打ち方を試すような考え方ができます。

初心者にとっては難しいでしょうか?

それならまずは怖がらずに格言通りに打ってみること。それで成功と失敗を繰り返すことが成長への早道だと思います。

二段バネ覚えて初段間近なり/三手の読み

格言の中に「初段」と含まれているので、初心者にとっては何となくハードルが高く感じられる格言かもしれません。

しかし、言っていることは至ってシンプル。

(図3)

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こんな感じに、次に切られたらアタリになるという断点が残っているのにも構わず、もう一つハネていくような打ち方を二段バネと言います。

はい覚えましたね。(笑)

いや、格言で言う「覚えて」とはこういうことじゃなく、ちゃんと効果を理解してとかそんな意味なのかも知れませんが、実際問題級位者の対局を見ていると「二段バネ」という選択肢自体が存在しない打ち手をしばしば見かけます。

図3のような形は頻出する形ですが、この局面でも二段バネではなく、ノビやツナギを打つ人が多い。

まるで二段バネという選択肢が最初から存在しないかのようです・・って、自分がそうだったから分かるのですが、二段バネという打ち方を知らない人にとって、恐らく自力でこれが良い打ち方なのだと気付くのは相当難しいのではないでしょうか?

格言は、そんな自分で見つけ出すのが難しい手も教えてくれます。

二段バネが効果的な場面を感覚的に掴むのは初心者にとっては難しいかもしれませんが、三手の読みの格言と併せて意識すれば意外と簡単に使いこなせるようになるのではないかと思います。

三手の読みは文字通り、着手前に三手先までは必ず読みましょうという格言ですが、二段バネを打った場面での三手先は非常に読みやすい。

一手目でキリを入れる箇所が2か所、二手目のツナギは必然で、後は三手目だけを何とか考えられれば良いわけなので、実質一手です。

ここで三手目が全く想像できなかったり、三手目を打たれた後の形が明らかに自分に不利なものだと感じられた時には二段バネを回避すれば良いわけですね。

まあ、そもそも二段バネを打たれた側がキリを入れないような場面も多いのですけど、その辺は何度も打っている内に分かってくると思います。

(図4)

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これも二段バネ。

図3は頻出形なのでほとんど何も考えずに打っていますが、ここではキリを入れられた後の姿を読んでから打っています。

二段バネするのはリスクが大きいのですが、後の展開は比較的読みやすいので初心者にも挑戦しやすい打ち方です。

上手くいけば効果も大きいですしね。

是非、自分の打つ手の選択肢に加えるくらいはしてみてください。

左右同形中央に手あり/2の一は死活の急所なり

相手の急所を探す手助けになる格言ですね。

何となく相手の石が弱そうだということに気付き、その石を攻めようという時に思い出して欲しい格言ですね。

また、「左右同形中央に手あり」は相手の急所を探すのみならず、打つ手に困った時の手助けにもなります。

ぼんやり左右同形(完全に同形である必要もないと思います)になっている箇所の中央付近に良い手があることが多いからです。

「ツケにはハネよ」ほど絶対的な格言ではありませんが、格言通りの手が正解になることは多いですし、間違っていたからといって初心者レベルならそこまで実害が大きいということもないので、迷うくらいならこの格言に従った手をどんどん打ってみるのが良いのではないかと思います。

というか、一応有段者である僕も、この格言通りに打ってはしばしば失敗しています。試した上で失敗することも棋力向上のために大事なことなのではないでしょうか?

(図5)

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完全に左右同形ではありませんが、急所っぽい所に打った手。

ぼんやり中央という感じがしませんか?

これは成功例で、この左辺の白7子を最終的には仕留める結果となりました。

その他、特に有用だと思う格言

アキ三角は愚形の見本

囲碁における手の良し悪しの判断は、どんなに棋力が上がっても完全にできるようになることはありません。

そりゃあそうですよね。それができたら誰も苦労なんてしません。

しかし、明確に悪い手というのは存在します。

囲碁における悪い手とは、即ち効率の悪い手のことを指すのですが、どんな手が効率が悪いのかをわかりやすく教えてくれているのが「アキ三角は愚形の見本」という格言になります。

(図6)

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アキ三角というのは図6の上側の石が三角形に三つ並んだ形のこと。赤丸の位置が空いているからアキ三角というのですね。

たまに勘違いしてる人がいますが、赤丸の位置に白石があってもアキ三角とは言いません。空いていないですからね。

そして、これの何が効率が悪いのかというと、青丸で囲った石があっても無くても良い石だから効率が悪いのです。

一目の得にもなっていない上に、この位置に石が無くても黒石は繋がっているので防御の手にもなっていません。

つまり、ほぼ一手パスのような状態の手になっているのです。

そして、一手ずつ黒と白が交互に打っていく囲碁において、一手パスが致命的に効率が悪いことは言うまでもありませんね?

ごく稀にこういう愚形が好手になる場面もあり、「愚形の妙手」と呼ばれていたりしますが、ハッキリ言って滅多に発生するものではありません。

アキ三角イコール悪手と思ってまず間違いはないと思います。たまに明らかにアキ三角の形を作る以外の選択肢が無い状況もありますが、それも「愚形の妙手」などではなくアキ三角を「打たされた」だけの場合がほとんどです。

また、図6の下側のアキ三角が二つできた形を陣笠と呼びますが、これも同じく愚形の代表格。

初心者の場合、本来コウにはじくような場面でツナいでしまってこの形が出来上がることが多いので、特に注意が必要な形なのではないかと思います。

だけどこれが悪い形だと知っていて、回避しようとしていれば自然に上達もしていくものだと思います。

 

二子にして捨てよ/ポン抜き30目

「二子にして捨てよ」「ポン抜き30目」は、それぞれ効果が全く異なりますが、形としては表裏一体のような感じなので併せて紹介します。

「二子にして捨てよ」は、既に取られているような石でも一手は逃げようという意味です。

これは感覚的に「取られている石を逃げて何か良いことあるの?」と思われる初心者の人は多いのではないでしょうか?

その答えは、逃げなければ後一手で取られる所が、取られるまでに後三手かかるようになっている。つまり手が伸びるという効果があるのです。

それでも結局取られるんじゃ意味ないのではと思われるかもしれませんが、盤上に石があるのと無いのとでは雲泥の差で、後々何かしらの役に立つこともしばしばです。

もちろん、逃げたところでどうにも役立ちそうにない。その上相手も手入れする必要のない状況で逃げても一目損した上に相手に別の場所に打たれてしまうだけなので、必ずしも効果があるとは限らない格言だったりします。

しかし、取られている石でも逃げる選択肢があることを早めに知っておくことが上達の妨げになることは無いと思われます。

(図8)

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図8の上側がとりあえず逃げた形。

一方で下側が逃げずに取られた形。

黒の立場になって考えてみたらわかると思いますが、下側のポン抜かれた形に比べて、上側の一手逃げられた形がいかにも気持ち悪くないですか?

捨てるにしても二子にして捨てる効果とは、つまりはそういうことなのです。

ちなみに、「ポン抜き30目」は図8の下側の形が30目の価値があると言っています。

一子取るのにかかる最短の手数は四手ですが、四手で効率よく取った形ですね。

実際問題、一子取って一目増えただけの二目の手でしかないのですが、非常に弾力のある形で厚みとしても働くので30目くらいの価値があるのだと格言は言っているわけですね。

まあ、このポン抜きの価値が感覚的に分かるようになるのはかなり棋力が上がってからになってくると思いますが、初心者くらいの人でも図8の上側と比べた時に、下側の形が如何に強固なものなのかは理解できると思います。

二子の頭は見ずハネよ

「二子の頭は見ずハネよ」は、級位者にとって意識が希薄な印象のある格言だと思います。

二つ石が並んだ形の頭を押さえる手が好手になることが多いという意味の格言ですが、二子の頭をハネられてしまうとドンドンと相手に圧迫されていってしまうので、ハネた時点の見た目以上に大きな価値のある手になることが多いです。

(図9)

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これは定石形ですが、これも二目の頭をハネた形ですね。

ちなみに、個人的には自分が二桁級くらいの頃に知っていたらもっと上達が早かっただろうなぁと思う格言の筆頭だったりします。

前述した通り見た目に大したことが無い手に見えてしまっていて、簡単に相手に二子の頭をハネる手を許してしまっていた時期があったのですが、よくよく考えると上手に二子の頭をハネられて、どんどん圧迫されている間に大差になっているような展開が多かった。

だからこそ、この格言を知る前に経験として二子の頭をハネるのはかなり良い手だと分かっていましたが、もっと早く知りたかったなぁというのが本音です。

二線ハウべからず/六死八生

二線をハウのは初心者がやってしまいがちな打ち方の一つですね。

必死で陣地を広げようとしているけど、二線をハウ手は一目ずつしか増えない上に相手に厚みを与えます。

初心者のあなたがハウ手を打つたびに、上手はシメシメと思っていることを早めに知りましょう。

というか、これこそ知っているだけでも十分な格言の一つですよね。

(図10)

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ちなみに、二線をハウ手だけで生きようとすると8本ハウ必要があります。

「六死八生」という格言がそれを示しているのですが、8手もかけてたった数目しか得られない上に、相手に与えた厚みは下手したら数十目の価値があるのではないでしょうか?

有段者になると、不本意にハウ手を打たされるくらいなら捨ててしまう選択肢を採ることもあるくらいです。

まあ、恐らく初心者の人には、地は分かっても厚みが何なのかはまだ分かっていないから、地を意識しすぎて二線だろうがハウ手を打ってしまうのだと思われます。

いきなり厚みを意識しろと言っても難しいと思うので、まずは二線をハウ手は損なのだとだけ覚えていれば良いと思います。

下手の両ヅケ

(図11)

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両ヅケがどんな形なのかは見た方が早いでしょう。

図11のように白石の上下(もしくは左右)にツケを打った状態を指します。

ちょっと碁を打つのに慣れてきたくらいの脱初心者レベルの人が多く打っている印象があり、実際僕も二桁級くらいの頃はよく打っていました。

必ずしも悪い手というわけでは無いのですが、特にありがちなのが三間ビラキの真ん中に打ち込まれた石の上下にツケる打ち方。

これで確かにワタれてるのですが、安易に外側にツケた手のポン抜きを許す結果になるので、ある程度強くなってくるとこのような打ち方は選ばなくなります。

恐らく初心者に多い傾向があるのは、初心者が二線をハウ手を打ちがちなのと同じで、地を意識しすぎだからなのではないかと思われます。

千両マガリ/車の後押し悪手の見本

余程他に急いで打つべき手が無い限り、打てる機会があるなら優先的に打ちたい手が「千両マガリとなります。

名前の由来は文字通り、千両の価値があるという意味なのかと思われますが、実際その通りであることが多いです。

(図12)

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もう一つ「車の後押し悪手の見本」という格言もありますが、こちらは相手が先にノビている所に後から追いかけるようにオシていく手となります。

「千両マガリは、その後から追いかけることすら止めてしまった時に打てる形で、車の後押しよりも更に相手より先行した形なのだと僕は思っています。

この車の後押し、一度この状況に陥るとなかなかオシていくのを止められない上に、止めたら止めたで絶好の千両マガリを打たれてしまうという、何というか悪いと分かっていてもどんどんドツボにハマっていくような印象があります。

だから、知っている人はこういう状況に陥らないように細心の注意を払うのですが、初心者や級位者の人は割と平気でこういう手を打っていたりします。

まあ、これも僕の経験談なのですが、特に車の後押しは何となく流れの中で打ってしまうような手なので、悪いということに気付きづらいんですよね。 

格言はそういう気付きづらいことも教えてくれています。

総括

いかがでしたでしょうか?

所詮はアマチュア低段者程度の僕がオススメした所で、ほとんど説得力は無いかもしれません。

しかし、弱いからこそ格言に助けられ、それなりにそれっぽく打てているのも事実です。

また、とはいえある程度の棋力が身に付いているからこそ、囲碁の格言が今思えばとてつもなくわかりやすい道標だったのだと実感もできています。

特にちょっとした囲碁の考え方すら教えてくれる人のいない独学者にとっては、これほど心強いものは無いと思います。

この記事を読んだ囲碁の初心者の助けに、少しでもなれていたら幸いです。

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】16巻

伊角さんファン必見の16巻です!(前巻の書評はこちら

前巻ではとうとう佐為が消え、失意のヒカルの行く末が気になる所ですが、その前にヒカル復活のキッカケになる伊角さんの中国修行編のエピソードが挿入されます。

実力だけならいつプロになってもおかしくないのに精神的な弱さが目立つ伊角さんが、中国での修行を通して一皮むけていく姿に注目ですね。

本作の概要

ヒカルが佐為を探しているその頃、プロ試験に落ちて院生も辞めてしまった伊角さんが中国へ勉強しに行っていることが明らかになりました。

プロ試験に向け、中国棋院の厳しくも勉強するには恵まれた環境の中、着実に実力を伸ばす伊角さん。

大きな自信を得て帰国した後、昨年度のプロ試験で反則負けという苦い負け方をしてしまったヒカルの元へ向かいます。

プロ試験に向けてその苦い経験を払拭したい伊角さんと、佐為のために自分が囲碁を打ちたくないと思っているものの、伊角さんのために対局に応じるヒカル。

図らずも囲碁から距離を置こうとしているヒカルと対局することになった伊角さん。果たしてヒカルを囲碁の世界に引き戻すキッカケになれるかに注目ですね!

本作の見所

中国棋院で勉強する伊角さん

ヒカルの碁』の連載当時と言えば、伝説の棋士である李昌鎬先生がまだまだ世界のトップに立っていて、李世ドル先生が台頭し始めてきていた時代。

つまり、囲碁における世界のトップと言えば韓国であるといった時代でしたが、中国も日本から見れば十分格上。勝手なイメージですが競争の激しさは世界一の印象があります。

そんな中国棋院の厳しい環境の中に身を置き、伊角さんはプロ試験に臨むべく勉強していくことになります。

「ただ自信を失って終わるだけになったりしたら━━」

「ここで自信を失わず逆に自信をつけられれば」

最初、伊角さんは中国棋院の若い棋士たちのレベルの高さに圧倒されてしまいますが、その厳しい環境で修行することを決意します。

精神面に難ありの伊角さんには良い修行の場だったのかと思われますし、そういった面でアドバイスをしてくれる人も現れました。

「いら立ち、あせり、不安、力み、緊張、プレッシャー・・。つきまとう感情に振り回されるなっ。キミにとって一番大切なことだ。石だけを見ろっ。これは自覚と訓練でできるっ。元々の性格なんて関係ない習得できる技術さ。こんなもん」

楊海さんの伊角さんに対するアドバイス

感情のコントロール「習得できる技術」であるという伊角さんにとっては目から鱗の助言に、伊角さんは中国での経験をより良いものへと昇華させていくことができたようです。 

囲碁から離れたいけど離れきれないヒカル

一方、佐為に戻ってきて欲しいヒカルですが、和谷の説得に心が揺さぶられたり、囲碁部の大会の様子を見に来てしまったり、どうにも離れきれない様子です。

「打たねェんだからオレは。佐為。見るだけだから」

誰にともなく言い訳するヒカルが切なすぎます。

ヒカルが打たなくなったら佐為が消え損だということに、ヒカルが打たなくなるようなことを佐為が望んではいないだろうことに、ヒカルはまだ思い至れないようですね。

ちなみに、せっかくプロ棋士になったのに様子がおかしいヒカルに慌てふためくお母さんがちょっと可哀想だと思いました。そりゃあ心配だわ。

待っているアキラ

ヒカルのことを歯牙にもかけていなかったのに、徐々にヒカルの追いかけてくる足音に気付き、そしてヒカルがいなくなったら気になってしょうがなくなるアキラ。

何コレ?

結果的にとは言え、押してダメなら引いてみろ理論が成立しているような形なのでしょうか?

「進藤来い!! ボクはここにいる!」

しかし、考えてみればこの時点でアキラの見ているヒカルの8割近くは佐為のはずです。

ヒカルの中に強く佐為を感じている人間ほど、今のヒカルにとっては接するのがツライのではないかと思われ、アキラがどんなに望もうとも今のままではヒカルがアキラの前に現れることは無さそうですね。

ヒカルvs伊角さん

ヒカルを心配してではない。

自分のためにヒカルに打ってほしいのだと言う伊角さんに、さすがのヒカルも断り切れませんでした。

「伊角さんのためなんだよこれは。オレが打ちたいわけじゃないから」

「ワクワクしちゃいけない!」

あくまでも伊角さんのために打っているのだと言い聞かせながら対局するヒカルですが、ヒカルがプロになってしまうほどの囲碁好きになっていることには違いありません。

打っている内に徐々に熱がこもってきます。

これは囲碁が好きな人ならわかると思いますが、何かしらの理由で囲碁を打ってはいけないと制限された所で、ひとたび打ち始めた後にこれを楽しむなというのは無理な相談です。

そして、対局が進むにつれてヒカルは気付きます。

「いた・・どこをさがしてもいなかった佐為が・・こんな所にいた」

自分の打つ碁の中に佐為が残っている。ずっと一緒にいたからこそ、ヒカルの碁の中には佐為の面影が残っていたのです。

というか、このことに佐為の方はずっと前から気付いていました。

ヒカルの碁の中に佐為の碁を残したこと。それが千年を永らえた佐為の役割であると佐為自身が塔矢行洋との対局の後に察していましたね。それ以前から感じていた佐為の不安も、徐々にそのことに気付き始めていたからなのだと思われます。

そして、佐為がいなくなったということは、佐為は役割を果たし終えたということに他ならず、だとすればヒカルの碁の中には確実に佐為がいるはずなのです。

そのことにヒカルは伊角さんという実力者と対局することによってはじめて気付いたのですね。

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今回は伊角さんと楽平の対局の棋譜を紹介したいと思います。

元ネタは初の海外の棋譜で、馬暁春9段(黒)と曹大元9段(白)による25年ほど前の中国の名人戦棋譜となります。

中国で修業中の伊角さんの棋譜の元ネタだから中国の棋譜が使われているということだと思いますが、こういう細かい所までこだわっているのは『ヒカルの碁』の一番良い所ですよね。

ちなみに、今回この元ネタの棋譜を見て気付きましたが、今まで紹介した棋譜の中では一番難解かもしれません。特に中盤の中央の競り合いは僕には理解不能でした。

(図1)

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序盤は比較的おとなしい展開。

白番の二手目の三々とか下辺のカタツキは、別にこの対局が行われた当時であっても珍しいとまでは言えない手かと思われますが、現在見ると囲碁AIの影響を受けたような手に見えるから不思議です。

左下の位が低く、右辺から下辺にかけての位が高い。一方で位の低い打ち方をすれば、一方で位の高い打ち方をするのも囲碁AIっぽいですね。

しかし、このカタツキの場面でLeelaZero先生が示す候補手は上辺の白を固めるような手で、ゆっくりとした打ち方を好むような人が打ちそうな手です。

囲碁AIが猛威を振るう前の時代の人間が囲碁AIっぽい手を打っていて、囲碁AIが人間ぽい手を選んでいるようなこともあるんだと興味深く感じた盤面です。

(図2)

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右下の黒が中央にハネ出していき、白がキリをいれた盤面。

双方に空き三角ができて形が悪いですが、力強い読みの入った手という印象も受けますね。

特に、黒の方は他にも打つ手の選択肢があったはずですが、恐らく中央で競り合いが起きた時にダメが詰まっていた方が良いという判断でしょうか?

こういう形が悪くも力強い読みの入った手は、中国の棋士棋譜でよく見かける印象がありますが、本局もそういう感じがしますね。

ちなみに、この黒番を伊角さんに当てはめているのが面白い所。伊角さんの棋風について作中であまり言及されていませんが、どちらかと言えば筋の良い打ち方をしそうな印象があります。

今回使われている棋譜とは正直イメージが一致していませんが、こういう力強い打ち方をしている棋譜を使って、伊角さんの成長を表現しようとしているのではないかと思いました。

(図3)

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中央で訳の分からない競り合いが起きつつあります。

黒がまた自ら空き三角を作っていますね。普通なら空き三角を打ったところの右上が目につきますが、黒白お互いに危険な競り合いが続いている盤面。何かしらの意図がある手なのかと思われますが、僕には意図がわかりません・・

ですが、お互い難しい所ではあるものの、個人的には完全に白持ちです。

黒のこの後の構想は全く掴めませんが、白の方が目指すべき姿がわかりやすいように感じるからです。

(図4)

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図3から少し進んだ盤面。

ある程度形が決まってきたものの、まだまだ中央の競り合いの結果がどうなるのか油断ならない状況ですね。ですが、やはり白の方が打ちやすそうな印象は変わりません。

実際、LeelaZero先生の形勢も徐々に白に傾いていきます。

とはいえ、ちょっとした判断ミスで一瞬でどちらにでも形勢が傾きうる緊張感のある対局です。

これがアマチュア低段者同士の対局ならどちらかがツブれて一気に勝敗が決まりそうなものですが、これが僅差の作り碁になるのだからプロの力は流石ですよね。

ちなみに、LeelaZero先生の評価では終局の少し前まで白の優勢で進んで、黒の逆転勝ちとなりました。

総括

いかがでしたでしょうか?

自分の対局の中に佐為を見つけることのできたヒカル。この後どういう答えを出していくのかが楽しみですね。

いよいよ、第一部ともいえるヒカルと佐為の物語のクライマックスが見えてきました!

(次巻の書評はこちら

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】15巻

 

ハンカチの準備はよろしいでしょうか?

哀しい別れの15巻です・・(前巻の書評はこちら

ヒカルと佐為の別れ。

露骨にフラグが立ちまくっていたので、これは予想された展開ではありましたが、そうだとしても胸が痛いものがありますね。

しかし、これは今まで佐為の影響を大きく受けているはずのヒカルが独立していくことを意味します。そういう意味でこの別れは、本当の『ヒカルの碁』の始まりであるとも言えるのかもしれません。

ヒカルと佐為の不思議な師弟関係の終わりを最後まで見届けましょう!

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本作の概要

プロとしての初手合を快勝して上機嫌のヒカルに対して不機嫌な佐為。

もはや些細な予感などではなく、自分が消えることを確信している佐為に対して、ヒカルはそんなことを想像すらしていません。

想像すらしていないからすれ違ってしまう2人でしたが、とうとう佐為が本当に消えてしまってから初めてヒカルは慌てふためきます。

佐為を探して右往左往。

そして、最後に日本棋院でかつての本因坊秀策、つまりは佐為の棋譜を見て改めて佐為の凄さを実感します。

同時にそれは今まで佐為に囲碁を打たせてあげられなかったことへの後悔へと繋がります。

本作の見所

佐為には勝てないヒカル

塔矢行洋、塔矢アキラ、緒方九段、それにsaiとして対局した世界中の人々に対して大きな影響を残し、そして勝利してきた佐為は名実ともに『ヒカルの碁』の作中で最強の棋士となります。

しかし、囲碁とは強い者が必ず勝利するゲームではなく、ある程度実力が伯仲してくるとジャイアントキリングも珍しくありません。

つまり、佐為がこのまま現世に残っていたら、いつまでも最強の棋士ではいられなかったのではないかと思われます。

「ヒカルなんか私に勝てないくせに」

これは決して強者のセリフではありませんが、この言葉の裏側には消えたくないという佐為の本心が現れていたのではないでしょうか?

前述したように、プロ棋士になるレベルまで棋力が向上しているヒカルなら、既に相手が佐為クラスでもマグレ勝ちしていて不思議ではないくらいの棋力になっています。

最強の棋士としてヒカルを導くことが佐為の役割だったのだとしたら、まだ消えたくない佐為にとってヒカルは、まだまだ自分には及ばないヒヨッコの棋士でいて欲しいという思いがあっての発言なのかもしれませんね。

一流の者が決して口にしないような言葉を、まして佐為ほどの者が絶対に口にしないような言葉を、それでも言わずにはいられなかった佐為の心情を思うと胸が痛くなります。 

佐為との唐突な別れ

出会いは劇的であっても別れとは唐突なものです。

泊りでの囲碁イベントの仕事中、既に自分の最後を悟っている佐為は、以前saiと打つことにこだわりを見せていた緒方九段と対局するようにヒカルに言う佐為。

酔っぱらった緒方九段相手に満足な対局は望めないと思われる状況ですが、この機会を逃せば二度と緒方九段とは対局できなくなると佐為は気付いているからです。

寂しそうな佐為の表情と、何もわかっていないヒカルの人懐っこい表情のギャップが切ないです。

そして、イベントから帰ってきてヘトヘトのヒカルにも対局を持ち掛ける佐為。

明らかに最後の時を悟っている風ですが・・

この対局中、ふと佐為は消え去ってしまいます。

「神の一手に続く遠い道程。私の役目は終わった」

ヒカルにしてみれば本当に唐突な別れの訪れでした。

いや、正確には佐為はヒカルに自分がもうすぐ消えてしまうかもしれないことを告げているのですが、それだけに全くそれに配慮しなかったことはヒカルの中に大きな後悔として残ってしまったことでしょうね。

佐為を探す旅

ヒカルが自分の不安に向き合ってくれなくて佐為は、「ヒカルなんか私がいなくなってオロオロすればいいんだ」とか思っていましたが、まさかここまでオロオロするとは思っていなかったかもしれませんね。

消える直前の佐為は少々精神が不安定になっていたので、とんでもない読みの力を持っている割には先が読めていませんでした。

ともあれ、ヒカルは佐為を探して本因坊秀策ゆかりの地である広島は因島まで足を延ばします。

なかなか羨ましい小旅行ではありますが、もちろんヒカルはそれどころではありません。付いてきた河合さんは楽しそうですけど。(笑)

東京にも本因坊秀策の墓があることを知って、アマの日本代表である周平との対局も相手を圧倒して早々に終わらせ、東京にとんぼ返りします。

しかし、そこでも佐為は見つかりません。

そして最後、日本棋院の資料室で本因坊秀策、つまりは佐為の棋譜を見て気付きます。

佐為の才能、そして本因坊秀策は最初から佐為の才能を見抜いていて佐為に打たせていたこと。

「誰だってそう言う。オレなんかが打つより佐為に打たせた方がよかった!」

ヒカルにとって囲碁は佐為の影響で始めたようなもので、もともとは全く興味の無いものでした。それにちょっと惹かれてしまったために、結果的に佐為が消えることになってしまったのだとヒカルは後悔します。

「もう打ちたいって言わねェよ!」と、いつだったか佐為が言っていたのと同じセリフなのがまた哀しさを煽りますね。

もちろん、佐為にしてみてもヒカルが囲碁に興味を持ってくれたこと。自分を師匠に仰いでくれたことは嬉しかったはずですが、ヒカルの後悔は尽きません。

佐為に戻ってきて欲しいヒカル

自分が囲碁を打つから佐為が消えた。

じゃあ打たなかったら戻ってくるかもしれないとヒカルは囲碁を打たなくなります。

手合をサボったりしているものだからアキラが葉瀬中まで乗り込んで来たりしていますが、そんなアキラからも・・

「オレなんかが打ってもしょうがないってことさ!」

と、逃げてしまいます。

明らかにヒカルの中に佐為を見ているアキラに、自分の価値を認めるようなことを言われてしまったら、自分のせいでその価値ある佐為が消えてしまったと思っているヒカルにとっては、そりゃあ辛いですよね。

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今回は佐為が終局まで打ち切った最後の対局。

酔いどれ緒方九段との対局の棋譜を検討していきたいと思います。

元ネタは武宮正樹九段(黒)と王銘琬九段(白)の20年近く前の棋譜です。今気づきましたが、ヒカルの碁の元ネタに20年くらい前(2018年から見て)の棋譜って結構多いですね。

それにしても、偉大な棋士に対して本当に失礼なことかもしれませんが、王銘琬先生が酔いどれ緒方九段の元ネタになっているのにちょっと納得してしまいました。

もの凄く強い先生なのですが、本因坊戦のシチョウ間違いのエピソードなどもあって、超強い人でも人間味あふれるミスをすることがあるということを示してくれている棋士だからかもしれません。

(図1)

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何でもない黒の三連星に対する白の二連星。

まさに武宮先生の棋譜って感じですが、アマチュア棋譜も含めて今まで山のように打たれ続けてきた布石で、一体なぜこの盤面を検討しようとしたのか疑問に思う人もいるかもしれません。

囲碁をあまり知らない人にはピンとこないかもしれませんが、かなりの囲碁ファンであれば、佐為が本因坊秀策の棋譜を残した張本人であるという設定を思い出したらピンとくるのではないでしょうか?

だって、本因坊秀策と言えば小目の連打の秀策流が有名で、星を連打する三連星のような布石を打つようなイメージは全くありません。

一方で、本因坊秀策と言えば簡明な打ち回しで戦わずして勝利する棋風でも有名です。それは自然流とも言われる武宮先生の打ち方に通じるところがあるのではないでしょうか?

つまり、この三連星を打つ武宮先生の棋譜が、僕には佐為の変化・成長と、佐為の棋風の変わらない部分の両方を表現されているように感じてならないのです。

まあ、検討じゃなくて完全に佐為の成長記録の考察になってしまっていますが、そういう象徴的な盤面なのではないかと思ったという話です。

ちなみに、最近ではAIの影響もあってもっとも基本的な三連星の打ち方として囲碁の教科書に示されている通りの展開になることはほぼありません。

LeelaZero先生が図1の盤面で示している白の次の手も、いきなり右上の三々に入るというもの。一応、それでも黒は従来の三連星と同じように右辺から中央を意識した打ち方をしていくことはできるような気がしますが、右辺が広くなりすぎて白が打ち込みやすくなるため、その良し悪しは僕にはわかりません。

(図2)

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ここまで非常にわかりやすい展開ですね。

一手一手がある程度の碁打ちなら誰でも思いつける範囲の手の積み重ねで、自然な流れに感じられます。

囲碁を知らない人にそんなことを言うと、何だプロだ佐為だといってもそんな簡単な打ち方をしているのかと思われるかもしれませんが、それは簡単で自然な打ち方がどういうものなのかを軽視してしまっています。

例えば僕の場合、難しい打ち方でてんやわんやしている内に誤魔化して勝つような棋風なのですが、それは単に僕の力量が不足しているから簡明な打ち方だけをしていたら勝てないからだったりします。

難しい手を打つことが、イコール強さではないということなのですね。

そして白が右下の三々に入った場面です。

最近は三々入りイコールAIの手のイメージが強くなってきていますが、これは昔から打たれている普通の三々入りですね。黒は両翼を広げているので、タイミングを見て入っていくのは普通の考え方となります。

ちなみに、LeelaZero先生の候補手も同じ三々入りでしたが、LeelaZero先生の場合はもう少し早いタイミングからこの手を示し始めていました。

(図3)

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右下の打ち回しの意味が僕には全く理解できません。

白の露骨な生ノゾキに反発し、ツガずにノビた黒。そしてその下にツケた白石が意味不明です。

利かしているのだとしても、その効果が良くわからない。LeelaZero先生も示しているように右下の白を取りに行くような手を打ってはいけないのでしょうか?

実戦でも黒も取りに行きませんが、この辺が僕には理解の及ばない所です。(誰か強い人に教えて欲しい!)

まあ、右下はそこまで大きくないので、一度取りに行った以上は取り切らなければいけなくなる黒の負担が大きいということなのかもしれませんね。それに、この後に白が打った場所も模様の接点となる好点です。そこが右下以上に大きいという判断なのだと思いました。

いやはや、打たれてみたらそういうことなのかと思えるけど、僕が実戦で打っていたら間違いなく右下ばかりを気にしてしまします。

広い視点の大切さが伺えますね。

総括

いかがでしたでしょうか?

ついに、ヒカルと佐為の別れの時が来てしまいました。

この別れは、成長したヒカルの独り立ち、佐為を必要とせずとも成長していけることを意味しているのだと思いますが、そのヒカルはまだ立ち直れていません。

そして次巻は、もう一人の立ち直ろうとしているキャラクターが主人公のエピソードです。

プロ試験の合格を後少しのところで逃し挫折を味わった伊角さんもまた、次のプロ試験合格に向けて突き進んでいこうとします。

そして、そんな伊角さんがどうヒカルに絡んでいくのかも見所ですね!(次巻の書評はまだ)

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】14巻

 

頂上決戦が決着する14巻です!(前巻の書評はこちら

いよいよ前巻から続く『sai vs toya koyo』の対局が決着します。

決着するのですが、この対局はお互い大きなものを賭けた対局でしたね。

それもお互い、普通なら守れるはずもないものを賭けています。

しかし、今巻でその約束は果たされてしまいました。

実は、佐為を主軸に据えたエピソードは塔矢行洋との決着後が本番です。

まだまだ目が離せませんね!

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本作の概要

前巻から始まった『sai vs toya koyo』のネット越しの対局。

数々の碁打ちに見守られながらの熱戦でしたが、それもとうとう決着します。

佐為念願の対局を実現するために、ヒカルはその後処理も含めて少々苦労することになりますが、ちゃんと佐為のことも気に掛けているヒカルって意外と良いヤツですね。

また、佐為と塔矢行洋の対局を一番近い所で見ていたヒカルも、また少し成長します。

一色碁で倉田プロを脅かしたり、プロとしての初手合では相手を寄せ付けない強さを見せつけたり、ひょっとしたらその成長率は少しどころではないかもしれません。

しかし、一方の佐為の不安は徐々に大きくなってきます。

本作の見所

『sai vs toya koyo』の決着

頂上決戦には、意外にもゆっくりとしたイメージの棋譜が使われています。

実は大きな競り合いのような展開にはなっていません。

両雄ともにドシっとした本格的な打ち手だということを表現しているのだと思われますね。

そして、序盤は塔矢行洋が優位にことを進めていたものの、結果は佐為の中押しで終わりました。

しかし、普通なら形勢不明の状況で半目負けを読み切って投了した塔矢行洋の方も半端ではありません。

結果は佐為の勝利でしたが、2人の力量は五分。何度も対局したら佐為も無敗のままではいられなかったことが伺えますね。

「塔矢行洋・・あなたは十分に応えてくれた。あなたの研ぎ澄まされた一手一手に私の身は戦慄を覚えるよりも歓喜に震えた。そんなあなたに十二分に応えることができた自分が誇らしい」

このシーンでの佐為は、作中でも一番うれしそうで、そして輝いていましたね。

ちなみに、佐為が塔矢行洋の名前を口にしたのも実は最初だったのではないでしょうか?

いつも「あの者」とばかり呼んでましたからね。

対局を通して塔矢行洋に近付いた気持ちになっているのかもしれません。

ヒカルの成長

佐為の勝利で終わった対局ですが、実は塔矢行洋に逆転の手段があったことにヒカルがその場で気付きます。

佐為や塔矢行洋ですら気付かなかった手に気付いていたヒカル。

もちろん、たった一手そういうことがあったからといって、ヒカルが佐為や塔矢行洋を上回ったことにはなりませんが、少なくとも上回りうる素質があることは間違いないでしょう。

「今わかった。神はこの一局をヒカルに見せるため、私に千年の時を長らえさせたのだ」

佐為にそう思わせるほどの才覚をヒカルは見せたのでした。

その後、ヒカルは倉田プロとの一色碁やプロとしての初手合で、今まで以上に成長した姿を見せます。

頂上決戦を間近で見て、大きく成長したということなのだと思われますね。

頂上決戦の後日談

ヒカルは大丈夫だと思ったから塔矢行洋との対局を持ち掛けたのでしょうけど、少々詰めが甘かった。

負けたら引退するという塔矢行洋の決意の固さと、塔矢行洋なら対局を持ち掛けたことを黙っていてくれるからバレることはないということ。

これをヒカルは認識していなかった。

アキラと緒方九段の2人が、『sai vs toya koyo』が事前に約束された対局であることに気付き、それをヒカルが持ち掛けたことに思い至ってしまいました。

緒方九段はsaiがヒカルの知り合いであると、アキラは恐らくヒカル自身だと確信できないまでもそう思っているようです。それぞれ違う結論なのに、両方ともある意味正解しているのが面白いですね。

そして、それ自体は塔矢行洋の口の堅さに助けられ何とか事なきを得ましたが、その塔矢行洋が本当に引退してしまいます。

現在の現実の囲碁界に例えたら井山先生が突如引退するようなもの。

新入段のプロが、自分が原因で井山先生を引退させたと思ったら、これは相当ショックを受けるであろうことは想像に難くありませんね。

一色碁

今巻は佐為と塔矢行洋とのエピソードだけではありませんよ?

今後、徐々に主要なキャラクターとなってくる倉田プロも忘れてはいけません。

偶然ラーメン屋で遭遇した倉田プロに、ヒカルは腕試しに対局を持ち掛けるのですが・・

その対局がまさかの一色碁となりました。

一色碁とは、その名の通り双方が一色の碁石で対局をすることになります。

初めての一色碁で倉田プロを追い詰めたヒカル。敗北したものの、次世代の棋士は塔矢アキラだけではないということを倉田プロに見せつけました。

ちなみに、倉田プロは時期タイトルホルダー候補的な位置付けの実力者のはずなのですが、ヒカルの力に驚いている内に自分が石の配置を忘れてしまうというミスをしてしまったり、なかなか愛嬌のあるキャラクターだったりします。

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今回はもちろん『sai vs toya koyo』の対局の棋譜を検討していきます!

元ネタは20年以上前の林海峰九段(黒)と依田紀基九段(白)の対局ですね。

初登場時は本因坊秀策をはじめとした古碁の棋譜が使われていた佐為ですが、棋風改革と言っても差し支えないくらい棋風が変化しています。

あえてなのだと思いますが、佐為の棋譜の元ネタは物語が進むほど古碁が減っている印象がありますね。

(図1)

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序盤、塔矢行洋が「相手にとって不足なし!」と相手を認めた場面となります。

下辺に大きな白模様ができて、黒からしてみたらこれをどう消すのか、タイミングも含めて難しい所ですね。

しかし、この盤面に塔矢行洋ほどの打ち手が認めるほどの何があるのかについては、連載当時の僕にはわかりませんでした。

まあ、二桁級以下だったので当然と言えば当然ですが、作中でも語られている通りゆっくりとした展開だったので、いずれにしてもどこに凄さがあるのかがわかりづらい所ですね。

その辺、一応自分なりに答えを考えてみました。

その結果、恐らく図1の赤印のところの打つ手順にあったのではないかというのが僕の結論です。

左下の赤丸の部分が最後に打った手なのですが、それを打つ前に右下を相手に受けさせつつ打ったのが良かったのではないかと思われます。

どういうことなのかと言うと・・

(図2)

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もし、いきなり最後に打った位置に打ってしまっていたら、例えば図2のようにハサまれたりして、白模様の発展性が阻害される。だから下辺を広げる意識で先手で右下を決めてから左下に戻るという手順になったのではないかと考えられますね。

ちなみに、図2のハサミの位置は僕ならこう打つという位置ですが、LeelaZero先生は一路下を候補手に示していました。

まあ、考え方としては同じですね。

細かいですけど、こういう打つ手順って見落としがちだけど大事ですよね。

よく弱い人は打ってからミスに気付くとか言いますけど、僕の場合、打った瞬間に気付くようなミスの多くはこういう手順に関するものである気がします。

手順を考える所って、要は自分が打ちたい場所を打つ手順だから「あっ、先にこっち打つべきだった~」と気付きやすいんですね。

逆に、読み間違えとかに関しては、打った瞬間に気付けるほど読みの力が強かったら今頃もっと強くなっています。(笑)

(図3)

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「ボウシからジワジワと攻めることで、気がつけば形勢は私に悪くないものになってゆく」と、塔矢行洋が佐為相手に優位にことを進めているシーンですね。

和谷が言っている佐為がはじめに仕掛けて、いつの間にか働きを失っている手が上辺の赤印の手で、塔矢行洋が言っているボウシは中央の赤印の手のことかと思われます。

左上は定石形なので「働きを失っている」は言い過ぎかもしれませんが、確かにこのタイミングで赤印の石は無くても良い石であることは間違いありませんね。

左上で白は中央方向への厚みを築く方針で打っていると思われるのですが、中央の黒がボウシした手がうまく働いて、中央の黒が強化されたことにより左上の白の厚みが働きづらそうな格好になっています。

また、右上の打ち方も作中で白の望む展開だと語られていますが、これも左上の白の厚みを制限することに繋がっていますね。

というか、黒がボウシした手の二路下の取り込まれている白。これがそもそも、少し前までは強くなかった中央黒を攻める手だったはずなのに孤立してしまっている。

この辺、流れだけ見たら確かに黒が上手くやっているように見えますね。

とはいえ、下辺白も大きいし、中央黒に対しても綾が残っていそうな形。まだまだ形勢は微妙です。

LeelaZero先生の形成判断からもそれはうかがえます。

実は、LeelaZero先生はこの棋譜に対して、終始白の優勢を示していて黒が優勢になる瞬間はありません。

もしかしたらコミの違い(当時は5目半)が影響しているのかもしれませんが、そう考えると1目のコミの違いでAIが優勢を示すようになるくらいの僅差だということなのかもしれませんね。

(図4)

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佐為の好手と評される一手ですね。

作中で語られるほど気付きにくい一手かと言われたら、そこまででもないような気がします。

むしろ、この一手なら気付けそうな気がしますが、その後の黒の正しい応手の方が難しいような気がします。

ちょっとしたことで、白が大きく得してしまいかねない状況ですね。

個人的にはこういう手の受け方が一番苦手で、ずっと優勢に打ち進めてたのに終盤のこういう所で大損して逆転負けするパターンが非常に多かったりします。

実は、図4の盤面からの次の一手は実践とLeelaZero先生で一致しているのですが、僕には思いもよらない一手でした。

それこそ打たれたらなるほどと思う、だけど打たれる前は気付かないような一手だったと思います。

総括

いかがでしたでしょうか?

徐々に胸が痛くなってくる展開。

もはや佐為が自分でフラグを立てまくってるので、今後の展開が予想できていた人は多い事でしょう。まして、『ヒカルの碁』の読者には先読みが得意な碁打ちが多かったことでしょうからね。

次巻は、作中で最も哀しいエピソードなので心して読みましょう!(次巻の書評はこちら

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】13巻

 

ついに頂上決戦が始まる13巻です!(前巻の書評はこちら

前巻で念願の、しかし不本意な形で塔矢行洋と対局することになった佐為でしたが・・

今巻では、いよいよちゃんとした形での対局が実現します!

ヒカルの碁』は、基本的にはヒカルやアキラ、囲碁部や院生仲間といった思春期の子供をメインに据えた物語ですが、今巻は塔矢行洋の入院から始まり、佐為と塔矢行洋の頂上決戦まで、大人の碁打ちがメインに据えられたエピソードになります。

佐為はいわずもがなで主人公の一人ではありますが、実のところこれまでヒカルと一緒にいるだけで活躍の機会は非常に少なかったです。

キャラクターの属性上、致し方ないところではありますがかなり不遇な扱いを受けてきたと言えます。

相手の塔矢行洋は入院していて若干不謹慎な感もありますが、ようやく佐為が報われる描かれるエピソードがあって良かったと思います。

まあ、佐為と塔矢行洋の間に立つヒカルは、なかなかに大変な立場になってしまっていますが。(笑)

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本作の概要

プロの世界のことを何も知らないヒカルの、プロ棋士としての生活がついに始まります・・と言いたいところですが、ヒカルのプロ棋士としての生活は始まりそうでなかなか始まりません。(笑)

初対局の相手は塔矢アキラ。

因縁の相手に奮い立つヒカルでしたが、塔矢アキラが対局場に現れないまさかの事態が発生します。

塔矢行洋の入院。父親が倒れて入院してしまったのでは流石に仕方ないですね。

そして、この塔矢行洋の入院という出来事が、偶然にも佐為と塔矢行洋の頂上決戦という好カードを実現するキッカケになっていきます。

本作の見所

初対局の相手は?

新入段の免状授与式、アキラに無視されて悔しがるヒカル。

以前に実力不足だったヒカルなら悔しがることすらできなかったでしょうが、ある意味アキラと対等に肩を並べて恥ずかしくないと思えるまで努力し、実力を付けてきたからこそ感じる悔しさなのかもしれませんね。

そう考えるとヒカルも成長したものです。

しかし、アキラがヒカルを無視したのには理由があります。

アキラはこの段階で、ヒカルの最初の対局相手が自分であることを認識していたようです。

つまり、話をするなら対局を通してだという意思表示だったのではないかと考えられます。

宣戦布告。既にヒカルのことを歯牙にもかけない相手だとは思っていない証拠ですね。

そして、その後ヒカルも初対局の相手がアキラだと知り奮い立ちます。

塔矢行洋の入院

アキラとの対局。

座して待つヒカルは、囲碁部の大会の三将戦の時のアキラを彷彿とさせるほど緊張しています。

しかし、何故か対戦相手のアキラは対局開始時間を過ぎても現れません。

聞けばアキラの父親である塔矢行洋が倒れて入院してしまったとのこと。さすがにそれで冷静に打つことはできないとアキラが対局を休んだという事情でした。

相手がヒカル、もしくはヒカルかもしれないと思うと、プロ試験の初日をサボってしまうほどのアキラですが、さすがにこの状況では対局できないようですね。

トップ棋士へのお見舞い

佐為に急かされ塔矢行洋のお見舞いに行くことになったヒカル。

しかし、塔矢行洋ほどの棋士ならお見舞いに多くの人が訪れることになるのでしょうけど、面識の少ないペーペーであるヒカルがお見舞いに行くというのはどうなのでしょうか?

例えば、小さな零細企業ならともかくある程度大きな企業の幹部が入院したからって、新入社員がお見舞いに行ったりするかと言えばそんなことは無いでしょう。

幸いにも、塔矢行洋はヒカルに注目していて知っているのでおかしな空気にはなりませんでしたが、例えば和谷や越智が訪れたら微妙な空気が流れそうな気がします。

というか、佐為に急かされたとはいえ堂々とお見舞いに訪れるヒカルの度胸はなかなかのものだと思います。

僕にはとてもできません。

「キミがお見舞いに来るとは意外だな」

せっかくお見舞いに来たヒカルに対して流石に失礼ですが、緒方先生の疑問ももっともですよね。

そして、どうやら塔矢行洋が入院中の手なぐさみとしてネット碁を打つらしいことを知ったヒカルは、病室で塔矢行洋と2人きりになった時に・・

ネット碁でsaiと打ってもらえないかと塔矢行洋に提案します。

今まで、佐為に関することはひた隠しにしてきたヒカルが、佐為のためにリスクを冒します。

塔矢行洋のことを信頼したからというのもあるのかもしれませんが、これは今までに無かった大きな動きですね。

ところが、さすがに人が良い塔矢行洋も素性を隠して打とうとするsaiのことは好ましく思えないようで、何とか対局を取り付けることができたものの、何だかついでのような対局になってしまいました。

「先生が負けた時、真剣じゃなかったからって言われちゃやだし」

しかし、ヒカルの失言が塔矢行洋を挑発する形となり、ついでのような対局から、塔矢行洋の引退を賭けた真剣勝負にグレードあっぷしました。

「ヒカル!感謝します!」

塔矢行洋ほどの棋士が引退を賭ける。ヒカルにしてみれば今まででも最大クラスのやらかし、失言だったのではないかと思われますが、佐為にとっては待望の対局の実現となります。

いよいよ頂上決戦が始まります!

toya koyo

約束の日に向けて、塔矢行洋はネット碁に慣れるためにtoya koyoとして打ち続けます。

インターネット上最強の棋士であるsaiに相対するtoya koyoが、以前のsaiのようにネット上で猛威を振るっている様は、何だか物語じみていて熱くなる展開ですね。

saiの場合は匿名の盛り上がりでしたが、toya koyoの場合は有名すぎて盛り上がるという、対照的な盛り上がり方をしているのも面白いと思います。

しかし、こういう展開が面白くなるのはインターネットが世間に普及しだした時期という時代背景もあったかと思われますが、そういう意味では『ヒカルの碁』は時代にも恵まれたヒット作だったのかもしれませんね。

まあ、このsaiのエピソードが無くても十分に名作なんですけど。

佐為とアカリの対局

一応プロであるヒカルに打ってもらおうとヒカルの自宅に訪れたあかり。

幼馴染とはいえ意外と図々しいですね。(笑)

しかし、佐為と塔矢行洋の対局の前日ということもありヒカルは断ろうとするのですが・・

「私、打ちますよ。私、打ちたい」

佐為があかりと打ちたがります。

「あかりちゃんと打ってピリピリした気持ちを落ち着かせるのも悪くありません」

一応ヒカルは、大一番を控える佐為を気遣ってあかりを追い返そうとしたのですが、なるほど・・

そういう考え方もあるのですね。

というか、さすがの佐為の塔矢行洋との大一番を控えて緊張していたのですね。

しかし、ヒカルの心配ももっともです。

極端に実力差がある相手とばかり対局していると、同格の相手と対局した時に勘が鈍っていることに気付くことが僕にも経験があります。

まあ、佐為ほどの実力者ならその辺のコントロールはそこまで心配いらないのかもしれませんね。

頂上決戦

そして、ついに始まる頂上決戦!

sai vs toya koyo

徐々に世界中の人々がこの好カードに気付き始め、ネット碁とは思えないほどの注目を集めます。

そして、アキラもこの対局に気付き・・

という所で、良い所ですが今巻は終わります。

4話もかけて描かれる『ヒカルの碁』の作中でも屈指の名局の結末は次巻のお楽しみに!

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

う~ん、やっぱり『sai vs toya koyo』の棋譜を検討していきたい気持ちでいっぱいですが、ヒカルの碁の作中でもトップクラスに1局にかける時間が長い対局。巻を跨いでしまって今巻では終わっていないんですよね。

というわけで、はやる気持ちを押さえて今回は『LL vs toya koyo』の対局です。

塔矢行洋がネット碁で打った対局で、武宮正樹九段(黒)と小林光一(白)の20年ほど前の棋聖戦挑戦手合の棋譜が元ネタですね。

(図1)

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黒番のLLは武宮先生です。黒番では三連星からの宇宙流を打つことで有名な先生ですね。この対局は三連星ではありませんでしたが、石が中央へ中央へ向かうのには棋風が現れていますね。

特に右上の黒。この形で白にカタツキしていく手はなかなか思いつかないような気がします。というか、何も知らなければ位高く打っている黒に対して後から白が二間にヒラく手を打ったのではないかと、順序が逆だったのではないかと思ってしまいますね。

ちなみに、武宮先生は三連星を打つ前に先にカカリを打ったりもしていて、この棋譜でもそうだったのですが、白の小林光一先生はすかさずワリ打ちして三連星を封じています。

棋風が極端な人の棋譜では、そういう相手の土俵には上がらないような駆け引きもあって面白いですね。

ちなみに、この段階でのLeelaZero先生の評価はほぼ五分。僕のような低段者の対局では序盤から良くも悪くも形勢が揺れ動きますが、ある程度以上強い人の対局ではなかなか形勢が傾きません。

(図2)

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囲碁ファンにこの局面を見せて、どちらが武宮先生かと問いかけたら大体正解するのではないでしょうか?

中央の宇宙が広大ですね。まるでブラックホールのようで、白を打ち込んだら吸い込まれてしまいそうです。

白の小林光一先生が塔矢行洋側で、LLが塔矢行洋の強さに戦慄するシーンで使われている棋譜ではありますが、実はこの段階でのLeelaZero先生の形成判断は黒に傾いています。

囲碁AIは中央志向気味で、武宮先生の棋風は囲碁AIに近いと言われていることもあり、好みの問題もあるのかもしれませんけど。

ただ、結論から言えば恐らく中央を囲おうとした手(赤丸の部分)が敗着だった可能性があります。

(図3)

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中央を囲った黒石の右上に、カタツキのような形で打たれた白石に黒地を上手く制限されてしまいました。黒も大きいので形成判断が難しい所ですが、どうやらこれで白が勝っているようです。

LeelaZero先生激オコですね。

厚みは囲うなと言いつつも、タイミングよく囲わなければいけない時もあります。

結果から見ると、恐らくその囲いが小さかったので白から制限された時に敗勢になってしまったということなのだと思われます。

つまり、囲うなら囲うでもっと大きく囲んで白が打ち込んでくるしかない状況にし、打ち込まれた白を攻めていくような打ち方を目指すべきだったのかもしれませんね。

そう、まるでブラックホールに取り込んだ光を逃がさないようなイメージです。(宇宙流なので宇宙的な表現にしてみました)

もちろん、白に打ち込ませて黒が優勢ではあるとは思うものの、リスクの大きな打ち方でもあると思います。

武宮先生のような棋風は格好良いのでアマチュアには似た棋風(中央志向)の人も多いですが、プロ棋士には地に辛い棋士の方がやっぱり多いです。そんな中、自分のスタイルを貫く武宮先生は格好良いですよね。

ちなみに、今回の検討が若干武宮先生押しな感じになっているのは、武宮先生が僕の好きな棋士の一人だからです。(笑)

総括

いかがでしたでしょうか?

いよいよ塔矢行洋との対局で佐為も少しは報われましたかね。

次巻ではいよいよ決着となります。

しかし、この決着で必ずしも佐為が報われたかと言うと、それは微妙な所。

14~15巻はまだ佐為のエピソードが続きます。

必ずしも幸せなハッピーエンドとは言えないような結末に向かうエピソードは、読んでいてツライ部分も確かにありますが、佐為が好きなら最後まで目を背けずに読みましょう。(次巻の書評はこちら

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】12巻

 

貴重な佐為の敗北シーンのある12巻です!(前巻の書評はこちら

2巻のレビューにも書きましたが、佐為の敗北シーンは都合3度あります。

1度目は相手のズルで動揺した佐為が入水自殺するキッカケになった対局。

2度目はヒカルの打ち間違えで加賀に負けた対局。

そして最後が、今巻のヒカルの新初段シリーズの場を借りて自らにハンデを課して打った塔矢行洋との対局。

考えてみれば全て何かしらの訳あり対局ですね。

そして、意外と我儘な(というか我儘にならずを得ないのかもしれませんが)佐為がシリーズを通しても最大限に我儘を発揮したのが今巻の対局だったのですが、そこまでしてもちゃんとした対局は望めませんでした。

佐為のために大事な対局の場を譲ったヒカルも可哀想ですが、佐為はそれ以上に可哀想ですね。

今回は、このハンデを付けた対局がどのようなものなのかについても考えながらレビューしていきたいと思います。

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本作の概要

ついにプロになったヒカル。アキラから1年遅れてヒカルが歩き始める道の第一歩である新初段シリーズですが、何と塔矢行洋からの指名によりヒカルVS塔矢行洋が実現します。

しかし、佐為の強い要望により久しぶりに佐為が対局することになるのですが、実力を付けたとはいえヒカルと佐為の実力差は大きい。佐為がまともに打てば、ヒカルがまた実力以上に注目されることになってしまうことは間違いありません。

そこで15目のハンデがあるつもりで佐為に打たせることにするのですが・・

誰も幸せになれないような結末がそこにはありました。

芽生え始める未来のない佐為から未来のあるヒカルへの嫉妬心。

徐々に哀しい結末へと向かい始める序章となる物語に注目ですね!

本作の見所

新初段シリーズの相手は?

ヒカルのことを気にしているのは塔矢アキラだけではありません。

いや、むしろ囲碁部の三将戦の一局だけで幻滅したアキラと違って、塔矢行洋名人や緒方九段といった大人の棋士たちの方がずっと気にしていたのかもしれませんね。

そして、その塔矢行洋は新初段シリーズに出場する代わりにあることを要求します。

「そのかわり相手を指名させていただきたい」

自分の前にヒカルが現れるのをただ待っていた塔矢行洋が、ついにヒカルと対局することになります。

囲碁を始めて僅か2年足らずでプロになったヒカルですが、塔矢行洋は「やっと出てきたか」と、まるでそれが遅いかのような口ぶりです。

ヒカルの何を評価しているのかは不明ですが、相当期待しているようですね。

ハンデのある対局

ヒカルにとっても大事な門出となる新初段シリーズですが、どうしても塔矢行洋と打ちたい佐為の我儘により、佐為VS塔矢行洋が実現します。

ヒカルは可哀想ですが、塔矢行洋はヒカルに佐為を感じている可能性もあるので、知らないこととはいえ塔矢行洋にとっても望むところだったのかもしれませんね。

ともあれ、普通に打ったらただでさえ新初段側に逆コミのハンデがある状況、佐為の勝ちは揺るぎなさそうです。それは困るヒカルは佐為に対局する上で一つのハンデを課します。

逆に15目ハンデがあるつもりで打つこと。

結果、佐為は非常に急戦的な打ち方を強いられることになり、さすがにそのような打ち方では塔矢行洋に及びませんでした。

ちなみに、15目のハンデってどれくらいだと思いますか?

囲碁を知らない人にはピンと来ないかもしれませんが、実のところ低段者レベルの僕にもピンと来ません。(笑)

というのも、結果的に15目差の結果になることと、最初から15目差を付けるつもりで打つことでは意味合いも難易度も全く異なると思うからです。

そもそも、互角の力関係でも15目どころではない大差が生まれることは珍しくありません。

大差がつく時には大体負けた側の石がツブれる結果になっていると思いますが、それは最初からツブすつもりで打っているのではなく、「油断してたらツブすよ」とプレッシャーを掛けながら得を図るように打っていたら、結果的にツブれることになったということが多いと思います。

つまり、もともと15目以上の大差を付けるつもりは無いのですね。というか、互角の相手にそんな打ち方をしていたら、いつまでたっても成績は安定しないことと思われます。(僕のことかもしれませんけど)

そして、最初から15目差をつけて勝とうとするということは、そういう普通の打ち方ができなくなるということを意味します。

最初から目指す所が違うので、打ち方、考え方自体が変わってしまうのですね。

そういうわけで、さすがの佐為も泥臭い打ち方で大敗することになってしまいました。

ヒカルの評価

さて、そんなヒカル(佐為)の対局を見て多くの人はヒカルに幻滅しますが、一部の強者はヒカルの評価を下げませんでした。

前述したように、最初からハンデを抱えると考え方自体を変える必要があります。

その考え方の違いに気付く人は気付いたということなのでしょうね。

しかし、よくよく考えるとまた佐為に対する評価がヒカルに付いてしまったとも言えるので、ヒカルの思いは複雑なものと推察されます。

碁盤の価値

気晴らしに訪れた囲碁イベント。

佐為もヒカルに無理を言ったことを反省しつつも楽しそうです。

「もう打ちたいなどとは、時々しか言うまい」

しかし、断言しきれない所が可愛らしいですね。

そしてそんな気晴らしに訪れた囲碁イベントで、少々気分の悪い出来事に遭遇します。

碁盤の素材を偽ったり、偽物の本因坊秀策の署名をした碁盤を売ろうとしたりする悪徳業者。どちらも佐為が偽物であることに気付きました。

本榧碁盤20万円。本榧足つき碁盤としては安い方ですが、地味にリアリティのある値段なのが憎いですね。それに、そもそも碁盤の相場なんて知っている人の方が少ないですし、騙される人も多そうな商売です。

しかも、そんな商売にプロ棋士も関わっていると知ってヒカルも佐為も激オコです。

佐為VS御器曽

そして、その悪徳業者とつるむプロ棋士。御器曽プロは客相手の指導碁でも下手をもてあそぶ打ち回しをしていて、ついにキレたヒカル(佐為)が打ちのめされた客と変わり、指導後の続きを打ちます。

いつもは佐為に打たせたら目立つので嫌がるヒカルも珍しく乗り気です。

そして、あっという間に御器曽プロに逆転勝ちしてしまいました。

いや~。現実のプロ棋士にはそんな悪い人はいないと思っていますが、珍しく囲碁界のブラックな部分が描かれたエピソードでした。

だけどこの御器曽プロ、今後プロの公式対局でヒカルとも対局することになるのですが、その時のセリフが印象的で意外と人気があるようですね。

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今回はヒカルの新初段シリーズ。塔矢行洋がヒカルを指名して行われるヒカルにとっても大事な対局ですが、ここ一番の佐為の我儘で佐為が打つことになった一局です。

元ネタは前巻のヒカルVS和谷と同じく、趙治勲九段(黒)と大竹英雄九段(白)の対局となります。

元ネタの趙治勲先生は大事なタイトル戦、まさか15目ハンデがあるつもりで打ったりはしていないと思いますが、黒の果敢さが目立つ対局だと思います。

ただ、個人的には今までで一番検討しづらい棋譜でした。

(図1)

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ヒカル(佐為)が序盤から仕掛けてきたという手。描写が無いのでわかりませんが恐らく白のカタツキにボウシした手のことでしょうね。

黒が下辺を大きくまとめようとするのを阻止した白の手に受けずに、攻めの対象にしてしまおうという強気な一手です。

黒石の多い場所で攻められる白もツライところではありますが、黒も繋がりは薄いので全部まとめるのは難しそうな局面ですね。

しかし、作中ではかなり急戦気味の印象で描かれていますが、この局面黒は強気に行きたいところな気がします。

白を小さくもがかせながら生きさせ、その隙に黒も得を図って形勢はどうかという感じなのではないでしょうか?

とはいえ、それは互先での話。15目勝とうとするのであれば、どこかしら白をツブすくらいの気持ちで打たなければ不可能だと思います。

15目くらいの差は中押し勝負ならありふれたこととはいえ、意識してやるのはマジで難しいと思います。

(図2)

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特にスポットの当たっている局面ではありませんが、赤丸の黒のコスミが気になったので取り上げてみました。

ちょっと普通の発想では出てこないような手なのではないでしょうか?

実際、LeelaZero先生の候補手にもありません。

普通なら一路下のキリか、LeelaZero先生の候補手(図2の水色の部分)にもあるツナギを選ぶ気がします。

まさか、下辺白を丸ごと取り込んでしまおうという手なのでしょうか?

だとしたら黒が果敢すぎますね。

作中で佐為が言っているような「複雑な戦いに誘い込む手」なのかもしれませんね。

(図3)

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作中で描かれている「攻めたくなるような隙」とは中央の黒石のことでしょうね。

確かに一歩間違えば死にかねない黒石で、本当に殺すことができれば白の圧勝かもしれませんが、無理に殺さなくても白が優勢の局面。

むしろ殺しにいって失敗した時のリスクの方が大きいような気がするので、僕でも無理に攻めにいったりはしません。

まあ、塔矢行洋のように「ずっと先まで読むとキワドイ気がする」からではなく、そもそも読めないからリスクを避けているだけなのですけど。(笑)

だから明らかに劣勢でも無ければ中央の黒を攻めようとは思いません。

ちなみに、作中で塔矢行洋はヒカルから新初段の子供とは思えないほどの威圧感を感じていますが、そりゃあそうですよね。

だってこの黒番の元ネタ、趙治勲先生だもの。

威圧感ありそうな棋士の代表ですよね。

(図4)

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そして終局図。

結局中央から左辺にかけての黒が取られての惜敗でした。

明らかに白が優勢の状況で打ち進められ、最後は僕でも死にが読める局面になってからも何手か打たれていています。

そういう意味で、なかなか泥臭い印象の対局だと思います。

囲碁を打たない人は、強い人ほど負ける時はあっさりと綺麗に負けるようなイメージを持っているかもしれませんが、それは真逆で強い人にあきらめが良い人は少ないような気がします。

この対局は、むしろプロの世界においてここまで惨敗の局面になりながら心が折られずに油断ならない対局を続けることができる趙治勲先生が流石だと言うべきですね。

しかし、間にいたヒカルは辛かったでしょうね。

自分が打っているわけでも無いのに惨敗の局面を打ち進めなければいけないのですから。

総括

いかがでしたでしょうか?

プロになったけど、なかなかヒカルのプロとしての仕事や対局生活は始まりません。

ヒカルがプロになったことで、ある意味その役割のかなりの部分を既に果たしている佐為のエピソードがしばらくは中心になります。

今後、『ヒカルの碁』における佐為を含む囲碁の世界が大きく変わっていきます。

特に次巻は、『ヒカルの碁』においても最大の見せ場の一つである頂上決戦があるので目が離せませんよ!(次巻の書評はこちら

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】11巻

 

ついにプロ試験編のクライマックスの11巻です!(前巻の書評はこちら

いやはや、連載当時このプロ試験編はかなり長いエピソードだと感じていましたが、レビュー記事を書いていると思っていた以上に短く感じました。

それだけ密度の濃いエピソードだということですね。

印象的なのはプロ試験の間にヒカルの院生仲間の個性が一段と際立ったこと。

和谷に関してはヒカルと会う前から登場していただけあって最初からキャラが立っていましたが、伊角さん・越智あたりはプロ試験の間に一気に目立つようになってきました。

プライドが高くて他の院生など歯牙にもかけず根拠ある自信を持って突き進もうとする越智。

実力はあるけどヒカルを始めとした年下世代の台頭に焦りを抱いて躓いてしまった伊角さん。

考えてみれば、ヒカルが何だか強くなってプロ試験を突破しましたというだけじゃあ盛り上がりに欠けるので、そこを盛り上げるための越智のアキラに師事するエピソードや、伊角さんとの碁会所修行のエピソードだったのでしょうね。

ともあれ、プロ試験編を通して伊角さんや越智といった個性の尖ったキャラクターが完成しました。

プロになった越智と、プロになれなかった伊角さんの今後には要期待ですね!

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本作の概要

プロ試験も終盤、1人また1人と明暗が分かれていく緊張感のある展開となります。

そして1人目は前巻でアキラに師事した越智の勝ち抜けで決まります。越智の一抜けは大方の予想通りの展開でしょうが、越智に関してはプロ試験の合格はクライマックスではありません。

越智とヒカルの対局。今巻の見所の一つでしょうね。

そして後2人の合格枠を賭けた戦いは最後の最後にヒカル、和谷、伊角さんという碁会所でチームを組んだ3人の三つ巴に突入します。

「これで進藤が合格してオレ達が落ちたら確かにマヌケかもな」

和谷と伊角さんの雑談でのセリフですが、これが現実になるかもしれない熱い展開です!

果たして3人の中で誰が合格するのか?

それが今巻最大の見所ですね!

本作の見所

佐為だったら

3敗しているヒカルと、2敗で2人目の合格者に一番近い所にいる和谷との対局。

和谷の優勢で進み、ヒカルは決断力を持って踏み込まないといけない絶体絶命の状況になってしまいます。

どう踏み込むのか?

必死に考えるヒカルは、佐為だったらどう打つのかを考え、何とか勝利への道筋を見つけることができました。

「このあたり、ヒカルの打ち方が私みたいで」

「あ、わかった? おまえだったらどう打つかなって考えてそこ打ったんだ」

和谷との対局の前日も、ヒカルは佐為の考えをトレースするような打ち方を試していましたが、佐為の考えをトレースするとはヒカルも成長したものですね。

しかし、こういう誰それだったこういう手を打ちそうだと考えることは、アマチュアレベルでも結構普通にやっていることなのではないかと思われます。

まあ、あくまでも「ぽさ」があるだけで、深い読みによる裏付けがあったりするわけではなかったりするのですけど、そういう他人の真似をしていくような打ち方は囲碁の練習としてはかなり有効な部類である気がします。

最近だと、AIっぽい手をそれこそトップ棋士クラスが試しているのも、レベルが段違いに高いとはいえ同じことなのだと思います。

越智の目標

アキラに師事することになり、今まで気にもしていなかったヒカルをライバル視するようになってきた越智。

早々とプロ試験の合格を決めましたが、全く油断するそぶりはありません。

いくらアキラにヒカルの謎めいた強さを力説され、どうやら自分の知っているヒカルよりも強くなってきていることが分かっているとはいえ、一度も負けたことの無い相手にここまで万全に備えることのできる越智は、メンタル面も相当強いことは間違いありませんね。

一度も負けたことの無い相手を目標に、プロ試験の合格すら通過点と捉えるとは・・

プライドは高いけど相手を認めることもできる越智は、『ヒカルの碁』の登場人物の中でもトップクラスに勝負師らしいと思います。

しかし、現時点での雌雄はヒカルの勝利で決することとなりました。

三つ巴の結末

越智が合格して残り2枠を、ヒカル、和谷、伊角さんの3人が取り合う展開となりました。

ヒカル、和谷が3敗。伊角さんが4敗の状況、ヒカルと和谷のどちらかが負ければ伊角さんとのプレーオフが発生するという状況。

伊角さんの待つしか無い状況は相当に辛いものだと想像されますね。

苦手なフクを相手取り、負ければ強敵である伊角さんと対局することになる和谷にも相当なプレッシャーが掛かっていたことが想像されますが、何とかそれを跳ねのけて和谷が2人目の合格者となります。

そして、3人目は越智に勝利したヒカル。

伊角さんは残念ながら不合格となってしまいました。

ちなみに、個人的にはヒカルが負けて伊角さんとプレーオフになる展開も読んでみたかったと思います。

ヒカルと伊角さんの対局は微妙な感じで終わってしまったので、その仕切り直しという意味でも読者的に盛り上がる展開だったかと思います。

いや、しかしそうなってしまうと随分後にあるとある名シーンが生まれなくなってしまうので、伊角さんには悪いですけど作品的にはこうなって良かったのかもしれませんね。

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今回はヒカルと和谷のプロ試験本戦での対局です。

元ネタは30年近く昔の名人戦

趙治勲八段(黒)と大竹英雄九段(白)の対局です。

ヒカル、和谷、伊角さん。

あと二枠ある合格枠が、一緒に碁会所で団体戦をした仲である3人の三つ巴になってきた中、その内2人の対局という重要な局面ですね。

(図1)

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序盤はゆっくりとした囲い合いで、黒は下辺方向に、白は上辺方向に大きな地が付きそうな展開ですね。

互いに地に辛い展開ですが、こういう展開になるとコミがある白の方が若干有利な気がします。

実際、このあと数手で上辺白が少し固まりますが、その時点でLeelaZero先生の形成判断もかなり白に傾きます。

作中で和谷が「この白模様を全部オレの地にすればおまえの負けは必至」と思っていますが、ある意味ではシンプルな展開なのかもしれません。

形勢が悪い方が形勢が良い方の模様に踏み込んでいく、そして荒せば勝ちで、成果を上げることができなければ負けというわけですね。

しかし、それ以上に形成判断の重要性が問われるような局面でもある気がします。

なぜなら、本図の上辺白に踏み込むのは相当なリスクを伴う行為であり、仮に黒が優勢なら、恐らくそこまで強烈に踏み込むことはしなかったであろうと考えられるからです。

つまり、相当正確な形成判断能力が無ければ上辺の白に踏み込む決断はできないわけですね。

僕くらいの低段者だと、形成判断の誤りで勝負すべき局面で勝負を避けて僅差負けしてしまうこともしばしばです。(笑)

まあ、さすがに本図くらいの局面だとラインがハッキリしているので、少し白が良さそうだとわかりますけど。

(図2)

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図1から少し進んで、黒が上辺白に踏み込んでいった局面です。

星の基本定石の弱点っぽい場所なので思いつきやすい手だとは思いますが、これだけ白石が多数ある場所だとどうなのでしょうか?

僕のような低段者に高度な読みは難しいのですが、正直白が固く打っていれば黒が生きるのは相当難しいような気がします。もちろん、生きられたらほとんど黒の勝ちなので油断はできませんが・・

実際、実戦では打ち込みに対してハネましたが、LeelaZero先生の候補手はノビで黒に綾を与えないような打ち方となります。ちなみに、僕もLeelaZero先生と意見が一致していたので嬉しかったです♪

しかし、最後に読み落としがあったとはいえ「黒に生きる道は無い」と断言する和谷も、「1本だけ黒の生きる道はある」と呼んでいる佐為も、結果的にその道を見つけることができたヒカルも、尋常じゃないくらい凄いですよね?

本図からそれがわかる人ってどれだけいるのでしょうか?

少なくともLeelaZero先生は上辺を白地と見ているようで、しばらくずっと白優勢の形成判断で進行することとなります。

ちなみに、試しに本図の局面からセルフ対局してみましたが、白が成功する図の方が多かったです。

(図3)

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そしてこれが終局図ですが、踏み込んだ黒石が丸ごと生還しましたね。

形成判断も何もない黒が圧勝の形成で、さすがに白の投了となりました。

和谷が「このヨミが抜けてた!」と思っているのは、恐らく上辺の白を次に取りに行くぞという手を利かされて、上辺白を生きているスキに左上に一眼作られてしまったことだと思います。

つまり、上辺の白を生きるために打った手が不要だと勘違いしていたということなのだと思われます。

そして、こういうギリギリの勝負で1手の価値はあまりにも大きい。

いや、ヨミ落としも何も、ここまで読めている時点で十分人外だと思うのですが、ヒカルがそれ以上の人外だったというわけですね。

そして、元ネタの趙治勲先生も。(失礼!)

地に辛く、相手の地に踏み込んでシノギ勝つ。趙治勲先生のイメージ通りの棋譜でした。

総括

ついにプロになったヒカル。

塔矢アキラが歩き始めた道を1年遅れてヒカルは追いかけます。

1年遅れてとは言いますが、考えようによっては「たった1年遅れ」。アキラも相当先に行ってしまっていますが、間違いなく差は縮まっていることでしょう。

今後、プロでどのようなヒカルが活躍していくのかが楽しみな所ですが、ヒカルのプロ生活は序盤から波乱万丈なものとなります。

序盤は「初心者が囲碁を覚えて・・」という物語だった『ヒカルの碁』ですが、ヒカルがプロになっても、まだまだ盛り上がりますよ!(次巻の書評はこちら

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】10巻

 

アキラ、最大の名言が生まれる第10巻です!(前巻の書評はこちら

ついにプロ試験本戦が始まってその進行も楽しみな所ですが、ヒカルの院生仲間たちのキャラも徐々に立ち始めています。

和谷や伊角さんあたりは既にかなり目立っていますが、やはり勝負の世界を描いた漫画なだけあって、真剣勝負が始まることで更にキャラに深みが出てきているような気がしますね。

今巻では最も注目株の伊角さん。

アキラに師事することになった越智。

何というかヒカルの院生仲間たちって、ずっと前から登場しているけどヌルっと主要キャラ枠に入ってきて、だけど不自然さが無いという変わった目立ち方をしている気がしますよね?

そして、ついにヒカルのことが気になりすぎて行動に移すことになったアキラにも注目です!

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本作の概要

碁会所修行の甲斐もあって順調に勝ち進むヒカル。

着実に勝ち進みますが、思わぬ出来事に精神的不調に陥ったりもしてしまいます。

ヒカルだけではありません。ヒカルの院生仲間たちも厳しいプロ試験本戦に様々な思いを抱いています。

そんな中、余裕綽々の越智はアキラに師事することになるのですが・・

一方で、勝ち上がるヒカルの様子を越智を通して知りたいアキラ。ヒカルのことしか気にしていないアキラの態度が面白くない越智を相手に果たして上手くいくのでしょうか?

本作の見所

修行の成果

6連勝した後の第7戦目。ヒカルの対局相手は因縁の椿敏郎だったのですが・・

対局前の前哨戦では成長を見せつけ、対局そのものは描写すらなく勝利に終わりました。

メタっぽい話ですが、ヒカルより格下相手との対局は描写されない傾向の強い『ヒカルの碁』という作品。プロ試験予選で苦労した椿敏郎も今のヒカルにとっては格下になってしまったということなのでしょうね。

佐為もやっぱり勝負師

プロ試験も中盤に差し掛かり、ヒカルの集中力も増しています。

自宅での佐為の指導にも真剣そのものです。

「おまえの番だぞ佐為。集中しないと負けるぜ?」

どこまで本気なのかわかりませんが、佐為までもを食いかねない程の気迫のヒカル。

とはいえ、今のヒカルにとってはそこまでの大口というわけでもないのかもしれませんね。これからプロ棋士になろうというヒカルにとって、例えトップ棋士レベルの佐為であってもいつかは対等に勝負していけるようにならない相手なわけですから。

「私がヒカルに負ける?」

「今まで一度だって負けたことがありましたか?」

「ちょーしにのってェェェ」

佐為も、ヒカルに「負ける」と言われて勝負師の目になっています。穏やかで可愛らしい所があっても、やっぱり勝負師なのだということがわかりますね。

しかし、佐為のこの反応は「佐為が勝負師であること」を示しているだけではありません。

恐らく、もっと昔のヒカルが言った所で佐為もこんな反応はしなかったのではないでしょうか?

思い返せば、若獅子戦では一時的にでも佐為を驚かすような打ちまわしを見せていたヒカル。佐為には勝てないまでも、一発入れるくらいの勝負ができるくらいまでには成長しているのだと思います。

ヒカルの実力が相当な所まできているからこそ、佐為も勝負師の目になったのではないか。僕はそんな風に感じています。

短いシーンであまり注目されていないような気がしますが、個人的にはかなり好きなシーンです。

ハガシの反則

もう囲碁を始めて長いですが、『ヒカルの碁』を読んでいなかったら「ハガシの反則」という囲碁用語は知らないままだったような気がします。

ヒカルを警戒するあまり、慎重になりつつもどこか対局に集中しきれていない伊角さんが、一度打ち間違えそうになって打ち直し際に、実は指が離れてしまっていたという反則ですね。

ネット碁専門の僕には縁のない反則ですが、普通に打つ人にはあったりするものなのでしょうか?

しかし、反則をした伊角さんも、された側であるはずのヒカルも、この後大きく調子を崩してしまいます。

伊角さんは言わずもがな、ヒカルも反則勝ちに縋ろうとしてしまったことが前向きな挑戦心に水を差されたような形になってしまったということなのだと思います。

その結果、ヒカルは得意としていたフクを相手に9目半という大差での負けを喫してしまいます。

そのことにヒカルは荒れてしまいますが・・

「昨日のような碁も、今日のような碁も、二度と打つもんか!」

反則勝ちに縋ろうとした弱さと、それに引きずられる弱さは、もう見せないという決意表明ですね。

そう決意して立て直しを図るヒカルが、今までで一番格好良いと思いました。

越智とアキラ

プロを自宅に招いて勉強している越智の元にアキラが指導しに来ることになりました。

最初は断るつもりだったアキラですが、ヒカルの実力を測るために院生でプロ試験を受けている越智に接触したかったという意図なのですが・・

あまりにもアキラが露骨なものだから越智からしたら面白くないですよね。

そういうわけで最初は追い返されたアキラでしたが、ヒカルの躍進に危機感を感じた越智はアキラに師事することを決意します。

しかし、アキラも本気ですね。

今までほとんど誰にも話していないはずの、最初期のヒカル(佐為)との対局の棋譜を越智に見せつけます。

「ここで僕が投了!」

ひょっとしなくても作中で最も有名なセリフなのではないでしょうか?

最初はヒカルのことなど歯牙にもかけていなかった越智ですが、さすがに警戒MAXになったことでしょう。

越智クラスの相手に最大限に対策されることになってしまったヒカル。

ヒカルと越智の対局が楽しみですね!

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今回はヒカルと伊角さんのプロ試験本戦での対局です。

元ネタは30年近く前の女流名人戦、宮崎志摩子二段(黒)と青木喜久代三段(白)の対局です。

ヒカルにとっても、伊角さんにとっても苦々しい局面。伊角さんがハガシの反則を行った盤面はどうやら元ネタと手順と進行が違っているようで、正確な進行は不明になっています。

しかし、「悪意の無い反則」で勝負が決するという珍しい対局、かつ物語的にも重要な対局なので、一部推測混じりの進行もいれつつも本対局を検討していきたいと思います。

(図1)

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作中では黒が慎重な打ちまわしで優位に進めているように描写されていますが、LeelaZero先生によるとほぼ五分の形勢で、なかなかどちらにも傾かない良い勝負になっているようです。

ただし、感覚的には確かに黒の方が打ちやすそうな気がしますね。

白は左辺が大きいですが左辺だけなのに対して、黒は下辺から右下にかけて大きな模様が作れそうですし、上辺の形も悪くありません。

実際、この後白が左辺を囲って右下に大きな黒模様ができた段階で若干ですが黒に形勢が傾きます。

とはいえ、左辺の白も広大なので僕程度では形成判断はできませんが・・

右下黒を全て地にすることはさすがに難しそうですし、まだまだこれからの勝負なのかもしれません。

(図2)

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左下から中央にかけての形が独特、かつ反則が行われたこともあってじっくりと描かれた盤面なので、作中に描かれた盤面が印象に残っている人も多いのではないでしょうか?

そして、本図の中央の形なんか違うと思った人も多いのではないでしょうか?

実はこれが元ネタの進行となります。

LeelaZero先生は黒持ちで、確かにここまでくれば若干黒が良さそうに見えます。

ただ、こういう大きく囲い合う感じの勝負の形成判断は本当に難しいと思います。個人的には、お互いギリギリ二眼できるくらいの地ばかりができるような、攻め合いの続くような碁の方が形成判断しやすいです。

なぜならば、地が小さくて数えやすいからですね。

(図3)

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推測交じりですが作中の盤面を作り上げました。

右上はチラッと描かれていて、手順が違うだけで実戦の進行と同じ形だったのでその通りに再現しました。

右下は一部だけ描かれていましたが、どうも実戦で出来上がる右下の形とは違っていそうだったので、推測で並べました。

恐らく、右下を黒が先手で切り上げて中央のトビを打つはずなので、一応そうなる手順を考えた上で、作中に描かれている部分は一致するようにしてみました。

それなりにそれっぽい形になっていると思います。

そして問題の局面。

白が中央に打ったワリコミをアテる手ですね。

右からアテるか左からアテるか・・

伊角さんは一旦左からアテて、間違えたと気付いて右からアテていますね。

確かに、これは右からアテる方が自然で、左からアテるのはいかにも露骨な手に見えますね。

ですがなんと!

LeelaZero先生は伊角さんがミスだと思った左からアテる手を候補手にしています。

しかし、考えてみれば不自然な手に見えるものの悪くないような気がしてきました。

左からアテて、ポン抜かれるのはさすがに白がつらいから逃げて、アテた手を左辺方向にノビて・・

お互いに模様に侵入されたような形ですが、別に極端にどちらが良いというような感じはしませんね。いや、LeelaZero先生がそう言うもんだからさぁ~(笑)

総括

プロ試験本戦も終盤。

ヒカルは合格圏内にいますが、まだまだどうとでも転ぶような状況です。

どういう結果になるのか、楽しみですね!(次巻の書評はこちら

死活に強くなるだけではない。詰碁の効果とは?

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囲碁の勉強と一口に言っても色々と種類があります。

詰碁、定石、布石、手筋、ヨセ、それに実戦からの検討・・などなど。

もちろん、人にもよるかもしれませんが一番楽しいのは実戦で、それ以外の勉強にはかなり好き嫌いと得意不得意があります。

中でも、詰碁はヨセと並んで嫌いな人が多いイメージがありますよね?

僕の場合、詰碁はかなり好きな方ですが、同時に苦手でもあったりします。

今回はそんな詰碁について本気で考えてみました。

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詰碁とは?

本記事を読んでいる人には説明不要でしょうが、知らない人もいるかもしれないのでおさらいしておきましょう。

詰碁とは、囲碁の部分的な死活(石の生き死にのこと)を問う問題でいくつか種類が存在します。

  • 相手の石を殺す問題
  • 自分の石を生かす問題

大きくはこのように分類されますが、最近は前者の方が多い気がしますね。

相手の石を殺すか自分の石を生かすための、初手を探すパズルゲームが詰碁となります。数手先まで考えさせる問題もあり、その手順が多岐にわたるケースもありますが、初手の正解は1つだけというのがルールになっています。

というわけで、初手が複数存在する問題は失題扱い・・なのですが、それにも例外があります。

実戦によく現れる形を問うた詰碁の問題もあり、「実戦詰碁」とか「基本死活」と呼ばれていますが、この場合は初手の正解が複数存在する場合もあります。

実戦で詰碁のような唯一無二の正解がある状況は珍しく、より実戦的な死活を問う問題になっているのですね。

囲碁の棋力と詰碁棋力

詰碁の問題を解いたことがある人ならわかると思いますが、詰碁の問題には「3分で解けたら初段」のような棋力の目安が記されていることが多いです。

しかし、この目安はどうも囲碁そのものの棋力とは合っていないような気がしています。(よっぽど高レベルの人だと合ってくるのかもしれませんが)

実際、この感覚は多くの人が持っているようで、囲碁の棋力とは別に詰碁棋力のような言葉をしばしば耳にします。

僕の場合、囲碁の棋力はアマチュア低段者程度なのですが、詰碁棋力は正直それよりもかなり低い水準にあるという実感です。(たぶん級位者程度)

・・ですが!

詰碁棋力は低いですが、詰碁の勉強は間違いなく実戦に活かされていると思います。

詰碁はなかなか解けないのに実戦には好影響が出ているとはこれ如何に?

その答えは、詰碁を勉強することによって、どのような効果があるのかを考えてみたらわかります。

詰碁の表向きの効果

というわけで、詰碁を勉強することによる一番わかりやすい効果は何でしょうか?

それは、もちろん「死活が強くなる」ということでしょう。

  • 殺せる状態にある相手の石を殺せるようになること。
  • 弱い自分の石を適切なタイミングで守れるようになること。

詰碁を勉強しようとしている人の多くは、このような効果を期待して勉強しているのではないでしょうか?

しかし、ハッキリ言ってこれが完璧にできたら誰も苦労しませんし、ちょっと勉強したくらいで死活に強くなったと実感できる人は稀だと思います。(もちろん、少しずつは強くなっているのでしょうけど)

というか、そもそも実戦において勝敗に関わるほどの大石の取り合いはそうそう発生しません。僕程度のレベルだと度々発生しますが、それはどちらかに明確にミスがあったり、そもそも棋力差が大きかった時に発生しているのであって、詰碁棋力の高低が影響しているわけではないと思っています。

それでは、死活に強くなる以外に詰碁にはどのような効果があるのでしょうか?

詰碁の本当の効果

詰碁は、相手の石を殺すために勉強するものではないと思っています。

そもそも相手が強くなるほど、詰碁のように後1手で殺せるような状況にはそもそもならなくなってきます。

それでは詰碁を勉強する効果とは何か?

それは「打つ手の選択肢が広がる」ことだと僕は思います。

相手や自分の石が後何手で死ぬのかが正確にわかったらそれに越したことはありませんが、詰碁を勉強していたら正確に読めてなくても「何となく大丈夫そう」「何となく殺せそう」ということが感覚的にわかるようになってくるものです。

例えば、この「何となく大丈夫そう」の精度が高かったら、自分の弱い石が攻められている時に「まだ大丈夫」と手抜きする判断が選択肢として追加されたりするわけですね。

石の効率を競う囲碁というゲームにおいて、1手だけでも手抜きできることの効果はとても高いですよね?

このように、詰碁は1か0かという100点を求められる問題ですが、少なくともアマチュア低段者レベルの実戦では80点くらいの感覚でも十分に役立っているのだと思います。

そもそも、石を捨てるような判断すら選択肢としてあり得る囲碁の実戦と、取るか取られるかだけの詰碁とは全く性質が異なるものですしね。

その他にも、「相手の石の急所が見えるようになってくる」という効果もあります。

急所に石が向かったからといって必ずしも殺せるわけではありませんが、実戦においてこれは戦いを優位に進める結果に繋がります。

死活が完璧でなくても強くなれることは、それこそ囲碁AIの実績が証明しているところでもありますしね。

詰碁のすすめ

詰碁が苦手、嫌いな人は恐らく、絶対に正解したい。間違えるのは嫌だという、完璧主義者的なところがあるのかもしれませんね。

僕は正直「80点でいいや~」くらいの感覚で詰碁を解いているので、実は間違えてもあまり気にしていません。

何となく正解っぽい手を探して、間違ってても答えを見ては「なるほど~」と感心しているだけです。

だから強くならないという説もありますけど、少なくとも僕はこのやり方で楽しんで詰碁を解くことができ、棋力の向上に多少なりとも繋がっていると実感しています。

当然、詰碁を嫌がってやらない人よりは効果が出ているのは間違いないと思います。

詰碁嫌いな人も、「間違ってもいいや~」というもっと気軽な感じで詰碁をやってみてはいかがでしょうか?

詰碁の本(おすすめ)

古典詰碁の世界

難問揃いの古典詰碁ですが、詰碁というものそのものに興味を持つために古典詰碁に触れてみるのは「あり」だと思います。

何となく、古典詰碁を勉強しているというだけで何だか格好良いですもんね。(笑)

それに、そもそも古典詰碁に触れることのできる本って現在は少なくなってきていますし、そういう意味でも貴重な書籍です。古典詰碁の詰碁集とか、過去には結構出版されているようですが、現在は大抵古書店にしか売っていません。

また、前述したとおり古典詰碁には難しいイメージが付き物ですが、本書はそのハードルを下げてくれています。

詰碁の解き方の基本から始まり、特に難易度の高い問題は、その問題を解くための練習問題から始まります。

難しい問題も、比較的簡単(といっても難しい!)な問題のスタート地点を目指すことで解けることもあります。

元がとても難しいのでなかなか簡単にはいきませんが、そうやって練習問題をやっていることで難しい問題が解けることもあるので、そこまで詰碁棋力が高くなくても達成感を得られるようになっているのではないでしょうか?

古典詰碁の魅力

『古典詰碁の世界』と同時発売の本書。

詰碁の中でも特に難しいということで有名な「発陽論」にもお手軽に触れることができます。

・・といっても、「発陽論」に限らず難易度の高さは相変わらずですが、練習問題から始まる構成は『古典詰碁の世界』と同じです。

たまには難問もいきなり解けることがあったりして、達成感を得ることができます。

ちなみに、僕は古典詰碁集については橋本宇太郎先生のものをコレクションとして持っていますが、ハードルが高く感じて中身にはあまり触れていません。

僕程度には「うわっ、無理~」って思うような問題ばかりなので・・

そういう意味でも『古典詰碁の世界』『古典詰碁の魅力』は、興味はあっても気圧される雰囲気のあった古典詰碁に気軽に触れられる良書だったと思います。

基本死活事典

問題集というよりも、基本的な実戦形を網羅的に記した辞書のような位置づけの書籍です。名前からして「事典」ですからね。

これを完璧にできたら、相当な棋力向上が見込めるのだと思いますが、なかなかボリューミーで本書を勉強するような時間を僕は取れていません。

とはいえ、手元に一冊置いておいて実戦でよくでる形に、それこそ実戦で悩むようなことがあった時に、後から復習がてら該当する部分だけでも確認するような使い方ができると思います。

最初に記したように、辞書のような使い方をしているわけですね。

やさしい囲碁レーニング 実戦!詰碁の基本

内容的には基本死活事典と同じく実戦によく出る形の基本詰碁が掲載されていますが、こちらは問題集形式の書籍となります。

本書に限らず『やさしい囲碁レーニング』シリーズは、とても簡単な問題から徐々にステップアップしていくような構成になっていて、最初の方はどんどん問題を解き進めることができて大きな達成感を得ることができます。

かなり簡単な問題も掲載されているので初心者にもオススメですし、実戦によく出てくる形なので即効性も期待できます。

ある程度以上の棋力の人にとっても、簡単な問題を瞬間で答えを出すようにトレーニングすることは難問を時間をかけて解いていくのとは別種の、もっと実戦的な能力の向上に役立ちますし、それにかなり解き応えのある問題も掲載されています。

今までたくさんの詰碁の書籍を読んだことがありますが、恐らく一番実戦で役立つと思ったのが本書でした。

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】9巻

 

ヒカルの碁会所修行編の第9巻です!(前巻の書評はこちら

ヒカルの成長がマジ早いですね。

前巻では大人との対局にビビっていましたが、今巻では碁会所のオジサン達との対局が楽しそうですらあります。

和谷や伊角さんとの碁会所修行、そして洪秀英との対局を通してまたまた一回り成長したようです。

作中を通して格上相手に勝利することが滅多にないヒカルが、現時点では明らかに格上である洪秀英に勝利するシーンには大注目ですよ!

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本作の概要

碁会所のオジサン達に置石を置かせての対局で、プロ試験本戦に向けて順調に力を付けるヒカル。

和谷と伊角さんに連れて行ってもらった後も、一人で毎日通ったそうですが、度胸もだいぶ付いてきたようですね。

そんなヒカルはひょんなことから韓国の研究生である洪秀英と対局することになります。

そして、明らかに格上と思われる洪秀英にも善戦・勝利したヒカルはプロ試験本戦前に一皮も二皮もむけたのではないでしょうか?

実際、プロ試験本戦がはじまり怒涛の6連勝。

アキラも徐々にヒカルのことを無視できないようになってきています。

本作の見所

置き碁の効果

プロ予備軍の和谷、伊角さん、ヒカルと2~3子で戦えるオジサン達の棋力は間違いなく高段者クラスだと思われます。

今のヒカルにとっては明確な格下だとはいえ、そういえば置石を置かせるほど格下相手の対局ってのもヒカルはあまり経験していないような気がします。

そんなヒカルにとって、高段者相手に置石を置かせた対局は相当な修行になったのではないでしょうか?

佐為も「劣勢の局面をはねのける力となる」と効果を認めていますね。

確かに、置石の負担って想像以上に大きなものですよね?

僕も級位者相手に置き碁を打ったことはありますが、僕の場合は修行どころか打ち続けると弱くなってしまいそうです。

なぜなら、差を詰めるために変な手を打ってしまったり、勝手読みと自覚した上で相手のミスを期待した手を打ってしまったり、まともな打ち方ができなくなってしまうからです。

まあ、互先における劣勢の局面では、そういう普通ではない手を打てることも必要だということなのかもしれませんね。

四面打ち持碁

ヒカルの碁連載当時は「へ~プロってこんなことできるんだ。凄いな~」と漠然と思っていましたが、今ならわかります。

アキラのやっていることはマジで尋常じゃない凄技です。

四面打ち持碁。

恐らく、トップ棋士ですらそうそうできることではないのではないでしょうか?

マナーのなっていない都議会議員と、その秘書と後援会の2人。

負けてあげてくださいと言われているものの、どうやらこの囲碁への敬意の足りない都議会議員に負けるのはシャクといった様子のアキラは、この4人を相手に持碁を狙うことにしたようです。

大人っぽく見えても子供っぽい行為ですが、そういえばアキラは最初の頃にヒカルの囲碁への経緯の足りない発言にもキレたりしていたし、そこがアキラのウィークポイントなのかもしれないですね。

そして、その頃ヒカルも碁会所でわざと持碁にすること、それも4面で挑戦していて、3面までは持碁に成功しています。

この時点でのアキラとヒカルの差が表現されているのだと思いますが、まだまだアキラには及ばないものの、スグ後ろまで迫ってきているのがわかりますね。

ヒカル、計算とか苦手そうな雰囲気なのに・・

「オレの一局。別に変ったことなどなかった」

「だってワシはいつものように打ったぞ」

秘書と都議会議員のセリフですが、僕もニコストという囲碁の生放送番組で高尾紳路先生に13路盤で持碁にされたことがあるので、この気持ちはわかります。

どうやら故意だったらしいのですが、普通に打っていてどの手が故意に調整された手なのかが全くわかりませんでした。まったくもって恐れ入ります。

ちなみに、僕の棋力も当時よりはかなり上がっているので、今ならわかるかもと思いタイムシフトで見直してみましたが(かなり昔だけどタイムシフトが残ってました。(20分~))、改めて見てもやっぱりわかりませんでした。(´・ω・`)

それにしても、また ニコストやってくれないかな~

韓国の囲碁事情と洪秀英

「韓国にもプロがあるんだ」

「世界のことなんて知らねーよ。オレは日本のことだって知らねーんだから!」

無知は罪ということですね。ヒカルの失言再びです。

こんな風に知らないと言われたら、韓国のプロのレベルがどうであれ洪秀英が腹を立てるのも当然です。

ちなみに、現在(2018年)は囲碁の世界のトップと言えば中国、次いで韓国で、日本はこの2国に比べるとかなり遅れてしまっている印象ですが、連載当時は李昌鎬がまだまだ猛威を振るっていて、次世代として李世ドルが台頭してきているような時期で、韓国が世界のトップという印象の強い時代でした。

そういうわけで、ヒカルの発言はサッカーに例えると強豪国、例えばブラジルあたりを引き合いに出して「ブラジルでもサッカーやってるんだ」とか言っているようなものだったりします。

といっても、連載当時の僕は囲碁の世界の時代背景なんて知らなかったので、ただただ洪秀英が生意気な少年に見えたものですが、実は洪秀英からしたらヒカルの方が格上相手に口先だけは生意気なことを言っているヤツに見えたのも仕方のない時代背景があったのですね。

ともあれ、これが日本の院生のヒカルVS韓国の研究生の洪秀英の対局が実現するキッカケとなりました。

プロ試験本戦開始

碁会所での修行、洪秀英との対局を経て成長したヒカルがついにプロ試験の本戦に臨むのですが、予選の頃の緊張した様子はありません。

開幕、怒涛の6連勝を決めていきます。

ちなみに、囲碁を打たない人は6連勝ってどれくらい凄いことなのかわかりますか?

もちろん調子の良し悪しで格上相手に連勝することも稀にありますが、普通なら手合違い(ハンデが必要)の棋力差が無いと6連勝は無理です。

仮にもプロ試験を受けに来ている人たちを相手に6連勝とは、ヒカルも尋常じゃないくらい成長しているのかもしれませんね。

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今回はもちろんヒカルと洪秀英の対局です。

この2人の対局シーン、好きな人多いのではないでしょうか?

元ネタは韓国の女流国手戦の中で行われた1局。李晶媛(黒)と尹瑛善(白)の対局が元ネタとなります。

やはり、ヒカルが悪手に思われた一手を活用して攻勢に出る場面に注目ですね!

(図1)

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この段階ではどっちが良いってのは無さそうですね。

左辺白、右下黒の形がそれぞれ嫌らしい感じがしますが、お互い様でLeelaZero先生の評価も五分になっています。

ただ、右下の攻防につい意味が良くわからない手が度々登場するんですよね。

右下に入ってきた白が下辺に進出しようとしているのをオサえずに黒が打った手(赤い印の部分)の意味がよくわかりませんでした。(強い人教えて~)

右辺の白にプレッシャーをかけようとしているのかもしれませんが、右辺の白はそうそう攻めの対象にはならないような気がしますし、実際この手を打った瞬間にLeelaZero先生の勝率が一瞬白に大きく傾きました。

また、その後右下をお互い打ち続けるのですが、最後に打った白の手(赤い印の部分)の意味も良くわかりませんでした。スソアキの下辺にノビたりトンだりしていってはダメだったのでしょうか?

LeelaZero先生も下辺方向へのノビが候補手になっていて、実際それを打たなかったことで白に傾いていた勝率が五分に戻りました。

その後も変な位置の黒のノゾキがあったり(赤い印の白の2路左)、よくわからない手が続きますが、結果的には黒が下辺を大きな模様にして大きく優勢を築きました。

LeelaZero先生の評価も白が絶望的になっていきます。

作中ではあまり描かれていない盤面ですが、この右下の攻防ってひょっとすると相当ハイレベルな思惑のぶつかり合いがあったのではないでしょうか?

強い人に教えて欲しいものです。

(図2)

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ヒカルが打った最初悪手だと思われた一手ですね。

確かに、僕でも相手がコレを打ってきたら相手のことを格下認定してしまいそうです。

上辺の弱い黒を攻めるような打ち方をしていくべきだと感じられる盤面なので、LeelaZero先生の候補手であるノビや、1路左のハネあたりが普通なら打ちたくなります。

ところが、白が打たなかったので当然黒は喜んでアテを打って、上辺の不安がだいぶ緩和されることとなります。

さて、白の狙いは何だったのでしょうか?

(図3)

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狙い通りだったのか、結果的に最初からそういう狙いだったかのような打ちまわしを見せたのか、その辺の真偽はわかりませんが、この盤面までくると確かに最初に悪手と思われた一手が良い場所にありますね。

左上の黒が意外と目の無い形で、そこをシノいでいる内にいつのまには黒には弱い石が三か所もできてしまっています。

一歩間違えばどれかが死んでしまいそうな状況ですね。

当然、弱い石がバラバラに存在するのは大きな負担なのですが、最初の白の一手が中央の黒が弱くなる要石になってしまっています。

黒の立場からすれば、こうなってみたら図2の状況で露骨に上辺を攻めに来てくれていた方がむしろ、負担は少なかったのではないでしょうか?

作中で洪秀英は微妙な形勢と言っていますが、素人目には圧倒的に白持ちの形勢になっていて、黒で勝つ自信は全く持てません。

なぜなら、生きるのに執着して地合いで遅れるか、地合いでも遅れないように頑張って潰れるかのどちらかになりそうだと思うからです。

しかし、結果は1目半差(現代なら2目半)の僅差。こんな良い勝負になるとは、黒もさすがですよね。

総括

いよいよプロ試験の本戦がはじまりましたね。

予選突破直後は不安な状況だったヒカルですが、一皮むけたヒカルは立て続けに6連勝。

アキラの目にも止まることとなり、読者的にもますます目が離せません!(次巻の書評はこちら

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】8巻

 

プロ試験予選で大人の壁に阻まれそうになるヒカルに注目の第8巻です!(前巻の書評はこちら

いよいよプロ試験が始まりました。

それに併せて桑原本因坊と緒方挑戦者のタイトル戦など、プロの世界が垣間見えるシーンも増えてきましたね。

それにしても、今まで佐為や同年代の少年少女以外との対局経験の乏しいヒカルが大人相手に動揺しているのが初々しいです。

作中でヒカル(佐為を除く)が同年代以上とした対局といえば、ヒカルのじいちゃんと阿古田さんくらいでしょうか?

苦戦しながらもプロ試験に臨むヒカルに注目です!

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本作の概要

プロ試験に臨めるレベルまでヒカルは成長してきました。

それに併せてプロの世界を垣間見れるシーンも増えてきます。桑原本因坊と緒方挑戦者のタイトル戦もそうですね。

ヒカルがプロの世界に入り込むほどに、プロの世界がよく見えるようになってくるのもヒカルの碁の面白い部分だと思います。

ヒカルと佐為が意図せずプロ試験に臨もうとする強豪である門脇さんの鼻っ柱をへし折ってライバルを減らしたりしつつも、プロ試験の予選がついに始まります。

院生試験の時もそうでしたが、意外とメンタルの弱いヒカルがどう乗り越えていくのかが見ものです。

本作の見所

佐為の指導

短いですが意外と珍しい佐為の指導シーンがあります。

今までは良しとしていた安全だけど99点の手より、間違えやすいけど100点の手を選ぶようにヒカルに指示します。

いや、連載当時は言葉通りより点の高い手を選べという意味で捉えていましたが、実際には佐為の言いたいことはそういうことではないのだと思います。

というのも、そもそも囲碁の打つ手を点数に換算することは難しいはずで、1点程度の違いは恐らく佐為クラスの天才であっても判断できるようなものではなく、そのことは佐為もわかっているはずだと考えるからです。

だから佐為はこの言葉で、例え難しい戦いになろうとも厳しい手を選ぶようにしていかなければならないということをヒカルに伝えたかったのだと思います。

「でも もうヒカルはそれをしのいでいかなくてはね」

 最後のこのセリフがそれを物語っていますね。

そして、ヒカルもそれを理解しているようで、佐為も弟子の成長が嬉しそうです。

佐為VS門脇

久しぶりの佐為の被害者。

外来でプロ試験を受けると噂の門脇さん。肩慣らしにと院生と思われるヒカルに声を掛けるのですが・・

行きずりの対局だと思い込んだヒカルが佐為に打たせてしまいます。

結果は佐為の圧勝なのですが、この時すでに相手の力量くらいはわかる程度に成長しているヒカルには門脇さんが只者ではないことに気付きます。

只者ではない門脇さんに必要以上に興味を持たれないように、ヒカルは早々に立ち去ろうとするのですが・・

「碁を始めてどれくらいになる?」

「千年」

格好良い名言なんだけど、なんだけど!

明らかに門脇さんに興味を持たれてしまった失言でもありましたね。

まあ、後にヒカルを追いかけてきた門脇さんはアキラよりも大人だったので、ヒカルにとっては不幸中の幸いだったということでしょうか?

ともあれ、ヒカルは知らぬ間にプロ試験のライバルを一人減らしてしまいました。

この対局が無かったら門脇さんがプロ試験に合格していた可能性もあるわけで、意外と今後の展開に大きく影響する出来事でした。

桑原本因坊と緒方挑戦者

連載当時、何となく囲碁のプロに対して抱いていたイメージそのもののイメージの桑原本因坊

囲碁の世界をある程度知っている今なら、プロ棋士の強豪といえば年若い青年のイメージが強くなっていますが、当時は囲碁のプロ・タイトルホルダーと言えばよく知りもしないで桑原本因坊のようなおじいちゃんをイメージしていました。

しかし、実際にこんなおじいちゃんが現役でタイトルホルダーになっていたら、囲碁の歴史に残るレベルで凄いことだったりします。

本因坊戦で緒方挑戦者を翻弄する桑原本因坊がマジで格好良いですね。

こういうジジイ、結構好きです。

「新しい時代はもうそこまで来ているんだ」

そして、桑原本因坊と相対する緒方挑戦者。

若い世代を引っ張っていく筆頭感が出ています。

ヒカルとの接点は少ないですが、院生試験の時然りヒカルに目をかけていたりなど、下の世代をとても気にしている棋士という印象が強いですね。

プロ試験予選とヒゲ男

プロ試験予選でヒカルは、外来受験者の椿敏郎に翻弄されてしまいます。

ヒゲ男と呼ばれるほどの野性的な外見。

周りがビビるほどの大きな声。

対局開始直後に30分も離籍する奔放さ。

昼休憩には強引にメシに連れ出し、打ち掛けの経験のないヒカルに手番の話をして動揺させる。

その全てがヒカルの動揺に繋がり、盤外でも盤上でもペースを掴むことができず、結果的に負けてしまいました。しかも、立て直すこともできずに2連敗。

その後、相性の良いフクと対局して1勝を掴み、椿が勝ち上がったことで不在になったことで4戦目も冷静に打つことができて2勝。そして、最後は手空きで不戦敗。

何とか予選を勝ち上がることができましたが、メンタルの弱さを克服できたわけではありません。

このままではプロ試験本線は不安な状況ですね。

碁会所でのチーム戦

和谷の提案で、ヒゲ男のような奴との対局に慣れるために和谷と伊角さんと碁会所に行くことになったヒカル。

碁会所のオジサン相手に置石を置かせてのチーム戦。

年長の伊角さんが気苦労してそうですね。(笑)

ちなみに、ヒカルの碁においてもかなり人気の高いキャラクターである伊角さんですが、もともとだいぶ印象が薄かったのにこの辺から一気に存在感を増してきます。

今後もちょくちょく活躍するので未読の方は注目しておきましょう!

ヒカルの保護者たち

プロ試験を受ける話を両親にも話していなかったヒカル。

おいおい・・(笑)

ヒカルのお母さんもだいぶ心配そうです。

そりゃそうですよね。

ずっと囲碁をやっててプロを目指していた子供の親っていうのならまだしも、急に囲碁を始めた息子が1年ちょっとでプロ試験を受けるとか言ってたら「はっ!?」って普通はなります。

ヒカルのお父さんやじいちゃんは理解があるのか放任主義なのか、よくわからない反応っぽいですが、お母さんの気苦労が知れます。

本編からはちょっと外れたエピソードですが、よくわからない世界に突然飛び込みだした息子と、そのことを知らなかった両親という構図が面白かったったので見所に挙げてみました。

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今回はプロ試験予選、ヒカルVS椿敏郎の対局です。

元ネタは鈴木源之丞(黒)と若山立長(白)の古碁となります。

プロ試験の空気感に飲まれ気味のヒカルの対局にはどのゆな棋譜が使われているのでしょうか?

ヒカルの動揺が現れているような棋譜が使われているので、その辺に注目していきたいと思います。

(図1)

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黒の右上のツケがちょっと辛そうな手だと思いました。

ハネてきてくれたら良さそうですが、ツケた石の左にノビられて出来上がった形が気持ち悪いですね。

後から赤丸を付けている位置のノゾキが打たれるのが更に辛いですね。

中央に向かって厚みを作っているかのような打ち方ですが、上辺の白も弱くないのであまり働かなさそうです。

実際、LeelaZero先生の示す候補手は左上から上辺白に迫るような手になっていました。

この辺もヒカルの動揺が現れている所なのでしょうか?

(図2)

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左上の白のツケは作中に盤面が描かれていましたね。

それに対する黒の受け方が、劣勢な局面なのに戦いを避けた手堅すぎる印象を受けました。

LeelaZero先生の示す手はツケた白石の左にハネる手なのですが、これは盤面が複雑化しそうな手ですけど劣勢ならこういう厳しい手を選ぶべきなのでしょうね。

いや、僕程度の棋力ではまだまだ形勢不明の局面なのですが、流れだけ見たら何となく白ペースになっていることくらいはわかりますし、実際LeelaZero先生の勝率は既にかなり白に傾いていました。

ちなみに、ペースを掴んでいる方が優勢という形成判断はある程度参考になると思います。ずっとペースを掴んでいると思っていたら負けていたということも稀によくあるので絶対ではないですけどね。(笑)

しかし、プロを目指すヒカルには恐らく形勢がわかっていて、それでも手堅くなってしまっているのか、それとも形勢判断できないくらいに動揺してしまっているのか、いずれにしても普通の精神状態では無いということをこの棋譜で表したかったのだと思われます。

(図3)

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最もヒカルの動揺・・というか手控えしているのが現れていそうな手が右上のヌキではないでしょうか?

左辺の弱い黒石が、ただでさえ白の方が一歩先に頭を出している所を手抜きしてまで打つような手ではなさそうな気がします。

むしろ、左辺は白の方が弱いんだと主張して、左辺黒を強化しつつ左辺白を攻めるくらいの気持ちで打っていればまだ形勢は難しかったのではないでしょうか?

実戦は右上をヌイた後、左辺黒を攻めながら完全に白ペースの展開になって、そのまま終局してしまったという印象でした。

総括

辛くもプロ試験の予選を突破したヒカル。

本線に向けて和谷、伊角とチームを組んでの特訓。碁会所荒し(?)も始まりました。

本線までにどこまでヒカルが成長できるのかに注目ですね!(次巻の書評はこちら

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】7巻

 

急成長するヒカルに注目の第7巻です。(前巻の書評はこちら

ヒカルの碁』には、ヒカルがわかりやすく大きく成長するタイミングが何度かあったと思います。

前巻では院生2組のドンケツで不安を感じていたヒカルですが、今巻で1組に上がり、若獅子戦に出場して若手プロと互角の戦いを繰り広げます。

ヤバいくらいの成長の早さですね。 

筒井さんに勝って喜んでいた時から、そう時間は立っていないはずなのに・・

ちなみに、今巻には昔読んでいた時はあまり意味がよくわからなくて、漫画的に盛り上げるためだけのシーンなのかなと思っていたけど、ある程度囲碁に触れてきた今なら意味がわかるようになってきたシーンがあります。

その辺りについても見所の紹介で触れていきたいと思います!

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本作の概要

和谷に誘われた研究会に、院生修行。それに佐為の指導もあって、ヒカルの腕はめきめきと上達していきます。

院生順位も1組に上がり、順調に順位を上げていき何とか若獅子戦への出場権を獲得することができました。

若手プロである村上プロとの対局では佐為をも驚かすような打ちまわしを見せるほどに成長します。

ヒカルを見限ったはずのアキラも、再びヒカルに興味を抱きますが、今はまだヒカルの実力を知りません。

しかし、アキラはヒカルに追いかけられていることを確実に意識するようになってきていますね。

本作の見所

森下門下の研究会

和谷に誘われた森下門下の研究会。

しかしそこはプロの研究会。お互いに得るものが無ければメリットが無いということなのでしょう。院生2組のヒカルが参加することに最初「あんまりヘタッピじゃな」と難色を示す森下先生でしたが・・

妥当塔矢アキラを口にするヒカルの意気込みに感心した森下先生は快くヒカルの参加を受け入れてくれました。

そんなんで良いのかとも思いましたが、そういうものなのかもしれませんね。

「技術的なことだけなら私が教えられるが ここはヒカルの気構えが鍛えられる」

見守る佐為も、ヒカルの師匠が板に付いてきた気がします。

佐為の刃

依然として院生内で結果が出せないヒカル。

研究会では佐為の示した手が誉められたり、そんな凄い佐為に教わっているにもかかわらず院生順位は下がってしまう。

「私と打っているからです」

なぜ勝てないのかというヒカルの疑問に対して佐為はこう答えます。

佐為の強さが理解できるにつれ、恐れから手控えることが増え、それが普段の対局でも現れる。それを解消するためには、アキラのようにギリギリまで見極めて踏み込むべきなのだと佐為は指摘します。

そして、この指摘こそが前述した昔読んだ時にはよくわからなかった部分となります。

昔の僕には、精神的な部分が囲碁の打ち方に与える影響の大きさが全く理解できていなかったのですが、ずっと囲碁を趣味にし続けている内に気付きました。

佐為の言っているようなことは、実はよくあることなのだということが。

不調な時に僅差の負けが増えることって稀によくあることで、後から検討したら安全だけど甘い手を打っていたり、逆にそれを避けようとやりすぎた手を打ってしまっていたり、アンバランスな打ち方になってしまっているのですね。

そして大抵そういう時期を乗り越えた時って、今まで勝てなかったクラスの人にも勝てるようになっていたり、大きく棋力が向上していることが多い。

丁度今巻のヒカルの状態がそれなのだと思います。

ヒカルの急成長は漫画的な演出なのかとずっと思っていましたが、恐らく囲碁を打っている人にとっては結構同じような体験をしたことがある人もいるのではないでしょうか?

そして1組に

佐為のアドバイスが功を奏したのかヒカルはついに1組に昇級します。

普通は不調の理由がわかった所でこんなに順調にはいかないような気もするのですが、それも含めてヒカルの才能なのだということでしょうか?

フクとの対局で自身が早碁が得意だということ。相性の良さを実感しているヒカルが印象的ですね。

ちなみに、こういう実力とは別にある相性っていうのも現実に存在したりします。

まあ、格下に対する相性の悪さはそのもの「相性の悪さ」と自覚できるものの、格上に対する相性の良さは「相性の良さ」ではなく「実力」だと思ってしまいがちなんですけどね。(笑)

その点、ヒカルはこの時点では格上であるフクに対しての打ちやすさを「実力」だと勘違いしていない点がエライと思います。

悪手を好手に

若獅子戦への出場を決めたヒカル。

ついこの間まで中学生の囲碁部の大会に熱を上げていたヒカルが、もうプロと公式戦の対局をするまでに成長したのかと思うと、とんどもない速さの成長です。

それにしても村上二段との対局を見守る佐為が尊いです。そしてヒカルを見に来た緒方九段を聞こえていないとわかって対局に誘う姿が切ないですね。

村上二段とそれなりの勝負を繰り広げる中、ヒカルが放った悪手に必死に緒方九段に言い訳する佐為ですが・・

「!さっきの悪手がうまく利用されて好手になっている」

気付けばヒカルが見事な打ちまわしを披露していて佐為と、緒方九段も驚かされることになります。

ちなみに、このシーンも主人公として個性のある棋風をヒカルに持たせようとしているシーンなのかと昔読んだ時は思っていましたが、今思えばこの悪手を好手に化けさせるということは囲碁を打つ上で、「稀によくある」どころか「全く普通のこと」になります。

例えばアタリにつっこむような明らかなミスは別として、悪手になるか好手になるかは、そもそもがその手の後の打ちまわし次第だというのが囲碁というゲームなんですね。

そして、強い人ほど「実はミスだった手」をそうとは感じさせない妙手だったのだと思わせる術にたけている。

最近の囲碁AIの放つ不思議な手も然り、ある一手単品だけで好手なのか悪手なのかを判断することは難しく、やっぱり結局のところ後の打ちまわしが重要だということを改めて認識させられているような気がします。

悪手を打ったら、とりあえずそれはそれとしてその後どう打てば良くなるかを考えることは当たり前のことですよね?

つまり、こういう考え方自体は普段誰でも実践しているのですが、本当の意味で強い人を相手に実現できることは凄いことだと思います。

だから、普通のことではあっても佐為が驚かされたこと自体には不自然さはないのだと思います。

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今回、本当はヒカルVS村上プロの対局を紹介したかったのですが元ネタの棋譜が見つからないので断念しました。

そこでちょっと趣向を変えて、いつもは主人公や強い人に注目してしまいがちなのところを恐らくは上級者~低段者程度だと推察される金子さんの対局を紹介してみます!

さん(黒)と三谷(白)の対局で、作中では盤面がほぼ描かれていない状態の対局ですが、碁ジャスにて棋譜が紹介されていますね。

(図2)

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序盤早々ですが、金子さんの布石が刺々しかったので気になってしまいました。金子さんの性格を表しているのでしょうか?

そうだとしたら、作中にほぼ描かれていない棋譜にまでそういうこだわりを見せているのが凄いですね。

それにしても高目に三々。

例えば右下の黒石が星の位置にあるよりも右上に潜り込みづらいような気がしますが、そういう意味の布石なのでしょうか?

一部で中央を意識した位の高い打ち方をしたら、一部では地を意識した位の低い打ち方をするのは、何となく最近のAI的な発想に近い気もしますね。

恐るべし金子さんです。(笑)

(図2)

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左辺では、何となく黒の打ち方がアンバランスな感じがしますね。中央を意識したような打ち方に見えましたが、白が中央に頭を出していて大きな黒模様はできなさそうです。LeelaZero先生の評価も白に傾いていて、確かに多くの人は白持ちの形成になっているのではないでしょうか?

そして、白は右下の三々にカタツキ。

しかし、三々への手のつけ方って僕も未だによくわからないんですよね。一応いくつか定石は知っていますが、どれも黒も白も持ちたくないような感じがするのです。だからいつも、よほど打つところが他に無い時以外に三々に打たれた石には直接絡んでいくことはありません。

図2の場合も、左辺の弱い黒石の状態によって右下の打ち方を考えたいような気がします。

ちなみに、LeelaZero先生は左辺左上よりの黒を攻めたくてしょうがないようで、この段階で右下の三々には全く興味が無いようでした。

(図3)

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上辺の黒が酷いことになっていますね。左辺上辺よりの黒も死ぬことは無いでしょうけど、何かと味が悪く後々負担になりそうな感じがします。

明らかに誤算があった結果の形ですね。

一方で白には不安な箇所はありません。

金子さんと三谷の力量差が表れている棋譜になっているということだと思われますが、強い人の対局はプロの対局や古碁の棋譜を使っているとして、こういう棋譜ってどう準備しているのか興味がありますね。

マチュアの対局だったりするのでしょうか?

そんなこと言って実はプロの対局とかだったら恥ずかしいのですが、いや流石に上辺の黒がプロってことはないですよね?

総括

今巻で急成長したヒカルですが、ヒカルの急成長はまだまだ続きます。

次巻、いよいよプロ試験が始まり、つまずいたりもしますが全く止まらないヒカルの成長に注目ですね!(次巻の書評はこちら

ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】6巻

 

ついにプロを目指しはじめる院生編が始まる6巻です。(前巻の書評はこちら

何とか院生試験に合格したものの思うような成績を残せないヒカルと、新初段シリーズでは敗北したものの更に前に進む意思を見せつけるアキラに注目です!

ヒカルが追いかけてアキラが突き放す。

そんなヒカルの碁の構図が出来上がってきました。

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本作の概要

勝利しなければ院生試験に合格できない。

そう勘違いしているヒカルと佐為は既に置石分のリードが無くなった局面に焦りを覚えますが、実は力を見ることだけが目的だった試験。

ヒカルは何とか合格し、院生になることができました。

ヒカルの失言のせいで院生たちにはアキラのライバルなのかと誤解・警戒されたりもしましたが、なかなか思うような成績は残せません。

ヒカルにとってはずっと格上だと感じていた海王中囲碁部の岸本ですら院生ではずっと2組だったと知り、ヒカルは自分が本当に上に行けるのかと不安を覚えることになります。

そんな中、アキラの新初段シリーズがあることを知り、ヒカルはそれを観戦するのですが・・

アキラに触発されたヒカル。

不安が消えたのかはわかりませんが、前に進もうという決意は新たにできたということでしょうか?

本作の見所

院生試験

名門囲碁部である海王中学の副将並と評価されたヒカルや、強キャラとして描かれていた加賀や三谷のことを院生師範が「雑な打ち方」「たいしたことない」と評価するのを最初読んだ時はビックリした覚えがあります。

これがプロを目指すということなんですね。

置石を三つ置いて始まった試験ですが、すぐにハンデ分は追いつかれてしまいます。

「だから手にあせりがでる 無理がでる」

ヒカルを見守る佐為のモノローグですが、昔読んだ時は「いやいや囲碁なんていつだって同じように打てるものじゃないの?」とか思っていました。

しかし、ある程度囲碁を打てるようになった今ならわかりますが、こういう精神状態は明らかに打ち方に影響を受けますね。

まして、絶対に負けられないと思っている状況で格上に追いつかれたヒカルにまともな打ち方は難しかったのではないでしょうか?

ともあれ、結果的には力を見るだけで勝利する必要は無く、何とか院生試験には合格することができました。

アキラのライバル

「アイツはオレと戦いたくてムリヤリ三将になったんだよ」

本当にヒカルは失言王ですね。意外と、慎重な時は慎重な気もしますけど。

いきなり院生内で目立つことになってしまったヒカルの対局結果をみんな気にしていますが、院生初日の結果は2連敗。

「これで塔矢のライバル?」

和谷や伊角さんにもレベルが違いすぎるとダメだしされてしまいました。

わかっているだけにヒカルも悔しかったでしょうね。

岸本の実力

更なるヒカルを気落ちさせる出来事が発生します。

海王中学はアキラは別格だとしても他のメンバーも強いのだと力説するヒカルですが、ひょんなことから院生時代の岸本の話を耳にすることになります。

ずっと2組にいて、一度1組に上がってきたことがあるブラックコーヒーばかり飲んでいた院生。

岸本が、「全然強くなかった」と和谷や伊角さんの歯牙にもかけられていない実力だったと知り、ヒカルは本当に自分が院生の1組になれるのかと不安になってしまいました。

確かに、ずっと強者だと思っていた人でさえ通用しない世界に挑戦するのは怖いものですよね。

アキラの起爆剤

「碁は技術だけじゃない わずかしかない技術の差の間で精神面や気迫が大きく関係して勝敗は決まる」

佐為も院生試験時に同じようなことを言っていましたが、これも今なら実感できるセリフですね。緒方先生良い事言います。

そして、今のアキラにはその気迫が欠けていると指摘する緒方は、アキラにヒカルが院生になったことを教えます。

「ならボクは彼なんかには手のとどかないずっと遠い所まで行ってやります」

ヒカルの実力は見限ったはずのアキラですが、やっぱり最初の敗北があるからか気にはなっているのでしょうか?

そういえば作中通してでも、アキラがここまで熱くなっているのってヒカルに対してだけな気がしますね。

ともあれ緒方の目論見通り、ヒカルの存在はしっかりとアキラにとっての起爆剤になったようです。

アキラの新初段シリーズ

逆コミ5目半の新初段シリーズ。

かなりのハンデ戦ですが、アキラは新初段シリーズで座間王座と対局します。

この対局がヒカルの目にも留まると考えているアキラは、見せつけるように積極的に打ち続けます。

「オレにはわかる塔矢」

「おまえはオレに「ここまで来い」って言ってるんだろ?」

いや、近づけさせないとか言ってたけど・・

本当のところ、アキラは徐々にヒカルのことを気にしていくことにはなるのですが、この段階でヒカルのことをどう思っているのかって未だによくわからないんですよね。

sai騒動の後にはヒカルと接点が無いわけですしね。

ともあれ、ヒカルの存在が起爆剤になったアキラの対局が、今度はヒカルを発奮させることになりました。

こういうライバル関係って良いですね。

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今回は河野臨初段(黒)と森田道博八段(白)の新初段シリーズでの対局が元ネタとなる、アキラと座間王座の対局となります。

今回この記事を書くために調べるまで知りませんでしたが、河野臨先生の棋譜も使われていたのですね。

(図1)

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毎回のことですが、僕が気になっている局面より作中でポイントとなっている局面があればそちらを優先して取り上げています。

右上のホウリ込みは記者の「強手!」のセリフで印象に残っていました。

ちなみに、作中ではアキラが押している形勢だと描かれていますが、LeelaZero先生はかなり白持ちのようですね。(勝率75%超)

しかし、僕の感覚的にも作中で描かれているように白がツライような気がします。

右上の白は後一手かけないと部分的に一眼しかできないし、だからと言って手をかけるのは効率が悪い。非常に悩ましい局面だと思います。

とはいえ黒の形も気持ち悪い。僕程度だと正直どっちも持ちたくない形勢という感じですね。

右上に一手いれるのはツライとは思うのですが、LeelaZero先生はおそらくそう考えていないから白優勢と見ているのでしょうね。

実際、候補手を見ても中央に頭を出すのが絶対無理になった状況を見極めて右上に手を入れています。

人間と違って欲張らない所は欲張らないのがAI流なのでしょうか?

(図2)

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左下の黒のヨセの手を座間王座は「甘いな」と咎めて左辺の黒を攻めます。

アキラの手は、最有力ではないもののLeelaZero先生の候補手と一致していますが、確かに白は左辺を攻めれるなら必ずしも手を入れる必要は無さそうですね。

というか、個人的には左辺の黒がだいぶ不安なので左辺に手を入れる手を選んでしまいそうです。

かと言って、黒がヨセた位置に白からヨセられてもかなり大きいので悩ましい所なのでしょうか?

ちなみに、LeelaZero先生は下辺の白と右辺の白を分断しようという強烈な手を第一候補にしていました。

いやはや、終盤ですがあちこちに綾が残っており、どっちが優勢でも安全に打とうとしたらスグにひっくり返りそうな局面ですね。

総括

囲碁部を諦めてまでなった院生で思うような成績を残せないヒカルですが、アキラの対局に触発されたヒカルがどのように成長していくのか?

それが今後の見所ですね。(次巻の書評はこちら